忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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前回くっっっっっっっそ長いあとがきを読んで下さった方ありがとうございます。

アガレス)定期的に読者様を困らせるのやめろよ。

と彼にも言われてますのでなるべく短くするか本編で説明できるようにしたいですね。ガンバリマスゥー。

アガレス「全く誠意が感じられないので俺から代わりに謝っておく。本当にうちの作者がごめんなさい」

ちゅーこって、それじゃあ意味のない前書きは終わりにして本編どぞー。


第108話 武家の再興…?⑥

翌日の昼頃。なんとか旅人を探しだした俺は旅人に同行を頼んだのだが、二つ返事でOKを貰った。

 

旅人はセイライ島から帰ってきたらしく、今は探索の途中らしい。その最中で一旦一段落したため帰ってきたのだと言う。念の為そんなに長くはかからないというところを彼女に伝えつつ、楓原万葉の居所を聞くことにした。とはいえ楓原万葉は放浪しているため旅人達が知っているかどうかは不明だ。まぁ、聞いてみる価値はあるだろうが。

 

と、いうわけで旅人に聞いてみると、

 

「万葉なら今は塵歌壺の中にいると思う。丁度今好感度欲しくって」

 

好感度云々はよくわからないが、一先ずいるということがわかったので俺は旅人に呼んでくるように頼んだ。すると旅人が少し笑う。

 

「何言ってるのさ。アガレスさんも来るんだよ?」

 

「…冗談だろ?」

 

俺が冷や汗を浮かべながらそう告げると、旅人は俺の服の袖をぐっと掴んだ。不思議と振り解け無い。

 

「ほら、行っくよー」

 

旅人は凄みのある笑顔のまま、俺を伴って塵歌壺の中へと入るのだった。

 

 

 

一時間ほど後、俺と旅人とパイモン、そして楓原万葉の四人は塵歌壺から出てきた。しかしまぁ、旅人の塵歌壺の中は俺のときとは比べ物にならないほど沢山のものが配置してあった。俺が塵歌壺へ入りたくないのは感覚に慣れないから、というだけで別に塵歌壺自体が嫌いなわけではないので、素直に感心したものだ。

 

さて、塵歌壺から出てきた俺は三人を伴って稲妻城の天守閣、その最上階へ赴き眞と影を尋ねた。俺は二人の返事を待ってから三人と共に中へ入ってすぐに諸々の準備を整えてから話を始めた。

 

「さて、今日集まってもらったのは他でもない…」

 

俺は伊達眼鏡をつけて両肘を机の上に立てて両手を口元で組みながら言った。旅人が俺を見て苦笑いを浮かべている。

 

「アガレスさん…どこぞのでなければ帰れおじさんの真似するのはよくないよ」

 

「いや、なんかやりたくなっちゃって…」

 

よし、真面目に話そう。俺と旅人以外の三人がなんのことかわからず首を傾げているようだしな。

 

「改めて真面目な話をさせてもらうが…恐らくことの顛末を知らないであろう旅人とパイモン、そして万葉に説明すると…」

 

俺は眞と影を除いた三人に辻斬り事件のことと、俺が遭遇したことの顛末を告げた。

 

「事前情報としてはこんな感じだろう。それでは何故旅人と万葉を呼んだのか、ということだが…」

 

二人が息を呑むのがわかった。

 

「刀を持った武士の太刀筋に、万葉の面影があったからだ。万葉なら何か知っているかもしれないし、旅人は見識も広いだろうと思ってな」

 

「拙者に似た太刀筋、でござるか」

 

万葉は顎に手を当て考え込むような姿勢になる。その間に、俺は眞と影に聞きたいことを聞くことにした。

 

「眞、影。辻斬りの被害者達の遺体はどうなっていた?一日経ったんだし、報告はあったんだろ?」

 

俺の問いに答えたのは影だった。

 

「はい、全て塵になっていたようです。跡形もなく。それと、失踪者の話を覚えていますよね?収集家の長門という者の死体が稲妻城付近の海辺で見つかりました。そしてもう一人の失踪者である天目優也も既に死体でした。辻斬りの最初の被害者だそうです」

 

影の言葉で、俺は大体わかったので、「ありがとう」とだけ言った。

 

さて、何がわかったのかというとあの刀は持ち主を取っ替え引っ替えしたのだろう、ということだ。天領奉行の調べで失踪者が二人いてコレクターの長門という人物と鍛冶師の天目優也の間に何らかのトラブルがあることが判明し、長門のコレクションの中で刀掛台に本来あるはずの刀が無くなっていたことから刀が盗まれていたことが判明している。

 

だが、奪ったはずの天目優也は既に死んでいた。しかも最初の被害者として。だがその死体は塵となって消えた。そして今までの辻斬りの被害者も全て、である。

 

意思を持っているのなら呼称は妖刀でいいだろう。

 

「まぁつまり、宿主を取っ替え引っ替えしたこの妖刀は自身に最も合った宿主を探していたんだろう。加えて言うなら場所を変えていたのも特殊な場所に対応できる人間に出会いたかったのかもな」

 

武勲を挙げた人間を狙うのもそういう理由であるだろう。というか絶対にそうだ。

 

と、深い思考から戻ってきた万葉が俺の名を呼ぶ。俺は返事をすると万葉を見た。

 

「拙者の太刀筋は楓原家に伝わるもの。しかし拙者以外に今や楓原家の血筋の者はおらず、拙者以外に使える者はいないはずでござるよ」

 

なるほど、となればやはりあの妖刀は一心伝の鍛冶師が作ったものだろう。恐らくその鍛冶師の全てをつぎ込み、刀が意思を持ってしまったのだろう。余程強い意志を込めたのだろうが、果たしてどのような意思を込めたのだろうか?

 

行動からしてまず間違いなく将軍に関係することだと思うし、強さを求めていることから稲妻の転覆、なんてのもあるかもしれない。

 

その後も皆を交えて色々と話してみたのだが、思うような収穫はなかった。そんな中、俺はぼそっと呟く。

 

「…やっぱ本人…?本刀に直接聞くしか無いよな…」

 

影に止められたが、正直、絶対に大丈夫だという確信があるのだ。まずもって妖刀のほとんどは人間の残留思念だ。無論、残留思念の力などたかが知れているし、時と共にその意思はどんどん薄れていく。そして何より、宿主を変えているのだ。自我を塗り替える時に必ず残留思念の謂わば魂のようなものは削れていく。今までに8人もの人間の意識を塗り替えてきたのだから当然、残留思念の力は弱まっていくだろう。

 

「…アガレス」

 

と、再び影が止めに来た。

 

「影、これ以上話し合っても埒が明かないのはわかるだろ?この中だろ適任なのは俺しかいないし、勝算しかない。というかこうするしかないのは影もわかるだろ?」

 

その辺の人間に持たせるわけにもいかないし、いつ残留思念が消えてしまうかわからないのだ。こうするしかないのは当然だろう。

 

影は物凄く渋い表情を浮かべ、俺の前から退いてくれた。俺は少し微笑むと、

 

「すまないな、影。今度何か一つだけ願いを聞いてやろう」

 

アフターケアはこれでいいとして、俺は窓際の岩元素の塊を砕く。中からは相変わらず禍々しいオーラを出す妖刀が出てきた。俺は深呼吸をしてからその刀を手に持った。

 

直後、俺の中に何かが流れ込んでくる感覚があった。そして俺の自我をも侵食し始めたが、それは失敗に終わったようで俺の自我がなくなるようなことはなかった。

 

代わりに、いつぞや眞の精神の世界へ入ったような感覚に襲われた。

 

俺の眼前には、あの妖刀がある。だが現実のものと異なり禍々しいオーラなどは微塵も感じない。俺は他になにかないか確認するが特になにもない。どこまでも荒野のような空間だがそれでいて広さは四畳半程度だろう。

 

「お前の自我を飲み込もうとしたが、飲み込まれたのは俺の方だったらしい」

 

「まぁ、神に挑んだんだから当然こうなるだろう。妖刀という人ならざる者になったとはいえ早々簡単に神を超えられては困るのでね」

 

妖刀はどうやっているのかわからないが声を発し、俺がそれに返答すると「なるほど、道理だな」と少し笑ったような雰囲気を出した。

 

「今改めて対峙してわかったが、お前もう消えるだろ?何故人を操り、辻斬りなどしたんだ?」

 

妖刀が心做しか震え始めた。そのまま、妖刀は覇気のある声を上げる。

 

「楓原家が没落したのは、俺がスネージナヤへ逃亡したからだ───」

 

妖刀は以下のことを語る。

 

楓原家は将軍から指定した刀の鍛刀を行えとの命を受け、期限までに完成させられず、加えてその際責任者だった自分が逃げ出してしまい、楓原家はそれで没落したのだという噂を聞いた彼は自責の念に追われるままにその全身全霊を費やし、文字通り身を粉にして自身の最高傑作を作ることに成功した。だが鍛冶師自体はこの刀を造った直後に死亡してしまう。しかし死亡した鍛冶師の意思が宿るようにして刀は妖刀となり、ある一つの目的のためにスネージナヤから稲妻まで渡ってきていたようだ。

 

その目的は唯一つ。楓原家を没落へ追いやった他の雷電五箇伝、ひいては幕府に復讐することだった。

 

しかしそうかなるほど、と俺は一人納得した。道理で色々な戦場や人間を取っ替え引っ替えするわけだ。自分の意思を継いでくれる存在を探していたのだろう。戦時中に辻斬りがなかったのは、恐らくだがファデュイの誰かが手にしていたのだろう。

 

俺は話し終わった妖刀へ告げてやる。

 

「お前に一つ教えてやるとすれば、時間はかかるだろうが楓原家は再興されるだろう」

 

「…何?まだ末裔でもいるというのか」

 

「ああ。楓原万葉という少年がいる」

 

俺がそう言うと、妖刀が少し静かになった。先程まで震えていたのにその震えも止まっている。俺は妖刀の言葉を待っていたが、不意に彼は面白いことを言った。

 

「…お前の口を、貸してほしい」

 

「万葉と話したいのか。良かろう」

 

俺は顔の主導権を彼に渡す。

 

さて、どんな話をしてくれるのかな?

 

〜〜〜〜

 

稲妻城天守閣最上階にある雷電将軍専用の執務室にて、眞、影、旅人とパイモン、そして楓原万葉の五人は立ち竦むアガレスの様子を見守っていたが、不意にアガレスの口元が動く。

 

「───楓原万葉殿はいるだろうか…?」

 

普段とは少し違った口調に、影が直様手に持っている薙刀を振るおうとしたが、眞がそれをすぐに制した。

 

楓原万葉が一歩前に出て口を開いた。

 

「如何にも拙者が楓原万葉と申す者でござる」

 

アガレスの表情だけが驚きに染まった。勿論、アガレスの首から下には何ら変化はない。

 

「そうか…貴殿が…」

 

アガレス、こと妖刀はまず自身の身元を明かし、その上で楓原万葉に自身の目的を話した。楓原万葉は真剣な表情で、

 

「その目的が果たされることはないでござる。楓原家の思想である一心伝は使い手と刀が共存しているもの。目的を達成するために使い手を使い捨てては、本末転倒というものであろう。そして、アガレス殿の言っていたとおり、残された力も時間も、お主にはさほどない」

 

アガレスに憑依する妖刀の意思はその時点で自身の愚かさと、眼前の少年の凄さに気が付き、フッと笑った。

 

「楓原万葉殿、次期楓原家当主へ、俺の力を託す。アガレス殿、左腕を」

 

アガレスの左腕が少しずつ動き、楓原万葉の眼前へ差し出される。楓原万葉は首肯いてその手を握った。

 

「俺の刀、そして俺の力を貴殿に託す。それを以て貴殿に受け継がれていないであろう剣術と、鍛冶技術の研究材料となろう」

 

アガレスの右手にある刀から力が楓原万葉へ流入していく。

 

(…感謝する、楓原万葉殿…そして、アガレス殿───御当主様、今、そちらへ参ります)

 

楓原万葉の耳にそんな呟きが届いたと同時に、力の流入が途絶えた。

 

「…終わったか」

 

アガレスが再び話し始めたかと思えば、今度はしっかりアガレスの口調だった。楓原万葉は首肯き、アガレスの右手にある刀を見た。

 

「アガレス殿、刀を一度、持たせてはくれぬだろうか」

 

アガレスは構わんぞ、と言い楓原万葉に鞘に収めた状態で刀を渡した。楓原万葉はその刀を受け取ると、一度だけ抜き放ち、その刀身を見つめた。

 

「……」

 

彼はその刀身を見て物思いに耽っているようだったが、やがて刀を鞘に仕舞い、アガレスに同じようにして返した。受け取ったアガレスは拍子抜けしたような表情を浮かべた。楓原万葉はそのままアガレス、そして影と眞を見て微笑む。

 

「楓原家の再興に関して、拙者は正直、あまり好ましくは思えなかった」

 

だが、と楓原万葉は続けた。

 

「拙者は楓原家、ひいては一心伝の再興を目指すでござる。そしてそれは、幕府の庇護下ではなく、自分自身の力で、これからの旅の中で研鑽していくつもりでござるよ」

 

「だがわからんな。何故刀を俺に?」

 

楓原家の再興に関しては確かに、楓原万葉らしい回答だとアガレスは考えていた。だがそれなら刀は必須アイテムだろう、とアガレスは考えているのである。だが、楓原万葉の回答に、アガレスはなるほど、と納得することになった。

 

「拙者は、先程も言ったとおり旅の中で研鑽していくつもりでござる。だから拙者にはその刀は、無用の長物でござるよ。それに…刀をアガレス殿が持っていたほうが、拙者も嬉しいのでござる。持っていてはくれぬだろうか?」

 

楓原万葉の言葉に、アガレスはポリポリと恥ずかしそうに頬を掻くと首肯いた。

 

「承知した。そういうことなら、預かっておこう」

 

楓原万葉は再び微笑むと、

 

「恩に着る、アガレス殿」

 

とそう告げるのだった。

 

 

 

稲妻において、然程数は多くないが、家の再興と新興が行われた。昔からの名家の末裔や武勲を上げた信用できる者にのみこの機会が与えられた結果、以前より良い体制で幕府が回っていくこととなる。

 

〜〜〜〜

 

楓原万葉と旅人達が去ってから。

 

「…ただの鍛冶師にしてはやるな。長い間思念体のような存在だったから魂の扱いがある程度上達したものと見える」

 

俺はそう呟く。いや、呟かずにはいられなかった。

 

「…?」

 

影が俺の隣で首を傾げている。

 

「あの妖刀の思念体は自我が消えたあとで、俺の魂を補完したらしい」

 

「本当ですか?そのようなことをしたら魂が歪に…」

 

「ああ。だが一度は魂だけで接触したんだ。俺の状態がわかったんだろう。呪いによって蝕まれていた俺の魂を薄くコーティングするように彼の魂の残滓が広がっている。それなりに寿命も伸びたかもな」

 

ありがたいことだが、そこまでされる謂れはないのだが。などと、思っていると影が嬉しそうに微笑んでいる。どうしたのかを聞くと、影は俺へ視線を向けながら言う。

 

「いいえ、単純に貴方と共にいられる時間が増えたので、嬉しいだけです」

 

「そ、そうか…」

 

眞は天領奉行への報告でこの部屋にはいない。なので、俺達のこの空気にツッコミをしてくれる人はいなかった。

 

俺はそのまま暫く影と共に過ごすのだった。




武家の再興編は今回で最後でした。最後だけちょっと長くなってしまいましたが…。

さて、次回はデートさせます。何がとは言いませんが、デートさせます(断言)

…これでしないとかさせてないとかなったらどうしよう。一応保険かけます。多分恐らくきっともしかしたらもしかする可能性はゼロではない感じでデートしたりしなかったりするかもしれないです。
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