いや、嘘というより思ったより前フリ長くなりすぎたのでこういうことになりました。まぁ、次回で終わるかな…?まぁ、多分かなり長めになると思います。
それと、更新めっちゃ遅れました。活動報告でも言いましたがゲームとアニメが私を離してくれませんでした、はい。
稲妻城内にある将軍専用の執務室にて。
「この案件は…なるほど、認可が必要だったのね。内容的には面白いし、認可していいんじゃないかしら?」
「いいえ、計画に具体性がありませんし、資金の調達源も不明です。不確定要素が多いと今の疲労している稲妻には耐えられません。却下ですよ却下」
部屋の中では眞が下から回された書類に目を通し、そしてそれを影が諫める、ということが行われている。普段の執務からしてこんな感じなのである。
「それにしても、本日は書類が少ないようですね。眞、なにかあったのですか?」
「さぁ、知らないわよ」
影は内心で稲妻でなにが起きているのかくらいはなんとか把握してほしいとは思いつつも、自分が困っているわけではないのでよしとすることにしている。今の彼女達には心強い助言役がいるためである。
そんな時、執務室の扉が開く。二人は執務をする手を止め入り口の扉がある方向を見るなり目を輝かせた。特に影が、ではあるが。
「邪魔するぞ」
入ってきた人物がそう言うと、眞と影は微笑んだ。
「ええ、アガレス。ここ最近は忙しかったみたいだけれど大丈夫なの?」
眞が入ってきた人物───アガレスにそう問いかけると、アガレスは側頭部をポリポリと人差し指で掻きながら言った。
「まぁな…モンドにいたらいたで俺に楽しい思いをさせようと数人が俺を連れ回すし、ずっと一緒にいるし…璃月にいたらいたでこれまた同じように連れ回されるし…なんだかんだ俺の事情を知っている知り合いが一番少ないのが稲妻だからな…」
アガレスは困ったように笑って更に続けた。
「加えて、復活してからはモンドに長く住んでいたが精々が3年程度…やっぱり、稲妻に来て改めて思うよ。俺の趣味嗜好はやっぱ、稲妻の風情に近いものがあるし心が結構休まるんだよな…」
眞と影は自分の国が心地よいと言ってもらえたからか、とても嬉しそうな雰囲気を醸し出していた。
「それで、なんだが…そう、今日は別にそういうことを言いに来たわけではなかった」
コホン、とアガレスは咳払いをし、影を見る。見られた当の本人はキョトンとして首を傾げていたのだが次に続いたアガレスの言葉にギョッとせずにはいられなかった。
「その、俺と一緒に来てほしいところがあってな…要するに、『デート』というやつなんだが」
アガレスと影は一応、互いが互いを想い合っているわけだし、そのことをお互いが知らないというわけでもない。それにデートくらいなら、一度か二度直近であるのだ。ただ、それとこれとは別問題で、アガレスは兎にも角にも緊張している。
アガレスには精神的なモードの切り替えが存在する。普段、というより基本的には真面目な感じなのだが、動揺したりすると物凄く初々しい男子のようになる。今回は自分から影を異性の、それも大切な存在と意識しているので完全に後者のモードである。そのため、アガレスの頬は無論紅潮している。
「…ふぇ?」
言われた影は影でアガレスからの突然のお誘いに顔を真っ赤にした。無論、影は普段から、それこそ数百年間もアガレスのことを想い続けていたのでアガレスのように自覚云々の話ではない。ただ、恋愛的なアクションに関して言えば、今までは影からほぼ全てのアクションを起こしていたと言える。それがここに来てアガレスからのお誘いが来たのである。それも相手が顔を真っ赤にしている辺り完全に自分のことを大切な存在だと想ってくれていることが伝わってくる。それはもう、影も顔を赤くするのは当然であった。
さて、同・執務室には眞もいる。その眞は、というとプルプルと震えて執務机に突っ伏していた。
(何よこの恋愛初心者達…甘酸っぱいわ…口から砂糖吐き出しそう)
別の意味で顔を赤くしている眞はさておき、アガレスの問に影は返答した。
「あ、その…まだ執務が残っていまして…かなり遅くなってしまうのですが…」
言われてからアガレスは時計を見る。現在時刻は午前9時といったところだろう。アガレスはそれを確認してから、
「よし、俺も手伝おう。今日の分はそんなにないだろ?」
こんなこともあろうかと、アガレスは本日分の執務の量を調節していた。天領奉行、勘定奉行、社奉行全てを訪問して予め出来る仕事を全て終わらせていたのである。そのため、眞と影も書類の少なさに先程驚いていたのである。
そういったアガレスの申し出に、影は少し申し訳無さそうな雰囲気を出したが、同時にアガレスと一緒に出かけたい、という意思もあり暫しの間葛藤した。
(これはアレですね…恋愛小説の知識を借りるならば…)
影はゴクリと生唾を飲むと口を開いた。
「お気持ちはありがたいですが…私、この体でしか払えませんし…」
アガレスの視線が物凄く険しいものになる。そしてその視線は影向山の方向へ向けられていた。影は思わず首を傾げる。
「アガレス?」
「いや、なんでもない。それより影、軽々しく体で支払うとか言わないほうがいい。意味を知らないなら尚更だ」
「ですが神子が『あのアガレス殿とて
アガレスは「アホか!!喜ぶけどさァ!!」と叫びたくなるのを必死に抑え込み、できるだけ笑顔で影に話しかける。ちなみに、めちゃくちゃ引き攣った笑みである。
「意味は知っているのか?」
「…?」
「わかってねぇんじゃねぇかよやっぱり…」
言いつつ、はぁぁぁと特大の溜息を一つついたアガレスは一先ず執務に手を付け始めた。影は疑問に思いながらも自分も同じように執務を再開した。
「なぁ眞」
アガレスが手元の書類に視線を落としながら眞を呼ぶ。眞は軽く返事を返した。
「…『体で支払う』ことの意味とか、色々教えてやれよ」
アガレスがそう言ったのを皮切りとして二人の会話は徐々にヒートアップしていく。
「…どうして私が?」
「当たり前だろ、お姉ちゃんだろうが」
「あら、アガレスから教えればいいじゃない」
「なんで俺だよ」
「彼氏でしょ」
「否定はしないがそういうのは姉の役目だろう。ほら、男の俺が教えると色々と問題もあるだろうが」
「問題?一体どんな問題があるのかしら?」
「お前…俺の口から言わせる気満々だな?」
「あら、駄目かしら?」
「当たり前だ」
二人の会話は留まることを知らず、しかし手元だけは常に動かしていた。影は集中していたため特に気を留めていなかったため二人の会話は完全に右から左へ受け流している。
30分ほど経ち、眞とアガレス二人分の執務が終わっても話は尽きなかった。
「だからお前から教えてやれよ」
「貴方からの方が影だって喜ぶでしょ」
「そのまま勢い余ったらどうするつもりだ?」
「別にいいじゃない。おめでたよおめでた」
「そういうわけにもいかないだろうが。そういうのはもっと仲を深めてからだな…」
「恋愛初心者が何言ってるのよ。ていうか仲なら十分深まってるじゃない」
「あくまでも友達以上恋人未満だろ?それじゃあ意味ないじゃないか」
「それはどうかしらね〜」
「なんだその含み笑いは」
さて、実は15分ほど前に既に執務を終わらせていた影はずっと二人の会話が終わるのを待っていた。いたのだが…影が震え始め、ついに爆発した。
「ああもうっ!!いい加減にしてください!いつまで言い争っているんですか!」
「「だって眞(アガレス)が素直じゃないから」」
「もうっ、ふたりともですふたりとも!」
眞とアガレスはお互いに顔を背けあって頬を膨らませている。勿論、影としても二人が仲良しなのはいいことだがしかし彼女…?である自分を放っておいてそちらでよろしくされるのは気分は良くないわけである。
と、そんな中アガレスは妙案を思いついたとばかりにニヤリと笑った。無論、眞は目を背けているのでその表情を見逃している。
「俺より一緒にいる時間の長い眞の方が適任だよなぁ…影も気になるだろ?体で支払うことの意味」
アガレスの表情には先程までの不敵な笑みはあらず、至って爽やかな笑みだった。まぁ、そっちのほうが不気味だが。
影はアガレスから言われた言葉に特に何も考えずに首肯く。それを一拍遅れて見た眞はしまった、という表情を浮かべた。
「残念だ、うん、実に。時間さえあれば教えてあげられたのに。なぁ、影、俺は時間があまりないから眞からじっくり教わってくれ」
「はい、よろしくおねがいしますね、眞」
影は微笑みながら眞を見る。そしてアガレスは不敵な笑みを浮かべて眞を見ている。見つめられた眞は、というと観念したように首肯いた。
「さて、これで気持ちよくデートできるというものだ」
「アガレス、私の犠牲の上に成り立ってるってことを忘れないでね?」
「当たり前だろ」
アガレスは立ち上がると大きく伸びをして影に手を差し伸べた。影はアガレスに微笑みを向けながら立ち上がる。
「それじゃまたな、眞」
「ええ、楽しんできてね」
アガレスと影は首肯くと眞に小さく手を振ってから執務室を出て行った。残された眞は、というとふぅ、と息を吐く。
「書類の量が少ないからもしかして、とは思っていたけれど…まさか本当にデートに誘ってくるなんて思わなかったわね。ふふ、神子と一緒に事前に影に色々仕込んだ甲斐があったというものだわ」
勿論、書類の量が少ないためアガレスが何らかのアクションを起こすのではないかと予想したのは眞だが、影に色々と教え込みそれをまるで知らないように振る舞うことを提案したのは八重神子である。
「影…頑張ってねっ」
自身の愛する妹が去っていった方向を見ながら、眞は握り拳を作って応援するのだった。