忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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と、いうわけでしっかり真面目なお話です。

バイト関連でバタバタしてたらなんかハロウィンだった。はっぴぃはろうぃん(白目)


第112話 旅の再開

層岩巨淵地下鉱区。

 

「…まだ見つからないか?」

 

「申し訳ございません。まだ…」

 

「…そうか。捜索を続行しろ」

 

洞窟内部に設置された拠点で、足を組むファデュイの男がそう告げる。

 

「総隊長…これ以上は我々の身にも危険が及ぶ可能性が───」

 

ダンッ!と足を組んでいた男は眼前の机に拳を打ち付けた。付近の兵士、そして側近と思しき男がビクッと肩を震わせた。

 

「だからどうした。我々は今最悪の状況の中にいる。撤退を許されず、我らの味方も少しずつ謎の魔物に食われるか気が狂うかして行方不明になっている。俺は総隊長としてお前達を生き残らせる義務がある」

 

「し、しかし」

 

尚も食い下がる側近に、総隊長と呼ばれた男は天を仰ぎながら力なく告げる。

 

「…生存者の捜索は、出来る限り続ける。だが、期限は一週間だ…ここらが妥協点だろう」

 

側近の男はただ、平伏した。

 

「捜索を続行しろ。ただし、『黒泥』の半径10m以内には絶対に近付くな」

 

男は、そう命令を下した。否、そうするしかないのだ。

 

 

 

「殿下、あの者達は…」

 

「いいんだ。どちらにせよ、彼等は苦しむしかないからね」

 

別の場所、地下鉱区の最奥にて異形の存在と青年が並んで低地にいるヒルチャールと騎士のような風貌の怪物を見ていた。

 

そしてゆっくりと首を回して後ろを見る。そこにはピクリとも動かないヒルチャールの姿があった。

 

「本当なら、彼等だって俺が護るべき存在だった」

 

青年の表情が苦痛に歪む。

 

「わかっています。殿下、ですから…」

 

「ああ、うん。これは俺自身のエゴのようなものだからね。大丈夫、わかっている。神座を下すその時まで、俺は歩みを止めるつもりはないよ」

 

青年は立ち上がり、その場を去る。怪物もそれに続いた。ヒルチャール達の足元には、白い花が供えられていた。

 

〜〜〜〜

 

ここ最近は色々と忙しかった俺だが…忙しかったと言ってもデートしたり二日酔いだったりそのことでノエルにめちゃくちゃ怒られたり…うん、全然忙しくないや。

 

とにかく、旅人が稲妻地域の探索を完全に終わらせた、とのことで璃月に戻ってきていた。

 

「あ、旅人さんにパイモンさん、それとアガレスさん丁度いいところに!」

 

璃月の冒険者協会の前を通りがかった時にキャサリンに呼び止められた。俺と旅人、そしてパイモンは一斉にキャサリンのいる方向へ目を向けた。キャサリンは微笑みながらこちらへ手を振っていた。

 

「層岩巨淵が再び稼働するから冒険者が調査に駆り出されるって?」

 

俺はキャサリンの言葉をオウム返しした。そう言えば救民団の裏筋の情報網にそんな話があった気がするな。今の層岩巨淵は宝盗団とファデュイで溢れ返っている無法地帯。貴重な鉱石やら地質調査やらで無法者や他国の密偵、そして魔物共が跋扈しているのだ。

 

「それで?なんたってそんなとこに」

 

「はい、七星からの正式な依頼です。層岩巨淵の調査をするに当たって人員を派遣して欲しいみたいで、実力のある冒険者さんに声をかけているんですよ」

 

キャサリンが少し微笑みながら旅人とパイモンを見た。パイモンは旅人を見る。

 

「なぁ旅人、せっかくだし行ってみないか?色々お宝とかもあるんじゃないか!!」

 

「パイモンはお宝大好きだよね。まぁいいけど」

 

「ありがとうございます!では───」

 

キャサリンと旅人が色々と日程を確認しているのを横目で確認しつつ、俺は人目のつかない冒険者協会の裏手に移動する。

 

「───あら、やっぱ気付いてたのね」

 

「そういうお前は一々気配を消すのはやめとけよ全く」

 

俺の対面の柱にもたれかかるようにして現れたのは夜蘭だった。

 

「なんだかんだ、いっつも俺の伝令役的な感じだよな」

 

「あら、嬉しくないの?」

 

「まぁ、知らないやつよりかは知り合いのほうがいい。それで?」

 

俺は続きを促すように顎をしゃくる。夜蘭は俺に一枚の書類を渡してきた。手渡された書類に俺は目を通す。

 

…ほう?

 

「向こうに悟られてはいないんだろ?」

 

「ええ、勿論。私よ?」

 

それもそうか、と俺は言葉を飲み込み、書類の全容を把握して炎元素で紙を燃やす。少し焦げ臭くなってしまうが風元素で上空へ匂いを飛ばしたのであまり大差ないだろう。

 

「これは俺がなんとかしよう。どうせ俺も旅人についていく羽目になるからな。丁度いいだろう」

 

「ええ、頼むわね。それじゃあ、私はこれで」

 

俺は軽く返事をすると踵を返して冒険者協会の正面へと戻った。丁度キャサリンと旅人達の話が終わったところだった。

 

旅人がこちらを見る。それにつられてキャサリンもこちらを向いて、

 

「そうでした、アガレスさん。アガレスさんには別件でお願いしたいことがありまして…」

 

そう言った。

 

「それはつまり冒険者協会から救民団団長への正式な依頼ととっていいのか?」

 

キャサリンが首肯いたので、俺は話を聞くことにした。となると旅人が一緒は不味いか、とそう思って旅人を見ると手を振って去っていた。無用な心配だったようだ。

 

「では、アガレスさん、冒険者協会から正式に依頼致します───」

 

キャサリンが俺をまっすぐ見据えて言う。

 

「───層岩巨淵に派遣する冒険者の助力を要請します」

 

「いいだろう、その依頼、救民団団長アガレスが承った」

 

まぁ、つまるところは旅人の護衛、というところか。護るのは割と得意分野だからありがたい。

 

俺はその日の内に層岩巨淵へ向かって下見をした。脅威になりそうな存在は確認できなかったが、七星の施したと思われる封印の術式が見える。地下鉱区の調査にはアレをどうにかしないといけないわけだが…はてさてどうするのだろうか?

 

「普通に凝光に許可とればいいか」

 

と、いうことで群玉閣にて。

 

「いや、駄目に決まってるじゃない」

 

と、普通に返されてしまった。何がいけなかったのだろうか?俺の魅力が足りなかったのだろうか?などと思っていると凝光がピクピクと頬を引き攣らせていた。

 

「えー!!」

 

「えー!!じゃないわよ。駄目なものは駄目よ」

 

「だがそうなると地下鉱区の調査はできないだろう?どうするつもりだ?」

 

俺が冗談をさておいてそう聞くと凝光ははぁ、と溜息を一つついてから告げる。

 

「今回は表の部分だけよ。層岩巨淵の現在の環境や表層で取れる鉱物資源に変遷がないかどうか、それを確認するのよ。いい加減、私も彼処を放置しておくわけにもいかないし」

 

放置しておくわけにもいかない、か。なにやら裏がありそうだな。夜蘭に言われた案件も含めて調べたほうがいいな。

 

俺はそのまま同意するように首肯き、

 

「じゃあ地下鉱区の探索はまだ、ということか。正式に探索するなら、俺も呼んでくれ」

 

「ええ、勿論よ。救民団はどんな仕事もこなしてくれるし、使わない手はないから」

 

「ああ、あとは…そうだな、想定外の状況が起きたら無理にでも地下鉱区に行くかもしれないから、よろしく頼むぞ」

 

この発言に関しては完全に保険だ。何があるかわからないので地下鉱区に突入できるようにしておきたいのだ。方法はまぁ封印を詳しく見てみないとわからないが、突入することの許可くらいは取っておいた方が良いだろう、と考えこう告げる。すると凝光は

 

「まぁリスクマネジメントの一貫として貴方に頼むのは全然アリね。突入する際は絶対に私に連絡を入れなさい。それが条件よ」

 

と、凝光は俺に条件を提示してきた。勿論、連絡くらいはバルバトスを通して出来ると思うので首肯いた。

 

「それじゃ、もういいかしら?」

 

「ああ、わざわざ悪いな。時間もないだろうに」

 

俺は去り際に凝光にそう告げた。凝光は煙管を人差し指の先でくるくると回しながら言う。

 

「救民団は七星のお得意様だもの。璃月への貢献度で言えばかなり影響力もあるしね。面会しない手はないわよ」

 

俺は「それもそうか」とだけ呟いて群玉閣を去るのだった。

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