忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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前半は旅人の話にしたかったけどちょっと旅人の話が続きます。思ったより長くなっちったテヘペロ。


第114話 沐寧と志璇のお話

アガレスが層岩巨淵へやってくる数刻前。

 

層岩巨淵へとはるばるやって来た私とパイモンは鉱夫の玥輝さんからヒルチャールのことを聞いて『アビス教団』が関わっていると予想したため、その調査を引き受けることとなった。

 

その後、近くにいた沐寧さんに層岩巨淵の状況を聞いたところ、七星陣法という璃月七星がかけた陣法があるらしい。その弱点である『盤鍵』付近の岩元素重合体が異常増殖をしており、彼の予想では下にいる『もの』達が外に出ることを渇望しているらしい。ただ、増えても特に反応は起こさないので近付いてほしくはないようだ。

 

詳しいことは昔ここ層岩巨淵で鉱夫の仕事もしていた志璇という冒険者に聞いて欲しいとのことだったので彼女の下に向かうこととなった。その際に沐寧から貰ったメモにはたった数行の中に『厳禁』という文言が八回も出てきている。なんというか結構マメな人なのかもしれない。

 

私とパイモンはそのまま志璇がいるという場所へ向かった。

 

「それにしても、ここは璃月だけど璃月っぽくないよな。なんていうか、岩神の庇護がないような感じがすると思わないか旅人?」

 

「うんうん、ちょっとわかる。雰囲気が他の璃月の場所とは一線を画しているというか…アガレスさんなら何か知ってるかもね」

 

「それより岩神に聞いてみるほうが早いと思うぞ…」

 

パイモンと層岩巨淵に関して話しながら辺りを見回すと、陣法の要である『盤鍵』付近に彼女を見つけた。すると彼女もこちらを見つけ、目を見開いて驚いた様子を見せた。

 

「えっ、あなたは…こんにちは!」

 

驚いた様子から一転して嬉しそうにしながら私を見て挨拶をした。私とパイモンは挨拶を返しつつ沐寧から貰ったメモを渡そうとした。のだけど、彼女すぐに首を横に降って私とパイモンをキラキラした目で見てくる。

 

「あなたのことは勿論存じ上げてますよ!!璃月港を襲ったファデュイの執行官を一人で下し、璃月の未曾有の危機を救った大英雄様ですよね!!」

 

「あ、あはは…志璇ってかなり大袈裟なんだな…」

 

パイモンが呆れたようにそう言ったのを話の区切りとして私は沐寧から貰ったメモを今度こそ見せた。すると志璇は困ったような顔をする。

 

「ああ、彼から貰ったメモですか…どうせ碌でもないことがいっぱい書いてあるんでしょう。『厳禁』とか『禁止』とか一杯書いてあるに違いありません」

 

あ、合ってる!と私とパイモンは顔を見合わせた。そんな私達の様子を見て志璇はやれやれと肩を竦めた。

 

「彼はいつも上から目線だし、メモを書いて小さな手順を積み重ねて目的を達成するのが好きみたいなんです…ま、私は全然どうでもいいんですけど」

 

「どうでもいいのかよ…沐寧、ちょっと可哀想だぞ」

 

「とにかく!名高い旅人さんとその最高の仲間パイモン、そしてアガレス様の名前は璃月中に広まってますし、全員が覚えていますよ!!」

 

「さすが私」

 

「えへへっ、オイラのことも広まってるのは嬉しいぞ…!これは街中で料理を貰えたりするんじゃないか!」

 

パイモンの発言はともかくとして…志璇の発言に少し気になるところがあった。

 

「あの、志璇…さっき、アガレスさんのことを『様』付けで呼んでた?」

 

「はい、そうですけど」

 

「なんで?」

 

「モンド発祥のアガレスファンクラブなるものがあるみたいで…璃月にも広がっているんですよ。私も一応会員なんですけど…No.259です。一応端くれですね」

 

私は戦慄し目眩を感じた。まさか私の作ったアガレスファンクラブがそんな事になっていたなんて。ファンクラブ会員No.1かつクラブの会長として勢力状況は把握しておかねば…。

 

「何人くらい会員がいるとか、そういう話は聞いたことある?」

 

「え〜っと…最近は稲妻にも波及しているみたいで、会員がつい最近500人超えたって」

 

「そ、そうなんだ。ちなみに会長が誰か知ってる?」

 

私は興味本位で志璇に聞いてみたのだけど、志璇は鼻息を荒くして説明をしてくれた。

 

「知りません!しかしモンドにいる会員番号一桁の方々が知っているという噂をお聞きしています!会長はオフ会はおろかファンクラブの集会にすら現れず最早都市伝説化しています!しかし、会員番号No.1という名誉ある番号を貰っている会長のことですからそれはもうアガレス様に対する物凄い推し愛が───」

 

そのまま暫く志璇の話を聞く羽目になったのだけれど私も語り出したくてうずうずするほどだ。そのうち彼女には私の正体を明かしてもいいと思っている。

 

「あ、すみません私ったらつい熱くなりすぎてしまいまして…」

 

わかる。

 

「おい旅人…そこはお前が諌めないと駄目だぞ」

 

「はいはい、わかってるわかってる」

 

「話が逸れてしまいましたが、新米冒険者は皆先輩の探検物語を聞いて憧れるんですよ!ドラゴンスパインなんかは特に…」

 

「それほどでもない」

 

「お前褒め言葉に弱すぎだろ!?」

 

志璇はそのまま私の伝説や講談に関して色々と聞かせてくれた。勿論数分後にはまた喋りすぎて謝られる羽目になるのだけど。

 

「それで、先輩がここへ来たのは七星からの依頼ということになるんですかね?沐寧が他になにか言っていたら良かったんですけど…」

 

志璇がそう言ったので私とパイモンは沐寧から言われた『盤鍵』に近付かないようにすることと層岩巨淵の地下には何もないこと、そして志璇は助けてくれないことの3つを伝えた。

 

「あんな言い方してオイラ達を驚かそうだなんて百年は早いぞ!」

 

すると志璇は少しだけ声を上げて笑った。

 

「あはは、彼は別に先輩達を驚かそうだなんて全く思ってないと思いますよ」

 

「え?いやいや、絶対あれは驚かそうとしてるやつの話し方だったぞ!!」

 

パイモンが志璇の言葉にそう反論した。実際、私もそう思っている。けれど志璇は首を横に振った。

 

「沐寧はもしかして自分の身分を名乗らなかったんじゃないですか?」

 

確かに言われてないので首肯く。すると志璇は苦笑した。

 

「彼は一応ああ見えて総務司の責任者ですからね。そのような立場にある人物が公然と私達の手助けはできません」

 

「たしかにな…沐寧がオイラ達の手助けをしたって知ったら、きっと総務司をクビにされちゃうぞ」

 

「それどころか反逆罪で投獄ですね〜」

 

「ひ、ひぃっ…怖いこと言うなよ…」

 

パイモンが志璇の冗談…には聞こえない冗談に怯えている。

 

「まぁとにかくですね、彼の言った『しないで』を『して』に置き換えると、彼が遠回しに私達の手助けをしてくれていることがわかると思います」

 

「ひねくれてるやつだな…オイラちょっと苦手だぞ」

 

復活したパイモンが沐寧のことをそう評した。私は志璇にメモについて尋ねた。すると志璇は「説明し忘れていましたね…」と一言謝った上で私に説明をしてくれた。

 

「それは層岩巨淵に自由に出入りができるという意味のものですよ。勿論、七星が介入してきたら駄目になりますけど」

 

言われて私とパイモンは改めてメモをまじまじと見る。このメモ…禁則事項が一杯書いてあるとは思っていたけどそんな意味があるなら首肯ける話だった。

 

「それにしても、沐寧のやつ…オイラ達が話を理解できなかったらどうするつもりだったんだよ!今になって腹が立ってきたぞ!」

 

パイモンが空中で地団駄を踏んだ。それに対して私は若干呆れつつ言う。

 

「パイモン、だから志璇のところに行くように沐寧さんが伝えてくれたんだよ」

 

「えっ!?そうなのか?」

 

パイモンが志璇を見る。志璇は首肯き、

 

「冒険者協会から依頼を受けたんですよね?アレは七星からの依頼なんですけど、層岩巨淵から掘り出された『もの』はあまりに異常なので大々的に調査ができないんです。璃月の民を不安にさせる、という指令が出ているんです」

 

「それで部外者の立ち入りが禁止されているんだね」

 

ここへ来た鉱夫達は皆、七星からの認可を貰ってここにいる。冒険者協会での依頼を受けた私とアガレスさんも例外ではないのだけど…。

 

「その点旅人さんをここへ派遣したのは間違いなく七星の指令でしょう。実力も実績も十分な冒険者ですからあらゆる不測の事態にも対応できると見たのかもしれませんね」

 

「そうだったのか…てっきりオイラ達七星に内緒で色々やってるのかと思ってたぞ」

 

パイモンがホッとしたようにそう言った。志璇は「あはは」と笑い、

 

「沐寧が数日に一度報告をしているだけで基本的には現場判断が委ねられているんです」

 

ということはここで何をしても一応は大丈夫、ということになるわけだ。地下に入るために仕方なく、というわけだね。

 

「取り敢えず層岩巨淵に入るにはあの陣法を構成している『盤鍵』を壊せば良いのかな?」

 

と志璇に問いかけると、その前にすることがあるようでそのことの説明をしてくれた。

 

「洞窟は暗いし広いし…しかも層岩巨淵は特殊な環境なので特殊な明かりが必要になります。『流明石』という特別な石で作られた触媒を見つける必要があるんです。神の目の持ち主にしか使えませんが、これがあれば暗闇の中でも問題なく行動できるようになるんです。先輩は神の目がなくても元素力を扱えるので問題ないと思いますけど…」

 

「それで、流明石の触媒ってのは何処にあるんだよ?」

 

パイモンが志璇にそう問いかけ、志璇がそれに答えた。

 

「南方向にある倉庫にあったはずです。安全ではありますが万が一ということもあると思います。その時は思いっきりやっちゃってください」

 

「なんていうか…オイラ、嫌な予感しかしないぞ」

 

「奇遇だね、私も」

 

一先ず私とパイモンは流明石の触媒を手に入れるべく、一旦志璇と別れて南方向にあるという倉庫へと向かうのだった。




アガレスファンクラブの色々書いてたら長くなりました。まぁ次回で旅人サイドは終わると思います。あ、でも詐欺になるかも…詐欺ったらごめんなさい。
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