そしていつも誤字報告に助かっております…。
題名なかった…アハハ…ごめんなさい…。
指輪を回収した俺は一先ず表層へと戻ることにした。旧世界の痕跡をどうするのかダインスレイヴに尋ねてみたが、「消す消さないは今更だろう。それに、ここは常人では辿り着き得ない」とのことだったので放置することにした。勿論、世界に害があるようなら速攻元素爆発で消すことにするが。
「あ、アガレス…」
旅人達が待っている場所へ到着すると、旅人は疲れていたのか少し眠っていたようだった。パイモンが周囲をキョロキョロと見回していた辺り、彼女に危険が迫らないように見張っていたのだろう。
俺はパイモンの頭を少しだけ撫でると、旅人の隣に座る。
「パイモン、後は任せて眠ると良い。今日は洞窟探索ばかりで疲れているだろう?」
「うぅ…ごめんなアガレス…任せるぞ…」
パイモンは余程気疲れしたのか旅人の隣に横たわるとすぐに寝息を立て始めた。二人が眠ってからダインスレイヴは姿を現した。
「…それで、これからどうするつもりだ?」
ダインスレイヴがそう切り出してきた。どう、とは?と思ったが恐らく俺の今後の身の振り方についてだろう。俺は少し顎に手を当て考えてから口を開いた。
「正直まだわからない。昔のことを思い出したからと言って俺自身になにか影響があるかといえばそうでもない」
ただ、と俺は続けた。
「今のままでは再び『終焉』が巻き起こっても自分の身を犠牲にすることしかできない。別の方法を考える必要があるのはわかっている。少し…色々と調べてみねばならないだろうな」
俺のその言葉にダインスレイヴは鼻を鳴らすと、
「…それが貴様の答えか。把握した」
いつぞやと同じ言葉を俺に告げた。
二時間後、結局ダインスレイヴは何処かをほっつき歩いているのか気が付いたら消えていたのだが、代わりに旅人が目覚めキョロキョロと辺りを見回し俺を見ると少し驚いたような表情を浮かべた。
「お目覚めか?生憎辺りは夜ぐらい暗いがな」
「そうだ、私待ってる途中に寝ちゃって…って、パイモンは!?」
旅人が動揺を顕にしながら辺りを再び見回すもすぐに俺を見て何故か見回すのをやめた。
「まぁ、アガレスさんがいるしなんとかなってるよね…」
実際なんとかなってはいるがその考えは危険である。俺とてできないことなど沢山存在しているのだから。
「パイモンならお前の隣で寝てる。ってか、俺がいるからなんとかなると思うのはやめろ」
「どこぞの宗教団体もなんとかできてないもんね」
「その話はやめろ」
一瞬出てきた新米西風騎士達と一部の熱狂的なファンを思い出し、俺は少し精神が磨り減るのを感じた。俺の寿命を出来る限り伸ばすあの計画はどうなったのだろうか。この調子だと普段とあまり変わらないな…はぁ、稲妻に帰りたい。
そのまま旅人と談笑しているとパイモンも起きて三人で談笑を始めた。始めたのだが、直後何処かへ行っていたダインスレイヴが戻ってきた。それも、アビスの使徒が使う転移門から出てきたのである。
ダインスレイヴと俺達はお互いに顔を見合わせ目を見開いたのだが、先に口を開いたのはダインスレイヴだった。
「…なるほど」
「いや、勝手に自己完結するのやめてもらっていいか?」
転移門から出てきたことから察するに彼はアビスの使徒関連でまた動いていたのだろうが、それにしたって一言二言でもいいから説明は欲しいものである。
「…アビスの使徒の痕跡を発見して奴をまたあと一歩のところまで追い詰めたんだが同じように逃げられてな。入ってきたらここに出た、というわけだ」
ダインスレイヴのその説明によって大体の経緯はわかったが肝心のアビスの使徒の行方と目的がわからずじまいだ。まぁそれは追々わかるようになっていくだろう。少なくとも彼等にとって重要なものが層岩巨淵地下鉱区には存在している、ということだ。
旧世界の痕跡に関しては恐らく彼等にとっては不要だろう。ただ、以前空は『神座を下す』と言っていたので何らかの形で利用されることは考えられるだろう。まぁだが戦術的、或いは戦略的価値は低いのが現状だ。俺の指輪のような聖遺物があればまだ話は違ったかもしれないが、彼等は転移門という独自のネットワークを持っている。これも然程価値はないだろう。
前回転移していった際も空には追いつけてはいなかったようなので恐らくあの転移門にはなにか仕掛けがあるのだろう。その仕掛けは勿論予想できないが、彼等と同じ出自のダインスレイヴですら駄目なのだ。俺なんかでは到底解き明かすことはできないだろう。
ただ、同じ転移門に入ったのに違う場所に出るのなら理解できることもある。以前は事前に登録した場所にしか転移できない、との結論だったが点と点を結びつけた転移だとするならばダインスレイヴが別の場所に出た理由の説明ができなくなってしまう。
で、あるなら恐らく中は網目状になっていて出口はランダムなのだろう。先も述べた通りアビスの使徒達にだけ扱えるなにかがあるのだろうが…それはやはりわからない。
そしてダインスレイヴは似たようなことを俺達に説明してくれた。
「なんか、この世界にあるワープポイントみたいだな?」
パイモンがそう言い旅人も首肯く。俺自身、あのワープポイントの原理はよくわからない。以前旅人にワープの仕方を教えてもらったが結局扱うことはできなかった。理由は不明だが、アビスの使徒の使う転移門と原理が似たようなものだとするなら…いや、だとしても推測の域を出ないな。
「どちらにせよアビスの使徒がここにいたという事実は消えない。アビスの使徒がいるからにはここは奴らにとって何らかの価値がある場所なはずだ。それを突き止める必要があるだろう」
腕を組みながらダインスレイヴがそう告げる。旅人はその前に、とばかりに声を上げる。
「それより、改めて自己紹介して」
旅人がそう言うとダインスレイヴは驚いたように目を見開き、少し笑った。
「ふん、まさか覚えているとはな」
俺は思い出したのでダインスレイヴに関してはそれなりに知っている。だからこれから言うこともある程度予想できた。
「俺はかつてカーンルイアにおいて栄光を浴びていた称号を持っていた。しかし今となっては最早皮肉であり、呪いのようなものだ」
昔の彼はその肩書を誇りに思っていたようだが…今となってはなるほど、確かにそう思ってしまうのも無理はないだろう。アンと同郷であるダインスレイヴは祖国にいいイメージを持っているわけがなかったな。
「…宮廷親衛隊隊長『末光の剣』…そして国の滅亡を見届けた者だ。この肩書きを口にしたくない理由など十分すぎるほどに存在している」
ダインスレイヴは組んでいた右腕を上げながらそう告げた。ダインスレイヴがそれきり口を閉ざしかけたので俺は旅人達の代わりに聞きたいことを聞く。
「まぁ旅人、ダインのことはもういいだろう。それより聞くべきはお前の兄とダインの関係についてだ」
俺の記憶がある程度は戻ってきたとはいえ、全部戻ったわけではない。現に空の記憶もダインスレイヴとの記憶も不完全なままなのだ。俺としても気になるし旅人も気になるだろう。俺の問にダインスレイヴは少ししてから答えてくれた。
「…俺と空、そしてかつてアガレスも共に旅をした。だが全員、同じように旅の終点を見つけることができなかった。ある者は絶望し、ある者は渇望し…いや、この話はいい」
ダインスレイヴはコホン、と咳払いをすると再び口を開いた。
「今この瞬間にも『アビス』の目が俺達を映している可能性もある。調査をするなら早めの方がいいだろう」
まぁアビスの奴等の目は何処にでもあるのはその通りだ。加えて俺がここにいるのは表層でやったアビスの邪魔でバレているだろう。
旅人が俺を見た。俺は首肯きダインスレイヴに目を向けた。旅人は一瞬目を瞑るとダインスレイヴに目を向けた。
「今はダインを信じるよ」
旅人にそう言われたダインスレイヴは少し笑った。
「賢明な判断だ。一先ず向こうに焚き火がある。そこから調べてみよう」
少し小高くなったところに炎が見える。なるほど、調べるにはうってつけ、というわけだ。
俺達はそのまま焚き火のある場所へ向かって歩き始めるのだった。
長い…この話長い…っ!!