忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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ああっ、遅れたンゴ…。

バイト忙しくて描く暇ありませんでしたぁ…申しわけねえっす…私としたことが…。


第121話 創神プロジェクト

「アガレスを模倣するプロジェクトだって…!?」

 

パイモンがそう叫ぶように言った。旅人も驚いたような表情をして固まっている。対するダインスレイヴはというと既に過ぎたことだ、とばかりになんでもないことのように告げる。

 

「当時、カーンルイアのみならずスメールでもこのような計画があったと聞いているがこちらは当時の神であるマハールッカデヴァータが早々に阻止したが…カーンルイアにはそのような存在はいないからな」

 

ダインスレイヴは計画の全容を把握してはいなかったようだが、『末光の剣』という高い位にいたためかそれなりに把握していたようで知っていることを教えてくれた。

 

「1000年前からあったこの計画の書類に目を通したことがある。全ての元素を扱える貴様を模倣するために先ず行われたのは元素をその身に宿さぬようにする生物を生み出す実験だ。その過程で生まれたのが…」

 

ヒルチャール、というわけだろう。なるほど、最初に生まれたヒルチャールは元素を持っていなかったわけだが後から倒すと必ず元素粒子が出るようになったのはテイワットに適応した、と考えるのが妥当だろうな。

 

「カーンルイアの科学者共は次に、それぞれの元素を持たせる実験を開始した。そうしてヒルチャールはその数を増やし全世界へ様々な種類の元素を持つ存在が蔓延っていった」

 

ヒルチャールには確かに種類がある。汎ゆる元素形態のヒルチャールが存在している。ここまでは恐らく彼等にとっても順調だったのだろう。だが複数の元素をもたせる段階で問題が起きた。

 

「生物に2つの元素を持たせた場合、すぐにその元素同士が元素反応を引き起こすか、或いは過剰な元素力によって肉体が崩壊している。当時のカーンルイアの技術力ではそれぞれの元素を体内に保管し、作用しないようにする方法を再現することができず、数百年に及ぶプロジェクトとなった」

 

確かに完成していれば強力な個体となっただろうがその場合でも結果は変わらないだろう。カーンルイアの滅亡は避けられず…いや、待てよ?

 

俺の異変に気が付いたのかダインスレイヴの話が止まった。旅人とパイモンもダインスレイヴが止まったことでその視線の先にいる俺を見ていた。

 

「ダインスレイヴ、続きを話してくれて構わない」

 

俺は敢えて答えを言わずに流す。これはあまり旅人にも知ってほしくはないからな。加えてまだ確証は持てていない。勿論、ダインスレイヴが知らないという可能性もあるわけではあるが…。

 

ダインスレイヴは俺の言葉に首肯くと再び話し始めた。

 

「だが500年前、スメールの教令院の学者を引き抜きカーンルイアは遂に神を創り上げることに成功した。否、成功してしまったのだ」

 

神を創り上げることに成功したということはつまり、俺の模倣を完成させたのだろう。ということはやはり…そういうことか。ダインスレイヴの言葉に被せるように俺は呟く。

 

「その神を創ったことによりパワーバランスが崩壊、そして『終焉』が巻き起こったということか…」

 

本来なら神が一柱、二柱増えたところで問題はないはずなのだ。多少は変わるかもしれないが普通の神が増えたところで何ら問題はない。だが、如何せん増えてしまったのは俺を模倣した神。今の俺になる前の俺は酒に溺れ、自分の力を磨かなかったがために『終焉』によって滅んだ。一周目の『終焉』が巻き起こった理由は不明だが、それは今はいいだろう。

 

その経験、というより絶望が魂の奥底に刻まれていたからこそ、俺は自分の力を磨いたのだ。だが、逆にそれが仇となり『終焉』を引き起こしてしまった。だが俺を模倣するプロジェクトは最早存在しない。ポジティブに考えるなら『終焉』が巻き起こる可能性はかなり低いだろう。少なくとも前回起こった『終焉』の理由では起こらないはずだ。

 

ダインスレイヴは俺の言に対して首肯いた。

 

「まぁとにかく、ヒルチャールとはその計画が齎した副産物であり、またカーンルイアの民全てに降り掛かった呪いの元凶でもある…」

 

ダインスレイヴはヒルチャールの作った簡素な寝床を見て目を細め、吐き捨てるようにこう言った。

 

「…これが俺達カーンルイアの末路、というわけだろう。醜悪なものだ」

 

さて、とダインスレイヴは踵を返して後ろを向き、俺達の方を見やった。既に俺は刀を抜き放っていたため旅人とパイモンがギョッとしていた。少し面白いと思ってしまったのは秘密だが…さて。

 

現れたのは三体ほど、どれも今まで見たことのない敵で風貌は怪物というより騎士のそれに近い印象を受ける。そしてどれもその身は黒く染まり、またそれぞれが元素を持っているようだ。

 

「うわっ、なんだこいつら!!」

 

少し低めの唸り声のようなものが聞こえ、相手も臨戦態勢のようだ。だが攻撃を仕掛けてくる様子はない。だが旅人は速攻相手を排除しに攻撃を仕掛けていた。それに呼応するかのように彼等も攻撃を始めてくる。どうやら考察している時間はなさそうだ。

 

俺は抜き身の刀をそのまま軽く振り目の前で武器を構えようとしている怪物の右腕を切断する。俺の予想としては硬そうなので中程で止まると思っていたのだが、刀なら案外造作もなく斬れるようだ。ただ、旅人の方は案外苦戦しているようだったので恐らく正しい力の入れ方をしていないのか、はたまた刀の性能がいいかどちらかだろう。

 

まぁ、一応伝手である程度は修復した楓原家…いや、『一心伝』最高峰の刀だ。それはそれは切れ味はいいだろう。多分刀の性能がいいんだな、うん。

 

俺は素早く眼前の相手を袈裟斬りにして斬り伏せると旅人の方へ加勢して斬り伏せた。もう一体いたはずだが、もう一体の気配は既に近くにはないようだった。

 

「ふぃぃ…びっくりしたなぁ…それにしても、どうしてあいつら突然襲ってきたんだ?」

 

落ち着いたらしいパイモンがそう言う。どちらかというと襲いかかったのは俺達なような気がするがまぁ特に深くツッコまないでおこう。

 

事情を知っていそうなダインスレイヴはというと何処か一点を暫く見つめていたがやがてこちらへ視線を向けて喋る。

 

「あれらは『黒蛇騎士』。かつて、カーンルイアにおいて宮廷親衛隊に所属していた者達だ」

 

思わず俺は少しだけ目を剥く。騎士っぽい風貌だとは思っていたがまさか本当に騎士だったとは驚きだ。だが同時にとある疑問も浮かぶ。

 

「宮廷親衛隊ということはお前の部下だろう?殺してしまってよかったのか?」

 

俺がそう問いかけると、ダインスレイヴは首を横に振りながら言う。

 

「あくまでも昔の話だ。加えて、彼等は呪いをその身に深く刻まれ、支配されている。その戦い方もかつての栄光を全て捨て去ったものだった」

 

「じ、じゃあ、もうアビスの一部になったってことなのか…?」

 

パイモンが悲しそうな表情を浮かべてそう問いかけた。ダインスレイヴは問には答えず、先へ進もう、とだけ言い放った。

 

「でも、行く宛はないんじゃないか?ヒルチャール達の痕跡は途切れてるみたいだぞ」

 

パイモンがヒルチャールの作った簡素な寝床を見ながらそう言った。だが、ダインスレイヴはどうやら違うようで腕を組みながら言う。相変わらず、彼が何を考えているのかはその表情からは読み取れない。

 

「先程、逃げた一体がいただろう。奴は俺を暫く見つめてからこっちの方向へ去って行った…攻撃を仕掛けてくるわけでもなく、ただ見つめてくるだけ…つまり他の個体とはなにか一線を画す何かがあるはずだ。先ずは奴を追うぞ」

 

ダインスレイヴはそれだけ言って歩き始める。俺と旅人、そしてパイモンは互いに顔を見合わせて不思議そうな顔を浮かべてからついて行った。

 

と、いうのもダインスレイヴが何処か急いでいるように感じたためだ。俺は一応ダインスレイヴの焦りの理由を考察しつつ進むことに決め歩みを進めるのだった。

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