忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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ああー長くなったよもう…。

因みにモチベーションがかなりあるため久し振りにめちゃくちゃバリバリ執筆しております。喜べ!!

いや、いないか、喜ぶ人…いたらオヂサン嬉しいナァ(((殴


第125話 昔日の命③

「───お兄ちゃん」

 

旅人が不意に手を前に出して誰かを呼び止める姿勢で固まった。ダインスレイヴはすぐに理解して旅人に何を見たのかを聞いている。旅人は軽く見たものを説明してくれた。

 

空とアビスの使徒がここにいて花を供えていったこと、『天理』への対抗への傾倒と『復興』のこと、『装置』のこと、深淵のこと、『あの者たち』という単語と『循環』という単語のこと…そして、空は何らかの決断を下したということ。

 

装置に関しては恐らく逆さになった池のところにあったものだろう。深淵は『アビス』のことで間違いないとして、『あの者たち』とは何のことだろうか?『謂れのない罪を背負わせはしない』という発言から察するにヒルチャール達…及びカーンルイアの民のことだろうか。

 

それにしても双子が体験した過去の情景を見ることができる、というのは不思議なものだ。ダインスレイヴも驚いているようで、顎に手を当てながらも目を見開いていた。

 

「今の話によれば、奴らはあの池と装置とやらを利用し俺達の呪いを解こうとしているようだ」

 

それに、とダインスレイヴは旅人を見て険しい表情を浮かべる。

 

「ヤツはたしかに『復興』と口にしていたのか?」

 

ダインスレイヴの問い掛けに、旅人は首を縦に振る。ダインスレイヴは軽く息を吐くと供えられているインテイワットの花を見ながら呟く。

 

「…頑固なヤツだ、やはりまだ諦めていなかったか」

 

呪いを浄化しようとしている、とダインスレイヴは先程考えていたようだったが…ああ、そういうことか。

 

「『国』という概念には主に4つの要素が求められるのは旅人は知っているか?」

 

旅人は首を横に振ったが、パイモンは挙手しながら一つだけわかるぞ!と言った。答えを聞くと、

 

「それはズバリ、美味しいご飯があるっていう要素だよな!!」

 

ドヤ顔のパイモンを無視して俺は旅人に説明をする。後ろで小さく「え、違うのか?オイラてっきり…」とか「あ、アガレス…ふざけただけだろ?む、無視しないでくれよ〜」とか聞こえてくるが無視して続けた。説明を始めれば勝手に静かになるだろうしな。

 

「一般的に『国』とは一定の領土を持ち、そこに永続的に住む住民が存在し、それらを管理運営する政府が存在し…そして外交能力が存在することだ」

 

つまり、と俺は続ける。

 

「カーンルイアという国を復興するためにアビス教団の連中は装置を利用してヒルチャール達の呪いを解き、民を得ようとしている。そして…本格的にカーンルイアを復興させようとしているんだろう」

 

俺がどうだ?とばかりにダインスレイヴを見ると、彼はふん、と鼻を鳴らして腕を組みながらそっぽを向いた。

 

「愚かな考えだ、そんな可能性は1%も存在しない。呪われたら最後、決して元には戻せず、救いなど存在しない」

 

そして先程結論が出ていたように、無理矢理解こうとすれば体の一部が焼かれ灰になっていくほどの苦痛が全身を襲うことになる、というわけだろう。カーンルイア人にかけられた呪いってのは本当に難儀なものだ。

 

ダインスレイヴは悲しそうな目でヒルチャールを見て、

 

「俺は自らに今も言い聞かせている。『アレはもう人間ではない』とな」

 

更にダインスレイヴは続けた。

 

「それに執着し、感情を傾け過ぎれば…やがて奴等のようになる」

 

自らの目的のために表面上はカーンルイアの民を助けたい一心に見せかける…なるほど、偽善に身を染め、泥沼に沈むというわけか。

 

それくらいなら、もっと救う価値のあるものに目を向けるべきだ、というのがダインスレイヴの考えのようだ。

 

だが旅人はあくまで第三者、そして空には接触できずダインスレイヴの見解しか聞かされていない。

 

「ダインを信用していいと思えるような根拠は?」

 

だからこそ、彼女は少しダインスレイヴを疑っている。勿論俺も、だがな。今の所はアビス教団のしていることは俺の大切なモノを傷つけているから敵対しているだけでもしかしたら彼等こそが世界のためになるかもしれないのだ。まぁそんなわけはないと思うが。

 

さて、旅人の言葉に対してダインスレイヴはくつくつと喉を鳴らしてみせる。

 

「俺達はただの雇用関係であり、向こうは貴様の血縁者…なるほど、肩を持つのも当然だろうな」

 

だが、とダインスレイヴは続けた。

 

「貴様の選択がどうあれ、俺の考えは変わらない。貴様がいなくとも俺は俺の成すべきことを成すだけだ。もし賛同できないというのであればいっそここで…」

 

そのままダインスレイヴは俺達に背を向けた。旅人はダインスレイヴを見てから、俺を横目で見やる。答えは決まっているようだが、俺の意思を確認したいようだったので取り敢えず首肯いておく。

 

「…今回はダインを信じるけど、完全に信用したわけじゃない。ただ…お兄ちゃんのやり方に賛同できないだけだから」

 

ツンデレ?とか場違いな感想が浮かぶが、ダインスレイヴは面白そうに目を細めそうか、とだけ返した。

 

彼は振り向いてこちらを見ると、

 

「貴様が本心を明かした以上、俺も隠しておくつもりはない。俺は今回、アビスを止めるという目的以上に、ただ───」

 

ダインスレイヴは一旦言葉を区切って目を瞑り、そして開いた。

 

「───ハールヴダン達の遺志を踏み躙る、奴等の独善的な行動が許せない」

 

呪いを受けたものは、無理矢理解こうとすれば深い苦痛に晒される。ハールヴダン含む黒蛇騎士達はそんなことを考えず、ただヒルチャール達を守り続けている。苦痛を与えぬように、せめて安らかに死ねるように、と。確かにアビスのやろうとしていることはそんな彼等の遺志を踏み躙るものだ。

 

旅人もパイモンもそれを理解しているからか、

 

「私も同意見」

 

「おう!なんとしても阻止して、アイツラが苦しまないようにしてやろうぜ!」

 

首肯きながら旅人とパイモンがそう言った。それを聞いたダインスレイヴは少し嬉しそうなのを隠すように再び背を向け、油断せず進もう、とだけ言って歩き始めた。

 

色々あったヒルチャールの集落を離れ更に進むと、再び逆さの都市が見える場所まで戻ってきた。だが、先程より少し空気がざわつく感覚がする。次の瞬間、逆さ都市の至る所にあった光る石が一層眩い光を放った。ダインスレイヴと旅人、そして俺は目を覆ったが、パイモンは思いっきりその光を見てしまったようで眩しそうに目を瞑っている。

 

「…旅人、パイモン気をつけろ、アビスが動き出している。ほら、そこに」

 

俺はなにもない場所を指差す。パイモンは未だに目が見えていないからか無反応だが、旅人は俺が指をさした先を見て首を傾げていた。だが、一拍置いて右腕のないアビスの使徒が現れた。

 

「…ダインスレイヴ、なんとも執念深い奴だ。またしても殿下の血縁者と手を組むとはな…やはり、転移網の確認が遅れ、お前をここに送ったのは失敗だったようだ」

 

アビスの使徒は淡々と告げる。しかし、今になって姿を現すとは、と想っているとダインスレイヴは鼻で笑う。

 

「逃げるばかりだった貴様が今更俺の正面に立つとは…何が臆病者の貴様にそんな勇気を与えた?まぁ、勇気があったところで俺には敵わないことは変わらないが」

 

ダインスレイヴの煽りを受けたアビスの使徒は無反応だったが、俺は心做しか殺意が増したように感じていた。そして、

 

「…我々は殿下のご意思を貫くため、邪魔者を排除せねばならない。殿下の血縁者と言えど容赦することはしない。此度こそは…民を苦しめる呪いを浄化し、取り除く」

 

苦し紛れにそう言った。事実なのだろうが理解できんな。

 

アビスの使徒は俺達の答えなど求めていないらしくそのまま剣を構えて突進してきた。俺は一歩前に出て刀を抜き放ち、攻撃を受け流しながら、

 

「それが苦しめるだけだと、何故理解(わか)らない?」

 

そう問い掛ける。アビスの使徒は無言で反応を示さなかったが、雰囲気でなんとなく察した。

 

なるほど、どうやら気付かないようにしているようだ。

 

「…お前達の掲げる大義のために命を賭けて時間稼ぎ、といったところか…」

 

もしかしたら死にたい、なんて思っていたりするのだろうか?このアビスの使徒の生前の人物像は全くわからないが、彼にもし理性が一片でも残っているのなら普通は死にたいと思うかも知れない。ヒルチャールと同じように、彼等も呪いを受けているはずだからな。

 

「…いいだろう、望み通りにしてやる」

 

俺は目を細めてそう告げる。

 

「アガレスさん、私も」

 

旅人がそう言いながらアビスの使徒に斬り掛かった。ダインスレイヴも今回はサポートしてくれるようで逃さないようにしてくれるようだ。

 

俺が攻撃をいなし、旅人が攻撃をして、ダインスレイヴが妨害する、ということが続きつつもダインスレイヴは色々と情報を引き出そうとしているようだ。

 

「貴様達の言う呪いの浄化とは…あの装置を使うつもりか。だが…それをしても哀れな民を更に傷付けるだけだ」

 

「我々の技術力を舐めてもらっては困る。あの装置によって浄化の力は数百倍に跳ね上がっている!その力を以てすれば呪いの浄化も簡単に成し遂げられるだろう!」

 

アビスの使徒はそう言いながら今度は旅人に攻撃を仕掛ける。攻撃のみに集中していた旅人は反応が遅れたが、俺が対応したので問題はなかった。

 

「ふん、短絡的な手段だったな…やはり、貴様等を買い被りすぎていたようだ」

 

「情報収集は充分か?」

 

アビスの使徒の攻撃を弾き、少し距離を取ってダインスレイヴを見ると首肯いていた。お許しが出たので、

 

「旅人、援護よろしく」

 

「わかった」

 

短い言葉でそう告げアビスの使徒へ向け地を駆ける。アビスの使徒は水元素の剣を構えて俺の動きを注視していたが、突如旅人が加速して目の前に現れたため咄嗟に攻撃を防いでいるようだった。その横から俺が刀を振るって腕を一本切り落とした。これでヤツの攻撃手段は削いだ。他にもあるかもしれないが、少なくとも剣術に怯える必要はない。

 

「ッグ…」

 

「終わりだ」

 

拷問をしたところで情報を吐く前に自決するだろうし殺すのが正解だろう、ということで俺はアビスの使徒を一刀の下斬り伏せ倒した。今回は俺一人じゃなかったから結構楽に倒せたな。心做しか体が軽い気がしたが恐らく気のせいだろう。

 

「おお…ダインがずっと追ってたアビスの使徒、やっと倒せたな!!」

 

パイモンが少し興奮気味にそう言った。だがそんなパイモンとは裏腹にダインスレイヴは険しい表情を浮かべていた。勿論、俺と旅人もである。

 

「雑談している時間はない。アビスの使徒の言っていたことが本当であれば装置が作動しているはずだ。今から破壊すればまだ間に合うかもしれん」

 

ダインスレイヴの言葉に俺達は首肯き、逆さ都市の中心部分にあった逆さ池に戻るべく来た道を引き返した。

 

〜〜〜〜

 

アガレス達はかなりの速度で逆さ池のある中心部まで戻ってきた。外から見ても違和感はないが、アガレスは空気がざわつく感覚を一層強く感じていた。

 

「ッ…アレは!!」

 

部屋の中に入ったパイモンが中央を指差す。部屋の中心部の装置の前にはアビスの詠唱者・紫電がおり何らかの儀式をしている最中だった。

 

───準備が整ったようだからな。

 

アガレスの脳内に淵上を自称する者の言葉がフラッシュバックした。アガレスはチッと苦々しげに舌打ちをすると、

 

「…そういうことかッ!!」

 

とそう言って地を蹴り、装置を破壊すべく動いた。が、しかし装置が一層光を放ったかと思うと走っていたアガレスが突如失速して膝をついた。

 

当然だろう、装置によって増幅された浄化作用がアガレスの身を蝕んでいる。そしてそれは少しでもその身に呪いがあれば引き起こされる激痛だった。

 

「アガレスさん!?」

 

旅人が膝をついたアガレスを見て心配そうに叫ぶ。隣に浮かぶパイモンはキョロキョロと手掛かりを求めて首を回していたが、ダインスレイヴを見て驚いたように固まった。

 

「あっ…だ、ダインも!!」

 

ダインスレイヴも不死の呪いをかけられており、苦しみに表情を打ち歪ませている。そして激痛で動けないようだった。

 

「…間に…合わなかったか…ッ」

 

ダインスレイヴは激痛によって支配されていく思考の片隅で、

 

(極限の苦痛に苛まれ…彼等は救いようのない死を遂げるというのか…!!)

 

「ッ…考えろ…アレを止める、方法を!!」

 

ダインスレイヴが旅人に悲鳴を上げるようにそう言った。唯一影響を受けていない旅人は首肯くと動こうとした。しかし、立ち止まって呆然と中央部付近を見やる。ダインスレイヴが疑問に思いなんとか目を開いて同じ場所を見て、そして目を見開いた。

 

『──────ッ!!』

 

激痛に苛まれているであろうハールヴダンが体を文字通り引き摺るように歩いて中央の装置へ向かっていた。ハールヴダンは自身を鼓舞するように一声嘶くと、無理矢理体を動かして装置へ走り始めた。

 

「ハールヴダン、それをすれば貴様は…ッ!!」

 

それを見たダインスレイヴが苦痛に表情を歪めながら叫ぶ。ハールヴダンがアガレスの隣を走り抜けた時、それを横目で見たアガレスも無理矢理行動を開始した。

 

『何ッ!!』

 

アビスの詠唱者・紫電が気配を感じて後ろを振り向くとアガレスが拳を振り被っているところだった。

 

「そこを…どけぇえええええええええッ!!」

 

アビスの詠唱者・紫電はそのままアガレスと共に吹き飛んでいった。ハールヴダンはそのまま池へ向けて力を垂れ流している装置へ飛び掛かり、覆い被さった。装置は少ししてその勢いを弱めたがハールヴダンはそのまま事切れたようにガクッと項垂れ動かなくなった。一先ず浄化作用が止まったため動けるようになったアガレスは少し怪我をしたその体を引き摺って旅人達に合流した。

 

「アガレスさん、無茶し過ぎだよ…!!また摩耗が進んだらどうするつもり!?」

 

戻ってくるなり旅人にどやされるアガレスだったが心配故の行動であることをわかっているため何も言わず、ただ一言謝罪した。ダインスレイヴはというと動かなくなったハールヴダンを見て少し安堵したように告げる。

 

「すぐに消滅するものと思っていたが…予想以上にハールヴダンの魂は強靭なようだ」

 

肩で息をしつつダインスレイヴはアビスの詠唱者・紫電が逃げていったことを確認したがアガレスもいないことに気が付く。

 

「…あれ、旅人、アガレスは?」

 

旅人は言われて初めて先程までいたアガレスが消えていることを認識した。だがダインスレイヴはあくまで冷静だった。

 

「貴様はあの男が簡単にやられると思っているのか?」

 

旅人は少し考えて首を横に振る。ダインスレイヴは少し満足げに首肯くと、装置を注意深く観察した。

 

「それより、呪われた俺達はここで本来の力を発揮することはできん。アガレスもそれは同じだが、今アビスの計画に対抗できるのは貴様だけだ」

 

ダインスレイヴはハールヴダンを見ながら苦々しげに言う。

 

「あいつの献身を無駄にしないためにもここで時間を使うのは得策じゃない。周りの転移門と光を見たか?恐らく奴等はエネルギー装置を分散して置いているはずだ。それを確認するぞ、急げ!」

 

ダインスレイヴの言葉に旅人とパイモンは首肯き、転移門の一つから装置を確認しに行くのだった。




まえがきに変なおじさんがいましたが無視してもらって大丈夫です、殴り飛ばしておきましたんで。
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