忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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時間があったもので…。

そういやネタバレ注意です。いやほんとまじで気を付けてください。


第4話 ツケの支払い

「ところでバルバトス、内密な話ができる場所はないか?」

 

開口一番、俺はバルバトスにそう問うた。バルバトスはうーん、と唸った後、

 

「やっぱり『エンジェルズシェア』かなー、あそこ、秘密は絶対守ってくれるからね」

 

ただ、とバルバトスは若干涙目になりつつ続けた。

 

「ツケが溜まって大変なんだ…!アガレス、払ってくれない?」

 

その言葉を聞いた俺は思わずコケるところだった。

 

「…この…お前ってやつは…っ!」

 

なんか神ってなんでこう金銭感覚がおかしいんだろうか…と心のなかで嘆きまくる。バルバトスもモラクスも金銭感覚バグってるぞ、間違いなくな。俺…?俺は別だぞ!

 

さて、旧友との再会で少し忘れていたことを思い出した俺はノエルを見やる。

 

「ノエルは先に帰っていてくれないか?」

 

「え、何故でしょうか…」

 

首を傾げて不思議そうにするノエルに俺は理由を告げる。

 

「久しぶりに旧友と再会出来たんだ。少し…二人で話をしたい。それと、今から少し金を集めに行く。危険だから訓練をする前はまだ残っていてほしいんだ」

 

理由を告げるとノエルは若干不服そうだったが、

 

「…わかりました。アガレスさま、気をつけてくださいね」

 

そう言って納得してくれたようだったので俺は礼を言った。ノエルは去り際に、軽く俺に手を振ってくれたので、手を振り返した。

 

さて。

 

「『蔵金の花』を探さなきゃな」

 

俺は口元に手を当ててそう呟く。

 

昔はこう見えて『蔵金の花』でモラを集めていたのだ。その様子を見ていた人間達から、当時は『金欠神』なんて呼ばれていたりしたが…今度こそ…今度こそ俺は無限の富を手に入れるんだ!!

 

「アガレス、目が怖いよ?」

 

俺のことを金欠にさせた一端を担っていたうちの一人が俺にそんなことを言う。

 

誰のせいだと思っているのだろうか?どうやらお灸を据える必要があるらしい。

 

俺は低い声で、

 

「丁度いい…お前も昔、俺のことを『金欠神』なんて呼んでたよな…手伝え」

 

そう言いながらだらだらと冷や汗を流すバルバトスの首根っこを掴み、路地裏へと移動してから風元素で飛び上がるのだった。

 

 

 

さて、清泉町の近くにある七天神像が見える辺りに『蔵金の花』がある証である金色のもやがあるのを発見したので俺はバルバトスと共にそこへ降り立った。

 

ただ地脈の影響なのか茨が生えていた。茨の針は大きく、稀に服を引っ掛けたまま魔物に攻撃されたことであわや大惨事に…なんてことになりかねない場合がある。

 

俺は少し考え、

 

「茨があるな…先に燃やしておくか」

 

そう結論を下した。俺はそのままバルバトスと共に茨のある位置から少し離れて炎元素で茨を燃やす。少しすると周囲の草原と共に茨は燃えカスになった。

 

これで茨に邪魔される心配はなくなるだろう。燃えてしまった周囲の草原も少しすれば地脈が癒やしてくれるはずだ。

 

「さて、始めようか」

 

俺が茨のあった場所を超えて金色のもやに近付くと、雷スライム数匹とトリックフラワー・炎が出現した。

 

金色のもやとか水色のもやとかがある所には近付いてはならない、というのが昔からの人間たちの間での原則だった。

 

もやを見つけたら即退散、然るべき国の機関に報告し対処するというのが昔の常識だった。先程のようにもやに近付くと複数の魔物が現れるため、安全保障上の観点からそのような対処法が取られていたのをなんとなく思い出す。

 

「───バルバトス」

 

「はいはい。風だー!」

 

バルバトスのダ◯ソン…じゃなかった、吸引力の変わらない、ただ一つの元素爆発(?)だな。周囲の魔物を飲み込む寸前に、俺は両方に有効な元素である氷元素をトリックフラワー・炎に付着させてから蹴り飛ばし、バルバトスの風元素と合わせて先に拡散反応を起こさせる。

 

次に雷スライムが風の中に吸い込まれていき、やがて超伝導反応によって破裂した。ただ、トリックフラワー・炎はそれだけではまだ倒せないので俺は雷元素で攻撃して同様に超伝導反応で倒した。

 

これで終わり、かと思いきや増援がやって来る気配がした。

 

「…ふむ、第二波か」

 

そうしてやって来た第二波は雷スライムの巨大化バージョン、そしてまたトリックフラワー・炎もいる。俺は折角なので、と刀を取り出す。

 

「久しぶりに見るなあ、君の剣技」

 

バルバトスが俺が取り出した刀を見て暢気にそう呟く。俺はチラッと嬉しそうにしているバルバトスを一瞥してから居合の姿勢で固まり、神経を研ぎ澄ます。周囲の余分な情報を遮断し、敵の気配のみに集中する。

 

久し振りだからきちんと段階を踏んだが、この感じなら毎回やらなくても良さそうだ。

 

「氷斬」

 

雷スライ厶が射程圏内に入った瞬間、俺は刀を抜き放ち、氷元素を纏わせて一閃した。

 

雷スライムは超雷導を起こして再び破裂した。トリックフラワー・炎は力を溜めているようだったが流石に発動が遅すぎる。一挙に踏み込んで距離を詰め袈裟斬りにして一刀の下斬り伏せた。

 

うーん、なんだかんだ言って剣技という程のものは見せられなかったかな、なんて俺の心配とは裏腹にバルバトスは俺の刀をまじまじと見ながら、

 

「いつ見ても凄いね…稲妻の刀ってやつ」

 

そう言った。俺も釣られて自分で手に持つ刀をジッと見る。鮮やかな波紋、美しい反り…この素晴らしい一振りを造るために職人は文字通り心血を注ぐ。

 

剣は叩き斬ることを念頭に置いて進化していったのに対して、この刀は斬れ味に特化したものだ。それでいて芸術的なまでに美しく、かつてこの刀には付喪神が宿るとされていた。刀は信仰や力の象徴にもされるため稲妻では武家なんかで自身の力を誇示する目的で持っていたり、雷電将軍に献上したりもしていた。

 

兎にも角にも、『刀』と稲妻人は切っても切れない縁があるのである。逆に言えば人を斬る道具でも縁は切れない、とも言えるかもしれないな。

 

いや、これはこじつけか…。

 

ただバルバトスにそれを説明しても???の表情で見られるだけだろう。だから俺は、こと実用性の面だけを説明することにした。

 

「ああ、物を斬ることに関してはこの刀をおいて他に上はないだろう」

 

俺はヒュンヒュンと刀を振り回してから鞘にしまうようにして刀を消した。

 

「さてバルバトス」

 

俺がそう呼ぶといい加減我慢ならん、とばかりにバルバトスは頬を膨らませた。

 

「そのバルバトスってのやめてよ。今の僕はウェンティという名前のただの吟遊詩人さ」

 

ウェンティ、か。良い名前だが俺からすると違和感が物凄い。ただ身バレすると困る事情があるのだろう。

 

まぁ、数千年間バルバトスと呼んできたので心の中では今まで通りバルバトスと呼ぶことにした。間違いなくなわかり辛くなるだろうなぁ、と考えた俺ははぁ、と息を吐いて肩を竦めた。

 

「まぁいいさ。ウェンティ、これでお前の酒のツケを払ってやれる」

 

そう言いながら俺はもやがあった場所に生えてきた地脈の花を見やる。

 

地脈の花、つまり啓示の花でも蔵金の花でも、どちらにせよ受け取るには『天然樹脂』が必要だ。最大数は160で8分で1回復する。一度に報酬を受け取るのには20かかるが、幸い『天然樹脂』40を消費して2倍の報酬を受け取ることのできる時間短縮アイテムこと『濃縮樹脂』が所持最大数5個ある。ついでに『天然樹脂』60個分を即時に回復できる『脆弱樹脂』は数え切れないほどある。

 

まぁしばらく使ってもいなかったしなぁ、なんてぼんやり考えつつ飛んで喜ぶバルバトスを見た。

 

「ほんと!?やったー!」

 

「ただし」

 

俺は言いつつ、バルバトスの頭をガシッと掴む。彼が俺の顔を見て少し震えているのは気のせいではないだろう。

 

「俺がモンドにいる間は、酒を飲みすぎないようにしてやる。モラクスにも頼まれてるしな」

 

そう、彼の酒好きは神の間でも有名だ。璃月の岩神モラクスにも、こいつの酒好きをできる限りマシにしてほしいと頼まれている。

 

だがバルバトスは震えながらも抵抗する素振りを見せた。

 

「い、嫌だよ…僕が力に屈するとでも…?僕は自由の神…!この上なく自由に生きる義務が───」

 

「そんな義務などない!あともう少し回るが、その後『エンジェルズシェア』に案内しろ!」

 

俺はバルバトスの言葉に食い気味でそう言いながら頭を掴むのをやめ、しかし今度は首根っこを掴んで再びズルズルと引き摺っていくのだった。

 

 

 

あれから夜まで『蔵金の花』を巡り、モラをかなり稼ぐことができた。そして満を持してここ、『エンジェルズシェア』までやってきたのである。

 

俺はゴクリ、と生唾を飲み込みつつ扉を開いた。

 

「いらっしゃいませ、お好きな席へどうぞ」

 

バーテンダーの男がそう言ってくる。彼からは俺が引き摺っているバルバトスが見えないようだったので、引き止められる前に俺から言うことにした。

 

「その前に、少しいいだろうか?」

 

「なんでしょうか?」

 

店のバーテンダー───チャールズというらしい───がカクテルを作りながらこちらをチラリと見やる。俺はバルバトスをそのまま持ち上げ、チャールズに見せた。

 

彼が驚くのを見つつ頭を深く下げる。

 

「この吟遊詩人が今まですまなかった。これは今までの代金と、今回飲む分のモラだ。若干の利子もつけてある」

 

俺はモラがずっしりと入った袋を差し出した。それを見たチャールズは急いでカクテルを作り終わり、配膳してから袋の中身を確認していたが、やがて顔を上げた。

 

「丁度です。利子に関しても言うことはありませんが…」

 

「なに、迷惑料だ」

 

言いながら、俺はバルバトスにゲンコツを落とした。落とされた当人は、というと涙目になりつつプクッと頬を膨らませていたが何も言わない。言ったら勿論もう一発だということをわかっているらしい。

 

「ではご注文は」

 

最大の峠を越えたのであとは注文だ。ただ俺は酒が飲めないので酒場で頼めるようなものはない…と考えていたのだが面白いものを見つけた。

 

「そうだな…ほう、ググプラムのジュース?これは美味しそうだ。これを一つくれ」

 

ググプラムのジュースを発見したのでそれを頼んだ。面白い着眼点だが昔ググプラムで同じことをしようとして失敗していた奴がいたな。それがどうなっているか…見ものだな。

 

「かしこまりました」

 

「じゃあ僕はー、りんご酒が欲しいなぁー」

 

チャールズの声に被せて、バルバトスはそんなことを言う。また酒を飲む気か?なんて思ったが先程今回飲む分の代金を渡していたのを思い出したので、

 

「一杯までなら許してやろう」

 

そう言った。するとバルバトスは水を得た魚のようにカウンターに手をつく。

 

「お許しを得ました!お願いします!」

 

「か、かしこまりました」

 

チャールズはバルバトスの剣幕に若干押されつつも然と返した。注文を終えた俺達は適当な席に着こうとして踵を返すと、

 

「お客様、内緒話でしたら、二階が宜しいかと」

 

チャールズのその言が聞こえた。俺はそんなチャールズをチラと見たが、特段変わった様子はなく至極真面目にせっせとググプラムジュースとりんご酒を作っている。恐らく、先程の言葉が聞こえたのは俺とバルバトスのみだろう。独特の発声方法で声を俺たちにだけ聞こえるように言ったのだとしたらこの店は中々面白いところだ。

 

俺は小声で彼に礼を言うと、2階へと上がる階段を登っていくのだった。

 

〜〜〜〜

 

「で、ウェンティ…いや、バルバトス」

 

アガレスが僕に向けて剣呑な視線を向けた。少しだけ寒気を感じ背中に嫌な汗が流れるのを感じつつ、僕はその恐怖心を流し込むようにりんご酒を流し込む。

 

「俺の名やカーンルイアについての歴史をほとんど見聞きしないのは何故だ?」

 

彼は大きい声を出していない。それどころかいつもと同じ落ち着き払った声だ。けれどその声は確かに静かな怒気を孕んでいて不思議と大きく聞こえた。僕はなんとかして恐怖心を抑え込んで、

 

「それについて、僕が説明できるのは少しだけなんだ、それでもいいかい?」

 

そう言った。それに対してアガレスが首肯くれたので、説明を始めるべく口を開く。

 

「500年前、君を犠牲にして『終焉』は確かに止まったんだ。けれど、僕達は君を失い『八神』から『七神』になった。僕らとしても、そっちのほうが都合がいいからね」

 

大まかに説明しすぎたかな、なんて思っていると彼は顎に手を当てて考え込むような仕草のまま呟く。

 

「…この世界に存在する元素は知られている中では7種類。確かに、『八神』とするよりかは『七神』のほうが都合が良いだろう。本来なら俺とて魔神戦争で滅んでいてもおかしくはなかったのだからな」

 

アガレスは若干自嘲気味にそう言う。僕は更に詳しい説明をする。

 

「それに、君は『呪い』に侵されていた。だから、魔神達の怨恨から開放するために、僕達は『元神アガレス』の記録を根こそぎ消したんだ」

 

人々の中にある記憶は記録が無くては次第に薄れてゆく。口伝という形で残ったとしても本来のアガレスを知る存在が少なくなれば地脈を通じて魔神達の怨恨がアガレスという存在そのものを取り巻くことは、少なくとも減るのではないか…と僕達は考えたのだ。

 

「そう、か…」

 

アガレスの剣呑だった雰囲気が幾らか和らいだため、思わずホッとしてしまう。

 

そんな僕の様子を知ってか知らずか、アガレスは自分の中で納得してくれたようだった。

 

「お前達の思惑はわかった。折角俺のイメージが0になったんだ。今くらい自分のために生きるさ」

 

500年前まで、彼は世界を守護するという目的のために行動してきた。そしてその任務を彼は見事に果たして見せ犠牲となった。

 

僕の…僕達の望んでいた答えはそれだよ、アガレス。

 

「うん、それがいい」

 

そう言って僕はにっこり微笑む。

 

それにしても〜、と僕はりんご酒の少なくなったグラスに頬をスリスリした。

 

「このりんご酒美味しいね〜」

 

「全く、お前は昔から酒が好きだな」

 

そんな僕を見たアガレスは苦笑しながらそう零した。彼はお酒を飲めない。匂いを嗅ぐのはある程度問題ないけど、少し飲んだだけで倒れちゃうからね。

 

僕は復活祝に、とばかりにりんご酒のグラスをアガレスの方へ差し出すと、

 

「久しぶりに挑戦してみる?」

 

とそう言った。アガレスは笑顔でそのグラスを僕の方へ差し出し返しながら「遠慮しておく」と良い笑顔で言われた。

 

「えー…ざんね~ん」

 

アガレスはそんな僕の呟きを軽く流すと、

 

「そういえば、ここのオーナーはディルック・ラグヴィンドというらしいな?」

 

そう言った。どうやら『エンジェルズシェア』のオーナーに関して興味を持っているみたいだ。

 

ディルックは確か、騎兵隊長だったけれど騎士団の腐敗に嫌気が差して今は旅をしているはず、ということを思い出して僕はアガレスにディルックの所在はわからないことを告げる。

 

「そうか。いつか会ってみたいもんだな」

 

するとアガレスは遠くを見てそう呟いた。僕はそんなアガレスを見て思い出したことを聞く。

 

「そういえばさ、じいさんには会った?」

 

僕がそう聞くとアガレスは少し考え込む素振りを───見せず、

 

「じいさん…モラクスか。いや、まだ会っていない。そもそも復活したのは昨日ってか、今日?とかだしな…ん?待てよ、お前も───」

 

首を振りながらそう言った。ついでとばかりに失礼なことを言われそうだったので、

 

「それは言わないお約束だよ、アガレス」

 

そう食い気味で言っておいた。それはさておきまだじいさんに会っていないならきっとあの二人にも会ってないんだろうなぁ、と考えて、

 

「バアルとバアルゼブルにもまだ会ってないんだね、その調子だと」

 

そう聞いた。ただ、言われた当のアガレスは苦笑していた。

 

「あー、まぁな…」

 

苦笑していた理由を問い掛けるとアガレスは頬をポリポリと掻きながら、

 

「眞と影に会うにしても、もう少しこの世界を見て回ってからにしたい」

 

そう言った。この世界を見て回る、か。そうは言ってもねぇ、と僕は意味深にアガレスを見る。見られたアガレスはというと目を丸くして僕を見つめ返す。

 

取り敢えず稲妻の現状だけでも伝えておこうかな、なんて考えて、

 

「それなんだけどね、稲妻は今訳あって鎖国中なんだ」

 

そう言った。アガレスは驚いたような顔をして若干前のめりになりながら理由を食い気味に聞いてくる。僕は少し溜息を吐きながら詳しくは知らないことを前置きしつつ、

 

「『ファデュイ』がなんかやらかしてるみたいだよ。斯くいうモンドも圧力かけられてるし」

 

本当は戦争になりそうなんだけど…これを言うとアガレスは間違いなく今すぐ稲妻へ向かってしまうだろうし伏せておくことにした。

 

「なるほど…全く、彼女は何を考えているのやら」

 

彼女、とは恐らく氷神のことでアガレスは氷神の思考を推測しているようだった。そんな彼に向けて僕はもう一つの懸念事項を告げる。

 

「それと、『アビス』も最近、行動が活発になってる。その所為でヒルチャールが人里に近づいてきてるんだ」

 

500年前現れた『アビス』の怪物達で構成されている全貌が謎に包まれた組織『アビス教団』、そしてヒルチャールは教団の怪物に操られる人型の魔物だ。

 

「ヒルチャール…ああ、あの人型の魔物か」

 

僕の情報を聞いたアガレスは思い出すようにして呟いた。僕はそんな彼の様子に疑問を覚え、

 

「あれ、アガレスは見たことなかったっけ?」

 

と聞いた。ヒルチャールが出現したのは1000年以上前のはずだけど…と付け加えるがアガレスは首を横に振った。

 

「うーん…俺は見たことない気がするな。見ていたら覚えているはずだし…」

 

それもそうだよね、なんて考えつつちょっと論理の飛躍が過ぎる推測をアガレスに告げた。

 

「妙だね、もしかして君、記憶を消されてるんじゃないかな?」

 

言われたアガレスは首を横に振りつつもその可能性もあるか…?なんて呟いていた。

 

「…いや、『摩耗』による魂の剥離が原因の記憶障害かもしれない。それにしては妙だけどな。まぁ日常生活に支障がないなら大丈夫だろう、多分な」

 

アガレスのそんな楽観的な言葉に僕は苦笑した。

 

「自分のために生きるのに記憶が欠けてちゃ問題があるんじゃないかな…?」

 

僕の言葉に対してアガレスは尚も楽観的に微笑みながら、

 

「ま、今の今まで問題はなかったからな。別にいいだろう」

 

そう言った。そのままさて、と言って彼は席を立つ。僕は首を傾げながら、何処へ行くのかを聞く。するとアガレスは、

 

「ああ、騎士団本部へ行こうと思ってな」

 

そう言った。騎士団本部?何故?と首を傾げているとフッ、と彼は笑いながら、

 

「寝床を提供してもらいに行く」

 

と言った。思わず僕は引かずにはいられなかったのだが、僕が引いているのを感じ取ったらしくアガレスは若干慌てたように言い訳を始めた。

 

「いや、別に寝床を持ってないわけじゃないぞ?仙人に昔貰った『塵歌壺』はあるが、あの感覚は未だに慣れないんだ。だから騎士団に提供してもらおうと思ってるだけだぞ?決して寝床がないわけでは……」

 

冷や汗を浮かべて言い訳をするアガレスが若干可哀想に見えてきたのでフォローを入れておくことにして口を開く。

 

「君は一応、旅人だからね。真摯に対応してくれるはずだよ」

 

そうか、とアガレスは安心したように言い小さい声で「あぶねぇ…」と呟いたのを僕は聞き逃さなかった。

 

最後までなんだか締まらないなぁなんて思いつつアガレスを見送る。一階へ続く階段へ差し掛かったときアガレスは僕を見ながら、

 

「じゃあ、またな。バルバトス」

 

とそう言って階段を降りていった。一人になった席で僕は旧友との再会を噛み締め、

 

「僕はウェンティだよ。今はね」

 

と独り言を呟きながらりんご酒を一気に飲み干すのだった。




誤字がないかほんとに気をつけないと…前話で『エンジェルズシェア』が変換ミスって『エンジェルシェア』になってたのをちゃんと修正しましたので…!まじで気をつけます…!

追記 : 文章の書き直しに当たって一つ説明というかオリ設定を。

・地脈の花を得られるもやに一般人が近付いてはならない。

というものに関してですね。原作のゲームだと挑戦開始のボタンがありますがそれをどうやってるのか、なんて思ったんですがその描写が一つもないのでもやに近付いたら魔物が出るっていう設定になってます。

ついでに一般ピーポーの方々が近付くと危険なので、じゃあそれの対処法を…って考えるとあんな感じかなぁ、となりましたね、はい。

これからも多少オリ設定出てきたり増えたりすると思いますが付き合って下されば幸いでございます。
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