さて、どうしたものか。
「───ですから、アガレスさまはわたくしのことをここまで育て上げて下さったんです。それはもう愛情と熱意を沢山注いでいただきました」
「そうですか。私は数千年来の付き合いがありますしアガレスの考えていることはある程度把握しています。勿論、愛情も友情も色々な思い出も沢山貰いました」
「それを言ったらアガレスさんは私の旅の終点まで着いてきてくれるって言ってたし、愛情なら充分私にも注がれてると思う。一杯助けてくれたし」
何故一人増えたのか、そう思いつつ遠い目をする俺の疑問に答える者は───
「アガレス…オイラは、元々お前が鈍感だったのがいけないと思うぞ。今までの行動を振り返ってみろよ」
そうパイモンである。元々はノエルと影の戦いだったのに何故か逃げようとしていた旅人も参戦してしまったためパイモンが俺のところにいるのである。尚、影に頼み込んで離してもらい、今は食卓から離れたソファに座ってお粥を食べている。
パイモンは俺のことを呆れたような、或いは心配そうな目で見つめている。いや、綯い交ぜになっている、といった方が正しいかも知れない。
「…そうは言っても恋愛とか俺には無縁な話だと思っていたし仕方がないと思うんだが…」
俺の言葉にパイモンは首を横に振った。
「アガレス、オイラは旅人の近くにずっといたからわかるけど…自分がピンチな時に絶対的な安心感を持って現れて颯爽と自分を助けてくれて…しかも何度もそれをするんだぞ?」
「…なるほど、俺知らず知らずの間にやらかしまくってるなじゃあ」
恋愛対象、ということで一旦男性陣は除外して女性陣だけ考えていくことにして俺は少し考える。
えーと…一周目はそんなことはないが今回に関しては…まず『八神』の皆を助け…中でも影や眞を裏から手助けしていたし…復活してからはノエルを何度も助けて育て上げて…その後はジンも助けたな…?
黒い焰事件というとある事件では緑髪の少女とアンバーの手助けもしたが…その辺はイマイチよくわかっていない。緑髪の少女は無事だが以来話していないからな。
その後は衰弱していたエウルアのことも助けて…ジンとの付き合いがあった中でバーバラにも色々教えて助けて…旅人のことも何度も助けていくことになって…。
モンドだけでもこんなに?
「ふざけてるな」
「あ、アガレス?そんな怖い顔しなくても…オイラが悪かったぞ…」
俺の考えが口に出ていたらしく、そして視線の先にパイモンがいたらしく俺を見ながら涙目になっていた。どうやら自分の行動に苛立っていたのが表情に出てしまったようだ。
「いや、パイモンに怒っているわけじゃないんだ。自分の行動に腹が立っているだけだ」
「ど、どういうことだよ…?」
「詳しく聞かせてやるからちょっと耳貸してくれ」
俺はそのまま、食卓で行われている戦争が収まるまでパイモンと色々と談笑することにしたのだった。
一方食卓を囲んで行われている戦争(笑)は激化の一途を辿っていた。ノエルは頬を膨らませながら、蛍は苦々しげな表情を浮かべながら、影は少し微笑みながら1時間以上も未だに言い争いを続けていたので、いい加減戦いが終わらなさそうなのを察知した俺が割って入ることにした。
因みに俺の話を聞かされたパイモンは絶望の表情を浮かべて固まったままである。これから俺の身に降りかかるであろう火の粉的なものを想像してしまったようだ。
事実フラグは立ちすぎている。俺も現実逃避したくなるくらいには。
「皆、休みたいから少し静かにしてくれないか?」
俺はどうやって声をかけるか迷って最終的にそう告げた。勿論俺はつい一時間半ほど前まで眠っていたので三人共俺を心配していたわけだからこれで止まってくれると考えたのだ。
「あ、そうだよね…ごめん」
俺の言葉に一番早く反応したのは旅人だった。しかし影とノエルは少し俺から遠い位置にいたためか声が聞こえていないようだ。三つ巴の戦が終わり旅人が戦線離脱、ノエルと影の一騎打ちが行われている。
「わたくしはアガレスさまのメイド兼一番弟子です。璃月ではわたくしに重要な役割を頼んで下さいましたし、かなりの信頼を寄せてくれていることは確かだと思うんです!」
「それは間違いないと思いますが恋愛感情としては別だと思いますよ。それに、信頼と言うのならばアガレスは私に体を預けてきますからね。心を許している証拠です」
「か、体を預ける…はわわ、は、はれんちです…ですが、わたくしもアガレスさまを背負った経験があります!以前アガレスさまが倒れられた際にお部屋まで運んだのはわたくしですし…!」
「私はデートもしてもらいました。彼の今までの軌跡を彼自身から教えてもらって…移動するときは…その、お姫様抱っこというものをですね…」
あれ、本当にこれ戦ってる?なんて思うのも無理はない。どちらも顔を赤くしながら少し頬が緩んでいるのだ。なんだか両方惚気けているだけのような気がしてきたがノエルは若干拗らせているような気がする。勿論、色々な意味で。
俺は彼女達の様子を見て溜息を大きく吐いた。その溜息を横で聞いていた旅人が苦笑しながら呟いた。
「稲妻に私が来たばかりの頃も影はあんな感じだったよね」
その言葉に復活したらしいパイモンがうんうん首肯きながら同調した。
「そうだよな…まぁ、オイラ的にはアガレスは料理も上手だし、優しいし、安心感も凄いあるよな。高身長でイケメンだし〜」
先程まで旅人の言葉に同調していただけだったパイモンが突然俺を始めたので俺は慌てて手で制した。
「なんで突然そんなに褒め始めたんだ?旅人も首肯くな」
止まったパイモンにそう聞いている間に旅人が先程のパイモンの言葉に首肯き始めたのでそう告げたのだが、
「事実だよ?」
旅人は本心からそう思っているようで首を傾げながら何言ってるんだこの人みたいな眼差しを向けてきた。
「やめろ、首を傾げるな。まるで俺が間違っているみたいな反応はやめろ」
俺はその旅人の眼差しを真正面から受け止めきれずに目を逸らしつつそう言った。そして逸らした先ではノエルと影の顔がドアップになった。どうやら旅人とパイモンの話が向こうにまで届いていたらしい。
「パイモン」
影がパイモンに声をかけた。パイモンはビクッと肩を震わせて旅人の後ろに隠れた。旅人もかなり焦っている様子だったが、影は特にパイモンを咎めるようなことはせず寧ろ、
「ええ、わかります。アガレスは昔から料理が上手なんですよ。ですから稲妻城に来た時に何かとご飯を作ってもらっていました。薄々私が何もないのに稲妻城に呼んでいることも気付いていたはずですがそれでも呼んだら来てくれるんです。そういうところは本当に優しいですよね。他にも───」
早口でそう捲し立てている。旅人はなんとかパイモンを犠牲にして逃げていたようだが今度はノエルに捕まってしまったようだ。
「旅人さま…その、先程仰っていたアガレスさまについてのことなのですが…アガレスさまから教わった料理のレシピは沢山ありますしそのどれも美味しいんです。わたくしの作るものよりもずっと美味しくて…しかもわたくしにわからないことがあっても、或いは失敗しても根気強く色々と教えていただきました…とてもお優しいというのはよくわかります。他にも───」
こちらもこちらで早口、ではないが旅人に有無を言わさず話しているようだ。普段なら絶対に有り得ないので恐らく気が動転しているのだろう。
「ただいま…って、あら…目が覚めてたのね」
そんな中、エウルアが救民団本部に帰ってきて俺を見ながら驚いたような、安堵しているような表情を浮かべた。丁度良いので俺は機を見計らってエウルアと共に救民団本部の外へ出た。
「ちょっと、どうしたのよ、随分強引じゃない。この恨みはしっかり覚えておくから」
若干急いだため少しだけ荒っぽくなってしまったからか、エウルアはムスッとしながらそう言った。とはいえ俺はいいタイミングで帰ってきてくれたエウルアに感謝しかない。
「いや、助かった。礼を言うよ」
俺はエウルアに若干苦笑しながらそう告げた。言われたエウルアは、というと仕方ないわねと言って許してくれた。このままだと俺が急いでいた理由を聞かれるのですぐに話題を変えることにして口を開く。
「以前モンドに帰ってきたときはゆっくり見て回れなかったし…折角だ、エウルア、一緒に見て回らないか?」
俺の言葉にエウルアは虚を突かれたらしく目を大きく見開いていたがやがて顔を背けると小さい声で呟いた。
「…私は別に、毎日モンドを駆け回ってるんだから一緒に見て回る必要はないけど…あなたがどうしてもって言うなら仕方がないわね…一緒に見て回ってあげてもいいわ」
この後滅茶苦茶モンドを見て回った。
尚後日、影にエウルアと二人でモンドを見て回ったことを問い詰められて一日中一緒に過ごすことになったのは…この時の俺はまだ知る由もない。
アガレス、爆散せず───
アガレス「爆散しなくて良かっただろ…え、良かったよな?頼むから爆散してほしかったとか、そういう風に思っている読者様とかいないよな?」
いないよ多分。別にリア充爆散しろとか思ってないだろうし(謎にいい笑顔)。
アガレス「…やばい、寿命で死ぬ前に読者様に轢き潰されるかもしれない…」
という謎茶番でした。割と真面目に考えると…アガレスって結構フラグ立ててますよね〜、まぁ私のせいといえばそうなんですがね…ハハハ。