忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

147 / 157
久々登場本編更新!!

アガレス「遅いッ!!!!!」

IFストーリーばっかにかまけてるからこういうことになるんだよ!わかるか!!


第132話 指輪①

次の日、俺はバーバラの監s…ゲフンゲフン、経過観察を終えて稲妻までやって来ていた。勿論風元素で飛んできたわけだが、なんだかんだで元素を扱うのが久し振りだったからか速度に歯止めが効かず、普段より圧倒的に早くモンド稲妻間を移動することができた。

 

そのお陰、と言ってはなんだが、午前中の早い時間に稲妻に到着することができた。因みに色々な人が俺のお見舞いに来てくれたわけだが、俺が怪我をしたとか、そういったことは一部の存在しか知らない。勿論、層岩巨淵での騒動も大体が有耶無耶にされて世間に伝わっているしな。俺から漏らしたりするつもりもないから情報漏洩とかもほとんど心配いらないだろうから、気にする必要はないだろう。

 

さて、旅人やバルバトスに加えて夜蘭やバーバラにも休めと言われている手前戦闘とか疲れることはあまりしないほうが多分良いんだろうな。仮に俺がそういった疲れるようなことをしたとしよう。俺は稲妻で顔が知れているのですぐに噂やらで広がり、ひいては影の耳にも入るだろう。

 

そうなった場合それはもうしこたま怒られること間違いなしだろう。

 

「…ということで、八重堂までやって来たわけだが…」

 

俺は思わず溜息をつくと、眼前で受付席ににこやかに座っている人物へジト目を向けた。

 

「何故お前がいる?」

 

「ふむ、異なことを聞くではないかアガレス殿。妾は八重堂の編集長じゃぞ?いない方がおかしいではないか」

 

その人物───八重神子は今もにこやかだ。だが、どこから聞きつけたのか、そして何故俺がここへ来るとわかったのか本当に謎だ。

 

いや、昔から妖狐なんかはそんな感じだったのを俺は思い出した。困ったことに、彼ら彼女らは大体こんな感じだった。

 

納得したようで納得してないこのよくわからない感情をおくびにも出さず、俺は一先ずここへ来た目的を果たすことにした。

 

「神子、取り敢えず『俺の青春ラブコメがカオス過ぎる件について』の12巻から最新巻までが欲しいんだがあるか?」

 

八重神子に限らず、妖狐と話す時は心中の全てを見通されている気がして少しだけ嫌な気分になることがある。八重神子はそうならないで欲しかったのだが、やはりこうなってしまった。なんというか狐の遺伝子的なものを感じる。

 

「うむ、妾はあくまでも編集長という立場ではあるが、アガレス殿の頼みとあらばそれを売るのも吝かではないぞ」

 

八重神子は常に微笑を浮かべつつそう言った。その言葉に対して俺は溜息を吐きつつ、

 

「いや、普通に売って欲しいんだが。というか今日は定休日だったりするのか?他の従業員が見えんが」

 

そう言った。俺の言う通り、八重神子の他に普段いる従業員の姿が見当たらない。どういうことかを八重神子に問い掛けたのだが、彼女によれば八重堂自体が少しの間休業していたらしい。というのも、少し前に光華(すがたのいろどりさい)容彩祭という稲妻の大きい祭りが開催されていたようで、今日はその振替休日のようなものらしい。

 

そのため普段いる従業員がいないようだが、八重神子が何故か鎮座している。普通におかしいと思うんだが、どういうことなのだろうか。

 

「先程も言ったとおり、本来ならば今日は八重堂も定休日じゃが、アガレス殿がそろそろ来る頃かと思ってのう。こうして待っておったのじゃ」

 

この際何故俺が来ると思ったのか、とか何故待っているのか、とかは考える必要はないだろう。何故知っているかわからないことを知っているのが妖狐というものだ。最早予知能力にも近いような力が備わっているとしか思えぬほどに、こと人間の動きや考えに関しては彼等彼女等の右に出る者はいないだろう。

 

さて、八重神子が意味もなくここに来るわけがないだろう。何と言ってもわざわざ八重堂で待つくらいだ。なにもないなら八重堂に俺が来るとわかっていても放置するはずだからな。

 

俺は先程の小説を買いつつ、八重神子に向けて何の用かを問い掛けた。メタ的にも大体こういう時は厄介ごとが俺に転がり込んでくるのだ。

 

だが、八重神子は目を細めるだけで何も言わない。若干拍子抜けしている俺がいるが、もしかして本当になにもないのだろうか?などと思っていると不意に八重神子の顔に笑顔が戻っていた。

 

「アガレス殿はやはり面倒事にすぐ首を突っ込もうとするのじゃな。安心せい、アガレス殿に頼むことは今の所は存在せぬ。強いて言うなら今度娯楽小説の題材になってはくれぬか?」

 

そのくらいなら構わないが…と思わず了承したが、かなり拍子抜けしている自分がいることに思いの外驚きを隠せなかった。その様子を見た八重神子は笑みを一層深くすると、

 

「変化とは、何者にも平等に訪れるものじゃが…汝だけは変わらぬな。いや、元に戻ったというべきかも知れぬ」

 

そう呟いた。そしてしっしっとばかりに手を振ると、

 

「早う行け。妾はやることがあるのじゃ」

 

そう言った。彼女なりの配慮であると受け取った俺は八重神子に礼を言いつつその場を離れるのだった。

 

〜〜〜〜

 

「はぁ…アガレス、大丈夫でしょうか」

 

稲妻城の天守閣、その一室にて影は布団にくるまりながらそう呟いていた。勿論、その一室とは影の自室───ではなく、かつてアガレスが稲妻に復活してから初めて訪れた際に使用していた部屋である。そして布団は洗濯はしているもののアガレス以外がこの部屋に足を踏み入れたことはない。影と八重神子、そして間者くらいのものである。

 

そのアガレスが使っていた布団だが、影は寂しくなると時偶このようにしてアガレスの布団にくるまっていた。

 

「今はまだモンドで療養中でしたか…?そう言えば神子が今日は多分稲妻に来ると言っていましたが…本当でしょうかね」

 

影はそう呟いて何度目かわからない溜息を吐いた。

 

本当なら、影はずっとアガレスと行動を共にしたいくらいだった。500年前終焉を止めた時然り、先のアガレスの寿命騒動然り、アガレスが辛い時に側にいられない自分に少しだけ嫌気が差していた。

 

しかしアガレスとは異なり、自分は稲妻と眞を守らねばならず、お世辞にもアガレスとずっと行動を共にすることはできなかった。そしてそれをすればアガレスに余計な心配をさせてしまうこともわかっていた。

 

だからせめて辛い時くらいは自分を頼って欲しい、と影は心中では思っている。ただ、アガレスがあまり他人を頼ろうとしないことも知っている。その根底にある自らの友人達を大切に想う気持ちも理解している。だからこそ、自分もその重荷を少しでも背負ってあげたいと思っているわけだが、素直に言い出せればどれほど楽だろうか、と影は布団の中で頭を抱えるのだった。

 

〜〜〜〜

 

八重堂を離れたはいいが稲妻には救民団がなく、自分一人で寛げる場所というものがない。強いて言うなら稲妻城に自分の部屋を貰っているが、行ったら影に突撃されるだろう。別に嫌なわけではないし、何より嬉しいが心配をかけすぎてしまった手前会うのが少し気不味くはある。

 

「…いや、違うな」

 

これは言い訳だ。疲れるかも知れないとか、ゆっくりできないかも知れないとか、そういう理屈を抜きにしても影に会いたいという気持ちのほうが勝っている。

 

ということで俺は稲妻城まで久し振りにやって来た。ちょっとだけ天領奉行所にいる只野達の所にも顔を出してから久し振りに天守閣に入った。

 

久し振り、とは言っても対して間が空いたわけではないので、城内ですれ違う人にお辞儀やら敬礼やらをされる。一応地位的には雷電将軍の一つ下で、かつ奉行より上だ。名実共に稲妻のNo.2というわけである。

 

俺は敬礼やお辞儀を返しながら一旦久し振りに自室へとやって来た。勿論誰かがいるわけもないので、明かりもついていない。まだ正午過ぎだから明かりは必要ないが、出迎える者がいない、というのは些かやはり寂しさがあるな。救民団は必ず誰かしらがいるし、塵歌壺でさえマルがいるのだ。なんだか出迎えのない帰還は久し振りだな。

 

さて、俺がこの部屋へとやって来たのは買ってきた小説を一旦置くためだ。

 

「…ただいま」

 

誰もいないが、取り敢えずそう言ってみる。もしかしたら誰かが応えてくれたりしてな。何なら影とかだったら良いんだが、彼女は今頃執務室だろう。こんなところにいるわけが───

 

「お、おかえりなさいアガレス…!?」

 

奥の寝室から影が驚いた様子で、しかし嬉しいのか頬を緩めたまま出てきた。あまりに驚いた俺は返事をするのも忘れてそのまま立ち尽くすのだった。




次回へ続く!!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。