忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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今回は短めでやらしてもらってます(?)

次回は恐らく長めになるかなぁ、と言った所で…。


第137話 業②

夜蘭と共に少し場所を移した俺は、現状での推理を夜蘭に伝える。

 

「現状、俺達は何らかの空間に閉じ込められている。先程も述べたが、空気の流れを一切感じないんだ」

 

空気が流れていないということはここが断絶された場所であることを意味するが、先程落ちてきた穴からすら空気が流れていないというのは本当に妙だ。とはいえ、俺の感覚が打ち身によって鈍っているという可能性は捨てきれない。

 

しかし、夜蘭も同じ結論に達していたのか首肯くと、

 

「さっきまで私は一人行動だったけど、その時に秘境へ繋がる道を見つけたわ。まるでそこに自然に存在しているような佇まいだったけれど…私達がここへ落ちてきた時には絶対になかったはずのものよ」

 

そう言った。なるほど、空気の流れが無くてなおかつ先程までなかった秘境や道が増える、となると確実に黒幕がいるのだろう。普通に考えればこういったよくわからんことは全部『アビス教団のせい』で片付くのだが、生憎層岩巨淵は不思議なことが多々起きる場所だ。彼等の仕業とは断定できないだろう。

 

加えて指輪の通信機能にも影響が出ている。層岩巨淵に入る前も入ってからも結構話しかけてきていた影からの通信が、この空間に来てからは何もなくなってしまったのだ。旅人とは試していないが、少なくともバルバトスとも繋がらない。つまりこの空間は完全に外界とは切り離されているというわけだ。

 

俺は少し考えてから、

 

「…黒幕がいると仮定するとその秘境に入れ、ということなのだろうな。どうする?危険を考えるならここで救助を待つという手も勿論あるが、あまり期待はできないだろう」

 

そう言った。影には確かに俺の行き先は告げたが、層岩巨淵のどの辺りまでかは告げていない。加えて煙緋も旅人もそもそもが長期滞在が前提の任務であり冒険者協会の救援も期待できない。何より来た所で犠牲者が増えるだけのような気もする。

 

俺的には入っても最悪なんとかしようと思えば…なんとかなるだろう。ただ、それをするには元素爆発を使うしかないわけで、旅人達を護るためには俺に密着させねばならないだろう。なんか色々な意味でヤバいので元素爆発は使えない。何よりここは地下空間であるため空間を壊して崩落させでもしたら生き埋めだ。故に正攻法(?)を探して出るしかないのである。

 

夜蘭は顎に手を当てて少し考える素振りを見せると、秘境へ入ることに賛成してくれた。夜蘭は層岩巨淵の事情を詳しく知っていそうな雰囲気があるが、今の所はまだ聞かずにいようと思う。

 

ひとまず夜蘭と一緒に旅人達の下へ戻った俺は皆に通路とその奥に秘境への入り口が見つかったことを告げ、一緒に秘境の入り口付近へと移動してきた。それぞれなんでこんな場所に、との驚きは同じなようだが、煙緋は驚きつつも冷静に秘境周りを分析して、

 

「…秘境の周囲の岩石は本で読んだものと同じで、かなり古いもののようだ。つまりこの秘境はかなり昔からあるようだ」

 

そう言った。勿論この空間自体夜蘭や煙緋が把握していないことを考えると直近で出来たものでないことくらいわかるし、何より俺も知らない空間だ。実は俺と同郷のモノだったりして、なんて予想を立てては見たのだが、結局の所入ってみなければわからないということで考えるのをやめて秘境へ足を踏み入れるべく俺は進み始めた。

 

しかし、直後に俺達以外の誰かの気配を感じて立ち止まった。少し遅れて夜蘭もその気配に気が付いたらしく、警戒態勢を取っている。俺は知っている気配だったために警戒をしなかったが、夜蘭にとっては初めての気配だったためかかなり警戒している様子だ。

 

やがて現れた青年を見た俺と夜蘭以外の皆がそれぞれ知っている名でその青年の名を呼んだ。

 

「魈!?」

 

「降魔大聖!?」

 

そう、現れたのは仙衆夜叉のうちの一人、降魔大聖こと魈だった。パイモンはどうしてここに?と魈に聞いていたのだが、聞かれた当の本人は旅人を見て、それから他の皆を見て、最後に俺を見ると軽く頭を下げた。俺は視線だけで俺のことは気にせず目的を果たせ、と伝えると、魈は感謝を込めた瞳で俺を見てから、

 

「…我も今しがた降りてきたところだ。先程轟音が聞こえた故、確かめに来た次第だ。言っておくが我は他にすべきことがある故同行はできぬぞ」

 

パイモンの疑問にそう返した。だが、旅人が魈のすべきこと、というのが気になったのかそれが何なのかを魈に問い掛けた。魈は一瞬言うべきかどうか迷った様子を見せたが、

 

「…人探しだ。とにかくここはお前達が来るような場所ではない、早々に立ち去るがいい」

 

すぐに言葉を濁しながら誤魔化すようにそう言った。俺はふむ、と一つ唸ると、

 

「皆、俺は少し彼と話していくから先に秘境に入っていてくれるか?」

 

そう言った。魈が驚いたような顔をしているが、俺が話すと言っているからか消えるようなことはしなかった。夜蘭は俺に何か考えがあるものと踏んで同意してくれたようだ。一応、行動しているチーム?パーティ?のリーダーは夜蘭のようなものであるため、夜蘭が同意してくれれば他の皆も大体同じだった。勿論、荒瀧一斗は反発したそうだったが、そこは久岐忍がなんとかしてくれて俺と魈を除く全員が秘境の中へと入っていった。

 

「…さて、久し振りだな魈」

 

「…はい、お久し振りですアガレス様」

 

二人だけになった俺達はまず簡単に挨拶を交わす。そして俺は、

 

「この空間の異変には気付いているな?」

 

魈にそう問いかける。魈は俺の言葉に首肯きを以て返した。そして出る方法が今の所不明であることも彼に伝え、そして俺が聞きたかったことを聞くことにした。

 

「…人探し、と言っていたな。復活してから聞いたんだが、500年前にここ層岩巨淵で行方不明になった謎の夜叉がいると聞いたんだ。お前はその夜叉を探しに来たんだろう?」

 

かつて、岩王帝君に璃月を護るために招集されていた戦闘を得意とする仙人達は『仙衆夜叉』と呼ばれ、魈はその内の一人だった。だが、他の仙衆夜叉達はそれぞれの理由で死ぬか、行方不明になってしまった。そしてその根底にあるのは、『業障』と呼ばれる俺を蝕んでいた呪いに近いモノだ。

 

それが原因である者は発狂し悲惨で壮絶な死を遂げ、またある者達は同じく発狂し同士討ちによって死を遂げた。そしてある者は精神崩壊して行方不明になり、夜叉で唯一残っているのは魈のみとなってしまった。

 

救ってやれなかった俺が言えたことではないが、彼等に責任をなすりつけて矢面に立たせてしまったのは俺とモラクスの…落ち度とも言えるのだろう。

 

そして唯一仙衆夜叉で行方不明になっていたのは浮舎という名の夜叉だった。そして魈と浮舎はかなり交流のあった二人だった。その浮舎の行方と思しき話が、層岩巨淵の正体不明の夜叉の話だったというわけなのだろう。

 

魈は俺の言葉に首肯くことはしなかったが、雰囲気だけで浮舎を探しに来たのだとわかった。俺はそんな魈へ向けてそうか、とだけ呟くと秘境へ足を進め、秘境へ入る直前で苦虫を噛み潰したような表情を浮かべている魈の顔を見た。

 

「…気負いすぎるなよ?お前達がああなってしまったのは…俺とモラクスにも原因があるということを絶対に忘れるな」

 

その言葉を聞いた魈は、

 

「…しかし、我は…!」

 

と俺の言葉を否定しようとした。だが俺はその言葉を手で制する。そして再び口を開いて、

 

「…わかっているさ。だから、ただの…友人からの忠告だとでも思っていてくれればそれでいい」

 

俺は最後に微笑みかけてから秘境内へと足を踏み入れるのだった。

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