忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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今回の話は長くなりすぎる予感がしたので二個に分けます
見るときは2話分見れる時間を確保してくださいね☆

アガレス「しれっと更に宣伝するな」

テヘッ☆

パイモン「テヘッてなんだよ!」


第139話 業④

「───って、戻ってきてるじゃないか!!」

 

秘境を出たはずの旅人一行だったが、パイモンのその悲鳴の如き叫びからも分かる通り、元いた場所へと戻ってきていた。その言葉に久岐忍も同意しつつ、出発地点のようだな、と口元のマスクに隠れて見えないが神妙な顔つきで呟いていた。

 

「た、旅人…オイラ達、道を間違えちゃったのか…?」

 

全員事情がわからないことを悟ったパイモンが少し怖くなったのか、藁にもすがる思いで旅人にそう問いかける。しかし旅人はそんなパイモンの気持ちなど露知らず、

 

「道中分かれ道は無かったから間違えようがない」

 

首を横に振りながらそう言った。「旅人ォ〜オイラを見捨てないでくれよぉ〜うわあああ」と旅人の肩を揺するパイモンとそれをなんとか諌めようと頑張っている旅人達を尻目に、夜蘭は本当にこの空間が先程までいた場所と同じかどうかを調べている様子でキョロキョロと見回しながら壁に触れたりしている。ちなみに魈はすぐに「我はアガレス様を探す故、ここからは別行動だ」と言い残して既に離脱していたためこの場にはいない。

 

夜蘭の静止の声も振り切って焦った様子を見せていたため、アガレスに何かあったら、と考えていたようだ。

 

さて、そんな中少し震えている様子の荒瀧一斗が声を上げる。

 

「…そういや、稲妻にはこんな話がある。商人が夜道を歩いていると、狸が妖術で一晩中同じ所を彷徨わせ、夜が明けるまで抜け出せないとか…つまり俺達は今そういうのに遭遇してるってわけだ」

 

表面上は余裕そうにしている荒瀧一斗だが、久岐忍が鬼打牆だな親分、と言った瞬間心做しか体の震えが大きくなっていた。おまけに、とばかりにパイモンが周囲を軽く見回して、

 

「さっきまでオイラ達がいた空間のはずなのに、出口みたいな場所は一箇所も見当たらないぞ」

 

そう言いつつ嘆息した。そう、先程見つけた秘境への道も無ければ落ちてきた穴もなくなっている。完全に閉じ込められているようだった。荒瀧一斗はだが安心しろとばかりにニッと笑うと、

 

「荒瀧派の隠れ構成員、丑雄は邪気を払うことができる俺様のダチだ。今から丑雄を呼んでこの状況を動かしてやるぜ!!」

 

得意げにそう言った。だがパイモンは呆れたように肩を竦めると、

 

「なんで一斗が自慢げなんだよ…」

 

そう呟く。だが既に荒瀧一斗の耳には入っていないようで、やがて右手を大きく振り被るといでよ、丑雄!と叫んで虚空を殴る。その勢いに思わず目を瞑る旅人達だったが、やがて目を開けるとそこには、

 

「───モォ!」

 

大きい角を生やし、背には刺々しい装飾を背負う小さめの牛の姿があった。驚いたように丑雄を見つめる旅人達に丑雄は軽くお辞儀をするような仕草を見せつつ再びモォ、と鳴いた。それを聞いた荒瀧一斗には言っている意味が理解できたのか、

 

「お、丑雄が挨拶してるみてぇだぜ。お前ら、こいつのことは丑雄か丑兄貴って呼んでやってくれ!」

 

自慢げにそう言った。だからなんで一斗が自慢げなんだよ、とパイモンはツッコみたくなったがむぐっと口を噤んでそれを抑えると、口々に挨拶を口にした。そして何故丑雄を呼んだのか少し疑問に思ったらしいパイモンが荒瀧一斗に何故かを問うていたのだが、荒瀧一斗によれば「人手(?)は多い方が良いだろ?何より、丑雄は道を探すのが得意なんだ、コイツに案内してもらえば一発だぜ!!」とそういうことらしく、パイモンはなんとなく納得していたようだった。

 

そして荒瀧一斗は丑雄に道を探させようとしたのだが、

 

「よし、丑雄!俺様達のために道を───「待て、探したところで多分意味はないぞ」おわぁっ!?」

 

と響いてきた声で中断せざるを得なくなった。荒瀧一斗が驚いてバッと振り向いたその視線の先にはなんと───

 

「あ、アガレス…?」

 

───そう、何故かアガレスがいたのだ。

 

〜〜〜〜

 

「あ、アガレス…?」

 

驚いたような目でこちらを見る一行に向け俺は苦笑すると、

 

「あー、驚かせてしまったな、すまん」

 

思わずそう謝る。直後旅人達全員が驚いたように俺の無事を確かめていたのだが、夜蘭だけは俺を疑いの目で見ている。まぁ当然偽物の可能性はあるわけだからな。

 

俺はそんな彼女に本物であることを示すため、嵌めている指輪の内の一つを弾くと、

 

「これで証明できるな?旅人」

 

指輪に向けそう喋る。そして声は俺の口と旅人のつけている指輪から発せられていた。勿論この指輪は俺しか持っていないモノであり、どうあがいても入手出来ないものだ。それを理解している夜蘭はそこまで来てふぅ、と少し息を吐いた。

 

そんな中俺を心配している様子を見せる煙緋やパイモン、旅人に状況を説明すべく口を開こうとした。しかし、

 

「おい、俺様の見せ場をまたもや奪いやがって…!!」

 

荒瀧一斗が俺に指をさしながらそう言ってきた。かなり怒っているようにも見える。

 

いやごめんじゃん、と思ったのだがあのまま丑雄に探索させていても大した成果は得られていないだろう。勿論今回も久岐忍や煙緋も加わって諌めていたのだが、まぁ彼は元気?というか天下第一と名乗るくらいだからかなりプライドが高いようだ。俺は別に嫌いじゃないし、そういうのは可愛いと思うが、九条裟羅には嫌われそうだな、なんて適当に思う。

 

「それで、今の今までどこ行ってたんだよ?」

 

勿論すぐにパイモンのその言葉で現実に引き戻された俺は、少し考えてから首を横に振ると、

 

「それがさっぱり。秘境に入ったところまでは覚えているんだが気付いたらここにいたんだよ」

 

そう言った。その言葉にパイモンのみならず他のメンツも───旅人、夜蘭、煙緋を除いて進展がないことに少し落胆している様子だった。まぁ久岐忍はマスクで表情があまり見えないからわからないが、付き合いが浅いから嘘をついているという疑念は少なからずありそうだが、それが真実味を帯びることはないだろう。

 

そう、俺のこの言葉から分かる通り嘘をついている。本当は全然覚えているがこれは俺の存在の根幹に関わるモノだから言うことは出来ない。

 

 

 

何があったかを話すと、あの秘境に入った俺は真っ暗な空間に出た。先に入った旅人達がいないことを疑問に思いつつ少し探索をしようとしたところで自分とほぼ同一の存在を見つけた。どうやら、彼等は俺を除いて八体いるようだ。

 

まぁその存在っていうのは一周目の俺と、そして更にその前に存在していたと思われる『アガレス』が複数人のことだ。一周目というのは、俺が前々回の『終焉』の際神三柱分のエネルギーを消費して世界そのものをリセットした時に存在していた俺の人格だ。そしてそれより前、つまり俺がテイワット大陸に存在する以前に別世界で生きていた人格だ。イレギュラーを除けば、前者と後者を合わせて七体いる。それらが、皆一様に俯いて何かを囲んで見つめている。

 

それと驚いたことにこの七体の中には俺が前回の『終焉』を止めた際の人格も含まれており、聖遺物としての指輪を3対持っていることの証明がついた。

 

さて、それはともかくとして、俺ともう一体を除いた七体はわかる。それぞれ元素を持ち、彼らがいたから俺が全元素を扱えたのだということも。そして厳密にはやはり俺の力はテイワット由来の物ではないことも。

 

だが、唯一俺を除いたもう一体の存在だけはわからなかった。七体に囲まれていた彼は、見たことのない様式のベッドの上に寝そべり、見たことのない機械のようなモノが周囲に沢山あり、細いチューブのようなモノが彼の腕や鼻に刺さっている、或いは入っているのが見える。そんなチューブの内の一つは半透明な液体の入った袋に繋がっており、何かを注入されているのだとわかる。

 

他にその付近にある謎の箱のようなモノは波形と数字がそれぞれ色分けされており、そのどれも100に満たない数値を示している。

 

そしてその人物は『アガレス』という存在そのものではないように見える。全身が痩せ細っており、何より俺達と異なり黒髪黒目で稲妻人に多い特徴になっていると言える。全員銀髪赤眼である俺達と比べれば、既にこの時点で何かが異なっていると言えるだろう。

 

「───ようやく来たのだな、私達は手ぐすねを引いて待っていたというのに」

 

内一体が俺の方を見ながら口を開いて声を発した。

 

俺にはまだ、この空間のことも、そして今自分がどのような状況に置かれているのかも完全には理解出来ていなかった。だが、その声の主が何者かを知っていた俺は一応、

 

「…お前は一度目の『終焉』を止められなかった俺だよな?」

 

口を開いてそう問い掛けた。すると彼は否定も肯定もせずただ口の端を持ち上げて笑う。まるで馬鹿にしているかのようなその笑みに少し苛ついたが、自分に苛ついても仕方がないので心を落ち着かせ、今度はこの空間に関して問い掛けた。すると、

 

「ここはお前の心中を映す鏡のようなモノだ。中で私のみが喋る機能を与えられている」

 

機能?と疑問に思ったが口にも顔にも出さず、そのまま俺はなるほど、とだけ返した。なんとなくだが彼は決められたこと以外を話す機能がないのだと理解した俺は、

 

「私達は───「わかっている。だが後ろのヤツは誰だ?みたところこの世界の服装ではないようだが」

 

試しに次に紡がれた言葉を遮ってみた。だが、俺の意思とは関係なく話しているところを見るに無視しても良いのかも知れない。それはそれとして恐らく心中を映す鏡というのは間違ってはいないのだろう。だからこそベッドに横たわる存在のことが気になるし、俺と何の関係があるのかを知りたかった。

 

「…それで、一応聞くがソイツは誰だ?」

 

俺はそう問い掛けたが、やはりと言うべきか反応はない。俺はふぅ、と息を吐くと諦めて他の出口がないかを探すべく踵を返した。だが、

 

「───わかっているはずだ。お前が真にこの世界の存在でないということくらい」

 

不思議とそれが先程とは違い自分に向けられた言葉であるとわかった。俺は振り返らぬまま、

 

「それは既に通り過ぎた道だ。俺の質問に答えろ、後ろのヤツは何者だ?」

 

そう問いかける。明らかに機能外のことをしていることは明らかだったが、俺はその内わかるだろうから、と細かいことは気にしないことにした。後ろで少し動く気配がして間もなく、

 

「此奴は複数いる私達が私達になる以前の存在…生きることからも死ぬことからも逃げ続け、挙げ句の果てに殺された愚かな存在だ」

 

心底憎むかのような言葉が聞こえてきた。それは生半可な恨みではなく、恐らく数千年、或いはそれ以上の月日を重ねて恨みを募らせてきたかのような言葉だった。

 

「此奴はこの世界とは異なる世界…元素が超常の力と称される世界において生を受け、周囲に迷惑をかけ続けていたことを自覚しつつも自らを変えることが出来ずに結局殺された哀れな男だ」

 

その言葉を聞いた俺はハッとして俯いたが、言葉は残酷に尚も続いた。

 

「此奴を殺害した者は此奴の大切な存在をも殺した。加えて最後を看取ることは出来なかったようだ」

 

───俺の誰かと繋がっていたいという本質も。

 

「そして此奴には力がなかった。故に全てを護れる力と理不尽な世界を壊すことのできる力を求めた」

 

───俺の大切な存在を護りたいという本質も。

 

「だからこそ、死ぬわけにはいかなかったのだろう。死ぬ間際強く願ったのだ、こんなところで終われるか、と」

 

───俺がこの世界で何度も蘇ったのも、全てこの一人の人間から始まったことなのだ。

 

その瞬間、グツグツと俺の中で激しい怒りが煮え滾ったが、一度深呼吸してそれを吐き出すと、

 

「つまりこう言いたいのか?俺達の存在はこの世界にとってイレギュラーであり、俺さえいなければ『終焉』が起きること無く滅亡の危機に瀕することは無かったと?」

 

天を仰ぎながらそう告げる。彼はその問いに対して答えを提示しなかったが、その沈黙こそが答えだった。

 

死にたくない癖にこの世界に自分が不要だと考えていていっそ死にたいとまで思っているのだコイツは。

 

俺は以前一周目の俺に言われた言葉を思い出して少し笑うと、

 

「なるほど、以前お前が言っていた『存在しないししてはいけない』というのはそういうことか。であれば…いや、そうであっても俺のすべきことは変わらない」

 

俺───否、俺であったモノ達を睥睨しながらそう呟き刀を抜き放つ。確かにこの秘境は俺の心を忠実に映し出しているモノなのかもしれないし、恐らくこれに関しては事実なのだろう。

 

だがあくまでも秘境の内部であり外に出る条件があるはずだ。そしてそれは恐らく───

 

 

 

───とまぁ実際の所はあのベッドの上にいた人間を倒すだけだったのだが、なんというか中々面倒くさかった。

 

全元素を扱えるのが二人、他それぞれの元素を一つずつ使ってくるヤツらもおり、それぞれが連携して俺を殺しにかかってくる。なんていうか性悪な秘境だと感じたし、倒しても復活してくるので物凄く面倒臭かった。元素爆発を使ってしまおうかとも考えたが、それは奥の手だから今は使えないと判断した俺は向かってくる俺の分身のような存在を殺さずに敢えて過負荷反応と風元素で大きく吹き飛ばした。僅かな隙ではあるが、無抵抗の相手を殺すには十分すぎた。

 

そうして出てきて今に至る、ということだ。結局の所秘境の中で与えられていた役割以上のことをしたあの存在は一体何だったのかは俺にはわからない。ただ一つわかったのは、俺は俺自身をまだ完全に把握しているわけじゃないらしい。

 

俺は少しの間黙っていたのだが、そんな俺を怪訝そうに見る一行へ向けて告げる。

 

「取り敢えずは無事に再会できたんだし、お前達の状況も教えてもらうぞ」

 

「…まぁ覚えていないのなら仕方ないわね…先ずはこっちで起きたことの詳細を伝えておくわ」

 

そして俺の言葉を聞いた夜蘭が口を開いて状況を伝えてくれた。大体把握したのだが、確かに秘境を突破して出口ではなく上から落ちてきた場所へ戻ってくるというのは少し妙だな。現に俺も同じ現象が起きていた訳だし。

 

「…まぁ一旦休息を摂ろう。整理する時間が欲しい」

 

体感的には1時間位だろうか、休まずにここでずっといたとなると精神的疲労は皆も大きいことだろう、と思って俺はそう提案した。その提案に旅人達や夜蘭、煙緋、久岐忍が賛同してくれたため休息を摂ることにしたのだった。

 

余談だが、荒瀧一斗は「俺様はまだまだ元気だっつーの!!」と何故か俺に対抗心を燃やしていたが、煙緋の言葉で諌められていた。どうやら俺がいない間に仲良く(?)なっているらしい。

 

なんていうか、学校へ通う際に入学してすぐ体調不良で休んで、少しして学校行ったら既に自分以外の仲良しグループが出来上がってた人の気分だ、なんて場違いなことを思うのだった。




次々回からきっっとタイトル変わるはず…手抜き()タイトルともおさらばってことね

アガレス「わかってるなら手抜きすんなよ…」

仕方ないじゃん!毎回考えるの大変なんだからね!!

という小話です。真面目に毎回タイトル考えるの大変なんですが、まぁ私がなんとなくわかりやすいように付けてるだけなんですねーこれ
ちなみにこの話は結構前々から考えていたんですが、ここまで続けられると思っていなかったという()
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