忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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ワクチン打ったんですが副反応が酷くてヒイヒイいいながら描きました

追記 : だからどうしたそれでも書くんだよォ!!

と、後から思っております。


第11話 業務提携の話ししてたのに…

「───久しぶりだな、アガレス…いや、今は神龍団団長殿、とお呼びすべきかな?」

 

神龍団を出た俺とエウルアは西風騎士団本部の大団長室にいるジンを訪ねていた。勿論アポは取っているので、西風騎士が大団長室まで案内してくれて会談の場が設けられる運びとなっていた。

 

大団長室内にて、ジンとガイア、そして俺とエウルアがそれぞれ席についており、開口一番、ジンは皮肉っぽく俺にそう言った。

 

いや、実際皮肉は入っていると思うので俺は軽く肩を竦めるだけにしておき、本題に入ろう、と視線だけで彼女に伝えた。

 

「…業務提携についてだったな」

 

ジンも同様に軽く肩を竦めると、俺から出された書類を手に取りひらひらと振った。

 

本題に入ろう、と視線で伝えた手前申し訳なかったのだが、やらねばならないことを思い出したのでそれを先に伝えることにした俺はジンの言葉を手で制すると口を開いた。

 

「その前に、西風騎士団はようやく内情が落ち着いたとはいえ、欠けている役職は多いだろう?」

 

遊撃小隊隊長は欠けているし、他も現状モンドにはいなかったり、欠員だったりが多い。一部を除いて本当に人手不足なのだ。

 

まぁ、純粋な人手不足もあり、ファデュイ関連でも信用を多少なくしている西風騎士団が人手不足なるのは、当然と言えば当然だった。

 

斯くいう俺も西風騎士団を抜けた者の一人だ。ただ、俺個人の感情とすれば、騎士団に所属する個人個人は皆知り合いなので、普通に手助けしてやりたい。

 

何よりモンドの事実上の統治機構である西風騎士団が屈してしまえばこちらとしても大損害だし、あの高圧的なファデュイの面々にモンドの民が晒されるのは嫌なのだ。

 

俺は上記のことを説明してからジンに問う。

 

「だから、西風騎士団内でファデュイとの交渉ができるくらいの地位を、一時的でいいからくれないか?」

 

俺のその言葉にガイアもジンも少し驚いたような表情を浮かべた。尚神龍団の面々には俺がこの提案をすることは事前に伝えてあるため、驚くようなことはない。

 

俺の言葉にジンは少し考える素振りを見せると、

 

「…アガレス、変装はできるか?」

 

おもむろに口を開いてそう言った。俺はふむ、と一つ唸ると、

 

「変装は可能だ。人相書きはおろか、スメールの『写真機』にも撮られていないはずだから、髪色と髪型…あとはそして瞳の色さえ変えれば問題ないはずだ」

 

言いつつ、銀髪は黒髪に、紅眼は碧眼にでもしよう、などと考える。髪型は適当にわしゃわしゃすれば問題ないだろう。

 

そしてジンの口ぶりから察するに許可はくれるらしい。俺がそう考えていると、

 

「君に交渉を任せる、という点について私も賛成だが…」

 

ジンが賛成の意を示しつつも、微妙そうな表情を浮かべる。恐らく、どう変装した俺を扱うかを決めかねているのだろう。

 

だが、不意に何かを思いついたようで口を開いた。

 

「今、丁度今期の騎士選抜が終わったところで、合格者を選考中なんだ。その中に君の変装中の身分を紛れ込ませよう。選考員は私とガイア、そしてアルベドだから、他2人にも伝えておく」

 

ガイアは隣で聞いてるけどな、と思いつつそれでいいのか西風騎士団…とも思う。ほぼというか、モロ偽造身分だというのに代理団長自ら犯罪をするとは如何なものか。

 

ただまぁ、それくらいモンドそのものが追い詰められているのかもしれない。それこそ、生真面目な彼女が形振り構っていられないとなると、結構瀬戸際だったりしてな。

 

それはそうと、ファデュイが表立ってモンドに政治的な圧力をかけ始めたのは半年前だ。なにか理由があったりするのかを、ジンについでとばかりに聞いてみると、

 

「ああ、どうも、せんぱ…ディルックを狙ったものみたいだ」

 

苦々しい表情を浮かべながらそう言った。ディルックといえば半年前にモンドに帰ってきてワイナリーのオーナーに就任した赤髪の男だろう。今の所俺とは接点がない人物でもあるな。

 

だがその彼がどうしたというのだろうか?と考えているとジンがその疑問に答えるように口を開いて続けた。

 

「彼らの計画をことごとく邪魔したために恨みを買っているらしく、表立って敵対する素振りは見せていないが、裏で色々やっていることは明らかなんだ」

 

ファデュイに恨みを買われるとは、余程のことをしたらしい。ただ、先も述べた通り俺は接点がないためディルックについて詳しく知らない。

 

現騎兵隊隊長であるガイアの義兄弟でガイアの役職の前任であることは知っているが、ほぼそれくらいだけしか情報はない。ただまぁ、これに関して知っているのは俺が依頼でアカツキワイナリーに行ったときに、メイド長であるアデリンから話されていたからだ。

 

そう考えると立場的にも知っておいて損はない人物であると言えるだろうな。

 

などと考えていると、ジンはそれは置いといて…とばかりに一旦瞑目してから考えを改めるようにしながら口を開く。

 

「…君には一時的に遊撃小隊隊長の座についてもらおう。今そこがちょうど空いているしな」

 

言われてから、遊撃小隊隊長の地位之ことを考えていたのだが、大体良さそうだ。変装中の身分なので下手な役職だとモンドにいないと不自然だ。

 

その点遊撃小隊隊長はモンドにいないことが多いため、ほとぼりが冷めた頃に死亡扱いにでもしてしまえばいいだろう。そう考えれば遊撃小隊隊長という地位は適任だと言えた。

 

「わかった、ファデュイのことは任せてくれ」

 

そこまで考えて俺はそう告げ、ジンが首肯いたのを見て次の話題へと転換させるべく口を開く。

 

「西風騎士団の内情はどうだ?落ち着いたとはいえ、仕事は減ったんじゃないか?」

 

ジンははぁ、と溜息を吐くと少し悲しそうに言った。

 

「ああ、西風騎士団はファデュイの圧力によって完全に弱体化していると言っていい。我々には神龍団にはない歴史があるとはいえ、最近は神龍団───君たちの話題でモンドは持ちきりだ。だから西風騎士団ではできない小さな日常の依頼などは、君達に流れていっているのだろう?」

 

ジンの言葉に俺は首肯きつつ告げる。

 

「加えて、最近は俺達の実績もあるから大きめの依頼も転がり込んでくるからな」

 

例を挙げるとすれば、少し前に起こった『黒い焰』事件の解決自体は西風騎士団がやったが、事件の捜査をしたのは俺たち神龍団だった。その事件からファデュイの執行官である『博士』はモンドから追放されるわ、俺たちの株が上がって忙しくなるわ…いよいよジンの気苦労がわかってきた。

 

「だが、やはりファデュイの面々は君の神龍団を好ましく思っていないだろう」

 

表向きは西風騎士団が全て解決したことにはなってるが、俺が捜査をしていた、ということを知っている住民もいたようだし、デットエージェントあたりが上に報告してそうだな。全く以て面倒臭い連中だなファデュイってのは。

 

ジンは心の底から俺を心配しているのか真剣な表情で、

 

「闇討ち、暗殺…様々な殺害行為や妨害行為が考えられる。気をつけてくれ」

 

そう言った。そんなジンの気遣いに感謝しつつ、俺は少し笑いながら口を開いた。

 

「ああ、何しろ俺は奴らにとって『好まざる人物』らしいからな。光栄な限りだが」

 

余裕そうな俺を見たジンも少し笑うとすぐに寂しげに目を伏せつつ、

 

「まぁ、とにかく、仕事の量は以前に比べ半分以下になった。楽にはなったが、モンドの皆から頼られないのは少し寂しくもある」

 

そう言った。まぁ神龍団の存在に加えてファデュイを御せないから西風騎士団自体の信用が多少下がってしまうのは仕方のないことだろう。

 

ただそれでも、彼女個人の人望は厚い。だから西風騎士団と神龍団の両立がなんとか出来ているといった状態なのだ。適度に…いや、絶妙なバランスで仕事が分かれている状態であり、その均衡はいつ崩れるかわかったものではないのが現状だ。

 

だからこそ、俺達の業務提携で上手い具合に仕事の分配ができれば…と考えたわけである。業務提携の発表は勿論神龍団と西風騎士団の合同で行うことになるだろうが、それが終われば何かと動きやすくなるだろう。

 

「俺達の仕事の内容はバラバラだ。いなくなった猫を探してほしいとかの小さい依頼から怪しい商人の金の流れの追跡なんかまである。まぁ、大きい依頼ほど、案件的には西風騎士団に任せるべきものになってくるわけだ」

 

俺は業務提携を行うに当たっての前提を話す。ジンもガイアも理解しているようで首肯いている。

 

ここまでわかれば後は早い。俺は少し笑うと、

 

「そこで、小さい依頼から中くらいの依頼まではこちらで引き受け、大きい依頼はそちらで、或いは両方で受けるというのはどうだろうか?」

 

そう言った。業務提携というのはそういう意味で、現状、モンドには…まぁ平たく言ってしまえば『なんでも屋』的なのが二つ存在しており、西風騎士団と神龍団がある状態だ。

 

西風騎士団はモラを貰ったりはしていないが仕事の効率は悪い。逆に俺たちはモラを貰って仕事をしているが効率はいい。

 

棲み分けは一応できているように見えるが、実態としては神龍団の仕事が増える一方で西風騎士団の仕事を奪っているようなものだ。

 

「俺達神龍団と西風騎士団、この2つは対比構造になっているわけだが、このままだとモラを支払ってでも俺たちに依頼をして解決してもらおう、という人が更に増えるだろう。俺達としてはそれはそれで構わないが、西風騎士団が頼られなくなればモンドは間違いなく瓦解してしまう」

 

事実、西風騎士団への信用が少しずつなくなっていくのと同様に、仕事も比例して減ってきているのだ。

 

そんな俺の説明を受けて、

 

「だからこそ、今のうちに依頼を分け西風騎士団にも仕事が残るように、というわけか…」

 

ジンはそう言って少しだけ悔しそうにキュッと唇を引き締めた。すると、ここまでずっとにこにこしていたガイアが真剣な表情で口を開いた。

 

「なぁ神龍団団長サマ、その場合こっちの仕事は減るんじゃないのか?大きい依頼は少ないだろう?」

 

まぁ、そんなに頻繁にあったら大惨事だしガイアの言葉も尤もだろう。

 

だが、と俺は告げる。

 

「大きい依頼は少ないかもしれない。ただ、犯罪が起きた場合確実に西風騎士団を頼ることになる。そして、軽犯罪なら然程数も少なくないし、多分仕事としては今よりかなり増えるはずだ」

 

俺のその言葉にガイアは少しだけ納得しているような表情になっている。俺は追い打ちをかけるように腕を組んで続けた。

 

「俺たちが関わった大きな事件は今のところ『黒い焰』事件唯一つ。そしてそれはファデュイの圧力を少なくするために俺から西風騎士団が解決したように見せかける、としただろう?実際、最後の方は西風騎士団でなんとかしていたからあながち間違いとも言えないしな」

 

「ああ、そうだな。だが、お前はそれでいいのか?」

 

ん?と俺はわからずに首を傾げると、やれやれとばかりにガイアは肩を竦めた。

 

「お前達の評判が上がればもっと多くのやつを助けてやれる。そうしないのは何故だって聞いてるんだが」

 

ガイアのその言葉に、ああそういうことか、と合点がいった。だが勿論そんなことするはずもない。

 

「…確かに、そうすれば西風騎士団より多くの人間を救えるようになるだろう。だが、そうしたらどうだ?西風騎士団に所属する人々は救えるのか?」

 

突き詰めてしまえば俺が考えるのは全員が救われる方法だ。そしてそれは酷く傲慢なことでもある。

 

だがもしその方法があるなら、模索せねばならないのだ。それが今の俺のしたいことであり、それが俺の『自由』だからな。

 

俺の言葉にガイアは少しだけ驚いたのか目を見開くとすぐにフッと笑った。

 

「不躾なこと聞いてすまん」

 

そんなガイアの言葉に俺は気にしていないことを告げる。一先ず話が纏まったのでジンが熟考しつつ、遂に結論を述べようと口を開いた。

 

「業務提携の件、私は───」

 

と話の途中で部屋の外が騒がしくなってきたためジンの言葉が遮られてしまった。声音的には了承してくれそうだが、果たしてどうだろうかな。

 

さて、それはさておき窓ガラスもガタガタ震え始めている。どうやら唯ならぬ何事かが起きているようだ。

 

ジンもそれを理解したのか立ち上がると、

 

「対談は一時中断、今は外で何が起きているのかを確かめねばな」

 

そう言った。俺はすかさず窓を開けると外の様子を伺う。戸惑いと恐怖を表情に宿す人々は北西方向を指さして何事かを叫んでいる。北西…といえば、風龍廃墟がある方向だな。風元素で音を拾おうと試みたが何故か拾うことができなかった。

 

と俺はそれを大団長室内の3人に伝え、急いで外に出て北西方向を見ると思わず目を見開いた。

 

蒼い色の巨大なモノが飛んでくる。やがて目視で細部が見える状態になった瞬間、その巨大なモノ───蒼き巨龍は一声嘶いた。そしてすぐモンド城を暴風が包みこみ、人々の悲鳴が至る所から聞こえてくる。

 

俺にとって蒼き巨龍は嫌というほど見覚えのある龍だった。

 

「っ…トワリン…!」

 

俺はギリッと歯噛みしつつ巨龍───トワリンを睨みながらそう言う。

 

そう、本来ならモンドを護る立場である四風守護の東風の龍トワリンがモンド城へ攻撃を加えていた。




さぁ…原作時期まで近付いて参りましたね
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