忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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UAが10000超えてるなんて…そんなに人の目に晒されてるのか…悶死してしまう…


第16話 旅人の依頼

「───さて、今回は西風騎士団代理団長ジンからの依頼だ」

 

俺は食卓を囲んでいる救民団メンツの3人に向けて言う。少し眠そうなレザーを除いた二人はジンの名を聞いて少し驚いている様子だ。

 

俺は少し間を置いてから、

 

「ノエルは会ったと思うが、今回のターゲットは異郷の旅人で、極秘裏の依頼だ」

 

簡潔に標的を述べる。するとエウルアが少し考える素振りを見せてからああ、と呟いくと、

 

「トワリンを追い払ったって噂の子ね。倒せばいいの?それとも騎士団に突き出せば良いのかしら?」

 

エウルアは噂話で聞いていたようでそんなことを言っていたのだが後半はちょっと怖いので待て待て落ち着け、と諫める。ノエルはともかく、レザーは首を傾げているので全く聞いていないらしい。

 

俺はエウルアの冗談よ、という言葉を聞き流し依頼内容を告げる。

 

「彼女がモンドに益となるか害となるか、監視し逐次報告せよ、だそうだ。個人の判断で危険だと思った際には戦闘も許可するらしい」

 

俺の言葉を聞いたノエルはあの方は…と言いたげな表情を浮かべている。俺はそれを一瞥し、

 

「万が一モンドに害意のある存在だった場合、信用しきってからでは手遅れになる。そういった可能性を排除するためにも、この措置は必要なのさ。まぁ、俺も旅人は良いやつだと思うがね」

 

そう自分なりの見解を告げる。まぁ2年ほど彼女と共に働いていたのだから概ね合っているはずだ。

 

俺の言葉にエウルアは肩を竦めると、

 

「ま、やれってことね。けれどレザーはこの任務にはあまり向かないんじゃないかしら?判断基準が難しそうだけれど…」

 

そう言った。まぁ確かにレザーの性格というよりこれまでの境遇を考えればその結論に至るのも首肯ける話だ。

 

しかしそれはどうだろう?と俺はエウルアに言う。

 

「レザーは確かに会話が苦手だが、その分害意には鋭く噛み付いてくれる。寧ろレザーが適任かもしれない、とすら思うね」

 

「俺、人の気持ち、においでわかる。任せろ」

 

そして俺の言葉にレザーも同意し、何より自分の鼻が褒められて文字通り鼻を高くしていた。というか救民団のメンツを考えると俺を除いた適任はレザーしかいないだろう。

 

エウルアが若干納得していないような気がしたので、レザーが適任だと思う理由を話していく。

 

「まず、ノエルは優しいから人を信じやすい。悪いことではないが、疑うことが任務であるこの依頼には向かないだろう」

 

ノエルは少し落ち込んでいるようで、少し俯いている。しかし、だが、と俺は続けたことによってその顔を上げた。

 

「仲良くなって本音を引き出す、という作戦ができなくもないから、ノエルにも頼もうと思えば頼める。だからそんな悲しそうな顔をしなくていい」

 

そう言うとノエルは少し嬉しそうな表情を浮かべた。彼女自身が自らの一長一短な優しさを最大限活かす方法を、きっとこれから磨いていくことだろう。

 

さてお次は、とばかりに俺はエウルアに視線を向けた。

 

「エウルアは少々棘のある言い方が目立つから、最初はとっつきにくいと思われて警戒される可能性がある」

 

俺の言葉を聞いたエウルアは少し拗ねているというか、少し落ち込んでいるみたいだ。

 

しかし無論だが、が入る。

 

「エウルアは根が優しい良い子だから、聡い存在ならその優しさに気が付きわかってくれるだろうし、悪い奴ほどその優しさにつけこもうとするはずだ。エウルアに不向きとは言えない」

 

理由としてはこんなところだろう。そして俺はここからレザーが適任である理由を述べていく。

 

「さて、その点レザーは回りくどいやり方をしなくていいし、一番後腐れがない。ボロは出やすいかもしれないが、出たら出たで相手の反応を見られる。そこでレザーの鼻で感情を読み取れば、この依頼はすぐに終わりだよ。まぁバックアップはお前達に任せなきゃならないけどな」

 

まぁ、自分の感情を自覚せず、それを別の感情に書き換える、なんてできるやつがいなければの話だがな。

 

俺のその説明を聞いて納得したらしいエウルアはそれなら納得ね、と呟き、ノエルはレザーを応援している。俺はその光景を見て満足気に首肯くと、

 

「そういうわけだ。一応俺もバックアップにつくが完璧じゃない。お前一人で判断を下さねばならない状況もあるとは思うが…レザー、頼んだぞ」

 

そう言った。俺の言葉にレザーはキュッと表情を引き締めると、

 

「わかった、俺、頑張る」

 

力強く返事をしてくれたのだった。

 

 

 

 

数時間後。

 

「───えへっ、来ちゃった!」

 

「えへっ、てなんだよ!吟遊野郎、なんでお前までついてきてるんだよ!?」

 

神龍団改め救民団本部に旅人が立ち寄ってくれたのだが、何故かバルバトスもついてきている。そしてそれに気付いたパイモンが思わず、といった形でツッコんでいた。

 

うん、中々ツッコミのセンスあるじゃないか、なんて場違いの感想を持ちつつ、俺はバルバトスが両手で抱えているモノを見て何をしにきたのか察した。

 

一方で少しの間苦笑気味にそちらを見ていた旅人は、ふと俺に視線を向けるお驚いたように目を見開き、

 

「アガレスさん、昨日まで着てたコートは?」

 

そう言って俺に疑問を呈してくるが、俺は微笑みかけるだけで問には答えず、

 

「で、借りていたモノを返しに来たんだろう?」

 

とバルバトスに言った。バルバトスは肯定して礼を言いつつ手に抱えていたものを俺へと差し出す。するとそれを見たパイモンが、

 

「うげ…このコートやけに重そうだな…」

 

苦虫を噛み潰したような顔でそんな事を言う。

 

実際かなり重いはずだ。ウェンティだから軽々と持っているが、旅人とかなら腕が引き千切れるんじゃないか?などと思う。

 

まぁ、このコートはそもそも俺の服だが、その材質はこの世界に生まれた時の姿である龍の鱗を使用したコートだ。そりゃあ思いわけである。その関係で防御力は凄まじいことになっている訳だが。

 

「勿論、洗濯はしておいたからね」

 

バルバトスが冗談めかしてそう言うので、俺もそれに乗っかりつつ微笑みながら受け取って礼を言った。そんな俺達の様子を見ていた旅人とパイモンが、

 

「た、旅人…この二人ってどういう関係なんだよ…?」

 

「ごめん、私もわからない」

 

そうひそひそ話をしているのが耳に入ってきたため、俺はどう説明しようかと頭を捻る。

 

その直後、バルバトスが俺に抱きついてくる気配がしたので、先んじて頭を掴んで拒絶した。今『ピキーン!』って感じがあったぞ。なんか、あれだ、NT的なね。何とは言わんけど。

 

そんな俺達の様子を見ていた旅人達は更に困惑している様子を見せていたので、俺は一つ溜息を吐くと、

 

「ただの友人だ。腐れ縁と言ってもいいかもな」

 

簡潔にそう説明した。実際はもっと複雑っちゃ複雑な関係だが、今はこれだけ理解しておけばいいだろう。ただ、それに反感を覚えたらしいバルバトスは、

 

「ただのって酷くないかい?君と僕は親友と言っても差し支えないと思うなぁー」

 

頬を膨らませてブーブー言っている。俺はバルバトスのその言葉を聞いても特段反応を示さずに聞き流し、

 

「まぁ、それはいい。救民団を見に来たんだろ?案内するよ」

 

本題へ入った。旅人は首肯き、パイモンはそうだった、という表情を浮かべる。だがここでもノイズが入る。

 

「んー、それなら僕はりんご酒が「残念ながら酒はない。りんご自体はあるが食べていくか?」…むぅ、お酒が無いのは残念だけど、りんごは食べるよ」

 

それを見越していた俺はバルバトスの言葉を途中で切ってそう告げるのだった。

 

 

 

旅人は二階建ての救民団の部屋という部屋(個人スペースは除く)を見ていった。客間、応接室、扉で仕切られてリビング、食卓、キッチン、洗面所に風呂、トイレ、で二階はそれぞれの部屋だ。

 

ちなみに個人の部屋の中身は俺もどうなっているかわからない。よく掃除をするノエルによればレザーの部屋にはよく生肉が落ちているらしいのだが真偽の程は定かではない。

 

「………」

 

「た、旅人…どうしちまったんだよ?なんかレザーの部屋を覗き見してから様子が変だぞ…?」

 

そんな話をしている二人組がいるが、見なかったことにしよう。レザーもなんのことかわかってないみたいだからな。

 

パイモンはそれにしても、と救民団の広さに驚いている様子だった。

 

「そりゃまぁな。依頼は結構くるし、モラもそれなりに貯まるぞ」

 

加えて、そんな俺の言葉を聞いたパイモンが更にその瞳を輝かせる。

 

「も、モラも…!?旅人〜、オイラお小遣い欲しいなぁ〜、なんて…」

 

パイモンの真意はまぁわかる。旅人に働かせてモラを沢山稼ごうという腹積もりだろう。だが、旅人はその言葉に明確な回答はせず、ジト目でパイモンを見ると、

 

「もう、パイモンはすぐモラとかお宝に釣られるんだから。そんなだとすぐ詐欺にあうよ?」

 

そう言っている。対するパイモンは青い顔をしながら、

 

「ひ、ひぇ…!?さ、詐欺とか、こ、怖いこと言うなよ…」

 

焦っている様子を見せた。だがすぐに、

 

「まぁパイモンは無一文だけどね」

 

「おい!オイラに失礼だろっ!」

 

旅人の言葉にツッコんでおり、元気になっている。

 

なんだろう、この二人の漫才(?)を見てると中々心が休まるというか、ほっこりする。

 

などと考えているとパイモンとの会話を終えたらしい旅人がジィーっと俺の顔を見てくる。俺の顔になにかついているのだろうか、と首を傾げると、

 

「私の兄、空っていうんですけど、知りませんか?」

 

彼女の口からそんな言葉が紡がれた。言われた俺は少し考えてみたが心当たりはなかったので特徴を問う。

 

「私と同じ金髪で、金色の瞳で、私よりちょっと背が高いくらいです」

 

そして答えてくれた内容を脳内で組み上げ記憶に照らし合わせると、一人条件に一致する存在に思い至ったので、旅人に他の特徴を告げる。

 

「黒っぽい服に、白い色のスカーフ的なものを巻いてたりするか?」

 

そしてその言葉にコクコクと期待を秘めた眼差しを俺に向けながら旅人が首肯いた。どうやら確定らしいが、生憎その期待には答えられなさそうだ。

 

「俺と彼に直接の関わりはないし、今どこにいるのかもわからない。だが、『終焉』の際、この世界に絶望したのか、膝をついていた彼を見た気がする」

 

彼女は一応俺が神であることはジンから既に聞いているので教えても問題はないだろう。だがそれはそれとして俺は余り役に立てなかったことを謝った。

 

だが、旅人はぶんぶんと手を振りながら、

 

「ううん!大丈夫、あの、一応依頼なんだけど、いいかな」

 

そう言って兄を探して欲しいことを依頼してきた。

 

うーん、空と蛍の双子は状況証拠的にもカーンルイアと関わっているのは間違いないだろうし…いや、まぁ俺は『奴』とそういう契約を結んでいるわけじゃないから、別に問題ないだろう。そもそもカーンルイア関連は俺以外の八神じゃわかっていても言えないだろう。

 

問題は報酬だ。彼女はモラを余り持っているわけではないだろうし、どうしたものかと少し考えてから、

 

「いいだろう。報酬は…そうだな、お前の旅に俺も連れて行ってくれないか?」

 

俺は旅人に向けそう告げた。俺のその言葉に旅人は目を見開いて首を傾げた。

 

「理由は2つある」

 

俺はそんな旅人に対して指を2本立てながら口を開くと、

 

「まず一つ目。旅人、お前は『神の目』なしに元素力を扱えるそうだな」

 

そのままそう問いかけた。旅人は首を横に振りつつ、自分も何故扱えるのかはわからないということを俺に告げる。それを聞いた俺は思わず驚いて、「最初から扱えたのか?」と問いかけたのだが、

 

「ううん、七天神像で共鳴して風元素の力を得たんだ」

 

旅人はそう答えた。

 

妙だ、七天神像には確かに、風神の力が宿っているとされいるが、共鳴してその元素になれるなど聞いたことがない。なれるのなら、一般人が『神の目』無しに元素力を扱うこと、それが造作もない事になるはずだ。となると旅人が嘘をついているか、或いは自分は知らないが第三者に教えられた…つまり、

 

「パイモンが教えたのか?」

 

俺はパイモンを見ずにそう問い掛けた。パイモンは突然話を振られて驚いている様子だったが、そうだぞと肯定した。

 

それを聞いた俺はふむ、と唸りつつ少し考えるが旅人と話していたことを思い出してすぐに思考を打ち切ると、

 

「そうなると、旅人は一度に一つの元素しか使えないが、璃月の七天神像で共鳴すれば恐らく岩元素も使える、つまり、全元素を扱える、といっても過言ではないわけだ。今の所の仮説だけどな」

 

そう言った。当然共鳴が他の七天神像で行えるかは不明なので、実際は風元素しか使えないとかなのかもしれない。

 

ただ、二人は???と言いたげな表情を浮かべていたので、見せたほうが早いか、とばかりに俺は両手を前に出した。

 

そして風元素を左手に、右手に岩元素を纏わせ、それを見た二人が目を見開く。

 

「俺は旅人とは違い、一度に一つの元素しか使えないわけではなく、全元素を同時に扱うことが可能だ。もしかしたら、旅人と俺には何かしらの縁があるのかもしれない」

 

同郷か、或いはそれに近い何かかはわからない。俺自身自分についてわかることはあまりないからな。

 

そんな俺の言葉にふむふむと旅人は首肯いていた。

 

「だからこそ、俺と旅人の違いがあるのかないのか、それを確認せねばならない。長くなってしまったがこれが理由1だ」

 

そしてここまでが理由1である。ごてごてと要らない情報を付け足してしまうのは俺の悪い癖だな。

 

さて、理由2は至って単純だ。今のテイワットを見て回りつつ、旧友にも会いたい。ただそれだけである。

 

特にモラクスや眞に影、そしてともすればマハールッカデヴァータもかなり心配してくれているだろう。マハールッカデヴァータに関しては全然見透かしていそうだから、そうでもないかもしれないが。

 

ちなみに他の神々はまださほど交流があったわけではないからわからないから、まぁ何にせよ回って見ないことには始まらないだろう。

 

旅人は2つの理由を聞いた上で、首を縦に振った。

 

「うん、アガレスさんがいるとなにかと心強いし、お願いしようかな」

 

「おう!オイラもいいと思うぞ〜!」

 

二人に了承されたため、俺は彼女の兄、空を探す旅に同行することになった。

 

そういえばすっかり忘れていたが、と思ってリビングを見ると、やはりというべきか、バルバトスが暇そうにしていた。俺はやれやれとばかりに肩を竦めると旅人達に向き直り、

 

「話の途中ですまんが、りんごを出そう。座って待っていてくれ」

 

とそう言ってノエルに目配せをした。そんな目配せに気がついたノエルはお任せ下さい、とばかりに首肯き食卓にバルバトスと旅人達を案内している。

 

俺はそんな皆の様子を見ながらキッチンに移動してりんごを取出し、うさぎ形に切っていく。種は勿論取ってあるので食べやすいだろうことは間違いない。

 

というか来客相手に今更感は否めないな…なんて思いつつ、

 

「お待ち遠様、皆で食べな」

 

俺はうさぎ型のりんごが盛り付けられているお皿を出した。そんなりんご達を見て旅人達全員その瞳を輝かせている。

 

特にパイモンとバルバトスだが。

 

「おお〜これうまいぞ…!もしかしてアガレスが作ったのか?」

 

りんごを頬張り始めたパイモンが俺にそう問いかけてきた。俺は首肯きつつ、

 

「まあ、それなりに長く生きてるからな。料理は割とできる部類に入る」

 

そう言う。そしてもう少し話そうかと思っていたのだが更に声を上げたパイモンに遮られた。

 

「てか、このりんごうまいな!なんか入れてるのか?」

 

素直に美味しいと言ってもらえるのは嬉しいので、俺は話を遮られたことをスルーしつつ、

 

「蜂蜜で軽く味付けしてある。美味しいだろ?」

 

そう告げた。

 

さて、皆出されたりんごを美味しそうに食べていたのだが、特にバルバトスはすごい勢いで食べている。そしてその減りは尋常じゃないほどに早く、皆の分が無くなりそうな予感がしたため、俺ははぁ、と溜息を吐くと、

 

「しゃあねえ…もう一個くらい消費するか」

 

そう呟く。俺はそのまま暫く作り手側に周り、3つもりんごを消費したのだった。尚俺が食べる分のりんごはなくなったので、軽くバルバトスを恨むことにした。




次回は旅人とジン、ディルック、ウェンティとそこにアガレスが加わる話です
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