忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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本日は雷電将軍のお誕生日ということで、書かせていただきました。ついでに閑話用の章を作らしてもらいました。ちなみに今回は少しだけ未来の話となりますね


閑話 雷電将軍の誕生日

「眞、影、いるか?」

 

俺は稲妻城の天守閣までやってきてそう言った。天守閣の最奥には執務室が備わっており、そこで雷電眞と雷電影の二人は執務を行っている。ちなみに、まだ午前中の時間帯なのでまだまだ執務中である。

 

勿論訪ねたのはわざとでそれなりの理由がある。

 

「アガレス、執務中なのですが…」

 

「眞、別にアガレスは邪魔をしに来たわけではないでしょ?」

 

影が入ってきた俺を見ながら少し申し訳無さそうに言い、眞が微笑みながら俺を庇うように言った。俺は普段どおりのこの様子に苦笑しつつ言った。

 

「なに、それを手伝いに来たんだ。なんたって今日はお前達の誕生日だからな」

 

先程述べた理由とはこのことである。さて、俺がそう言うと眞は首を傾げ、影は固まった。

 

「あれっ…」

 

暫しの沈黙の末、俺は確認のために口を開いた。

 

「今日は何日だ?」

 

「6月26日…って、あ…」

 

「き、今日誕生日じゃないですか」

 

眞は俺に言われてあちゃー、という表情を浮かべ、影は純粋に驚いている様子だった。そんな二人を見て俺は溜息を吐く。

 

「だからそう言ってるだろう…わざわざ淵下宮の探索を打ち切ってまで祝いに来たんだぞ?これで当の本人達が忘れ去ってるとか、流石に『無駄足ご苦労さん』とか何処ぞの眼帯に言われそうだ」

 

その何処ぞの眼帯は最近忙しそうだが、などと場違いなことを考えていると、

 

「その、眼帯?に言われるのはよくわかりませんが、誕生日だから何だというのでしょう?」

 

影が首を傾げながらそんなことを言った。それに対して眞が諭すように言う。

 

「誕生日、とはその人が誕生してきたことを祝うとても楽しい日なのよ?その思い出は未来永劫消えず、ある意味永遠を体現したようなもの…というか影、私達毎年祝ってもらってたじゃない」

 

「……私には、よくわかりません。まぁアガレスに会えるならなんでもいいですけど」

 

影の言葉にあらあらまあまあ、と眞は俺を見ながらニヤニヤする。俺は居心地の悪さ、というより若干の照れを感じつつとある提案をした。

 

「…き、今日の執務の半分はやってやるから、今日一日くらい好きに過ごしたらどうだ?そうだ、一緒に色んな場所を回ったりしたらどうだ?新しい発見もあるかもしれないし」

 

「ええ、私はいいけど」

 

「私も構いません」

 

「…アガレス、影と二人きりとか───「いや、お前達二人の誕生日にどちらかを贔屓するとかないから、断じて」あら、残念ね」

 

俺は二人の了承(?)を得てから処理すべき案件を影と眞、そして俺でもできることに纏めて二人に半分ほどになった案件を配り、俺は天領奉行や社奉行、勘定奉行にとある旨の連絡をした。

 

 

 

「───アガレス様、お待ちしておりました!どうぞ中へお入り下さい!」

 

柊家の令嬢、こと柊千里が俺を中に案内した。

 

さて、実は勘定奉行、というより柊家はとある一件で幕府内での立場は危うい。前当主の失脚、信用の失墜…そんな中でも彼女はよくやっているだろう。

 

ちなみに俺の身分だが、王国とかで言うところの宰相的な位置を貰っている。まぁつまりは将軍の政務にも口出しできるほどの立場ってことだ。だから突然奉行所に押しかけても通して貰えるって寸法である。今回に関してはちゃんとアポ取ったけどな。

 

ちなみに役職名は助言役、となっており一代限りの役職である。俺専用に影がわざわざ用意したものだ。

 

「さて…今日集まってもらったのは他でもない…」

 

お決まりの台詞を吐いて俺は会議の口火を切った。勿論集まった皆が首を傾げている。

 

傾げつつもしっかり言葉を返してくれるようだった。

 

「中々大袈裟ですが、我等としても無視できませんからね。助言役殿の招集とあらば」

 

「我等は助言役殿の管理下にありますから、何なりと御命令下さい」

 

「アガレス様、我等三奉行、全身全霊を以て命令を実行する所存です」

 

上から社奉行神里家当主神里綾人、天領奉行九条家当主九条鎌治、そして勘定奉行当主代理柊千里となる。綾人の言には少し棘があるが、彼の過去の苦労を考えるとそんなものだろうか。まぁ、鎖国解除に加えて稲妻を狙っていたファデュイの魔の手からも開放したからな。それなりに功績は大きいから嫉妬している可能性もあるが、正直冷静な彼らしくない、とも思う。嫉妬の線はないな、言い方の問題だわ言い方の。

 

まぁ、神里綾人のことは置いといて。

 

「さて、今日の会議に関しては別に命令というわけじゃない。皆の知恵を、俺に貸してほしい」

 

「将軍様関連でしょうか?」

 

神里綾人の言葉に俺は首肯いた。

 

「今日、6月26日は雷電将軍の誕生日だ。それでモンド、璃月、稲妻の3つの国の中で色々な場所を回ろうと思うんだが、単刀直入に聞く。どこが良いと思う?」

 

俺が3人にそう聞くと神里綾人が納得したように首肯く。

 

「それはまた…確かに、将軍様のお誕生日とあらば、我々もバックアップを惜しむつもりは御座いません」

 

「ではそれぞれで意見を出し合いましょう」

 

「それが宜しいでしょう」

 

三奉行が合同で協力してくれるようで俺は少し嬉しくなって微笑む。ちなみにここにいる3人には将軍が二人いることを伝えてあるのでなんとでもなる。

 

俺は自分の意見を纏めつつ口を開く。

 

「よし、では一人一人、意見を頼む───」

 

 

 

それから数刻後、二人の雷電将軍の執務も終わったようで、俺の伝言通り稲妻城の外に出てきた。

 

「よ、待ってたぜ」

 

眞と影を見つけた俺は手を振りながら近づく。

 

「どこに行くのかしら…楽しみね…!」

 

小さく眞が握り拳を作る。影は影で、少し楽しそうだった。俺はニッコリ笑ってついて来るように言った。俺は二人を伴って稲妻城にほど近い池にやってきていた。

 

「ここは…というか…モラクスに、バルバトス…」

 

「やっほ〜」

 

「久しいな、バアル、そしてバアルゼブル」

 

俺達の視線の先には風呂敷が敷いてあってその上にバルバトスとモラクスが座っていた。俺は眞と影のいる後方を振り返ると、再び満面の笑みで以て告げた。

 

「と、いうわけで久しぶりに一緒に花見でもしないか?」

 

花見と言っても地面に咲く花だけどな、と俺は付け加える。二人は事態が飲み込めていないようだったが首肯き、風呂敷の場所まで移動した。

 

「いやぁ、しかし呼んでみたら意外と来るもんだな。神って暇なのか?特にバルバトスとモラクス」

 

ん〜と唸ってバルバトスはりんご酒は喉に流し込みながら言った。

 

「僕はそこにいるだけで別に何もしないからね。偶に来る仕事といえばモンドを護る時か歌声をモンド中に届けるときくらいだからね。結構暇なんだよ。どっかの誰かさんが皆の困り事も解決しちゃうしね〜」

 

「俺は一年に一度神託を下すだけだ。それ以外には往生堂の客卿としての仕事はあるが、依頼はそう頻繁に来るわけでもない。加えて、その辺りの依頼もどこぞの誰かが処理しているから、お陰で仕事がないんだ」

 

ごちゃごちゃと言い訳をする二人だったが俺は無視して続ける。

 

「要するに暇ってことだなこの暇神共…ってあれ、原因の一端俺なような…?まぁいいや、とにかく!眞と影なんて2人で執務してもほぼ一日かかる執務量だぞ?そんな中ようやく時間作ってやれたんだから喧嘩すんなよ?」

 

「ん〜、じいさんの頑固頭が治れば、かな」

 

「呑兵衛詩人が風情を理解できるようになれば、な」

 

同時にそう言ってぐぬぬ、と2人は睨み合った。この期に及んで仲が良いらしい。

 

「おいおい、言った側から喧嘩をおっ始めるのか?流石に俺の顔を立ててくれよ」

 

俺は苦笑しながら2人を諌めつつ、眞と影を見た。2人は苦笑いとかは浮かべておらず、純粋に今のやり取りを見て懐かしんでいるのか、微笑みながらこちらを見ていた。

 

少ししてようやく2人の怒りは収まったようで、モラクスは茶を飲み、バルバトスはりんご酒を再び口に含んでいた。

 

「眞、影、稲妻城城下町にあった甘味を一杯買ってきたから、色々食べてみると良い。これなんかどうだ?面白そうなものがあってな。『団子牛乳』というんだが」

 

「あら、ありがとう」

 

「私も興味があります、私にも下さい…!」

 

甘味と聞くと影が過剰に反応するのは知っていたが、最近は執務で忙しかっただろうし、恋しかったのだろう。普段よりかなり食いつきが良い。色んな意味で。

 

「んん〜、この団子牛乳、開発した方は天才ですね!今すぐに重用して私専用の団子牛乳職人になっていただかねばなりません!」

 

「いや、駄目だろ…にしても、そんなに旨いのか…?どれどれ…」

 

俺は団子牛乳を一つ頬張り、ふむ、と唸った。

 

「団子の甘み、牛乳の適度な濃厚さ、それが上手くマッチングして…なるほど、これは確かに牛乳、あるいは団子との組み合わせの中では美食の極致といっていいだろう」

 

思わずそう評した。これは確かに影が唸るのも首肯ける。俺の言葉に興味を持ったらしくモラクスが微笑みながら団子牛乳を手に取った。

 

「アガレスがそこまで絶賛するなら、俺もいただこう」

 

「ん〜、お酒とは合わなさそうだなぁ…僕はやめておこうかな…」

 

モラクスとは対照的にバルバトスは今は食べないようだ。

 

それにしてもこれは美味しい。今度ノエル達にもお土産として買っていくべきだな。

 

「しかし…ふむ、この団子牛乳は随分と美味だな。バアル、バアルゼブル、幾らか璃月にも輸出してくれ。無論モラは払う」

 

モラクスは物凄く真剣な表情で眞と影にそう言った。言われた二人は物凄く複雑な表情を浮かべている。というか、どちらかというと団子牛乳を稲妻で独占したい、という顔だなこれは。

 

「このめでたい席に政治を持ち出すのはどうかと思うが…」

 

俺は一応そう言う。だが俺の言葉をまともに聞くやつなんてここにはいない。

 

「ねぇねぇアガレス〜、僕にお酒ちょうだいよ〜、もう空だよこれ…」

 

とこの通りであり、バルバトスが俺に纏わりついてくる。影の視線がバルバトスに鋭く突き刺さっている。いよいよ胸から刀を出そうとしている。

 

「まて、待て待て待て!!気持ちはわかるが胸から出そうとしている刀を仕舞え!おい!モラクス、眞…!!誰でもいいから助けてくれ!!」

 

わちゃわちゃとする俺達を見て、眞もモラクスもニコニコしていた。

 

「…感慨深いわね。まさか、500年前と同じ景色が見られるだなんて」

 

眞の言葉にモラクスは首肯き、遠くを見た。

 

「…時の流れは移ろい、環境も関係性もまた、変わるものだ。しかし…盤石の如きこの関係性だけは変わらないでいてほしいものだ」

 

二人は俺と影のごたごたを見ながら思い出話に耽っていて、そのうちそれに気が付いた俺達も参戦し、その日からそのまま翌日まで語り明かすのだった。




よかった、間に合った。所用もありまして、間に合わないと思ったんですけどね…雷電将軍、お誕生日おめでと〜!

追記 : えー、とですね。我ながらうん、酷い話だなぁなんて思ったわけなんで、一言だけ言わせていただくと、あくまで閑話の誕生日話に関してはIFだと思って下さればと…なぜこうするのか。それは偏に私がアンケートの存在を知らなかったからです()
ついでに言うとアガレスの行動があまりにも無責任すぎるかなぁと思いますのでアンケートとります、偏にヒロインを誰にするかというものです
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