忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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やっぱり遅れました…明日は、明日こそは…!!


第19話 昔日の夢

「ふぁあ〜…」

 

「アガレスさま、眠そうですが…大丈夫ですか?」

 

帰ってからすぐ寝はしたのだが、やはり眠い。お陰で昔の夢まで見たし…昨日、というか寝る前は染めた髪の色を落とすの大変だったからな。なるべくやりたくないなあれは。

 

「…アガレスさま、やはりお疲れなのですね。本日はゆっくりおやすみください」

 

「え…いや、待ってくれ」

 

「アガレスさま、おやすみください。いえ、今日は是が非でも休ませますから!」

 

ノエルは俺の部屋から出ていった。時計を見ると、午前9:00をさしていた。なるほど、起きるのが遅いから起こしに来てくれたか。

 

にしても、昔の夢を見るとはな───。

 

〜〜〜〜

 

あれは俺がまだ稲妻にいた頃だったろうか。何年前であったのか、それはもう記憶にない。バルバトスとモラクス、バアルと俺で稲妻城城下町を回っていた時のことだった。あの時はまだ稲妻も鎖国をしていなかったし、何より神同士の仲も大して悪くなかったはずだ。

 

「ようこそ、稲妻へ。バルバトス、モラクス、アガレス。お久し振りですね!」

 

久しぶりに俺達に会えて、バアル───雷電眞は嬉しそうだった。

 

「久しいな、バアル。また一段と稲妻の人々の活気が増えたな。民の表情に、為政者の政治が出るとも言う。善政を敷いているのだな」

 

「いえ、私は民の声に耳を傾け、なるべくその感情を全うさせたいと思っているだけです。それが、私にとって『永遠』に繋がる営みなのですから」

 

「そんなことよりバアルー、お酒呑まない?てかない?」

 

「お酒でしたら、稲妻名産のものを用意していますから、あとで差し上げますね」

 

モラクスがバルバトスの発言に溜め息を吐く。

 

「風情のわからない呑兵衛詩人が…」

 

「僕だってやるときゃやりますー…」

 

「二人共、喧嘩はそこまでにしておかないと、アガレスの負担が増えてしまいますよ?」

 

「俺は特段気にしてないぜー?なんたって、これが俺の仕事と言っても過言じゃねえからな?」

 

当事、『八神』の中で国を治めていないのは俺だけだった。そのため、神々の喧嘩の仲裁や『七国』間での戦争の際も仲裁に入ったりしていた。当時の俺は大してそれを重要視してはおらず、国を持たない自分だからこそできることだと思っていた。

そんな俺の思いとは裏腹に、眞やモラクス、バルバトスも俺の負担を軽減させようと努力はしてくれているようだった。そのため、モラクスもバルバトスもすぐに喧嘩をやめた。

 

「すまんな、俺としたことが」

 

「僕は悪いとは思ってないけどー、アガレスのためだしねー」

 

「んで、眞…アレは?」

 

その日は確か、珍しいことにバアルゼブル───雷電影も来ていたのだ。

 

「あら?影も来ていたのですね」

 

少し遠くで眞と瓜二つの女性の肩がビクッと震える。やがて観念したようにてくてく歩いてきた。

 

「すみません、予定は変わってしまいますが、影も来たがっているようなので…」

 

「俺は構わない。バアルゼブルも神だ。俺達の話についていけなくなる、といった心配は必要ないだろう」

 

「僕も別にー、お酒も飲めるしね」

 

モラクスもバルバトスも影の参加は構わないようだった。

 

「影、早くこっち来いよ!一緒に行こうって話してるんだぜ?」

 

「で、では…」

 

影が物陰から姿を現し、俺達の輪に加わった。眞はこれで準備ができた、とばかりに手をパンッと叩いた。

 

「では、出発いたしましょう!本日は、長野原家主催の花火大会もご用意していますから、それまで暇を潰しましょうか!」

 

先ずは、とばかりに眞は俺達のエスコートを始めた。城下町は活気があり、先にも述べた通り笑顔が溢れていた。

 

「嬉しそうですね、アガレス」

 

横にいる影が俺の顔を見上げながら言う。

 

「ああ、一見無意味に思える人の営みやその意志は、次の代が継いでいく。お前達の求める永遠を、人間は自身の意志を後世に伝えるという形で表現しているんだ」

 

俺は影にだけ聞こえるように言い、更に同じ声量で続ける。

 

「悠久の時を生きる我々と、彼らは違う。だが、神である以上、否、生物である以上、摩耗は進んでいく。じきに、選択を迫られることになるだろう。そのとき、お前は、お前達はどちらを選ぶのか」

 

「どちら、ですか?」

 

「わからなくてもいいんだ。ただ、覚えておくといい」

 

───『永遠』を盲目的に追い求める余り、民の声を無視すれば、必ず破滅か現状の改善が待ち受けている、ということを。

 

確か俺はそう言ったのだ。そして、その選択の時はすぐに起きた。ああ、思い出した、500年と少し前の話だったな。この出来事の後、すぐに『終焉』の始まり、カーンルイアによる全世界への侵攻が始まるのだ。

 

影は少し考えるように俯いた後、首肯いた。

 

「───全く、以ての外だな。酒のみを呑み、稲妻の美食の風情を味合わないなど…やはり、風情のわからない呑兵衛詩人が」

 

「そういうじいさんは頑固だよね〜、ほんっとに。風情しかわかんないんじゃない?」

 

「なんだと?」

 

「なにさー」

 

ほんっと、犬猿の仲ってのはこういうのを言うんだろうな、と俺は思う。

 

「お二人共」

 

と、俺の横にいた影が一歩を踏み出した。顔には陰りが見え、強い雷元素を感じる。これはもしかしなくても怒ってらっしゃるのでは?

 

やがて顔を上げた影の表情は、氷神もびっくりするほどの凍てついた表情だった。

 

「アガレスの負担をなぜ増やすのですか?毎度毎度、貴方がたは一度学ぶということを覚えるべきでしょうね」

 

モラクスはうぐっ、と若干仰け反り、バルバトスはモラクスの後ろに隠れている。あ、シールドはった。

 

「もし、またこのようなことがあれば、私の『夢想の一太刀』で両断しますよ」

 

「す、すまなかった。俺も大人げなかった。雨過天晴、俺もいい加減バルバトスとの関係をまともなものにせねばな」

 

「え、影、ごめんって…だからその胸の間から刀を出すのやめてよ…あれ怖いんだから」

 

モラクスは少し申し訳無さそうに、バルバトスはとても怯えながら言った。影はふいっとそっぽを向くと、

 

「もうっ、本当に次やったら知りませんから!もう行きましょう、アガレス、眞」

 

そう言って俺の手と眞の手を引き歩き始める。

 

「え?あ、おう」

 

「ふふ、はいはい」

 

モラクスとバルバトスは互いを見ないようにしながらもついてきた。城下町にある祠付近の池の畔で眞は風呂敷を広げた。

 

「ここで皆でピクニックでもしようかと思いまして」

 

「ほー、ピクニック、いいじゃないか!」

 

影とバルバトスは兎も角としてモラクスが少し微妙な雰囲気を出したので、俺が率先して賛成しつつ、モラクスを見る。

 

「はぁ、いいだろう」

 

溜め息を吐いていたが、了承してくれた。

 

「では、始めましょう!」

 

 

 

「───『終焉』を止めるために、俺が犠牲になろう」

 

談笑しつつ、この場にいる三柱の神に俺は宣言した。四人の表情がかなり曇った。

 

「やはり、そうするしかないのでしょうか…」

 

「言ってるだろ?『終焉』を止めるためには神一柱を犠牲にする程のエネルギーが必要なんだ。そしてそれは、国を、民を持つお前たちにはできないだろ?これは、俺にしかできないことだ」

 

それに、と俺は続けた。

 

「この世界と別の世界の喧嘩を、引き止めるようなもんだ。普段と変わらねえよ」

 

「ですが…それをした後のあなたは…!」

 

影が悲鳴のように言う。

 

「ま、死ぬな。最悪、消滅して再生も叶わない」

 

全員が息を呑むのがわかった。

 

「それでも、俺はこの世界に住まう民の笑顔のために、喜んで犠牲になるよ」

 

「駄目です…!駄目です!復活できないかもしれないだなんて…!」

 

「影」

 

眞の静止に、影は唇を噛む。

 

「影、配慮ありがとうな。でも、俺がやらないと、別の世界共々この世界は滅びてしまう。俺は、この世界に住まう民が大好きだ。愛していると言っていい。そして、俺が愛するこの世界の一員であるお前達にも犠牲になってほしくないんだ」

 

モラクスは岩のように硬い表情をしていたが、やがて口を開いた。

 

「…アガレス、お前は俺や護法夜叉の代わりに引き受けた魔神の祓除により、怨嗟に塗れているのか」

 

「そう、そのとおりなのだよモラクス君」

 

君付けにモラクスは首を傾げていたが、バルバトスが酔いから醒めたのか発言した。

 

「えっと…もしかしてだけどアガレス…『摩耗』が…?」

 

俺は首肯いた。

 

「そうだ。まぁ、『摩耗』というよりかは、呪いに近い。魔神や魔物の怨恨が俺の肉体を蝕み続けているんだ。このまま生きているとあと数年でその怨恨は俺の肉体を侵蝕しきり、俺は死ぬ」

 

その前に、と俺は続けた。

 

「せめてお前達がこの先も生きていけるようにはしてやりたい。それが、じきに死ぬ俺の役目だ」

 

「っ…」

 

モラクスもバルバトスも影も、全員何かを言おうとして口を閉じる。眞だけは、俺の下まで来て手を握った。

 

「アガレス、本当に行くんですか?」

 

「ああ、行かねばならないんだ」

 

「私達は二人で雷電将軍です。私が欠けても、影が何とかしてくれるでしょう」

 

「ま、眞…!?」

 

「それでも、貴方は行くというのですか?」

 

眞は影が驚くのも無視して俺の瞳を真っ直ぐ見据えて言った。

 

「ああ」

 

「なら、仕方がないですね…」

 

俺は眞の手が俺の手から離れたのを見計らい、彼女の頬を摘む。その俺の行動に、全員目を丸くした。

 

「何度言わせればわかるんだ?俺はこの世界に住まう者が犠牲になるのを望まない。犠牲になるのは俺一人で十分だ。そしてお前には、帰りを待っている民や影がいる。彼女や民の側に居てやってくれ」

 

言い終えてからバッと顔を上げた。

 

「……」

 

「アガレス?」

 

「全員、今すぐ自分の国に戻り守備体制を整えろ」

 

「ど、どうしたんですか?」

 

眞が俺に疑問を呈してきたが、影、モラクスはこの嫌な感じに気が付いているようだった。

 

「何かが来る。その内容はわからないが、な…」

 

「アガレス、これは…」

 

モラクスの言葉に俺は苦笑しながら首肯く。

 

「なんてタイミングのわりぃ…『終焉』が始まりやがった…!」

 

〜〜〜〜

 

あの後、俺はカーンルイアから攻めてきた耕運機…今で言うと遺跡守衛か。そいつらや遺跡ハンター、遺跡サーペントなど様々な攻撃型機械兵器を壊し続けた。

 

はぁ、嫌な夢を見た。こういう夢を見た日は碌なことが起きないんだよなぁ。

 

「───アガレスさま!」

 

「ノエル、どうしたんだ?そんなに慌てて」

 

嫌な予感をひしひしと感じつつ、俺はノエルに目を向けた。

 

「そ、それが───」

 

「なんだと?天空のライアーが壊れてしかもトワリンを逃しただって?」

 

俺は思わず、頭を抱えずにはいられないのだった。




今回そもそも長めになってしまったので…ちなみに『終焉』は原作には今のところ登場しません

追記 : 書こうと思ったことを忘れるという失態…本日はリサさんの誕生日ですね!おめでとうございますー!
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