忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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誤字報告に感謝…しかありません…ありがとうございます!


第20話 突破秘境①

「───と、いうわけなんだ」

 

俺は本当に文字通り頭を抱えた。途中までは上手くいっていたのにアビスの魔術師の唆しによって彼は逃げてしまったそうだ。その際の暴風で天空のライアーが修繕不能になってしまったとも。

 

旅人、パイモン、ウェンティ、ジン、ディルック、俺の6人は救民団のリビングで話をしていた。

 

「それで、トワリンは500年前に休眠状態に入ってからモンドの民に忘れられていることを知って、風神やモンドに見捨てられたと感じたみたいでね。そこをアビス教団につけこまれたみたいなんだ」

 

なるほど、トワリンがモンドを襲う理由がこれか。

 

「ウェンティ、トワリンは風龍廃墟へ逃げたんだよな?」

 

「そうだね」

 

で、あるならば。

 

「居場所がわかるうちに彼に接触する必要がある。最早、彼を傷付けずに呪いから解放するのは不可能と言っていい」

 

「じ、じゃあどうするんだよ?オイラたち、トワリンを倒さないといけないのか…?オイラ、そんなのやだぞ!」

 

パイモンが言った言葉に旅人も同意した。

 

「安心しろ、倒すは倒すが、一度気を失わせることになるだけだ」

 

トワリンを苦しませている現況は腰部と首筋にある毒龍ドゥリンの血塊だ。

 

「───それを、破壊する。それしかあるまい」

 

「風ま…いや、トワリンへの影響はないのか?」

 

「それだよそれ、ディルック君よくぞ聞いてくれた」

 

君付けにムッとした表情を見せるディルックだが、何も言わなかった。

 

「それなんだが、不明だ」

 

「わかんないのかよ!」

 

パイモンナイスツッコミー!

 

「グッ!じゃないぞ!」

 

いや、真面目な話をすると、アルベドと共同で研究を進めてきたが、わからないことのほうがまだまだ多い。ただ、

 

「恐らく影響はない。あったとしても微々たるものだ」

 

魔龍ウルサの時もそうだった。血塊を破壊したが、その付近の細胞が多少壊れるだけで、その後の経過観察に異常は見受けられなかった。だから、恐らく影響という影響があるとすれば。

 

「腰部と首筋の細胞が少し壊れて丈夫になる、くらいだな」

 

「全然悪影響じゃないぞ…」

 

「それで、アガレス。君の算段は?」

 

風龍廃墟は暴風に護られていると聞いている。

 

「暴風は俺がなんとかしよう。旅人、ウェンティ、ジン、ディルックの四人は力を温存しておくといい」

 

「出発は早いほうがいい。今すぐ出発しよう!」

 

「いいや、今日は休む」

 

「なっ…!?」

 

大きく仰け反るジンに対し、そりゃそうだろう、と思う。

 

「トワリンは見捨てられたと思っているんだろ?だったら、今日の行動でその猜疑心は更に大きくなったはずだ。追ってくるかもしれないと暴風が晴れるのを警戒するだろう。そんな中暴風を突破して行くのは逃げられるリスクがある」

 

「だから敢えて明日にする、と?」

 

俺は首肯いた。

 

「そうだ。幾ら東風の龍と言えど、休息は必須だ。一日中警戒し続ければ多少は疲れるだろうし、万が一気付いても反応が遅れる。逃げられる可能性が少しだけ低くなる」

 

「その間、モンドを襲わない保証がないじゃないか」

 

ジンの言うことは確かに尤もだ。しかし、

 

「こっちだってそれに備えて気を張っている。ならば来たとしてもモンド城を攻撃する前に撃退することが可能だ。それに、襲うわけがない」

 

「何故だ」

 

「俺がいるからな」

 

ジンは頭に?を浮かべているようだったので、詳しく説明する。

 

「簡単に言うと、彼は俺が危険だと、俺のいるモンドには現状では近付けないとわかっているはずだ。今までの襲撃は両方とも、俺が関わって撃退したからな」

 

「なるほど…操られているとはいっても本能的に戦うと勝ち目のない相手は理解できるわけか…」

 

納得したようで、ジンは首肯いた。

 

「では、方針も決まったし、私は執務に戻らせてもらおう」

 

「僕も、今日は大切な商談があってね。お暇させてもらおう」

 

ジンとディルックはそう言って家を出ていった。二人を見送った後、旅人はどうするのか、と訪ねた。

 

「そうだ!ちょっとついてきてくれませんかアガレスさん!」

 

「け、剣幕がすごいな…勿論構わないが」

 

急ぎの依頼もないしな、ということで、俺は旅人についていくのだった。

 

 

 

「───へぇ、ここが突破秘境…」

 

「うん、冒険者協会の依頼でね。これ突破しないと冒険ランクを上げられないんだって」

 

「そんなことより、オイラは突破報酬が貰えないのが問題だと思うぞ…!」

 

パイモンがパイモンらしい感想を漏らす。にしても、突破か。まさか、突破秘境が仲夏の庭園だとは。つい先日、旅人がこの付近に来たと言っていた。その時に見つけたのかもな。

 

「んで、ここの攻略を手伝ってほしいわけ、か」

 

「うん、手伝ってくれる?」

 

俺は首肯きつつ、

 

「んじゃ、いっちょやりますかー」

 

そう言って意志を示したのだった。

 

 

 

秘境内は一本道、ただ要所要所に風の翼が必要だったり戦闘技術やサバイバルのノウハウ、加えて戦術なんかも必要になってくる。かなりよくできた秘境だ。しかし、冒険者協会はこれをどうやって準備したんだろうな?

 

「ヒルチャールか…」

 

「アガレスさん、お願いできる?」

 

「お安い御用だ」

 

俺は今回、弓を使い、支援に徹することにした。これは彼女の突破任務だからな。

 

「氷矢」

 

弓を引き絞り認識範囲外から狙撃、加えて矢の先端を氷で僅かに肥大化させ、先端を鋭利にした。まぁその分重量も増し矢が落ちるがそこはそれ、技術でいくらでもカバーできる。

 

俺の放った矢はヒルチャールの頭を撃ち抜いた。もう一匹のヒルチャールは慌てふためいているが、もう一匹も狙いを定め撃ち抜いた。

 

「アガレスさん、弓も扱えるんだね」

 

「俺に扱えない武具はないぞ?なんたって、長く生きてるからな」

 

ウェンティがバルバトスであると明かしている以上、俺のことがバレていないはずがない。まぁ、知られたところで何も問題はないしな。

 

そのまま進んでいくとヒルチャール暴徒・木盾と普通のヒルチャールが二体、そして遺跡守衛が起動前の状態でいる。

 

「一先ず、木盾は燃やして、遺跡守衛は目の部分を矢で射抜いて動きを止めるとしよう」

 

「え?あ、ち、ちょっと!」

 

「ん?どうした?」

 

俺の後ろで遺跡守衛が起き上がる音がし、腕が振り下ろされるブンッという音が鳴った。

 

「後ろ!!」

 

「予定通り」

 

俺は遺跡守衛の腕を屈んで躱し、そのまま体を捩って上を向くと丁度遺跡守衛の目があった。俺はそのままの態勢で一気に弓を引き絞り、炎元素を纏わせた矢を放った。その一撃だけで遺跡守衛の目が破壊され衝撃で吹き飛び、高温に焼かれて消えた。あちゃ、ちょっと強すぎたか。

 

「旅人、木盾が来るぞ」

 

俺は内心の動揺を隠して言った。

 

「え、あっ、うん!」

 

旅人は剣を構えて突撃していき、ヒルチャール二体を素早く片付けていた。木盾と対峙し、攻撃を仕掛けるも盾に阻まれているようだ。

 

「それこそ、俺の出番だろ?旅人、少し下がれ」

 

「え?は、はい!」

 

彼女は現状風元素しか使えないため、木盾を燃やすことはできない。だが、俺が炎矢で火を付けてやれば、風元素の拡散反応でどうとでもなるだろう。

 

「炎矢」

 

今度は貫いてしまわぬように弓を引き絞りすぎず、威力を殺して射る。木盾に命中し、火が点いた。

 

旅人は透かさず、風元素で拡散反応を起こし、木盾を破壊しても尚続き、

 

「風刃ッ!」

 

やがて風の刃がヒルチャール暴徒の肉体を斬り裂き、消滅した。

 

「やるな、旅人」

 

「アガレスさん、助かりました」

 

「さて、先に進もうか」

 

そういえばパイモンだがどういう原理か不明だが、今は姿を隠している。本当に謎だ。どうやっているのだろう。

 

「一先ず、ここは突破したな。先へ進もうか」

 

「はい!」

 

俺達は敵を排除し、次の場所へと進んできた。

 

「お次は…足場がないな。風の翼であの光線に当たらなければいいわけか」

 

ここは簡単に突破できた。途中、アビスの魔術師やらヒルチャールから水球や矢が飛んでは来たが、全てあらぬ方向へ飛んでいったため避けるのは楽勝だった。

 

広場前の通路で再びヒルチャール暴徒・木盾との戦闘をして先程と同じ要領で倒し、残りのヒルチャールは俺が適当に一掃しておいた。

 

「中には…挑戦か…」

 

俺は少し面倒臭そうだな、なんて思いつつ、旅人について中へ入るのだった。




誤字とかには気をつけねばなりませんね…一応、確認してはいるんですが、やっぱり間違ったりするので、その際はよろしくおねがいします。

長くなりそうなので二話にわけることにしました。こんなはずでは…!
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