中へ入り、装置を起動すると、四方にヒルチャールが現れ、中央にはデットエージェントが現れた。
「旅人、デットエージェントは引き付けておくから、周囲の雑魚はやれるか?」
「このくらいなら余裕ですよ。アガレスさんこそ、大丈夫ですか?相手はデットエージェントですけど…」
確かに、デットエージェントはその姿を変幻自在に消すことのできる厄介な相手だ。だが、俺にとってデットエージェントはそこまで強敵にはなり得ない。
「問題ない。裏技があるからな」
「裏技、ですか?」
「雑魚を倒したら教えてやるから、先に片付けてくれるか?」
「わかりました!」
俺はデットエージェントの注意を引くため、先に中央へと躍り出た。デットエージェントは無言で自身の愛剣をグルグルと回してから透明になった。
「さぁて…どっから来る?」
まぁ、普通に考えて意識外から攻撃する場合、正面は避ける。姿が見えない以上、それだけで十分な圧力となる。後はどこから攻めるか、というだけだ。だがしかし、だ。姿は消せても匂いや音までは消せていない。
俺は横薙ぎに振るわれた刀を屈んで避ける。
「見え見え…というより、匂いと音でバレバレだ。悪いがお前の攻撃は俺に当たらない」
その後も旅人がヒルチャールを倒していくのを見ながらデットエージェントの攻撃を躱していく。
しかし、あの旅人、前見たときより強くなっているな。いや、力を失ったと言っていたし、元の力を取り戻しつつある、といったところか。
「はぁ…はぁ…アガレスさん!終わりました!」
「よし、じゃあ講義に移ろうか。デットエージェントの攻撃は確かに見切りにくい。加えて、このように攻撃した箇所には影が残る」
デットエージェントの形を模した影が4つ、これで5つ目だ。次の瞬間、デットエージェントが影から出現し、俺目掛けて突進してくる。俺が軽く避けると再び影へ入り、また次の瞬間には次の影から、といった風にそれを5回繰り返した。
俺はその攻撃を5回避けると最後に空中から現れたデットエージェントが刀を振り被った。
俺はニヤリと笑い、深く屈んでそのまま身を捩り、弓でデットエージェントを殴りつけ、吹き飛ばした。
「このように、デットエージェントは大技を出すが、空中から大回転斬りなるものを繰り出すときにタイミングよく攻撃を繰り出せば簡単に殺せるぞ。まぁ、それまで攻撃を避けないといけないがな」
※小説内でのみ有効な技術です。原神プレイヤーの方々は絶対に真似しないでください。ゴリゴリに削りきるか、影を攻撃して消しつつ倒すのをオススメします。
「いや、無理ですよ…まだ慣れてないですし」
「…そうか。じゃあ…」
デットエージェントが再び消える。俺は適当に水元素で雨を降らせる。すると、湿潤状態に陥ったデットエージェントが不可視であるのにも関わらず可視化された。
「旅人」
「え?あ、はい!」
旅人が可視化されたデットエージェントに向けて元素爆発を放った。
「風と共に去れ!」
竜巻がデットエージェントに直撃し、そのまま風の刃に切り刻まれて絶命した。
「中々高威力だな」
「まぁ…聖遺物厳選も頑張りましたし…天賦もなんだかんだ通常7、スキル8、爆発8ですからね…」
何の話をしているのかはわからないが、頑張ったということは伝わってきた。
「さて、次に進もうか」
次のエリアはまたワイヤーのようなものがあり、それを避けるだけだった。避けた先にはヒルチャール・氷矢が二体いたが、今回は足場があり、弓で射抜いた。
「恐らく、ここが終点か」
「そうみたいですね」
アビスの魔術師が氷と水、それぞれ一体。こちらを見つけ襲いかかってきた。
「シールドは剥いでやるから、あとは頑張れ」
俺はアビスの魔術師・氷には炎元素で、アビスの魔術師・水は氷元素でそれぞれシールドを同時に割った。
「さ、あとは何とでもなるな?」
「うんっ!任せて!」
旅人はダッと駆け出すと、剣を斜め下から切り上げアビスの魔術師・氷を連撃で仕留めた。アビスの魔術師・水はシールドを復活させるべく詠唱を開始したが、そんなの、俺が許すわけがない。水元素を付着させてから氷元素で凍らせ、旅人がその凍ったアビスの魔術師を蹴って粉砕し、中央部に挑戦装置が出現した。
「……ここから、まだあるのか」
「な、長いですね…」
旅人は秘境の長さに若干嘆息しつつ、挑戦装置に触れた。
「無相の雷…」
めんどっ…!かなり面倒くさい、と言える。単体だと大して強敵ではないのだが、今回は旅人の試験、俺が出しゃばりすぎるわけにはいかない。
加えて、コアへの攻撃タイミングが限られる。グーチョキパーコンボやグルグル光線の最中に長いこと攻撃できるが、それ以外の攻撃時間はかなり短いのだ。
「旅人、倒したことはあるよな?」
「う、うん。大丈夫、なはず…」
よし、ならいっちょやってみるか。
無相の雷が初めに取る行動は限られている。突進か、挟み込んで潰すやつか、グーチョキパーか、グー単体か。今回はグーチョキパーらしい。
「旅人、グーとチョキの間で奴の背後に回れるか?」
「やってみます!」
旅人は言われた通り、グーの瞬間ダッシュし、初撃を回避、チョキの瞬間間をすり抜け背後へ回った。目標を見失った無相の雷はそのまま真っ直ぐパーを落とし、コアを露出させた。
「旅人、他にも回避パターンは沢山ある。後で説明してやろう」
「アガレスさん!いいから手伝ってくれませんか!?」
おっと、支援要請受諾、ってことで。
「炎矢」
限界まで弓を引き絞り、炎を纏わせ矢を放った。矢は真っ直ぐコアへ吸い込まれていき、過負荷を起こしながら爆発、一発で回復まで追い込んだ。
「あとは、俺の出番だな」
炎矢を再び放ち、現れた3つの結晶を破壊した。
「あー疲れた〜…!!」
「突破任務は達成できたようだな」
「はい、えぇっと…あ、25から一気に30まで上がりましたよ!これで私の突破もできます!」
最後はちょっと何言ってるかわからない状態だが。
「旅人、何故俺には敬語なんだ?」
「え?あー…なんというか、ですね…その、アガレスさん、一番古い神らしいじゃないですか…なんというか、アガレスさんそういうオーラ的なものが出てて…」
そんなものを出している覚えはないが、旅人が言うならそうなのだろう。
「普段の砕けた口調で構わない。寧ろ、大歓迎だぜ?」
旅人は少し驚いたような表情を作り、その後少し微笑んだ。
「わかった。そうさせてもらう」
秘境から出るともう夕方だった。今日はこのままお開きとなるだろうな。
「改めてアガレス、今日はありがとう。助かった」
「いや、構わない。お前の旅路に連なる者で在りたいと思い、その思いを伝えたのは俺だからな。然るべき対応をしただけだろう?」
「なんかやっぱり、アガレスは回りくどいこと言うね…」
俺は大きく仰け反った。
「え、なに?どしたの?」
「どこぞの呑兵衛詩人にも言われたことを旅人にも言われるとは…我が生涯の汚点だぁ…!!」
「そ、そこまでなの?」
「と、まぁ冗談はさておいて」
「冗談なの!?」
俺は旅人を真っ直ぐ見据えた。
「お前が来てから、モンドは変わったな。お前がいない頃は、中々人手不足で民の笑顔を守るために休めなかった時期があったんだ」
だが、と俺は続けた。
「俺やジンの負担は減り、民に笑顔が戻り、やがてモンドの荒れ狂う風は平穏へと戻りつつある。今回の、トワリンの件もそうだ。彼は俺の旧友でもあり、また同じ龍の好でもあった。そんな彼を救おうとしていることに、そしてこの世界に住まう民のため尽力してくれていることに、改めて礼を言わせてくれ」
俺は心の底から微笑み、
「ありがとう」
そう言った。旅人は口をパクパクと動かしていたが、やがて顔を真っ赤にして俯いてしまった。
「なんだ?恥ずかしかったか?まぁ、人間、他人から無償の尊敬というものを向けられると───」
「そういう問題じゃないから!」
旅人ははぁ〜と長い溜息を吐いたかと思うと、小声で何かを呟いたが、俺でも聞き取れなかった。
(美人もいいけど…やっぱり私も女子だった)
「なにか言ったか?」
「なーんにも…よしっ、アガレス、帰ろうか」
「ああ…まぁ、帰る前にノエル達に『鹿狩り』でお土産を一緒に選んでくれないか?俺、絶望的にセンス無いらしくてな…ノエルですらぎこちない笑顔を浮かべながらありがとうって言ってくるんだ。流石に耐えられん」
旅人は苦笑しつつ、
「流石に手伝うよ。報酬は勿論貰うからね」
しかしすぐに悪戯っぽい笑みを浮かべていった。
「そうだな、いつでもお前の依頼を最優先する、という条件でどうだ?」
俺と旅人は帰路で報酬について話し合いつつ、モンド城へと帰還するのだった。
ちなみに…お土産は結局『鹿狩り』では買わず、旅人の手作りパンケーキを貰うことにした。ちゃんと満足して貰えて、俺としては複雑ではありながら皆の笑顔を見られて嬉しい限りだった。
突破秘境で突破したので旅人が少し強くなりますね。ついでに私事なんですが、夜蘭姉さんすり抜けずにサブ垢で無事お迎えできましたね…いやぁ、よかったよかった。
一言だけ言わせてもらうなら、何がとは言わないけどとても良いですね。