忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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音楽聞いてたら夜になってたという言い訳をさせてください()


第22話 トワリン①

翌日、俺達はモンド城の西にあるアカツキワイナリーに集まっていた。昨日の夜のうちに俺しかできないものや俺でなくてもいいがジンや他の救民団団員に任せるには小さすぎる依頼は全て終わらせ副団長のエウルアに一任してきた。彼女はもう、『ローレンス家』としてではなく、『エウルア』として見る人も多くなってきている。だから安心して俺の執務や依頼を任せられる。

 

ローレンス家の存在から余計な妨害を受けることも少なくなるだろう。今や彼女の妨害をすれば俺やモンドの民を敵に回す。つまり、自分達の下僕となるべき存在が、再び反乱を起こすなどしてはたまらない、と考えているはずだ。まぁ、つまりエウルアの妨害をすれば自分達のモンドでの立場が危うくなる、ということだ。いやはやしかし、良い傾向だ。このまま右肩上がりだといいのだが。

 

「さて、ようやくこの日が来たな。トワリンの本拠地である風龍廃墟、そこをここにいる6人で叩く」

 

ここにいるのは旅人、ジン、ディルック、ウェンティ、そして俺の5人。まぁ、パイモンいれたら6人だが、あの子は戦力としては数えられないからな。

ジンの言葉に、ディルックが疑問を呈する。

 

「しかし、トワリンは昨日の今日で警戒を解くだろうか?僕達の姿も見られているし、匂いも覚えられているかもしれない。もしかしたら、暴風を取り除く瞬間に逃げられる可能性もある」

 

「その心配はない」

 

その言葉を引き継いだのは俺だ。

 

「アガレス、どんな根拠があるんだよ?」

 

「なに、簡単な話だ。彼は確かに四風守護のうちの一柱だが、四六時中気を張っていられるわけもない。必ずボロが出る。そして今、彼は毒龍ドゥリンの血塊により苦痛を常時与え続けられている。モンドを今すぐ更地にしたくなるほどの激情にも苛まれているはずだ。そうなると」

 

「そうか…確かに、僕達が侵入しようがしまいが彼が気づく可能性は低い。そもそも、気を張っていない可能性すらあるわけか」

 

「無論、張っている可能性があったから少し疲れさせるために一日空けたわけだがな」

 

つまりは、そういうことである。どんな生物も、あのモラクスでさえも四六時中気を張れるのは精々2日が限界である。トワリンは苦痛に喘ぎ、加えて激情に支配されかけている。気を張っていられるわけなどないのだ。

 

「では、心配もなくなったことだし、出発しようか〜、暴風はアガレスが何とかしてくれるらしいしね」

 

「ああ、行こうか」

 

 

 

風龍廃墟、太古の昔、ここは旧モンドの首都であった場所だ。その面影はもうすっかり鳴りを潜め、完全に廃墟都市と化していた。

 

「そして今はこのように、暴風が彼の地を護っている、という伝承がある。誰も立ち入ることのないように」

 

これは500年前トワリンがドゥリンの血液に侵され、休眠する際のバルバトスなりの配慮だったのだろうな。それが今裏目に出ているわけだが。

 

「実際、護られているからね。中々厄介だ。アガレス、君は本当にこの厚い空気の層をどうにかできる手段があるのか?」

 

「ある」

 

俺は暴風に近づくと、手を翳した。俺の影響を受けた風元素を少しずつ暴風に織り交ぜ俺の元素力を浸透させていく。よし、充分だ。

 

「ふっ…!」

 

俺は少しだけ気合を入れると、暴風を全て掌握し、霧散させた。

 

「アガレス、昔の力、少しは戻ってきてるのかな?」

 

「まぁまぁってところだな。さて…」

 

俺は暴風が消え、侵入可能になった風龍廃墟を見る。トワリンが今のところ逃げ出してくる様子はない。

 

「やはり、出てこないな」

 

「ああ、読みが当たったようだ。行こう」

 

俺達は慎重に、しかし少し急ぎ目で風龍廃墟の塔の上へ向かうのだった。

 

「せいっ!」

 

ジンの風圧剣がヒルチャールを吹き飛ばしつつ貫いて片付けた。敵を一掃し、ついに塔の上まで辿り着いた。

 

「この装置を起動しないとどうやらトワリンの下までは辿り着けないようだな」

 

「皆、手分けして装置を探そう」

 

ジンの一声で俺達は3つ、装置を見つけることとなった。上から見た感じだと、恐らく風龍廃墟の周囲等間隔、とは言い難いが大体それくらいの感覚で装置は分布しているようだ。旅人とジン、ディルック、そしてウェンティと俺でそれぞれ分かれて行動し、装置を見つけて起動、中心へと戻ってきた。

 

「しかし、旅人のそのわーぷ?は、どういう仕組みなんだ?」

 

「私にもわからないけど、便利だから使わせてもらってるんだ」

 

「一人というのはやはり気楽で良いものだね」

 

「ディルック…お前悲しいやつだな」

 

「お酒呑みたい…」

 

思い思いの会話をしつつ、全員が再び戻ってきた。先程とは異なり、紋様が3重に浮かび上がっていた。

 

「どうやら、これで…っ!!」

 

暴風が突如吹き荒れ、俺達は空中へと投げ出された。ウェンティが機転を利かせ、風を吹かし、全員を浮かせた。俺は自力で浮かんでいるが、他はそうもいかないからな。

 

「っ…トワリン!」

 

前よりも酷い、か。最早言葉も失っているらしく、ただ咆えた。旅人が再び、トワリンの腰部目掛けて風の弾丸を発射し、攻撃している。俺はともかく、ジンやディルックに出来ることはないだろう。ウェンティは皆を浮かせるので精一杯だし、俺と旅人くらいしかトワリンを救ってやれないだろう。

 

「旅人!そのまま攻撃し続けてくれ!!」

 

旅人はそのままトワリンの攻撃を避けつつ攻撃し続け、腰部の血塊に罅が入ったのが見えた。トワリンはくぐもった咆哮を上げ、こちらから逃げようとして離れたタイミングで一気に加速し、腰部へ向けて蹴りを放った。

 

トワリンの腰部の血塊に直撃した俺の足はミシミシと音を立て痛みも走ったが、なんとか我慢しつつ、様子を見る。罅の入っていた部分に更に衝撃が加えられ、罅が更に広がったかと思うと血塊が砕け散った。

砕け散った後の腰部は通常そのもので、恐らくもう影響はないと見える。

 

トワリンはそのまま、足場が複数立っているだけの場所まで逃げていった。

 

「ウェンティ!あそこまで運べ!」

 

「はいはい、人使いが荒いなぁ、もう…」

 

ウェンティがふぅ…と息を吐くと皆(俺以外)がゆっくりとトワリンの逃げた足場へ向けて移動し始めた。

 

「さて…鬼が出るか蛇が出るか…まぁ、出てくるのは龍だろうが」

 

俺達はそのまま足場に降り立った。やがて、トワリンが臨戦態勢のまま姿を現した。

 

「俺を覚えている、わけもないか。自我も最早なさそうだしな…」

 

俺は刀を手に握り、鞘から抜き放った。見れば皆もそれぞれ武器を手に取り、臨戦態勢だった。

 

「トワリン…悪いが、もう少し耐えてくれ」

 

俺は刀を構えてトワリンへ対峙した。

 

「もう少し耐えてくれれば、解放してやるからな」

 

トワリンは咆哮と共に、俺達のいる場所へ突撃してくるのだった。

 

〜〜〜〜

 

「殿下…風魔龍を利用していたのですが、思わぬ妨害を受けております」

 

アビスの魔術師が跪き言った。

 

「…そうか。妨害をしてくる者がいるの?」

 

「はっ…」

 

特に、とアビスの魔術師はその者の名を挙げた。

 

「我等の計画のことごとくを潰している者が居りまして…名を、アガレスと…」

 

ピクッと、金髪の青年の眉が動いた。

 

「…なるほど、彼が」

 

「ご存知なのですか?」

 

金髪の青年は首肯き、思いを馳せるかのように遠くを見た。

 

「彼はきっと覚えてない。でも俺は覚えてる。500年前、彼が『終焉』を止めたことを。そして、彼と少し話をしたこともね」

 

そして、と青年は続ける。

 

「彼はこちらに取り込まれるべき存在だ。彼はこの世界を心から愛している。自分の身を顧みぬほどに。だからこそ、俺のすることもきっと理解してくれる。暫くは様子見しつつ、隙あらば勧誘して」

 

「風魔龍はいかがなさいますか」

 

青年は顎に手を当てふむ、と一息つくと問いに答えた。

 

「彼を散々利用しておいて申し訳ないけど、これはどうしようもない。放置でいいよ」

 

アビスの魔術師はただ、平伏した。




次回、トワリン死す!デュエルスタンバイ!!(?)

追記 : 寝ぼけて描いたため意味のわからない一文がありましたので修正いたしました
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