忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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今回まじで長いです。色々付け足してたら長くなりましたはっはっは!本当に申し訳ねえ…


第24話 モンドとの別れ

「───それじゃ、行ってくる。そんなに期間は長くないから、少しの間だけ救民団を頼んだ」

 

「行ってらっしゃい。ま、私に仕事を押し付けた恨みは帰ってきてから晴らすわね」

 

「行ってらっしゃいませ、アガレスさま!」

 

「がんばれ、アガレス。無事、帰ってこい」

 

「おう、じゃ、またな」

 

 

 

さて、救民団を出た俺は待ってくれていた旅人と合流した。

 

「これから璃月に向かうんだろ?」

 

「うん、その前に、色んな人に挨拶しておこうかと思って。アガレスさんも離れるからついでに、って」

 

「なるほど了解。んじゃあ早速挨拶回りと行こうか」

 

一番近いのは冒険者協会だな。旅人は冒険者協会所属だし、知り合いがいるのだろう。

 

「おっ!旅人じゃねえか!久しぶりだな!」

 

「うん、ベネットも久し振りだね。フィッシュルも一緒にいたんだ?」

 

「悪を滅ぼす煉獄の炎が、わたくしを喚んでいたのよ。だからこそ、こうしてわたくしも閃光の下を歩んでいるの!」

 

「ベネットが一緒に冒険をしたいといったから晴れた空の下で歩いていた、という意味です」

 

なんだ?ベネットは普通に元気な少年って感じだが、フィッシュル、彼女の言動は中々不明瞭な点が多いな。いや、それより…。

 

「旅人、その鴉…?は、なんだ?」

 

「失礼、申し遅れました。こちらのお嬢様はフィッシュル・ヴォン・ルフシュロス・ナフィードット、そして私はオズヴァルド・ラフナヴィネスと申します。以後、お見知りおきを」

 

フィッシュルまでしか聞き取れなかった。長くないか名前…。

 

「さぁ!断罪の名を背負いし従者よ、その望みのままに、皇女の偉大なる知恵を受け入れる準備をしなさい!」

 

「調査をするから、すぐに結果を出そう、という意味です」

 

「ところで、そちらの…コホン!あなたの従者かしら?運命を共にする存在なのね」

 

「いや、違うが…いや、一概に違うとも言えないのだが」

 

何いってんだほんと。

 

「フン、全て言わずともわたくし断罪の皇女は全てを見通す目を持っているのよ?」

 

「フィッシュル!そこで何してんだー?早く行こうぜー!」

 

ベネットがモンド城の城門付近で手を振っている。ついでに旅人も何故かいた。俺のこと置いて逃げやがったな。

 

「なっ!このわたくしを置いていくなんて…この恨みは然と記憶に刻み込んだわ!」

 

「お嬢様、それは違う方の口癖では…」

 

「ったく…旅人、挨拶が済んだなら次行くぞ」

 

「あ、うん。じゃあベネット、またね」

 

「おう!今日こそはお宝を見つけてみせるぜ!オヤジ達のためにもな!!」

 

全く、本当に元気一杯だな。ベネットとフィッシュルは手を振りながらモンドを出ていった。

 

「それで、彼等は?」

 

「ああ、うん。それぞれフィッシュルとオズ、そしてベネット。フィッシュルは照れ屋さんだよ」

 

うーん…そうは見えないな。なんというか、うん。決して完治することのない病気に悩まされている気がする。

 

「ベネットはとっっても不幸体質でね…すごく心配になるんだ。そんな中でもオヤジさん達のために頑張ってるんだって」

 

ベネットはなんだか不憫だな。不幸体質、か…昔にもそんなやつが居た気がするが、よく覚えてはいないな…。

 

「そんで、次は?」

 

「えっと…『キャッツテール』に行くよ。バーテンダーの子に用があるんだ」

 

「『キャッツテール』のバーテンダー…っていうと、ああ、ディオナのことか」

 

思えば、彼女と出会ったのはガイアにここへ連れてこられたときだったな。とにかく、その時は大変だった。というのも…。

 

「───旅人さん、お久しぶりだにゃ。アガレスさんもいるのにゃ!?」

 

フンスッと鼻息を荒くしながら俺に詰め寄ってくるのだ。なんでかって?俺は酒が飲めないからである。嫌っているとすら言っていいため、ディオナに体質の調査やら何やら、色々されかけたのである。

 

「ああ、しばらくモンドを離れるからな。旅人と一緒に挨拶回りをしているんだ」

 

「にゃ、一緒にモンドの酒造業に大打撃を与える作戦はどうにゃるの…?」

 

「そんな約束をした覚えはないぞ…」

 

酒とは関係なしに頭が痛くなるな全く。

 

俺と旅人はディオナの酒嫌いの熱量に押されつつ、挨拶を済ませて『キャッツテール』を離れたのだった。

 

「なんか疲れた…」

 

「ディオナのアガレスさんへのアプローチ凄かったからだね」

 

 

 

さて、次は『エンジェルズシェア』にやって来た。ディルックが今日はバーテンダーなのである。

 

「来たか、旅人、そしてアガレス」

 

「ん?知ってたのか?」

 

「ああ、なんでも、旅人とアガレスの二人組がモンドを暫く離れるから挨拶回りをしているらしい、と小耳に挟んでね」

 

つまり噂になってんのか。普通に救民団にでも呼べばよかったな。呼べるやつは、だが。

 

「それで、僕の場所にも挨拶回りに来た、といったところかな」

 

「そういうことだ」

 

ディルックが懐から取り出したのはモラの入った袋だった。

 

「そうか…ふむ、旅人、僕からの餞別を受け取ってくれ」

 

「ありがとうございます、ディルックさん!またそのうち遊びに来ますね!」

 

モラを受け取ったときの旅人の熱量が凄いな。

 

「俺にはないのか?」

 

「君には不要だろう?それとも、君にもモラが必要だったかな?」

 

「いや、モラに関してはマジで余ってるからいらない…」

 

「そうだろう?」

 

まぁ、揃えようと思えばなんでも揃えられるぐらいのモラはある。そこまで考えていたのだろうな。

 

「んじゃ、またな、ディルック」

 

「ああ、無事を祈っているよ」

 

 

 

さて、お次は西風騎士団だな。中に入る前に、アンバーが出てきた。

 

「あれっ?栄誉騎士に、アガレスさん!」

 

「こんにちは、アンバー」

 

「よっ、元気そうだな」

 

アンバーが手を振りながらこちらへやって来た。

 

「旅人とアガレスさんがいなくなるって聞いて出てきたんだけど…」

 

「概ね間違いじゃないが、しばらく会えなくなるってだけで、いなくなるわけじゃないぞ?」

 

「そ、そうなんですか…あはは、よかったです」

 

アンバーは苦笑しつつ、懐からウサギ伯爵の人形を2つ取り出した。

 

「これを栄誉騎士に、そしてこっちはアガレスさんに!これを見てモンドのこと思い出してね!」

 

「これを…」

 

「俺達に…」

 

「二人がいなくなるって聞いたから大急ぎで作ってきたんだからね!」

 

なんというか、アンバーらしい見送りだな。

 

「ありがとう」

 

アンバーとも挨拶をそこそこに別れ、西風騎士団本部の中へ入った。

 

「おや、アガレスじゃないか。どうしたんだい?」

 

「あ、アガレスさん、旅人さん…お久しぶりです」

 

すぐに現れたのはアルベドともう一人、手を繋いでいる赤い女の子だ。耳が長いことからエルフだと伺える。もう一人、スクロースもアルベドの後ろでおどおどしつつ、俺に話しかけていた。

 

「アルベド…とそれから…そちらの子は?」

 

「彼女かい?彼女はクレー、一応西風騎士だ。彼女の母親からお守を頼まれていてね」

 

「あっ!栄誉騎士のお姉ちゃんと…ヘンな大人の人だ!」

 

個人的に、小さい子供からヘンな大人の人って呼ばれると少し哀しいものだな。

 

(ディルックあたりに言ってほしいなそれは…)

 

(ちなみにディルックさんは変わった大人の人らしいよ)

 

「どうかしたのかな?」

 

「いや、なんでもない」

 

旅人と小声でやりとりをした後、アルベドとクレーに俺は今回の訪問理由を言った。

 

「そうか…君とは、もっと話し合いたいことがあったのだけれどね…残念だよ」

 

「俺も中々アルベドとの共同研究は楽しかった。特に、『神の存在証明』なんかは───」

 

「二人共、クレーが早く町に行きたがってるから其辺にしてあげなさいな」

 

凛とした声、そして現れた魔女の如き風貌の女性。

 

「すまないな、リサ」

 

「クレー、行こうか。アガレス、リサのことは頼むよ」

 

「うぅ…リサおば…お姉ちゃん怖い…」

 

アルベドとクレー、そしてスクロースは挨拶を適当にしてそそくさと出ていった。アルベドがあんなに取り乱すなんて珍しいな。旅人に至っては震えているし…ん?リサは笑っているが、目が笑っていない。怒っているのか。

 

「もしかして、俺返してない本とかある?」

 

「ええ、そりゃあもう。貴方ではないけれど」

 

リサの視線が旅人へと注がれた。

 

「な、ななななななんでしょうかリサさん!?」

 

動揺が凄いな。

 

「わ、わわわわたしはなんにも知りません!ええ、知りませんとも!」

 

「『少女ヴィーラの憂鬱全10巻』、そう言えば、わかるかしら?」

 

ギクッとばかりに旅人の肩が震えた。完全に図星じゃねえか。

 

「さぁ旅人?わたくし、言ったわよね?借りた本は必ず返してって」

 

「あわ、あわわわわわ!」

 

リサの雷、いやこの場合は怒槌か、それが旅人に喰らいつこうとしたその瞬間、俺は割って入った。

 

「まぁ落ち着けリサ。旅人は全部読み終えていない可能性だってあるだろう?急ぎの旅なら勿論、読み終えていなくても返すべきではあるが、考えてもみてくれ。『龍災』で本を読む時間なんてあるわけないだろう?ようやくゆっくりできたのもここ2週間程度だ。2週間でまさか、10巻もの量を読みきれるわけもあるまい?」

 

それに、と俺は続けた。

 

「まだ一度目の過ちだろ?旅人は来たばっかりだし、多少の説教と注意でいいんじゃないのか?」

 

リサはむぅ、と唸りつつも納得したようで、

 

「いいかしら、可愛い子ちゃん?わたくしはね、仕事を増やしてくる本を返さない人が一番嫌いなのよ。わかるかしら?次はないわよ」

 

「い、イエスマム!我が神に誓って!」

 

なんだその決り文句みたいな奴は。リサはしれっと別れの挨拶をしてから図書館へと戻っていった。

 

 

 

「───そうか、いつかは訪れるだろうと思っていたが…」

 

「あ、あの…?」

 

「皆まで言う必要はない。私は君の意志を尊重する。だが…寂しいものだな」

 

「おい、話聞けって」

 

「3年前君が来てからというもの、君には世話になりっぱなしだ。まさかその恩すら返せずに別れることになるとは…」

 

「頑固なのか?聞こえてないふりしてんのか?」

 

「だが安心してくれ!新生西風騎士団は救民団と共にモンドをより強固にだな…!」

 

俺はいい加減にジンの頬を摘む。

 

「いい加減にしろってジン、話を聞け」

 

「そ、そうだよ!お姉ちゃ…ジン代理団長、少しは落ち着いてよ!」

 

室内にいたバーバラにもジンは諌められようやく落ち着いた。

 

「す、すまない…君がいなくなると思うと少し寂しく感じてしまってな…」

 

なんか言い方が…なんだろうな。なんというか…なんというか!まぁいいや。

 

俺はそのままジンにいなくなるはいなくなるが、大して長い期間ではない、ということを説明した。

 

「そ、そうか…一時的なものだったんだな。なんだか早とちりしてしまったな」

 

「いや、まぁいいんだが…そんなに寂しいのか?」

 

「い、いや…別にだな…その…言葉の綾というやつだ!」

 

図星が過ぎるぞ代理団長。

 

「その、アガレス。旅人のことを宜しく頼む。本音を言えば私もついていきたいが、立場があるからな…」

 

「気持ちだけ受け取っておこう。ありがとう、ジン。モンドを頼んだ」

 

ジンは首肯きつつ、胸に手を当てていった。

 

「二人に、風の導きがあらんことを」

 

「アガレスさん、旅人さん!頑張ってね〜!」

 

バーバラとジンに見送られ、俺達は西風騎士団本部を出るのだった。

 

 

 

「よっ」

 

「おっ、ガイア…なんか久しぶりだな。それと…ロサリア」

 

「あら、君もここにいるなんてね…そう、モンドを去るのね」

 

「で、モンドを離れるんだろう?一つ情報をやろうと思ってな」

 

それがガイアとロサリアなりの餞別ってことだな。

 

「今璃月では迎仙儀式が行われる予定で、丁度一週間後だ。旅人、お前の目的を達成するのに丁度いいと思うぜ?」

 

「あら、調べたのは私だけれどね」

 

「迎仙儀式って、岩神を呼ぶの?」

 

「その通りだ。神託を授けるためだかなんだとか言って、年に一度岩神が降臨する。その準備を璃月七星がしているんだ」

 

岩神モラクスがその時降りてくるなら丁度いい。俺も会いに行く用事はあるからな。

 

「ありがとう、ガイアさん、ロサリアさん」

 

「おう、また会おうぜ」

 

「二人共、モンドの面倒事は私が全部片付けておくから、気にせず行ってきなさい」

 

ガイアは踵を返し、片手を上げながら去っていった。

 

「さて、モンド城内は大体回りきったから、少し遠回りして風立ちの地に行こうか」

 

「え?ああ、わかった」

 

 

 

風立ちの地にやってきた。例のごとく、ウェンティは木陰で休んでいた。

 

「ウェンティ」

 

「ん、んぅ…アガレスかい…?もう少し寝かせてくれたっていいじゃないか…」

 

「だーめだ、俺らは一時的にだがモンドを離れるからな。挨拶しないといけないんだよ」

 

そう言うとウェンティはガバッと起き上がった。

 

「えっ、いなくなっちゃうの?」

 

「まぁ、そうだな。旅人の旅についていってこの世界を見て回りたいし、それにモラクスや雷電将軍にも会いたいからな」

 

「僕も…」

 

「ついてくるなんて言うなよ?トワリンのこともあるし、何よりお前はモラクスと仲が悪いだろう?今回の旅にはついてこないほうがいいだろうな」

 

「むぅ…」

 

まぁ、と俺は拗ねているウェンティに向け言った。

 

「帰ろうと思えばすぐに帰ってこられるからな。安心してくれ。何かあればすぐに帰ってくるさ」

 

「本当に?」

 

「ああ、約束しよう」

 

俺は手袋を外し、ウェンティにとあるものを差し出した。

 

「俺の指輪を一つやろう。これは確か…いや、恐らく聖遺物の一種で、俺の指輪と対になっていてな。離れたところ同士で話すことができるんだ。これを一つ渡しておく。これで安心できるだろ?」

 

この指輪が本当に聖遺物なのかはわからない。俺の指に嵌めてあったもの以外にももう一対あるので、なにかの役に立てるだろうとは思っているが、少し怖くもあるな。

 

「わかった。頑張っていっておいで」

 

「ああ、モラクスにもよろしく言っておいてやるよ」

 

「あはは、それは別にしなくてもいいよ?」

 

本当に、仲が良いんだか悪いんだか。

 

「さて、挨拶も済んだし、行こうか、旅人」

 

「うん、行こう」

 

俺達は風立ちの地から去ろうと踵を返した。ウェンティはずっと手を振り、俺達を見送っていた。

 

「君達に、四風の加護があらんことを」

 

ウェンティは俺達の去った風立ちの地でそう呟いた。




というわけで、次回から璃月編です
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