忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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今回短めです


第26話 仙人①

「で、どういうことか、説明をするとだな…」

 

俺は俺の中にいるもう一人の自我について話した。前出てきた時は世界を壊そうとして『七神』に止められたことも。

 

「うぇ…もうお酒飲まないほうがいいぞ…」

 

「寝るときは別だが、意識を失うと出てくるみたいでな。結構やきもきしているんだ」

 

奴は自分を『古の巨神』と自称しているが、俺が疑っているのは、彼が『原初の人』という謎めいた存在ではないか、という可能性だ。俺は彼について詳しく知らないが、彼の力の残滓が関係しているとは聞いている。

 

「そういうわけで、恐らく酒は飲まないほうがいい。奴は何をしでかすかわからんからな」

 

「そうみたいだね…無理言ってごめん」

 

「気にするな」

 

俺は時計を見る。針は22:00を指していた。

 

「今日はもう遅い、部屋まで案内するから寝るといい」

 

俺は旅人達を部屋まで送った後、塵歌壺を再び置いてチンッと鳴らした。俺は壺に吸い込まれ、次の瞬間には璃月港の埠頭にいた。

 

「さて…総務司にいるかな…」

 

俺は一言だけそう呟き、璃月にある総務司へと向かうのだった。

 

 

 

「───この案件はこちらへ…それと、この案件は総務司ではなく刻晴さんのところへ…っ!何者ですか!」

 

鋭い声に思わずビクッとした。物凄い仕事の量を一人で捌いてるなぁなんて思って見てたらバレた。

 

「い、いやぁ別に怪しいものじゃ…」

 

「この仕事は排除するべきですね…」

 

あれ、殺されるの俺?氷の塊が上から降ってきた。それを俺は炎元素で軽く溶かした。無論、総務司の建物に被害は出さないようにしてある。

 

「お返しだ」

 

今度は風元素で書類の束を飛ばす。すると、俺へ攻撃した存在の姿が顕になった。

 

薄い水色から濃い水色のグラデーションのかかった頭髪に、麒麟の角。俺は思わずほう、と感嘆の息を漏らした。

 

「っ…」

 

彼女の二段チャージの矢が俺に飛来してきていた。俺はその矢を炎元素を纏わせた手で受け止め、圧し折った。

 

「折角書類整理してやったのに、攻撃されるなんてな」

 

「え?えぇっ!?」

 

先程の風元素は相手の容姿を見ることが目的の全てではない。仕事が大変そうだったので風元素で飛ばしてあらかた目を通し、そしてそれぞれジャンル、系統、担当部署ごとに整理した。彼女の仕事量は大体4分の1程度に減っただろう。こちとら3年間西風騎士団の事務処理をこなしていたのだ。この程度はこなせるようになって当然だろう。

 

「2種類の元素を使いこなすなんて…貴方一体…」

 

……あれ?

 

「……まさか忘れたのか…容姿が変わってないからわかると思ったんだが…」

 

軽く悲しくて『摩耗』しそう。彼女はうーん…と唸っていたが、やがて目を見開き、俺の顔をジッと見た。

 

「ま、まさか…アガレスさん…?」

 

「ようやく思い出したか。久しぶりだな、甘雨」

 

彼女───甘雨はようやく思い出したようで、わなわなと震えていた。あれ、俺怒られるんかな…。

 

「アガレスさん…!!」

 

と、思いきや、甘雨は涙を流していた。

 

「よくぞ…よくぞご無事で…!」

 

俺はそのまましばらく、甘雨が泣き止むのを待つ羽目になったのだった。

 

 

 

「すみません、もう、大丈夫です」

 

甘雨が涙を拭きながら言った。

 

「それで、何をされにこちらへ?」

 

「ん?顔を見に来ただけだ。ちゃんといるかどうかの確認、ってところだな」

 

500年前に死んでしまっている可能性だってあったわけだしな。俺は昔の癖で角に触れないように頭を撫でた。

 

「泣くほど心配していたのか?」

 

「ふぇ…は、はい…そう、です」

 

「モラクスはどうだ?」

 

甘雨は少しだけ思案すると、口を開いた。

 

「帝君はこの500年間、毎日欠かさずアガレスさんのことを思い出していらっしゃっていたご様子でした。神託で降臨なされる際にも、どこか寂しそうな表情をされていらっしゃいましたから…」

 

「そう、か…4日…あ、いや、3日後に迫った迎仙儀式で会えるのを楽しみにしているんだが…話す暇があるとは思えんな」

 

なんたって公共の場だし、取り押さえられたりするんじゃなかろうか。

 

「そうですね…帝君は神託を下すだけですので…」

 

「まぁそれは追々考えるしか無いだろうな。降り立つ時は麒麟と龍の混じった姿なんだろう?」

 

「はい、その通りです」

 

てなると、人型の容姿は見られていないわけだ。案外璃月港で会えるかもな。

 

「しかし、甘雨…成長したんだな」

 

思わず、感嘆に満ちた声が出た。500年で璃月港にはきっと、なくてはならない掛け替えのない存在となったのだろう。そうでなければこんなに大量の仕事を任せられるわけがないのだ。

甘雨は俺の言葉に、少し照れつつも嬉しそうに返した。

 

「いえ…まだまだです。帝君や、アガレスさんに比べれば…ですが、ありがとうございます…!」

 

さて、ここで俺と甘雨の関係を話しておくと、帝君…もとい、モラクスに頼まれて面倒を見ていた時期がある。まぁそれなりに彼女とも長い付き合いだな。

甘雨が帝君帝君言うから引っ張られたな。

 

「じゃあ甘雨、そのうちまた来る。仕事、頑張れよ」

 

「はいっ、ありがとうございました。お待ちしてますね」

 

甘雨は俺の姿が見えなくなるまで手を振り続けるのだった。

 

 

 

翌朝、塵歌壺内に戻った俺は朝食を作っていた。

 

「ふぁ〜あ…」

 

「ん、旅人、起きたのか」

 

「んー…おはよう」

 

眠そうだな。流石に昨日は疲れていたということか。

 

「朝ごはん、出来てるから食べようか。ってか、パイモンも起こしてやればよかったのに…」

 

俺は旅人の隣にパイモンがいないことに気が付き、彼女の寝ていた部屋に入る。パイモンはぐっすりと眠っている。俺はパイモンの首根っこを掴むと、料理に鼻を近づけた。

 

「料理の匂い!?」

 

パイモンが起きた。まぁ、そりゃ起きるだろうな。パイモンはモラなどのお宝や料理に弱いから起きると思ったら案の定だった。パイモンは料理にしばらく釘付けだったが、ふと後ろを見て俺と目があった。

 

「おはよう、パイモン。飯出来てるぞ」

 

「お、おう…ありがとな」

 

さて、飯を食っている間に、今日の予定を考えておかないとな。璃月港に来たとはいえ、特にすることはないのだ。強いて言うなら仙人に久しぶりに会う、くらいだろうか。

 

「旅人、今日の予定は?」

 

「え?ああ…えっと、取り敢えずもう少し情報収集しようと思ってるよ。アガレスさんは?」

 

「俺は仙人に会うつもりだ」

 

「え、仙人って…アレだろ?いるかどうかわかんないやつだろ?」

 

パイモンがすかさず口を挟んだ。む、世間一般ではそういう認識なのか。

 

「お前達には教えておくが、仙人は存在するぞ?意外と近くにいたりもするし、半仙なんかもいたりする。見たことないのか」

 

「うん、ない」

 

「そもそも璃月が初めてだったな。そりゃあ見たことないのも無理はない。まぁそのうち見られるさ」

 

「えぇ、そ、そうなのか…」

 

パイモンも旅人も少し興味深そうだった。仙人はここ500年ですっかり俗世から離れてしまったようだな。まぁ、忘れ去られてないだけマシだろう。

 

「まぁそういうわけで、今日は出かけてくるから、そうだな…」

 

俺は前ウェンティにも渡した指輪のもう一つを彼女に渡した。

 

「これって、ウェンティにも渡してたやつ?」

 

旅人がそう言ったので、首肯いた。

 

「そうだ。指輪に話し掛けると使えるはずだぞ」

 

「そうなんだ…じゃあ今日早速後で使ってみる」

 

試用は大事だからな。未だにウェンティからなにもないのはもしかしたら壊れてるのか?まぁ、後々わかることだろう。

 

「さて、朝食を食べ終わったら塵歌壺から出るぞ」

 

俺達はそのまま、旅人の準備が整ってから塵歌壺を出るのだった。

 

 

 

さて、と。

 

「まずは絶雲の間の頂上にいる削月築陽真君からか…」

 

護法夜叉もどれだけ残っているか、それがわからない。だから削月築陽真君から、というわけだ。

 

そもそも三眼五顕仙人がいるかどうかもわからない。絶雲の間が一番近いから、という理由だけで、削月築陽真君と仲が深いわけではない。知り合い程度なのだ。留雲借風真君の方がどちらかというと仲がいいと思うな、うん。

 

「じゃ、旅人。夜に『万民堂』でな」

 

「うん、じゃあまた」

 

俺は首肯くと、絶雲の間へ向けて出発するのだった。




原神の仙人の名前長くて覚えるの大変だったんですが三眼五顕仙人くらいは名前覚えちゃってましたねびっくり
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