忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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いやぁ…案外誤字が多くてやばいですね。見落としが多すぎて…一応見直してはいるんですが…あれ、見直す意味ない?そんなバカな…。


第34話 仙人と七星、そして───

璃月港に戻ると、なんだか嫌に騒がしかった。人々の表情が強張り、何かを畏怖しているように見える。いや、まぁ迎仙儀式での一件のせい、といえばそれまでなのだが、それだけではないように見えた。

 

「璃月港は活気がありますね〜」

 

違う、そうじゃない。

 

「あ、蛍さまがいらっしゃいますね。少し切羽詰まった様子でしたが…」

 

「追うぞ」

 

俺は可能な限り急いで旅人の去っていった方向へ行ってみた。すぐに話しかける気満々だったのだが、旅人の姿ともう一人の人物の姿を見て俺はその判断をやめ、柱の陰に隠れた。

 

「───お嬢ちゃん、俺が思うに、璃月七星が何かを隠している可能性は高い。犯人ではないにしても、ね。だからこそ、あるがままの真実を仙人に伝えねばならないんだ」

 

「…それってつまり、三眼五顕仙人だよね?」

 

「おや、知っているのなら話が早いね。仙人にその事実を伝えて───」

 

「璃月を内側から破壊する、とでも言いたいのか?『公子』」

 

バッともう一人の人物が俺のいる方向を向いた。その顔には焦燥が浮かんでいた。

 

「お前は…」

 

「その表情から察するに俺のことは知ってるようだな?ま、ファデュイ内部では有名人だろうしな。良い意味で」

 

皮肉交じりにそう告げると、『公子』はチッと舌打ちした。

 

「もしかして君の連れだったのかな?疑いをかけられていたようだから北国銀行が容疑を晴らそうと思っていたんだけど」

 

「プッ…ははははは!容疑、容疑ねぇ…そんなものかけられているわけがないだろう?」

 

まぁ取り調べの最中に逃げたりなんかしなければ疑われることなんてない。璃月七星だって犯人が人間でないことなんてわかりきっているからだ。

 

「そもそも、お前と往生堂の客卿と、そして俺達の場所に来た調査員は俺達のことを疑っていたわけじゃない。まぁ、その考えを詳しくは言えないが、旅人も俺もモンドではそれなりの地位がある。そんな人物を疑ったら外交問題だ。それこそありえないだろ?」

 

「なるほどね…言われてみればそうだろうね。それにしても、『淑女』から君のことを聞いたときはどんな人物なのかな、なんて思っていたけれど、戦闘も得意で頭脳戦も得意、君弱点はあるのかい?」

 

「自分の弱点をわざわざ他人に教えると思うか?それもファデュイの人間に」

 

「お酒だよ」

 

なんで言っちゃうの旅人ー!?

 

「へぇ、どういう意味だい?」

 

「アガレスさんはアルコールが弱点、匂いを嗅いだだけで酔う。でも、中途半端に酔わせちゃうと大変なことになるから、やめておいたほうがいい」

 

「あはは、有効活用させてもらうよ」

 

それだけ言って『公子』は去っていった。終わった。

 

「なぁ…」

 

「あはは、教えちゃった」

 

「あははじゃないんだが」

 

割とマジで死活問題だ。世界が滅びかねん。

 

「さて、まぁ向こうも本気にはしないだろうし、問題はないが…それはそうと旅人、この騒ぎは?」

 

「あ、そうだった…仙人が璃月港までやってきて説明を求めてるんだって」

 

…想定通りに動いてくれているな。まぁ、本音を言えば『淑女』が攻めてきたのかと思って結構焦った。

 

「俺達も行こうか。恐らく玉京台にいるはずだ、そうだな?」

 

「うん、皆そう言ってた」

 

よし、まずは仙人の誤解を解かねばな。

 

 

 

「───ですから、私達は我々にできる最善を尽くしております。帝君が殺害されてしまったのは我々の落ち度ですが、混乱と暴動は全て抑えております。何を疑っていらっしゃるのですか?」

 

【帝君が殺害された。それを偶々耳にしたのでこちらへ赴いた次第だ。璃月七星のその後の対応、凡人に罪を着せるなど言語道断であろうが。良いか、我々は貴様等を疑っているのではなく、罪のない一般人に罪を着せようとしたことに憤りを感じているのだ】

 

玉京台では削月築陽真君、留雲借風真君、理水畳山真君、そして魈の四人の仙人と、璃月七星の『天権』凝光、そして俺は初めて見るが、『玉衡』刻晴がいた。

削月築陽真君の言葉に凝光は真っ向から反論した。

 

「考えてもみて下さい。あの場に帝君殺しの犯人がいた可能性だってあります。帝君を殺害できるのであればそれ相応の実力者でなくてはなりませんし、それほどの実力者であれば自身の肉体の形を変えることも自由自在、つまり凡人に擬態している可能性だって考えられます。ですから、私達は罪のない民に罪を着せたわけではありません」

 

「凝光」

 

凝光の言葉に反論すべく口を開いたのは魈だった。

 

「我が思うに、対応としては間違ってはいなかっただろう。しかし、璃月港を任せた身としては、帝君が殺害された上に未だに犯人すら見つかっていない、となれば…気持ちはわかるであろう?我等としても帝君殺害の犯人を必ず見つけ出し、無限の苦しみを与えたいと考えている」

 

留雲借風真君は少しふふっと笑い、理水畳山真君と削月築陽真君は少しだけ唸った。

 

「皆様のお気持ちはわかりました。どうかご協力いただけないでしょうか」

 

凝光の対応から察するに、モラクスが生きているかもしれない、という事実は隠すようだ。何が起こるかわからないが、いざという時はモラクスが出てくるだろう、という言を信じているのだろう。まぁ、あくまでもモラクスが生きているという前提あってのものだが。

 

「ああ、我等の方でも探しておく。最も怪しい存在は?」

 

「元ファデュイ執行官第八位『淑女』です。彼女が今最も容疑者としては怪しいですね」

 

「わかった。その存在を見つけ出せば良いのだな」

 

削月築陽真君、留雲借風真君、理水畳山真君、そして魈は思い思いの反応を示しつつ帰ろうとした。

 

「互いの立場があるのは理解するが、仙人達は動きが性急すぎるな。もう少し様子見でも構わなかっただろうに」

 

「アガ…コホン…お前は何者だ?見たところ璃月七星の人間ではないな」

 

魈は何故か俺とは知り合いでない、という風に振る舞うようで、それは他の仙人達も同様である。仙人達には悪いが、今はあまり出てきてほしくない。正直、タイミングは最悪に近いからな。

 

「俺はしがない一般人さ。んで、話を聞いていて思ったんだが、まずは送仙儀式をするべきじゃないのか?帝君は死んだ。それは紛れもない事実だろう。であるならば慣例に則って送仙儀式を行うべきだ」

 

【しかし、儀式を行うにしてもまずは犯人探しが先であろう。璃月が現在進行系で狙われているのならその『淑女』とやらを探し出して殺してからでも遅くはないはずだ】

 

ふむ、と俺は一つ落ち着き、少し考えてとあることに気が付いたが、そのまま構わず続けた。

 

「璃月の民はそれで納得できるか?彼等は帝君を敬愛し、帝君も民を敬愛していた。で、あるのにいざ自分が死んだら送仙儀式をせずにまずは復讐?それを聞いたら帝君がどう思うか」

 

恐らくどうも思わないだろうな。「それが彼等の選択であるのならば俺はそれを尊重する」とか言うだろうしな。ただ、仙人達にとっては帝君のその意思を無視することは難しい。何故なら彼等もまた、帝君を敬愛し、彼と契約を結んでいるからだ。ふぅ〜と削月築陽真君が長い溜息を吐いた。

 

【良かろう、凡人よ。まずは帝君の送仙儀式を執り行いその後、全力で犯人探しといこうではないか】

 

無論これは『淑女』を誘い出す策でもある。勿論、『淑女』が何をしてくるかはわからないが、今はノエルも来てくれている。なんとかなるだろう。最悪、モラクスが出てくるだろうしな。

 

「感謝しよう」

 

【では我等はこれで去るとしよう。騒がせてすまなかったな】

 

「いえ、とても有意義な時間を過ごすことができました。犯人の件、どうかよろしくお願い致します」

 

仙人達はそれぞれの住処へと去っていった。はぁ、と凝光は溜息を吐いた。

 

「これでいいのかしら、アガレス?」

 

「完璧だ。帝君が生きていることを伏せて璃月やモンドを狙っている『淑女』を仙人達が完全にロックオンした。簡単に国を越えることは難しくなったはずだ」

 

「それで、送仙儀式は往生堂に頼むのよね?」

 

「それは勿論だが、俺も手伝うつもりだ。救民団璃月支部の初仕事ってわけだな」

 

往生堂は儀式とは別に人々の葬儀や他にも色々なことに事業があるため、割と人手不足だったりするかもしれないのだ。まぁ、それは正直理由の一つに過ぎない。一番の理由は往生堂の客卿、鍾離に接触することだ。

 

今日会った『公子』ことタルタリヤはモラクスではなかった。消去法で行くと、往生堂の客卿がモラクス、ということになる。まぁ確証はないが、可能性は高いはずだ。まず博識である点。彼は璃月だけに留まらず、様々な場所の様々な文化を識っている。璃月港には様々な国から人がやってきては住み、そして死んでいく。家族のこともあるだろうし、本人の意向にもよるだろうが、自分の故郷の葬式の様式、というものがあるはずだ。そしてそれを往生堂だけで網羅するのは難しい。そこで往生堂の客卿が助言しているのだとしたら、確実にクロに近いグレーと言える。

 

「あら、そんなことしなくてもこっちで依頼するわよ?」

 

「…往生堂の客卿ってやつに興味があってな。博識らしいから」

 

「知識欲の権化みたいな台詞ね。まぁわかったわ。堂主は普段は営業で忙しいみたいだし、間違いなく送仙儀式は往生堂の客卿が任されると思うわ。私の方から助っ人を寄越す旨を往生堂に伝えておくわね」

 

「助かる」

 

「いいのよ、これも布石だから」

 

商売魂ここに極まれり、といったところか。俺は凝光に軽く挨拶して少し離れたところで待っていた旅人とノエルを伴い玉京台を離れるのだった。

 

〜〜〜〜

 

「…」

 

玉京台付近の竹林の影に、茶色っぽい服を着た男が立っていた。

 

「…まさか、仙人を動かすとはな。昔に比べて更に用意周到になっているようだ」

 

独り言を呟きながら男は竹林を離れ、道に出る。歩きながら考えるように言った。

 

「彼がいる以上、俺が生きていることは既に周知の事実のはず…それを七星に接触した時点で言っていない?そして『淑女』が犯人と考えているというのはどういうことだ」

 

男は自分の計画に少しだけ綻びが出てきていると感じていた。

 

「神の心を狙っていることはバルバトスから聞いていたが、『淑女』がモンドではなく璃月にいる理由…一体何故だ?そして彼は何故…いや、これは考える必要のない事柄だ」

 

「鍾離さ〜ん、料理作ったんですけど食べます?」

 

ひょっこり焦げ茶色の服を着た少女が顔を出した。男───鍾離は少しだけ表情を強張らせた。

 

「胡堂主か…それより、その…それは?」

 

鍾離は丼に入っている謎の物体を見やっていった。少女───胡桃はふふん、と胸を張っていった。

 

「今回のは自信作だよ〜!なんたって仙跳牆だからね!」

 

「自信作も何も信じられないほどに原型がないな。ふむ…しかし香りから察するに言ったとおりに仙跳牆を作ろうとしたのか。しかし…やはり食べられたものではなさそうだ」

 

「えぇ〜!!前鍾離さん言ってたじゃないですか!!『胡堂主の作った(まともな)料理であれば今度食べてみよう』って!!」

 

「確かに言ったが、食べられるものとそうでないものがあるんだ」

 

「逃げようったってそうはいかない…今日こそ食べてもらうんだから…!!」

 

胡桃は丼を投げつける勢いで逃げる鍾離を追った。鍾離は追われながらも計画を綻ばせた彼にどう対応しようか、それを考えるのだった。




ふぅ…長くなったぜ。誤字報告あればよろしくお願い致します。
見たんだよ?見たんだけどね…でも私の眼は節穴みたいです。
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