忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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レポート、やらなきゃ…数学…あああああ

ってなってます家で。ほんとにやらないとまずいんでやってきます


第37話 共犯者

俺は救民団璃月支部を出て西側にある璃沙郊へ向かった。ファデュイの潜伏地としては、この辺にある遺跡群がかなり怪しいと踏んでいるからだ。それに、璃月港にもそれなりに近い。潜むなら青墟浦が怪しいところだが逃げられても厄介だ。遁玉の丘から探すこととしよう。

 

遁玉の丘にて、俺は遺跡群へ降り立った。流石に魔物が多い。宝盗団なんかもいるようだし、加えて言うならファデュイもいる。中々カオスじゃないか。ただ、ファデュイがいるところから察するに、やはりというべきか、ここに『淑女』はいないだろう。

 

「貴様、何者だ!」

 

と、ファデュイ前鋒軍・雷ハンマーが叫んだ。周囲にいるファデュイも同じようにこちらを向き、戦闘態勢に移行している。

 

「おっと、バレちゃあ仕方ねえ」

 

「何っ!?ガハッ!」

 

俺は高速で駆けると刀で全員の首を通り抜け様に刎ねた。他愛もないな。それにしても、ファデュイはこんなところで何をしているのやら。そう言えば『売女』について聞くのを忘れていたな。次にあったファデュイ辺りに聞いてみるか。勿論、少し骨は折れるだろうがな。

 

 

 

さて、遁玉の丘での調査を終えてお次は霊矩関までやってきた。今の所まだ『売女』に関する情報は何も入手できていない。残念なことにファデュイを見つけられなかったのだ。意外といないものだな。ま、ただの遺跡だからな。

 

「さて…霊矩関は…あまりファデュイがいないな。アビスの魔術師…それとヒルチャールくらいか」

 

アビスの魔術師がこちらに気が付き、ヒルチャールを差し向けてきた。軽くヒルチャールを斬り捨てた後、アビスの魔術師は立体的な動きで俺に攻撃を仕掛けてくる。氷の塊が複数、俺に向かって飛来してくるのをバックステップで避けると、そのまますぐに意表を突くように一気に踏み込んだ。アビスの魔術師が焦って氷の塊を飛ばしてくるが、全て無視して再び踏み込んだ。

 

「雷斬」

 

俺は光速で動き、アビスの魔術師がシールドを張る前に斬り捨てた。俺の背後には雷元素の痕跡が残っている。少し時間をかけ過ぎたかもしれないが、まぁ問題ないと信じたいところだ。

 

「一応、霊矩関も見ていくか…」

 

ここは結構大きい遺跡が残っているし、原型に近い。居住できるスペースは十分にあるだろう。いてもおかしくはないが、ここではないとそう俺の勘が告げている。まぁ勿論、勘を全面的に信用するわけにはいかないので、念の為見るわけである。

 

俺はそのまま霊矩関の隅々まで探索したが、やはり、『淑女』は見つからなかった。となればやはり。

 

「青墟浦だろうな…」

 

あそこは万が一居場所がバレても層岩巨淵に逃げ込むことができる。加えて、璃月港までは東にほぼ一直線だ。俺は青墟浦に向かおうとしたが、東を見る。空が白んできていた。

 

「…っ、タイムリミットか。ほぼ『淑女』の居場所は特定できたと言っても過言ではないが…」

 

それでも、だ。今日、『淑女』が攻めてこないとも限らない。その場合俺が止めるが、問題は若陀龍王だ。いやはやしかし我ながらなんとも…。

 

「全く…相手の予定に振り回されすぎる計画だな…嫌になってしまうよ」

 

俺は自虐的にそう吐き捨て、璃月港へ帰還すべく飛行するのだった。

 

〜〜〜〜

 

「璃月から鉱夫が失踪しているですって?」

 

群玉閣にいる凝光は報告書を見て呟いた。

 

「はい、何名かの鉱夫が、失踪し、目撃例によれば南天門付近へ向かっているそうです」

 

「南天門…ね」

 

凝光は顎に手を当て少し思案した後、千岩軍を動かすことに決めた。もしもの時に備え、『玉衡』も調査に向かわせることにした。

 

「『玉衡』に連絡して頂戴。千岩軍を少数率いて南天門へ調査へ迎え、と」

 

「かしこまりました」

 

凝光の部下が出て行ったのを見計らってか、凝光は「もういいわよ」と言った。

 

「悪いな、わざわざ時間を作ってもらって」

 

影から出てきたのは銀髪の男、アガレスである。

 

「無理矢理にでも群玉閣に来てよかった。まさかこんなにも簡単に許可をくれるとはな」

 

「貴方からの報告だもの。無視できるはずがないわ。それで、どうしたの?」

 

アガレスは勿体つけずに言った。

 

「『淑女』の居場所を特定した」

 

「…あら、早かったのね」

 

凝光は少し驚いたように目を見開いた。

 

「昨日潜伏しているであろう場所を推測し、ほぼ特定した。恐らく、青墟浦に潜伏している」

 

「…根拠は?実際に見たの?」

 

アガレスは簡単にだが理由を挙げた。

 

「いや、見てはいない。しかし、璃月港に近く、いつでも狙えて、そして潜伏場所に適しているとすれば遁玉の丘、霊矩関、そして青墟浦の3つが挙げられる。そこ以外だと少し遠いし潜伏場所としては不十分と言えるだろう」

 

アガレスは更に続けた。

 

「そこで昨日の夜、遁玉の丘、霊矩関を隅々まで見て回ったが、見つけられなかった。まぁ、大体予想はできていたが…いざという時は層岩巨淵にも逃げ込むことができるのはやはり青墟浦しかないだろう」

 

アガレスのその言葉に、凝光は考え込むように腕を組みながら眉を顰める。

 

「実際に見ていないのならなんとも言えないけれど、確かに可能性は高いわね。千岩軍を今すぐ「それに関しても話に来たんだ」」

 

アガレスはそんな凝光の話を遮って、卓の前まで来ると小声で言った。

 

「…他言無用で頼む。誰とは言えないが、モラクスを発見した」

 

アガレスの言葉に凝光は驚きを隠そうともせず目を大きく見開いた。

 

「彼はどうやらこの璃月港に変革を齎そうとしているらしい。だが、その代償として神の心を氷神に渡すそうだ」

 

「神の心…神の目の上位互換的な存在と聞いているわ。けれど、私も詳しいことはわからない」

 

凝光は首を振ったが、アガレスは更に続けた。

 

「そうだ。俺も、神の心を失えばどういう影響が神に出るか全く不明瞭だ。だからこそ、阻止せねばならない。もしかすれば世界に影響を及ぼす可能性だってある」

 

「どうやって止めるつもり?」

 

アガレスは提案をする。それは正に、悪魔の如き提案である。

 

「モラクスは言っていた。『人間がどうにもできぬ事態になれば、俺が出る』と。であれば、そういう状況を作ればいいと思わないか?」

 

「何を言って…いえ、まさか」

 

「……お前は選択を迫られているんだ。璃月を危険に晒して世界を救うか、それとも璃月のみを安全に運営するのかをな」

 

アガレス自身、世界を守護する神としては絶対に譲れない。しかし、凝光としては璃月を危険に晒すほどの価値があるのか、そこである。

 

「今ここで世界を見捨ててしまえばいずれにせよ璃月、ひいては世界が破滅する。俺は世界を守護する存在として絶対にそれは見過ごせない。だから500年前も喜んで犠牲になったのだ」

 

アガレスとすればその努力を、モラクスによって踏み躙られるようなものに近い。500年前に自己犠牲によって世界の危機を救ったのにも関わらず、モラクスは世界にどんな影響があるかもわからないことをしようとしているとあれば、アガレスがそれを止めに走るのは、道理であった。

 

「璃月港は今未曾有に危機を迎えるだろう。それは『淑女』が璃月港に攻めてくるのか、それとも先程の鉱夫失踪事件、ひいては若陀龍王が関係してくるのかはわからないがな」

 

「…どっちを利用するつもり?」

 

ふむ、とアガレスはあくまでも冷酷に告げた。

 

「モラクスは若陀龍王と縁があるからな。利用するならそっちだろうな」

 

「『淑女』はどうするのかしら?」

 

「それは俺が止める予定だ。流石に2つの脅威を璃月港に向ける理由はないからな」

 

「必要ならする、ということ?」

 

アガレスは首肯いた。

 

「若陀龍王…伝説の中にしか出てこない存在だと思っていたけれど、本当に存在するだなんてね」

 

「彼は層岩巨淵の地脈が傷つけられて摩耗し、璃月やモラクスの存在を忘れて周囲のものをただ破壊するだけの存在となってしまっている。それ故に彼は封印されているのだ。知らずとも無理はない」

 

それで?とアガレスは言った。凝光は心の底から迷っていたが、やがて口を開いた。

 

「私の一存では決められないわ。璃月港の危機だもの。けれど私としては…賛成と言わせてもらうわ」

 

凝光は恐る恐るそう言い、璃月を危険に晒してでも世界を救うと決断した。アガレスの表情に妖しい笑みが宿った。

 

「感謝しよう」

 

「ええ、心の底から感謝するといいわ。勿論、対価は貴方という労働力でいいのよ?」

 

「そうか…そうだな、対価は必要だろう。璃月七星からの依頼であればこちらは無償で引き受けることとしよう。ただし、戦争への参加の要請は聞けないものとする、いいな」

 

「ええ、構わないわ」

 

「これで俺達は共犯者だな。ま、こっちはこっちで上手くやる。計画の細部は明日にでも持ってくるからな」

 

アガレスはそう言って群玉閣から出るため机の前から去ろうとした。が、凝光に呼び止められたため立ち止まり、振り向いた。

 

「一つだけ忠告しておくわ。許可なしにこの計画を実行しようとしていたとしたら、私は貴方を絶対に許さないから」

 

アガレスはキョトン、としたがやがて微笑みを浮かべると、

 

「肝に銘じておこう」

 

とそう言って群玉閣を出るのだった。

 

 

 

一方その頃、青墟浦にて。

 

「もう少しね…もう少しで、全てを終わらせられる」

 

『淑女』は自身の火傷とモンドから逃げる際に消耗した体力を回復させるために潜伏していた。『淑女』にとって思い出すのも悍ましい出来事、それは『天空のライアー盗難事件』である。

 

その際にファデュイの隠し拠点に侵入したアガレスはその基地ごとほとんどの物資を灼き尽くし『淑女』に重大な火傷を負わせた。彼女にしてみれば火傷は過去に関係する。その過去を思い出させた代償として、彼女はアガレスに復讐するべく力を蓄えていたのだ。

 

そんな時だった。一人の女が青墟浦の、それも『淑女』のいる場所に現れたのは。

 

「やっほ〜、シニョーラちゃん、元気してる?」

 

「っ!あんたがなんでこんなところに…!」

 

『淑女』は思わず声を荒げた。荒げられた当の本人はヘラヘラしていて、特に効いた様子はなかった。

 

「そんなことより、私ちょ〜っと困ってるんだよね。助けてくんない?」

 

「嫌よ、なんであんたなんかに───」

 

「救民団団長、アガレス」

 

その名を出した瞬間、『淑女』の口が止まった。その様子を見て女はニヤリと嗤った。

 

「彼が邪魔立てしてくるの、だから、消してほしくって。利害は一致していると思わない?璃月港に今丁度いるしね、どう?」

 

「…あんた、何を企んでるの」

 

「えー、言ったじゃん。邪魔立てしてくるって。とある一大イベントの邪魔が入っちゃいけないから、手伝ってくれる?」

 

『淑女』は何かをまた言おうとしたがやがて諦めたように溜息を吐いた。

 

「わかったわよ…仕方がないわね」

 

「やった!これで時間稼ぎはできるかな…」

 

女は『淑女』とは逆の方向を向き、ニヤリと卑しい笑みを浮かべた。

 

「璃月には滅んでもらう。ついでに神の心もゲットできて一石二鳥!嗚呼、早く…三日後が楽しみで楽しみで仕方がないよ…!」

 

くねくねと身体をくねらせ、女は言った。そんな女の様子を見て『淑女』は一言、

 

「…やっぱり、貴女は『売女』の名を冠するのが相応しいわね」

 

そう呟いた。




というわけで『売女』さん初登場でした。かなりぶっ飛んだキャラですちなみに
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