忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

56 / 157
更新遅れました。理由をいいますと…ええ、情報番組見てました()


第45話 因縁への終止符

崖の上にいる淑女はニタリと歪な笑みを浮かべると挨拶代わり、と言っては何だが極大の火球を放ってきた。俺は予想外に速度のある火球に驚き、気絶しているルフィアンを掴んで大きく避ける。火球は青墟浦の建物に着弾すると爆発を引き起こし、破壊した。

 

「っ…避けるとああなるわけか…あの威力、加えて速さ…なるほど、これが暴走した淑女の力、ということか…」

 

俺は刀を一旦鞘に収めてルフィアンを岩元素で作った檻で拘束した。これで目が覚めても逃げ出す危険性はないだろう。さて、とばかりにまずは距離を詰めるため風元素で浮き上がった。淑女はそんな俺に向けて先程の火球を複数放ってきた。

 

「避けるわけにもいかんか…」

 

璃月の地形を余り変えられても困るしな。

 

「水斬」

 

俺は飛びながら火球を水元素を纏わせた刀で一閃し、空中で爆散させた。多少の余波は勿論くるが、この程度なら問題はない。淑女は火球を全て斬り捨てられたことに少し驚いたのか、一瞬動きが止まったが、すぐに火球を追加して───

 

「っ…なに…!?」

 

火球を再び斬り捨てたが、その真後ろに炎の槍があったようで、既に眼前に迫っていた。俺は咄嗟の判断で風元素を上昇の力から下降の力に変えつつ、自身を風元素で後ろから攻撃した。

 

「っぐ…!!」

 

多少の衝撃が俺の体内に伝わりはするが、お陰で火球の爆発と炎の槍を躱すことができた。再び勢いを風元素で殺し、肉薄するべく少し急ぐ。淑女は火球をかなり大量に俺に向けて放ってきた。さて…どれかには炎の槍が後ろに控えているだろう。全てがそうだったら、それはそれで対処は簡単になってしまう。彼女の狙いは俺の足を少しでも止めることだろう。だから、止まってやらない。

 

俺は自身を飛ばしている風元素に向けて水元素を放ち、拡散反応を起こさせた。拡散反応によって拡散された水が火球から俺の身を守ってくれるのだ。ついでとばかりに炎の槍も蒸発反応によって消滅させた。先程の戦略が通じないとわかったのか、淑女は火球を放つのをやめ、少し後退した。どうやら俺の着地を待つようである。まぁ、着地なんて、しようとしてもできないけどな。

 

と、いうのも淑女がいた場所付近は彼女が発する熱によって草木は燃え盛っているし、岩石も溶けてドロドロと崖下へと伸びていっている。勿論、彼女自身この温度を維持しているのならばそのうち融解してしまうだろう。この勝負、彼女の死は確実だ。それでも彼女は復讐を成し遂げるつもりなのだろう。

 

淑女は炎でできた鞭をビュンビュンと振り回し、俺へ向けて恐らく音速を超えるであろう攻撃を放ってきた。俺は刀で受けず上空へ逃げ込む。そこに淑女から火球が飛来した。それを水斬で蒸発させ突っ込む。

 

鞭が俺を襲うが俺は息を大きく吸うと風元素を一時的に全身から外側へ向けた。そのため淑女の鞭が俺へ命中することはなかった。これをするとほんの一瞬だが空気が無くなるので大きく息を吸ったのである。とはいえすぐに空気が流入し、かなりの圧がかかるため一瞬で俺はその場から離れた。

 

「喰らえ…水斬」

 

俺は淑女の右腕を斬り落とそうと刀を振るった。淑女の右腕に俺の刀が辿り着く寸前に刀身に纏わせていた水元素が全て蒸発し、刀をも溶かした。一瞬の出来事に俺は、俺らしくもなく呆然としてしまった。直後には回復したが、時既に遅し。俺の横腹に鞭が命中した。

 

「っ…う…」

 

俺はかなり吹き飛ばされつつも風元素で衝撃を殺して浮き上がった。俺は喉の奥から競り上がってくる血液をぺっと吐き出し、刀身が溶けて使い物にならなくなった刀を捨てた。お気に入りだったが仕方ないだろう。

 

俺はそのまま法器を代わりに取り出した。

 

「やるなら元素のみで、か。いいだろう」

 

横腹の傷を水元素で治して少し楽になった。殺そうと思えばすぐに殺せる。だがそれをすれば地形が無事では済まないだろう。

 

俺は水元素を纏った。鞭が命中しても多少は耐えてくれるだろう。

 

「さぁて…行くか…!」

 

淑女は火球と炎の槍を大量に飛ばしてくる。俺は水元素で応戦しつつ、淑女が放った火球を利用して水元素を多量にぶつけて大量の水蒸気を発生させて煙幕を強制的に作った。

 

「…いけ」

 

俺は常に水元素を淑女が居るであろう位置に放ち水蒸気を発生させ続けながら、水球をまず放ってタイミングを見計らって高圧で圧縮した水の槍を放った。

 

「ギャァァァ!!」

 

淑女が金切り声を上げ、水蒸気を払い除けるように炎元素を周囲に展開した。俺は纏っていた水元素全てを犠牲にして何とかその攻撃を防いだ。

 

水蒸気が晴れ、顕になった淑女の腹に、風穴が空いていた。勿論、ただ水元素の槍を当てただけでは蒸発して終わりだ。だから水球を当てて炎を一瞬消したその隙にタイミングを合わせて槍を命中させたのである。ただ、コレは相手の位置、どれくらいの速度で水球や水の槍が飛ぶか、それらを正しく理解していないとできない。加えて言うなら相手の視界が遮られていなければ無理だ。何故なら完全なる不意打ちによる攻撃だからである。

 

まぁ、当たってよかったが次はこうもいかないだろう。淑女は次の俺の行動を警戒している。このまま睨み合いが続けば間違いなく時間がかかる。旅人や璃月港、若陀龍王のことが気がかりだし早めに終わらせねばならない。

 

俺も覚悟を決めるべきか…。

 

「しゃあなし、か…後で凝光に謝ることにしよう。多少地形は変わってしまうが…」

 

しかしまぁ、中々どうして手強いな。全身を炎の化身に変え、あらゆる攻撃を焼き尽くす。なるほど、能力だけ見れば最早最強と言ってもいいかもしれない。どんな攻撃でも、今なら焼き尽くすだろうからな。

 

「…すまない、俺にはお前をこうやって殺す方法以外思いつかない」

 

俺は淑女が俺から動くのを待っているのをいいことに元素力を不自然なほどに高めていく。淑女は途中で不味いことに気が付いたのか、俺へ向けて火球や炎の槍を放ってきた。だがしかし、もう遅い。

 

「元素爆発、終焉之神」

 

俺はこの元素爆発を終焉之神と名付けた。だってそうじゃないか。あらゆる元素反応によって淑女に似た状態を作り出して尚且、範囲を広げてしまえば全てを滅ぼす力を持つ。これを、終焉之神と呼ばずしてなんと呼ぶというのか。まぁ、俺の場合便宜上そう呼んでいるだけだが。

 

淑女の放った火球や炎の槍は俺の目と鼻の先で消滅した。俺は足元だけ元素爆発を解除しつつ風元素を使って浮き、淑女に近付いていく。徐々に徐々に、制御を間違えないように。淑女は俺が恐ろしいのか、じりじりと後ろに下がっていく。

 

「ロザリン・クルーズチカ・ローエファルタ…お前のその哀しみや絶望を理解できるだなんて、俺には口が裂けても言えない。だが、もう休んでもいいんじゃないのか?この500年間、お前は復讐のためだけに生きてきた。そんな生き方、お前の恋人は望んでいなかったんじゃないのか?」

 

淑女はうるさい、聞きたくないというように頭を振った。その隙に俺は更に近付き、元素爆発の範囲外ギリギリに俺は位置取った。

 

「だからその哀しみ、苦しみ…絶望。その全ての恨みや復讐は、俺が背負ってやる。ッハハ、自由に生きると決めたのに500年前とやっていることが変わらない…皮肉だと思わないか?」

 

淑女は苦しそうに俺へ向けて手を伸ばした。その痛みや苦しみの理由は納得できる。だが、同情はしていられない。いつ俺もああなるか、わかったものじゃないからな。

 

俺は一言すまない、と呟いて一歩淑女に近付くのだった。

 

 

 

「───そう、死んだんだ…」

 

気絶から目覚め、大人しく檻の中で待っていたルフィアンが俺に向かってそう呟いた。

 

「流石に無傷とはいかなかったみたいだね?」

 

「まぁな。高まりすぎた炎元素によって、俺の攻撃がほとんど通らない状態だったんだ。そりゃあ当然攻撃も受けるさ」

 

「それで…私をどうするつもりなの?やっぱりあんなことやこんなことを───」

 

「神がそういうことに興味があると思うか?俺達はとびきり長命だ。種の保存とか、そういう理由ならすることもあるかもしれないが、そういった理由以外ですることはない」

 

「いや〜んケチ〜!」

 

…調子狂うな。

 

「取り敢えずお前は捕虜扱いだ。スネージナヤはどうせ部下の勝手な暴走で片付けるだろうし、お前の居場所はもうないだろうな?」

 

「それは覚悟の上だけど…困ったなぁ…これから先どう生きていけばいいか」

 

ルフィアンは檻の中で呟いた。

 

「どういう意味だ?」

 

「ほら、私自分の強さに自信があったんだけど…ぼっきぼきにその自信はへし折られちゃったし…戦い以外の生きる道を知らないから…」

 

なるほど、そういうことか。

 

「幼少期からお前は常に戦いのみを生き甲斐にしてきたわけか。淑女は復讐、そしてお前は戦闘…か。色々、囚われているものがあるらしいな、ファデュイの執行官は」

 

とそこで、俺は一つ提案をすることにした。

 

「なぁルフィアン、お前、璃月で働いてみろよ。給仕でも、何でもいいからさ。なんでもやってみればいい。若いうちに失敗しておいて損はないからな」

 

「ち、ちょっと言ってる意味がわかんないんだけど」

 

「まぁそれも全て罪を償ってから、だがな。スネージナヤの情報を洗いざらい吐いてその上で罪を償わされることになるだろう…さて、一つ質問をしよう。お前は死にたいのか?」

 

一瞬ルフィアンは何を言っているかわからなかったのか首を傾げたが、その直後ムキになって言った。

 

「死にたいわけ無いじゃん!だってそうしたら戦えないし…楽しいことできないもん」

 

「だろう?なら、お前はお前なりの生き方というものを見つければいい。俺に負けたとは言っても、この世界では上位の実力を持つお前なら引く手数多だぞ?」

 

俺は東側へ顔を向けた。旅人や凝光、ジン達西風騎士団や千岩軍、そしてノエル。皆が俺への増援として来てくれていた。と、いうことは何とか一段落ついたのか。俺は大きく息を吸って、吐いた。

 

「そこの檻の中にいるのがファデュイ執行官第6位『売女』ルフィアンなのかしら?」

 

「ああ、あとは七星と千岩軍に対応を任せる。じゃあ、ルフィアン。また会うことがあったらその時はよろしく」

 

俺はルフィアンに軽く手を振るとジンのところに行った。

 

「ジン、おつかれ。被害状況はどうだ?」

 

「アガレスもお疲れ様。そうだな、被害は連れてきた西風騎士のうち一名が重傷、それ以外はほぼ軽傷だ」

 

「そう、か…トワリンはどうなんだ?」

 

「彼は若陀龍王との戦いで負傷はしたが、命に別状はないそうだ」

 

「…それは…よかった」

 

「アガレスも怪我をしているみたいだが?」

 

流石、ジンは目敏い。

 

「横腹に一撃貰ってしまってな。内蔵の損傷までは治せなかったからしばらくは休養することにしようと思っている。まぁ勿論、モンドに戻ることになるだろうが」

 

「では、怪我人には安静にしていただかないといけませんね!」

 

と、突如ノエルが背後に現れ急遽作ったと思われる担架に俺を無理矢理乗せた。

 

「な、何だ?」

 

「アガレスさま…心配させすぎです…全然帰ってこないし蛍さまの指輪の通信にも出ませんでしたから…」

 

あー、一方的に通信をぶっちぎったからな。そりゃあ通信に出られないのは当たり前だ。だがかえって心配させてしまったようだ。

 

「それに関しては申し訳ないが…自分で歩けるぞ?」

 

「駄目です!絶対!安静!!です!」

 

「お、おう…ま、そういうわけだ、ジン。帰る時はバルバトスがなんとかしてくれるだろうし、俺達は先に璃月港に戻っていることにするよ」

 

「ああ、わかった。お大事にな」

 

俺は担架に寝そべったままジンや凝光達の様子を見つつ、運ばれていく。これから戦後処理やら何やら色々あるだろうが、今は取り敢えず何とか璃月港を護りきったことへの安堵感を感じずにはいられないのだった。




いやぁ…次バージョン楽しみですねぇ
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。