クリスマスですね…予定がある貴方も、そうでない貴方もこの話を見てお楽しみいただければ幸いです。
私ですか?
…私のことはいい!ここは任せて早く行け!!(?)
冬はモンドにも雪が降る。
いつだったか、俺はバルバトスとモンドでクリスマスを楽しんでいた時があった。今からすれば寂しかったが、二人で詩を謳い俺の作った鶏肉のスイートフラワー漬け焼きを食べたり、雪の降る中でもなかなか楽しいクリスマスだったのを覚えている。
『メリークリスマス!!』
掛け声と共にクラッカーが破裂する音とグラスを突き合わせる音が響き渡った。モンドにある酒場『エンジェルズシェア』にて旅人が主催するクリスマスパーティーに参加していた。
突然旅人に救民団本部へ来いと指輪の通信で言われ、来てみたら突如拉致…こほん、ついて行ったらこのような状態だったわけだ。ただ、人はそんなに多くない。バルバトス、ディルック、ジン、旅人とパイモン、後は救民団メンツであるノエル、エウルア、レザーの三人が呼ばれていた。
「さぁアガレス!今日はお酒飲もうよ!!」
最初に俺のところへ突撃してきたのはバルバトスだった。彼は既にその体に物理的に酒気を帯びているので匂いだけで酔えそうだ。
「飲まない。『酒は飲んでも飲まれるな』って言葉をお前はいい加減に体現すべきだろう」
「うわ、じいさんみたいなこと言ってる。あ、アガレスもじいさんだった☆」
こいつ潰してやろうか。
こほん、酔っ払っているバルバトスの狂言は置いておき、一先ず俺はググプラムジュースを飲む。初めてこのジュースを飲んだ時からなんだかんだでハマってしまっているのだが、今日も今日とてこのジュースを飲んでいる。
今日は俺は特に何も準備に関わっていないのでどんな演目があるのか、そしてどんな料理が出てくるのかを全く知らない。
「それにしても二階まで貸し切るとは、旅人の懐事情はどうなってるんだ…」
「あー、それが彼女、かなり無理して貸し切ってるからね。まぁ、ディルックと彼女は友人だから、今回は友達料金ってことで貸し出してくれたんだって」
なるほど?と思ってカウンター席にガイアとロサリア共にいるディルックを見やると…って、ガイアとロサリア??
「おいおい、その顔、まるで俺がいないと思っていたかのような顔だな?」
「酷いわね。仕事仲間がここにいちゃいけないみたいな雰囲気出してるわね?」
俺はバルバトスと一旦別れ、ディルックとガイア、そしてロサリアの下へとやってきてディルックの隣に腰掛ける。
「で、なんでいるんだよ?」
俺が先ずガイアにそう聞くと、ガイアは苦笑しつつ答えてくれた。
「今日は騎士団の仕事も少ないんだ。だから早めの時間に酒場にやってきたらこの騒ぎだったってわけだ。まぁ旅人にも許可もらってるし、参加してもいいだろ?」
俺はそのままロサリアへと視線を移す。彼女は溜息をつきつつ、話してくれた。
「別に、私もそんなに変わらないわ。面倒臭い仕事を片付けてここへ来たらこういう状態だったのよ。仕方なく参加してあげてるだけ」
ロサリアはそう言いつつ俺の背後へと視線を向けた。俺は釣られて背後を見る。
「…えーっと」
酒の匂いで少し酔っていたからか気が付くのが遅れたらしい。思ったより人は多いようで、少し広くなった場所でバーバラが歌を歌っている。他にもアルベドとクレーを除く主要な騎士団のメンツが揃っており、どうやら俺は本当に酒に酔っていたのだと確信した。
「うむ、やっぱり帰ろう」
「君はそんなことするやつじゃないだろう」
ディルックに若干呆れながらそう言われてしまったが、まぁ実際酩酊感があるから、と言って逃げるわけがない。折角旅人が呼んでくれたのだから気の赴くままに楽しもうと思う。
俺はディルックの言葉に肩を竦めて返すと少しだけ話をする。
「ガイアとロサリアはともかく、ディルックも酒を飲んでいるなんて珍しいな?」
俺の言葉に三人は少し笑う。俺が首を傾げていると、ディルックが少し微笑みながら答えてくれた。
「今日はクリスマスだ。特別な日である人もそうでない人も、この日だけは皆で騒ぐ。僕もワインなんかは多少嗜むからね。今日ぐらいは少し羽目を外してもいいかと思っている」
まぁ、とディルックは付け加えた。
「隣にこの男がいなければもう少し楽しめたかもしれないが」
「いやぁ、俺は丁度いい席がなくてここにいるだけだぜ?」
ディルックとガイアの間で火花が散っている。酒が入っているせいもあって、恐らく歯止めは効かないだろう。ま、今日くらい本音で腹を割って話し合えばいいのだ。
ということで俺はロサリアと二人で少し離れた位置に移動した。
「ロサリアがここへ来るなんてな。知らなかったよ」
俺はググプラムジュースを流し込みつつそう言う。ロサリアは相変わらず気怠げな表情だったが、どことなく呆れたような表情に見えた。
「君はそもそも、エンジェルズシェアへはほとんど来ないでしょ?前、『酒臭いからあまり好きじゃない』って言ってたわよね」
俺にすら気配を悟らせないとかやっぱり只者じゃないよね?ね?
「ははは…まぁ、事実だからな…」
「まぁいいわ。今日くらいは私も少し羽目を外してもバチは当たらないでしょ…貴方も少しくらい付き合いなさい」
「んや、俺は遠慮しとくよ。酔っ払うと面倒なことになるからな」
「酔っ払った君のことを少し見てみたいと思うけれど」
ロサリアは酔っているせいか、普段より血色がいい。そのせいか、妙に艶っぽく見えて驚きを隠せない。というか普段あまり人に興味を持っていないと思っていたから少し意外な一面だった。
「ま、その辺は追々な」
「残念ね」
ロサリアは少し微笑んで俺の隣から離れるとディルックとガイアの下へと戻っていった。なんというか、やはり彼女は色々と裏がありそうな予感がする。ただ、それを追求するのは野暮というものなのだろう。
「アガレスさん」
「アガレス〜!」
「よっ、二人共。誘ってくれてありがとうな」
次に俺に声をかけてきたのは旅人とパイモンだった。旅人は普段と違ってクリスマスコスチュームに身を包んでいるが、正直寒そうだ。肩と胸元が出ているので外に出ようものなら寒さで10回は死ねるだろう。
「どう?この衣装」
案の定、旅人に衣装のことを聞かれたのでしっかりと褒めておく。
「普段とはまた違った良さがあるな。新鮮で見栄えも良い」
俺がそう言うと旅人は少し照れたようでもじもじしていた。
「そうかなぁ」
「アガレス、お酒一杯あるけど大丈夫なのか?」
パイモンがそう俺を心配してくれた。俺はふっと笑うと、
「安心しろ。既に少し酔いが回っている」
「駄目じゃないか!!」
パイモンが目を空中で地団駄を踏む。俺はそれを諌めると、
「まぁいいんだ。このくらいの酔いなら倒れることはない。別に匂いだけなら問題はないからな」
「そうなんだ…ちょっと心配してた」
旅人はそう言って苦笑した。
「それじゃ、楽しんでね」
「アガレス!酔い潰れないように気をつけろよ!!」
「ああ、ありがとう」
二人は俺にそう声をかけつつ離れていった。まぁ、彼女は交友関係が広いからな。そこかしこから引っ張りだこらしい。俺も少し動いてみるか、と思っていると突然、ガシッと裾を掴まれた。
「アガレスぅ〜…ヒックっ」
「え、エウルア…?」
「ちょ〜っと付き合いなさい」
勢いそのままに、俺はエウルアに連行され、救民団メンツのいる席に座らされた。エウルアを除いた二人は俺とエウルアを交互に見て苦笑いをしていた。
俺が座るやいなや、エウルアは酒をグビグビと飲んでカァンッ!と音を立てて机に叩きつけた。
「最近はアガレス全然かえってきれくれないし仕事は増える一方らしいい加減にしてほしいわ…そう思うわよね?」
「あ、えと、はい」
「ごくっ、ごくっ、ぷはぁ…このうらみぃ〜、覚えておくわぁ〜…」
エウルアはそのままぐで〜っと酔い潰れてしまった。俺はそーっと目を逸らしつつ、苦笑しているノエルと少し眠そうなレザーを見る。
「えっと、アガレスさま…お久しぶりです」
「アガレス、久しぶり」
俺は二人に挨拶を返すとノエルに近況を聞いた。ノエルは少し思い出すように顎に手を当てて教えてくれた。
「確かに、エウルアさまの言う通り依頼はそれなりに増えてきましたね…アガレスさまがいないと人手も少ないですから…」
「アガレス、どこでなにしてた?」
ノエルの説明が終わったのを見計らってレザーが少しムスッとしつつそう聞いてきた。これは…不機嫌だな。
「えーと…稲妻の戦争終わらせてきた…」
「アガレスさま…また危険なところへ行ったんですね…」
「アガレス、無理しないって前言ってた。あれは嘘なのか?」
ノエルまで向こう側に回ってしまったので俺にできることは平謝りすることだけだった。ただし、勿論弁明はして誤解は解いておかねばなるまい。
「…俺が神ってことは二人共知っているだろうが、友人…雷電将軍を助けてきたんだ。少しやり残したこともやって来たんだ。すまないな、許してくれ」
俺がそう謝ると二人は少しだけ拗ねつつも許してくれた。ノエルもレザーも数年前と比べて結構自分を出してくれるようになったので若干友人に近い間柄となっているのがありがたい限りだ。
「それじゃあエウルアのことは任せていいか?」
「はいっ!お任せ下さい!!」
「アガレス、今度からはもう少し、戻ってきて」
ということで俺はなんとかその場から逃げ出すことに成功した。したのだが…今度は肩をガッと掴まれた。握力が凄い…ということで恐る恐る後ろを向くと頬の上気したジンがにこやかに立っていた。
意外だ、彼女が酔うまで飲むとは。なんてマイペースに言っている場合ではないのである。既視感が物凄い連行の仕方をされ、今度はジン、リサ、そしてバーバラのいる席に座らされた。ジンが酒を流し込み、再びジョッキをカァンッ!と置く音が響く。
う〜ん、デジャヴュ。
「アガレス、帰ってきた時は私に挨拶をしろ、と何度も言っているだろう。だというのに何故来ないのだ。そもそも、君は毎度毎度面倒事に首を突っ込むからモンドに帰ってくるのが遅くなるんだ。加えてくどくどくどくどくど」
あー、酔い潰れないかな…ジンさん、あなた物凄く酔ってますね?日頃の鬱憤を俺で晴らそうとしてない?いや、彼女に限ってそれはないか…これは本音だ。つまり挨拶に来なかったことを物凄く根に持っているのだ。
今度からは絶対に挨拶に行くのを忘れないようにすることを肝に銘じつつ、ちょろっとリサとバーバラを見やると苦笑いを返された。どうやら、少しの間相手をしないといけないらしい。
「まぁ、これくらいは勿論しないといけないよな…ごめんまじで」
俺はそのまま10分ほどジンに付き合い、彼女が酔い潰れるまで話し続けた。
ジンが寝ているのを横目に、俺はリサとバーバラに話しかける。
「さて、すまないな。こうなってしまったのは俺の責任のようだ」
俺がそう言うとリサは圧のある笑みを、バーバラは少し複雑そうな表情をした。
「ええ、本当よ。私はね、ジンの友人としても彼女を守りたいと思っているわ。けれど、アガレス、貴方関連は私じゃどうにもならなかったのよ」
なんかすんませんほんとに、と俺は心の中で反省した。
「おね…ジン団長、アガレスさんがいつ帰ってきても良いように色々頑張ってたみたいなんですけど…今日は色々と大変だったみたいで…」
バーバラは心配そうにジンを見やる。確かに彼女がこうなるほどに俺は放置していたのだと考えると本当に申し訳なくなった。
「…今度からはちゃんと挨拶することにする。二人には迷惑をかけたな」
「ええ、今度お茶に付き合ってもらうわね」
「ううん!大丈夫だよ!でも今度からはちゃんとお姉ちゃんに挨拶してあげてね!」
バーバラのお姉ちゃん呼びが出ているがまぁ、良いだろう。一回目はちゃんと気をつけていたのだけどな。
俺はリサとバーバラにジンを任せてその場を離れ、アンバーの下へやってきた。
「あっ!アガレスさん!!久しぶり〜!」
アンバーは珍しく一人でいるようだった。俺は首を傾げつつ彼女の隣に立つ。
「…どうした?」
アンバーが俺の顔をまじまじと見てくるので見返してそう問い掛けた。アンバーは、
「いや、私早めに皆に挨拶しちゃったし、皆お酒も飲んでるから一人になっちゃって…」
見れば宴もたけなわ、という感じで皆かなり酔っており、酔っていない人々は皆誰かの世話をしている。なるほど、アンバーが取り残されたのも首肯けた。
「なるほどな。今は何をしてたんだ?」
「暇してた!!」
アンバーは満面の笑みを浮かべてそう言った。一つ言えることとすれば、それは満面の笑みで言うことではない。
「なら少し話さないか。折角だからな」
俺はアンバーと共に二階へ移動した。下は結構静かになってきており、恐らくもう少しで宴はお開きになるだろう。
「懐かしいな。アンバーが飛行チャンピオンになった時もこの席に座って色々奢ったよな」
「うん!思えばもう二年も前かぁ…」
アンバーが初めて飛行チャンピオンになった際、俺はお祝いとして鹿狩りやらエンジェルズシェアやらで色々奢ったのだ。二人でここへ来たのはそれ以来だった。
「アガレスさん、ちょっと聞きたいことがあって」
アンバーはいつになく真剣な声色だった。
「ああ」
「…アガレスさんが神様って、本当?」
…誰から聞いたのか、それを考える脳は、酔いの回った俺には残っていない。だから素直に答えることにした。
「ああ、その通りだ。誰から聞いたかはわからないが、俺はかつて『八神』と呼ばれた神の中に属していた。今はまぁ、この通りだがな」
俺は少しだけ寂しさを感じつつそう言う。アンバーは普段の快活な笑顔を引っ込めて口を開いた。
「…やっぱり寂しかった?」
俺は首肯いた。アンバーも祖父が行方不明になっており、俺でさえその動向は掴めなかった。何かしら、境遇を重ねているのかもしれないな。
俺はニッと笑って立ち上がるとアンバーの頭に手を置く。そのまま離れ、二階から下を見る。階下では皆、楽しそうに笑いながら話している。その光景を見た俺は笑みを作った。
「なんてことはない。今、階下で繰り広げられているこの光景こそが答えだ。俺一人の犠牲…いや、犠牲というとバルバトスに怒られるな。まぁとにかく、忘れ去られていようが、なんであろうが、この光景を見られる『現在』に俺は生きている。なら、それでいいじゃないか」
アンバーは俺の言葉に驚いたように固まると、すぐに普段の快活な笑みを浮かべた。
「えへへ、変なこと聞いてごめんなさいアガレスさん!私も混ざってくるね!!」
「ああ」
彼女は手を振りつつ階下へ降りていくとすぐに騒ぎに加わっていった。クリスマスの夜といっても特別な何かがあるわけではないが、キッカケにはなるのだろう。皆、何かに思いを馳せている。そんな彼、彼女らを見つつ俺はものすごーく弱い特注の酒をちびちびと飲む。
「……酒を飲むのはやめたのか?」
俺が階下を眺めているとバルバトスが横にやって来て同じように階下を眺めた。バルバトスは即答で、
「んー、やめてないけど少し話がしたくて」
そう言った。俺は溜息を一つだけつくと、
「…いいだろう」
と言ってエンジェルズシェアの外に出て夜風に当たる。
「…アガレス、クリスマスだね」
バルバトスが遠くを見てそう言う。俺は少し間を置いてから、「そうだな」と返した。
「…懐かしいな。こうして二人でクリスマスの夜を過ごすのは何年ぶりのことだろうな」
「さあね…でも、どう?楽しかった?」
結局クリスマスはモンドで過ごすことになったが正直なところを言わせてもらうと俺にしてみれば賑やか過ぎたな。いや、とても良いことだが、昔に比べると圧倒的に賑やかなのだ。ギャップが凄くて少しだけ驚いてしまうな。
だがまぁ…こういうのも、悪くない。
「ああ、悪くない。旧友と過ごすクリスマスもいいが…こうして沢山の友人と共に過ごすのもまた良いものだ…感謝する、バルバトス。今日、旅人に頼んで皆を集めたのはお前だろう」
俺がバルバトスにそう問いかけると、バルバトスは肩を竦めてグラスに入った水を流し込む。
「さて、なんのことかな?僕はただ、友人である君にモンドという国をもっと好きになって欲しかっただけだよ?」
「それは最早答えだろうが」
まぁ、なにはともあれ。
俺はグラスをバルバトスに差し出した。彼はそれを驚いたように見て苦笑すると、同じようにグラスを差し出し、合わせた。
「「メリー、クリスマス」」
俺とバルバトスはそのままグラスに入った酒と水を一気に飲み干すのだった。
〜〜おまけ〜〜
アガレス「さぁ!プレゼントを配りにいざゆかん!!」
ディルック「どうして僕がこんな格好をしないといけないんだ。説明しろアガレス」
アガレス「説明はしただろう?と、いうかお前も立派な大人なんだからプレゼント配りぐらいこなしてみせろよ」
ディルック「…別に僕は初めてと言った覚えはないが」
アガレス「…じゃあなんで嫌がってるんだ?」
ディルック「…いや、前にガイアに髭まで着けさせられたんだ。そのせいで、クレーに『変な大人の人だ』って言われるようになってしまってね」
アガレス「なんだかんだ、お前クレーに甘いよな…ってか、元から『変わった大人の人だ』って言われてただろ?あんま変わんねえよ」
ディルック「…」
アガレス「ムスッとすんな。良いから配りに行くぞ」
ディルック「…だが」
アガレス「文句言うな。次はトナカイにしてやろうか」
ディルック「今すぐに行こう」
なんてやり取りがあったとかなかったとか。
フッ…遅れただと…?そんな馬鹿な…。
ということでメリークリスマスー!(ちょっと遅い)
本当はイブに投稿したかったんですが間に合いませんでした…申し訳ないです。
璃月編と稲妻編は…ちょっと遅れますね…泣きたい。思ったより長くなってしまいまして…えへへ。
というか来年だな!うん!(?)