忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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ジメジメしますね…ただでさえうねる髪の毛が更に…いや、この話は止そう…。


第59話 面接

バルバトスはともかくとして、モラクスの住居はここだ。直に帰ってくるだろう。ま、今頃群玉閣に凸って凝光辺りに怒られてそうだがな。まあ、それはいい。

 

「……ノエル」

 

「は、はい…アガレスさま…」

 

俺は下に降りてきてその状況を確認するなりすぐ側にいたノエルに声を掛けた。

 

「これは一体、どういう状況だ?」

 

〜〜〜〜

 

アガレスが二階で会議をしている間、重雲、行秋、ノエルの三人はノエルに出された紅茶とお茶菓子を頬張っていた。

 

「それで、ノエル殿、面接に来た方を待たせているのではなかったかな?」

 

「ああ、僕も気になっていた。ノエル殿?」

 

ノエルはぷるぷると震えて口に手を当てて何事かを呟いていた。

 

「ノエ…」

 

「お客様のことをわたくしとしたことが忘れてしまうだなんて…失敗です…アガレスさまになんと報告すれば…あわわわ」

 

「「お、落ち着いて!?」」

 

〜〜〜〜

 

「───なるほどなぁ…行秋、重雲、すまないな。あとは任せてくれ」

 

行秋と重雲の二人は首肯くと紅茶とお茶菓子を頬張りながらこちらを注視していた。中々器用だな。俺は若干落ち込んでいる様子のノエルに声を掛けた。

 

「ノエル」

 

「ひゃいっ!?な、なんでしょうかアガレスさま!!」

 

ふんすっと鼻息を荒くして反応するノエルの圧に俺は苦笑しつつ、告げる。

 

「別に失敗してもいいんだ。大切なのは、その後どういった行動をとるか、といったものだ。わかったか?ま、要は落ち込んでる暇があったら動いたほうがいい」

 

そう言うと、ノエルはキョトンとしていたが、すぐに何のことかわかったらしく、

 

「はいっ!お任せ下さい!」

 

と言ってくれた。よし、それじゃ。

 

「面接があるらしいな?俺も同席するから、重雲と行秋にやってみたのと同じようにやってくれないか?こっちの参考にしたい」

 

「はいっ!お任せを!」

 

ノエルは自信たっぷりにそう言ったのだった。

 

 

 

あの後、待たせているという面接希望者を、ノエルは行秋と重雲に迎えに行かせた。そのまま、再び二階奥の部屋(何かとよく使われる)に行秋と重雲が面接希望者を誘導してきてくれたようだ。

 

三回ノックが成され、ノエルが「どうぞ」と言った。三回ノックはわかるんだな…。

 

「失礼する」

 

先に入ってきた重雲の様子がなんか可怪しい。どことなく挙動不審になっている。何があったのだろうか?そうして入ってきたのは重雲によく似た髪色の長身の女性だった。

 

「…」

 

「…」

 

思わず見つめ合ってしまった。ノエルは普通に面接の段取りを始めている。女性は座席の横まで来ると、

 

「名は申鶴、我は十数年間師匠…留雲借風真君の下で修行をしていた経験がある」

 

「間違いありませんね、ではおかけください」

 

申鶴は席に座るとチラッとこちらを見やった。面接中に面接官以外を見るのはNGだぞ!

 

ま、俺も面接官的なものではあるからセーフではあるのかもしれんが、話している面接官をしっかりと見て話すようにしないとな。

 

「では、まず初めにあなたの志望動機を教えて下さい」

 

真面目な面接だな。まぁ準備もクソもないし…と思って申鶴を見ると表情一つ変えずに志望動機を答えていた。

 

「我は縁あって仙人の下で修行をさせてもらった。しかし、俗世からあまりにもかけ離れすぎた故に、師匠に暇を出され、人間社会に溶け込むようにと…凡人を助けることのできるこの場所であれば、我を受け入れてくれるのではないか、と考えたのだ」

 

面接ではですます体を使うことも大切だな。丁寧な言葉というものはそれだけで相手に好印象を与えるものだ。まぁ、申鶴に関しては難しいだろう。なんてったって人間社会というものを知らないのだからな。

 

「わかりました…では、救民団に入ってしたいこと、或いは成したいことはなんですか?」

 

「我は…人間社会というものを学び、そしてその輪に溶け込まねばならぬ。その一環として凡人を救い、その過程で学びたいと考えている」

 

ついでに、普段の一人称が『俺』とか、『僕』とか、或いは『あたし』とか、どんな一人称の場合でも一人称は『私』にするべきだろう。先に述べた丁寧な印象を与えるものだからな。

 

その後もノエルと申鶴の問答は続き、質問が終了し、質問タイムになった。

 

申鶴は俺をじっと見ている。俺はそっと目を逸らした。

 

「アガレス殿は、面接官ではないのだろうか?」

 

ノエルが困ったようにこちらを見たので、俺から答えることにした。

 

「俺は付添みたいなものだ。面接とかやったのはこっちが初めてだからこれからの参考にしようと思ってな。ま、そういうわけだ」

 

「そうなのか…以前アガレス殿に弟子入りするという話があったのだが、覚えているだろうか?」

 

俺は首肯いた。覚えてはいたが、残念ながらそんな時間は皆無に等しかったと言っていい。来たばっかりで迎仙儀式のアクシデントから始まり、ファデュイの陰謀を暴いたり、凝光と頭脳勝負をしたり、モラクスと話したり…戦争に打ち勝ったり。とにかくハードスケジュール過ぎたからな。

 

「璃月の現状は知っているだろう?とにかく、時間が取れなくてな。悪かったとは思っている」

 

そういうわけで。

 

「第二の師匠からのお題だ。モラクス、行秋、重雲の下で人間社会について学べ。救民団という立場は好きに使うといい」

 

まぁ評判を落とされては困るが、その心配はないだろう。モラクスに関しては色々な雑学を叩き込んでくれそうだし、重雲、行秋は純粋な社会の繋がりを教えてくれるだろう。

 

「アガレス殿が我に教えてくれるわけではないのだろうか…?」

 

俺は少し迷ったが、彼女に向け、そしてノエルに向け告げた。

 

「俺はもうすぐ、稲妻に向かうからな。正直、誰かに俺の知識を教える暇がないんだ。そしてそれは急を要する。一週間もすれば恐らく稲妻に立つことになるだろう」

 

「…そうなのか…承知した」

 

申鶴が納得してくれたので、ノエルを一瞥すると、不安そうな顔をしていた。

 

「ノエル、稲妻が戦闘状態なのは知っているだろう?」

 

「…はい」

 

「なに、少しファデュイを蹴散らしてくるだけだ」

 

ノエルは面接がまだ終わっていないことも忘れて不安気に言った。

 

「本当に…大丈夫でしょうか…?」

 

俺は不安がる彼女の頭に手を乗せた。

 

「問題ないさ。別に死ににいくわけじゃないからな」

 

「…では、お茶菓子と紅茶を淹れてお待ちしていますね…ずっと」

 

ノエルが面接の終了を宣言すると、申鶴はスッと立ち上がり踵を返し、「失礼した」と言って出ていった。一先ず、面接は終了したわけである。

 

 

 

しかしまぁ、面接希望者が申鶴だったとは驚きだった。まあ一先ずはこれからの救民団にも役立ちそうだし、加えて人員も増えた。暫くは申鶴も仕事に難儀するだろうが、行秋、重雲、そしてモラクスのカバーがある。なんとかなるだろう。

 

「ノエル、モラクスに仕事の仕方は全て叩き込んだんだろう?」

 

「はいっ!万事滞りなく!!」

 

よし。

 

「ノエル、お疲れ様。モンドに帰ろうか」

 

そう言うとノエルの顔が輝いた。

 

「はいっ!!」

 

「じゃあ先に準備して外に出ていてくれ。俺はモラクスと話をつけてくる」

 

ノエルはすぐに荷物を纏めると、外に出ていった。俺はリビングまで移動すると、モラクスを見つけ、声を掛けた。

 

「ああ、アガレスか。どうした?」

 

「これからはお前が璃月支部の支部長だからな?」

 

「ああ、ノエル殿がモンドに帰るのか。ここからの運営は俺がせねばならなくなるわけだな」

 

俺は首肯いた。俺にはどうしても、一つだけ忠告しておきたいことがあったのだ。

 

「モラクス…これはいいものだから、とか珍しいものだ、とか意匠が素晴らしいからと言ってすぐに色々買うなよ?」

 

「…善処しよう」

 

「約束しろ。先ずはこっちに許可取れよ?」

 

「…わかった」

 

こちとら往生堂堂主である胡桃からの業務提携の話が来た時にモラクスの買い物癖に関して散々聞かされてるんだよ全く。

 

「よし…用事も済んだし、帰るかー…」

 

帰るか、って言ってる辺り、モンドがホームタウン的な感じになってるな。ま、それも悪くないだろう。

 

俺は外に出ると、ノエルを伴って璃月を出るのだった。




急いでいたので短めになってしまいました。もしかしたら明日の更新は遅れる可能性があるかもしれんです…
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