忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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平蔵君も無事お迎えできてとてもよかったですわい…ふぅ


第60話 依頼の続き

モンドへ帰ってくると、救民団ではエウルア、レザー、そして旅人、パイモンとダインスレイヴが待ちかまえていた。

 

「…旅人、それにダインスレイヴ、お前達がここに居る、ということは依頼の続きと考えていいんだな?」

 

ダインスレイヴは首肯くと、腕を組みながら口を開いた。

 

「璃月、奥蔵山の北側に、秘境を見つけた。宝盗団の足取りを追っていたら、この秘境を発見することができた。その後、多少秘境の観察を続け、そこがアビスの魔術師が出入りしていくのを見た」

 

つまりは、だ。

 

「そこにアビスの使徒の痕跡も勿論あったんだろ?」

 

ダインスレイヴは首肯くと、急いでいるのか、早速出発するらしかった。

 

「そういえば、エウルア。璃月支部からの報告に、宝盗団の活動が活発になっている、との報告がなかったか?」

 

エウルアは突然自分に話が振られたことに驚きつつ、しっかりと首肯いた。

 

「独自に集めた情報によれば、『大宝盗家』が動いているらしい。まぁわかりやすく言うと物凄い盗人だ。アビスの洞窟に何があるのかはわからんが、『大宝盗家』が何かを狙ってそこに行く可能性も考えられるだろう」

 

「どちらに接触しようが俺達のやることは変わらん。アビスの使徒を見つけ、殲滅する。それだけだ」

 

ダインスレイヴはそう言うと席を立ち、外に出ていった。残された俺と旅人とパイモンは顔を見合わせて苦笑しつつ、エウルアに再び救民団を任せて救民団本部を出るのだった。

 

 

 

「───それで、ここがその洞窟ってわけか」

 

璃月にある奥蔵山の北側の水辺にひっそりと洞窟が存在していた。移動に少し時間がかかったが、まだアビスの使徒はいるだろうか?

 

「では突入しよう。貴様達に戦闘は任せる」

 

ダインスレイヴはそう言うと俺と旅人の間に入った。パイモンは呆れたように言った。

 

「ダインは戦闘苦手なのか?」

 

パイモンの言葉にダインスレイヴは首を横に振った。

 

「別に苦手というわけではない。今回に関しては適材適所と言えるだろう。アビスに詳しい俺と、アビスに詳しくない貴様達、どちらが考察に適しているかは考えるまでもないだろう」

 

「うぐ…ぐうの音も出ないぞ…」

 

旅人が無言でこちらを見つめてくるので、手を叩いて先に進む合図を出して洞窟内に侵入した。

 

「…明らかに宝盗団が基地のようにしていた形跡があるな」

 

「ああ、だがアビスとは関係がないようだ」

 

既にもぬけの殻の可能性が高い、ということか。それでも、確認せぬ訳にはいくまい。

 

「先へ進むぞ」

 

俺達は時々遺跡の考察をしながらも数々のギミックや残っていたアビスの魔術師などを処理し、最奥と思われる場所へと辿り着いた。

 

「…これは…一体なんだ?」

 

広い空間の奥には『大宝盗家』が蹲り、祈りを捧げるような姿勢で固まっていた。あれは…生命活動を停止しているな。外傷はなさそうだが、何らかの要因で死んでいるようだ。

 

極めつけは逆さに鎖で吊るされた七天神像だ。これはモンドのものだな。

 

「な、なんで七天神像が…逆さに吊るされてるんだ!?」

 

しかも七天神像の手に握られている宝珠が、禍々しい何かに変わっている。絶えずそれは鼓動していて辺りに邪悪な気配を撒き散らしているようだ。

 

「…中々どうして嫌な予感しかしないな。全く以てこの『大宝盗家』の死因も不明、ここに居るだけで死んだ、なんてのなら俺達も危ないかもな」

 

「…どちらにせよ、ここにアビスの使徒も魔術師も存在しない。早めにここを離れるべきだろう」

 

ダインスレイヴは逆さに吊るされた七天神像を一瞥してついてこい、とだけ言って神像付近の抜け道らしき場所へ飛び込んでいった。旅人とパイモンもダインスレイヴに続こうとしたが、突如、背後から伸びる剣があった。

 

「…」

 

「…っ」

 

俺はその剣を横から風元素の槍を当てて軌道を逸し、旅人とパイモンを護った。

 

「アガレスさん!?」

 

「先に行け。こいつがアビスの使徒だ」

 

「えっ!?な、尚更おいていけない!」

 

旅人が食い下がるが俺は彼女をキッと睨んだ。

 

「こいつは強い。それに、狙いは俺達のようだ。誰かが殿を務めねば誰も帰れなくなる可能性が存在する。この場で一番殿に適しているのは俺だ。早く行け」

 

「旅人…」

 

パイモンが心配そうに旅人と俺を交互に見た。旅人は一言、ごめんと呟くとダインスレイヴの後を追っていった。

 

「『アビス』の秘奥、何人たりとも覗いてはならぬ。ここに足を踏み入れたからには、相応の対価を支払ってもらうぞ───」

 

アビスの使徒は水元素でできた斬撃を俺に向けて放ってきた。俺は刀を抜いて炎元素を纏わせ、斬撃を切り落とした。

 

「───裁きは、『使徒』が下す」

 

「ッハハ、本来裁きを下す立場の神に向けて裁きとは、随分皮肉な話だな。ダインスレイヴが追っていたのも首肯ける話だ」

 

ダインスレイヴの名を聞いた使徒は動きを止め、口を開いた…かどうかは不明だが、とにかく声を発した。

 

「ダインスレイヴ…なるほど、貴様のことだ、今回に関してはソロでの活動だと思っていたが…あのしつこいのと関係していたとはな」

 

アビスの使徒は自身の腕についている剣を振るうと、言った。

 

「ダインスレイヴ、ヤツの抵抗が引き起こすさざ波に変革を起こす力はないが、元神アガレス、貴様は危険分子だ…今此処で、排除させてもらう!!」

 

アビスの使徒は両腕についている剣をこちらへ突き付けた。対する俺は不敵に笑ってみせた。

 

「どうせお前は逃げるのだろうし…軽く揉んでやるとしよう」

 

逃げられるのは承知の上でヤツに出来る限りのダメージを与えねばならないわけだ。アビスの使徒の空間を斬り裂く能力、アレの前では俺は無力だからな。俺は刀を抜き放ちつつ、アビスの使徒の出方を伺うのだった。

 

〜〜〜〜

 

アガレスと別れた旅人達は遺跡の中を進んでいた。

 

「何、アガレスがアビスの使徒と接触した?」

 

ダインスレイヴの言葉に、そう説明した旅人は首肯いた。

 

「アイツ、すごく強そうだったぞ…アビス教団にあんなに強そうなやつがいるなんて…」

 

パイモンの言葉に、ダインスレイヴは移動しながら告げる。

 

「アビスの使徒はアビスの魔術師よりも上位の存在だ。魔術師と相見えた貴様からすれば、アビスの使徒が強力に見えても仕方がないだろう」

 

それより、とダインスレイヴは旅人に問うた。

 

「アガレスはヤツに関して何か言っていたか?」

 

旅人もパイモンも首を横に振った。ダインスレイヴはふむ、と一つ溜息を吐くと、

 

「つまりアガレスは出来得る限りアビスの使徒に痛打を与えるつもりだ。ヤツの能力に対抗しうる手段をアガレスが持っていない以上、逃げられるのを承知の上でアガレスは戦闘しているようだ」

 

つまりは時間稼ぎである。ダインスレイヴはアガレスについての話題を一旦終わらせ、遺跡の外に繋がっている道を進みながら言った。

 

「アビスの使徒は魔術師とは似て非なる存在だ。あの七天神像の手に握られていたアビスエネルギーと呼ばれる代物は俺も見たことはないが、あらかた予想はつく」

 

「予想って…」

 

旅人はダインスレイヴを見つめた。ダインスレイヴは旅人を一瞥もせず、目を細めて告げた。

 

「アビスの使徒がいるのなら千載一遇の好機だろう。アガレスを待ち、行動を開始する」

 

やがて三人は外に出てきた。外はまだ明るく、まるでこの世の闇を未だに知らぬようである。旅人はそのことを感じて少しゾッとしていたが、ダインスレイヴが顔色の少し悪くなった旅人に気が付き、

 

「貴様、体調が優れないようだが問題ないのか?」

 

旅人はふらっとしたが、突如抱き留められた。

 

「あ、アガレスさん?」

 

「大丈夫か?少し休むべきだろうな…何か良からぬ気配でも感じたのか…原因はどうだっていいが、疲れているだろう。すぐには動けなさそうだな」

 

旅人の背後から現れたアガレスはダインスレイヴをチラッと見やった。

 

「まずは休息を取ろう。その時に何があったのかを話す」

 

ダインスレイヴは顎に手を当て何事かを呟くと、首肯いた。

 

「私はまだ動ける…」

 

「貴様の体調が崩れては足手纏だ。アビスの使徒との戦いにおいて、それは命取りとなるだろう。休息は必要だ」

 

旅人は俯いて小さく返事をした。アガレスとダインスレイヴが休息を取るための準備をして、その後5分ほどしてようやく準備が終了し、旅人を寝かせた。パイモンも付添で旅人の側にいた。

 

アガレスはそんな旅人を心配そうにチラッと見てから対面に腰掛けるダインスレイヴに視線を投げかけた。

 

「それじゃあ、アビスの使徒との戦闘について話すことにしようか」

 

ダインスレイヴが首肯いたのを見てから、アガレスは口を開くのだった。




せ、セーフ…進路についての相談を色々してましてね…間に合わないと思ったんですが意外といけましたね…よかったよかった
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