忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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いやあようやく私は夏休み入りましたね…昨日は友達の勉強手伝ってたら夜になってました。誠に申し訳ないです。


第62話 追跡

翌日の朝、旅人の体調はすっかり回復し、アビスの使徒を追跡する運びとなった。ダインスレイヴによれば、アビスの使徒の痕跡は南方向へ伸びているらしい。俺達は南に進んでいき、やがてアビスの魔術師の一団を発見した。魔術師はもう動かない遺跡守衛の周囲で何かを調べているようだった。

 

「…アビスの奴ら、何をしてるんだ?」

 

パイモンの言葉に、ダインスレイヴは顎に手を当てながら答えた。

 

「恐らく、あの耕運機、即ち遺跡守衛を調べているのだろう。何が目的かは推測の域を出ないが」

 

あれか、答えはなんとなく思いつくけどそれが本当にそうなのか断定はできないと言ったところかな。俺はダインスレイヴを一瞥すると、

 

「止めていいんだろ?」

 

「ああ、構わん。魔術師なら、貴様らでも対処できるだろうからな」

 

確かに、魔術師ならともかくとして、使徒はあの強さだ。旅人一人だと少し危うい戦いになるかも知れないからな。

 

俺達の活躍の場所もしっかりと考えてくれるなんて、ダインスレイヴはいいやつだなぁ、と思って温かい目で彼を見ると???の顔で見返された。

 

折角なので俺はアビスの魔術師を倒すちょっとした裏技を試すことにした。

 

「旅人、もしかしたらソロでアビスの魔術師を倒すときの参考になるかも知れないから、よく見ておくといい」

 

「え?う、うん、わかった」

 

俺は刀を抜き放つと、上空へ一挙に飛び上がり、落下攻撃をしつつ、二体のアビスの魔術師の首を刎ねた。

 

「よし、やっぱり上手く行ったか」

 

「え、ええええ!?アガレス、今の何だよ!?」

 

パイモンが大袈裟に驚いている。旅人も大袈裟ではないが、驚いている様子だった。

 

「アビスの魔術師は普段、シールドをつけていない。だから気付かれる前に攻撃すれば奴らがシールドを張ることはなく、楽に倒せる。倒せなくても、多少のダメージは入れられるから、シールドを割ってからの時短にもなる」

 

まあ、気付かれる前に接近するにはそれなりの速度が必要だ。旅人ができるとすれば俺が今やったような落下攻撃だろうがな。旅人もパイモンも少し呆れたように言った。

 

「流石アガレスというか…なんというかだな」

 

「そんなに効率を求めるんだ…」

 

うーん。

 

「旅人、わかってないようだから言うが、効率を求めるのは当たり前だ。戦闘において複数と戦い、そして増援を想定する場合、自身の力を温存しつつ敵を早めに殲滅し、増援に備えねばならない。アビス教団は強大だ。増援の可能性を想定しないのは可怪しいだろ?加えて───」

 

「わ、わかったぞ!オイラが悪かった!!」

 

む、これからというところで…と俺は若干不完全燃焼になっているため唸った。ダインスレイヴはそんな俺の様子になど目もくれず、普段通り顎に手を当てながら言った。

 

「奴らは遺跡守衛の残骸から何かを探していたな」

 

ダインスレイヴの独り言のような言葉に、パイモンが反応した。

 

「そういえば、旅人も同じように色々探してるよな…『混沌の装置』とか『混沌の回路』とか」

 

「それは重要な素材!」

 

二人の漫才の前に、若干ダインスレイヴは押し黙ったが、すぐにスルーして続きを話し始めた。スルー能力は結構高めなようだ。

 

「少なくとも、そのような平凡なものではないだろう」

 

それに、とダインスレイヴは続けた。

 

「俺はこの近くを調査していたが、アビスの魔術師が頻繁に遺跡の中に出入りしているのが見られた」

 

ダインスレイヴの話から推測するに、アビスの魔術師は遺跡守衛でも貴重な何かを探し求め、付近の遺跡守衛の残骸を片っ端から更にボロボロにしてその何かを探している、ということか。

 

「ヤツらはある『特別な貴重品』というものを探しているようだ。そしてそれを、遺跡の中へと持ち帰ろうとしている」

 

「ま、あの様子を見るにまだ見つかってなさそうだがな」

 

ダインスレイヴは俺の言葉に首肯いた。するとパイモンが思い出すように言った。

 

「じゃあ、どうしてさっき捕まえて詳しく聞き出さなかったんだ?」

 

つまり拷問、ということか?旅人も首肯きながら「ディルックさんがやってたね…」と呟いていた。と、いうことは効果はあるのだろう。だがダインスレイヴの答えはそんなに単純なものではなかった。

 

「勿論、このようなヤツらに慈悲を施すつもりなど毛頭ない…ただ、このことはアビス教団によって何か、そう、重要な意味がある気がしてな」

 

ダインスレイヴは目を細めつつ言った。

 

「その真相は、拷問程度で吐くようなものではないだろう」

 

…俺はある可能性に思い至ってそれを口にした。

 

「つまり、アビスの怪物共は拷問より恐ろしい何かに、強い恐怖を抱いている、ということか?」

 

拷問による苦痛よりも恐ろしいもの、それが何かはわからないが、拷問によって受ける屈辱や苦痛を意にも介さないほどの恐怖とは、一体何なんだろうな。パイモンは自分の体を抱き締めながら、「なんか鳥肌が立ってきたぞ!!」と叫ぶように言った。

 

「ここで時間を無駄にはできない、先へ進もう」

 

ダインスレイヴの言葉に一同首肯き、ダインスレイヴの案内に従って更に南へと移動していくのだった。

 

 

 

あれから更に移動し、絶雲の間の東に差し掛かったところで比較的状態のいい遺跡へと辿り着いた。そこでは遺跡守衛一体と遺跡ハンター一体、そしてアビスの魔術師が戦闘を行っていた。

 

まあ、流石はあのカーンルイアのある意味では末裔といえる存在だ。遺跡守衛は遺跡ハンターを護る盾になるように前線に出てアビスの魔術師の攻撃を一身に受けていた。だが、遺跡守衛の体は硬い。如何なアビスの魔術師と言えど、有効打を与えることは未だできていないようだった。

 

そこに突き刺さる遺跡ハンターのドリルはアビスの魔術師のシールドを抉り取るように風穴を開け、そのままアビスの魔術師を二体纏めて串刺しにした。まあ、機械に連携なんて能はないだろうし、連携しているように見えたのは偶々だろうが。

 

「ん、こっちに気が付いたか…」

 

遺跡ハンターと遺跡守衛がこちらに気が付き、戦闘態勢に移行した。遺跡守衛はミサイルを、遺跡ハンターもかなり高所へ飛び上がり遠距離攻撃を放つようだ。

 

流石に、させるわけにはいかないだろう。ダインスレイヴはわからないが、旅人は現状遠距離攻撃手段を持たない。パイモンは戦闘においては論外、つまりこの時間は避け続けるしかない。

 

そう、俺がいなければ、の話だが。

 

「水槍」

 

俺は水元素で形作った水の槍を遺跡守衛の背中にある十字の弱点にあたる部分と遺跡ハンターの目にあたる部分へ向けて射出した。当然、既にミサイルを発射する態勢に入っている両者は避けることは叶わない。弱点を高圧の水の槍で貫かれ、両機とも活動を停止させた。

 

パイモンはそんな活動を停止させた2つの機械を見て、ホッと胸を撫で下ろしながら言った。

 

「ふぃ〜…一時はどうなることかと思ったぞ…アガレスがいてくれて本当に助かったな!」

 

「この辺一帯はアビスの魔術師だけじゃなくて遺跡守衛なんかも活動が活発なんだね」

 

旅人の言葉にパイモンが同調し、そして疑問を口にした。

 

「それにしても…アビスの魔術師の潜伏場所に遺跡守衛もいるのは、ただの偶然なのか?」

 

すると今の今まで黙っていたダインスレイヴが口を開き、パイモンの問いに答えた。

 

「この世に偶然など存在しない。全ては遥か古に撒かれた種によるものだ。無論、アビス教団と遺跡守衛の関係も、偶然によるものなどでは全く無い」

 

そこまで言ってダインスレイヴは少し意味深な言葉でもって彼等の関係を表現した。

 

「同じ樹木より生えた枝だと言っていいだろう」

 

パイモンも旅人も首を傾げていたが、俺にはその意味が理解できた。そしてダインスレイヴは未だに理解できていない様子の二人へ向け、真実を告げた。

 

「ヤツらは皆、500年前に滅びた古国───『カーンルイア』で誕生したんだ」

 

「えっ、カーンルイアだって!?」

 

パイモンは驚いたように目を剥き、旅人は険しい表情をした。

 

アビス教団と遺跡守衛達、それらは全てカーンルイアが生み出した、否、生み出してしまった産物だ。哀しき怪物たちと言っても過言ではないだろう。

 

パイモンの反応から察するにちゃんと知っているようだが、旅人はずっと険しい表情だったため、念の為、とカーンルイアについての説明をしようとした。

 

「…その国なら知ってる」

 

俺は思わず素っ頓狂な声を漏らしかける。パイモンは「え…?」と漏らしており、ダインスレイヴはふぅ、と溜息を吐いていた。

 

「カーンルイアにいた、記憶があるから」

 

パイモンも俺もダインスレイヴ…は、そうでもないが、兎に角驚きの表情を浮かべた。

 

「で、でもあの国は500年前のとっくの昔に滅んでるんだぞ!?」

 

「…いや、ありえない話ではない」

 

全員が俺を見た。

 

「空…彼女の兄が500年前のカーンルイアに存在していた。そして彼がいたということは、お前もいたのだろう、旅人」

 

今の今までそのことに辿り着かんとはな…俺としたことが、と思わず頭を抱えた。ダインスレイヴはあくまでも冷静に告げた。

 

「人は誰しも、秘密を抱えている。貴様が俺に深く聞かなかったように、俺も貴様のことを深く聞くつもりはない…しかし、話す意思があるのならば聞こう。貴様の見た『カーンルイア』とはどんな光景だった?」

 

旅人は深く瞑目し、思い悩んでいるようだった。やがて目を開けると、パイモン、ダインスレイヴと来て俺を最後に見た。その目は何かを、そう、助けを求めているような目をしていた。俺が無言で頷くと、旅人も話を始めた。

 

旅人は500年前に見た火の海とその後に会った謎の神について話した。

 

旅人の言葉に、パイモンはかなり驚いていた様子だった。曰く、話の始まりが謎の神からだと思っていたらしい。ダインスレイヴは、というと、驚いている様子ではあったが、余り普段と見た目は遜色なかったため、正直真偽の程は定かではない。

 

「ふむ…この世界に来た時、隕石の中から兄に呼び覚まされたのか」

 

そして、とダインスレイヴは更に続けた。

 

「貴様の兄は、カーンルイアの滅亡とは別に天変地異が巻き起こり、世界が滅びると、一緒にテイワットを去ろうと、そう言ったんだな?」

 

その言葉から察するに、空も『終焉』が巻き起こるのを知っていたようだ。隕石(恐らく世界と世界の間を旅する装置)の中から世界と世界の接近を見てそう言った可能性はあるが、言い草から察するに知っていたと考えるほうが妥当だろう。

 

すると、パイモンが顎に手を当てながら言った。

 

「『カーンルイアの滅亡とは別』?本当にそんなことを?」

 

パイモンの言葉に、旅人は首肯いた。ダインスレイヴは腕を組みながら一瞬俯くと、やがてすぐに顔を上げて言った。

 

「…貴様達が経験したそれは、500年前の出来事で間違いないだろう。どうやらこの世界で初めて目覚めたのも、それと同じ時期のようだしな」

 

「なるほど、つまりお前のお兄さんは先に目が覚めたから、この世界についてお前よりも知ってたってことだな」

 

本当に、それだけだろうか。そうなると隕石の中から『終焉』を目の当たりにしたという線は消えるだろう。だとすればどのようにして『終焉』が巻き起こることを知ったのだろうか?まあ、考えても仕方がないことだとはわかるが、考えられずにはいられないな。

 

ダインスレイヴは深く思考の沼に入る俺を一瞥してから、話を続けた。

 

「そしてその後、見知らぬ神によって貴様達の行く手は遮られたと…」

 

パイモンも旅人も首肯き、そしてダインスレイヴの確認をただただ聞いていた。

 

「貴様が目覚めた時、『カーンルイア』という地名についても、『終焉』についても何も知らず、ただこの世界から去ろうとした。しかし今、テイワットを少しずつ回っていく内に、あれが『カーンルイアが滅亡した戦い』、そしてアガレスの言っていた『終焉』だとわかってきた、そうだな?」

 

そういえば、旅人は割とよく図書館へ行っていた覚えがある。カーンルイアについて調べていたのだろう。彼女にとっては『八神』…じゃなかった、『七神』に次ぐ手がかりのはずだしな。

 

「旅人、カーンルイアに関してなら、ダインスレイヴに色々聞けばいいだろう。ただ俺からも教えられることがあるとすれば、カーンルイアには神がいない、彼の国の歴史には全く神が存在しないんだ」

 

まあつまり。

 

「あれは人類によって建てられた強大な国だ。人々はその繁栄と文明に誇りを持って生きていた」

 

だが。

 

「『終焉』と同時期に彼の国は…恐らく、その謎の神によって滅ぼされた」

 

俺の言葉をダインスレイヴが引き継いだ。

 

「500年前、神々が降臨し、世界の敵、膿のように見なされたカーンルイアは、『人類の誇り』は雑草のように容易く踏み躙られ、そして駆除された」

 

旅人もパイモンも表情が重い。斯くいう俺も、例外ではないだろう。ダインスレイヴは現状にか、或いはカーンルイアにかは不明だが軽く嘆息すると、

 

「このまま過去の話をしていても気が削がれるだけだろう。先へ進むぞ」

 

俺達は重くなった気分をそのままに、更に南へと進んでいくのだった。




ふぅ…間に合った
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