今回は例に漏れず、アビスの魔術師がよくやっているような手法でヒルチャール達を呼び出されたようだ。それも、割とかなりの数。少なくとも普通のヒルチャールやヒルチャールシャーマンに加え、暴徒が複数。まぁ、神の目を持っていて尚且日頃から鍛錬していたとしてもこの数には苦戦は必至だろう。
まぁ、それはともかくとして。俺は走り出し様に刀に手を掛け、抜刀し、並んで突撃してきていたヒルチャール共の首を飛ばした。その勢いのまま詠唱を開始していたヒルチャールシャーマンを蹴り飛ばし壁に叩きつけたが、そのままシャーマンは絶命したようだ。
振り向き様に刀を横薙ぎに振るうと今にも飛びかかってきそうだったヒルチャール暴徒・炎斧は胸辺りに赤い線が走ったかと思うとずり落ちた。俺は左側のヒルチャールを殲滅すべく、再び走り出す。右側は何も言わずとも俺の雰囲気から察しているであろうレザーがなんとかしてくれているはずだ…だよな?と思ってちらっと右を向くとレザーが雷で形作られた狼を背負い、共に攻撃していた。どうやら、ちゃんとやってくれていたらしい。
俺はヒルチャールを斬り倒しつつ、アビスの魔術師の攻撃を避けながら横目でシャーマンを流し見た。
…回復がウザいなしかし。多少の傷ではヒルチャールシャーマン・水のおかげで回復される。まぁ、一撃で殺せば問題はないのだが、なんと言っても数が多い。ここまでの集団戦闘は久しぶりだし、そもそも前回は回復役なんていなかったから、ちょっと梃子摺るかもしれない。一匹一匹が雑魚であることには変わりないのだが。優先順位的には草元素を付着させてくるシャーマン・草…後は水元素を付着させてくるだけでなく敵の回復まで行うシャーマン・水から倒すのがいいんだろうが…いや、まぁ無理矢理やるか。
俺は刀を仕舞うと槍を取り出し、再び向かってくるヒルチャールの頭を纏めて三体程串刺しにした。そのまま槍を地面へ突き刺し、槍を利用して高く飛んだ。ヒルチャールシャーマン・風がいるのを考えると、風元素で自身を浮かせれば多少影響を受けるため、こういった手段を取る他なかったわけだが…。
作戦は成功、ヒルチャール達は驚いており、加えて上空にいるため弓や投石しか飛んでこない。まぁ、空中なので避けることはできないが、それでも自力で飛んだこともあって移動し続けている。当たることはないだろう。
「氷槍」
俺は氷の槍を幾らか生み出すと、ヒルチャール達の後方へ射出した。ものの見事にシャーマンや弓を扱うヒルチャール達は頭を、或いは腹部を貫かれ絶命していった。俺は着地するとすぐに棍棒を生み出してこちらへ向かってきていた正気を取り戻したであろうヒルチャールの頭を叩き潰した。槍をなんで回収しないのか、って?そりゃあ地面に突き刺して尚且かなりの負荷を柄の部分にかけている。回収したところで使い物にはならないだろう。
あと、刀だって斬り続ければ切れ味は落ちる。今回はアビスの使徒というボスがいるため、或いは他にも不測の事態に備えるため、最も得意な武器である刀を温存する必要があった。まぁ要するに貧乏性なわけだな。その割には槍は使い捨てにしてるが。
左翼側のヒルチャールは残り僅か、右翼側もレザーがかなり数を減らしている。こっちを片付けたら、先にレザーの助けに入ったほうがいいかもな。
「アビスの魔術師のシールドはまぁ…丁度水と氷と炎がいるんだし、風元素で割るか…」
思わず独り言を漏らしつつ、俺は三体のアビスの魔術師の中央辺り目掛けて手を翳すと、周囲の空気をアビスの魔術師三体の中心辺りに集め、一挙に吸い込み、手を閉じて爆発させた。拡散反応で水、氷、炎がそれぞれ拡散され、シールドが剥げる。後は雑魚同然だ。棍棒を仕舞い、それぞれ氷槍、水槍、炎槍で肉体を貫いて絶命させた。一応これで左翼側は全滅させることができた。
そのことに気が付いたのか、アビスの魔術師はある程度の戦力をこちらへ差し向けているようだ。とはいえ、暴徒ばかりで雑魚は一人もいない。木盾二体が前面で俺の攻撃をガードし、炎斧が後ろで炎スライムを利用してしっかりと斧に炎元素を付与していた。こいつら、アビスの魔術師の指揮下にあるからか、賢いようだ。
だが、お粗末と言わざるを得ないだろう。その程度で…。
「その程度で俺を止められると思われては、なぁ…」
しかしまぁ、困ったものだと思う。アビスは、俺のことを舐め腐っているのだろうか?500年前に消滅し、そして復活したから力がない、と本気で考えたのだろうか?或いは俺の持っている力に対しての認識が、共有されていないのかもな。どちらにせよ、今回の一件で俺を侮るようなアビスの怪物はいなくなることだろう。アビスの使徒を一切寄せ付けずに退けているからな。
取り敢えず目下の問題はこいつらだ。強がっては見たが、刀を使うには勿体ない。まぁ普通に風元素で炎斧の焔元素を拡散させて木盾を燃やしてそのまま刀で一刀両断、これでなんとかなるだろう多分。
俺は刀を仕舞い、本の形をした法器を取り出すと、風元素を活性化させ、炎斧の焔元素を軽く拡散させた。すぐに木盾達は火を消そうとするが、そうはさせじと意味のない攻撃を仕掛ける。
盾において最も意味のない攻撃、それは弓による攻撃である。俺は法器をすぐに仕舞って弓と矢を取り出し、二本の矢を特に力も入れずに放った。無論、木盾はこの攻撃に対応するために攻撃を防ぐべく盾を展開した。炎を消されるのはこれで防げただろう。
木盾は埒が明かないと察したのか、盾を構えて突撃してきた。炎斧も同様に斧を振り被りながらこちらへ向かってくる。だが…と俺はニヤリと笑って言った。
「残念、時間オーバーだ」
木盾が炎によって焼け落ち、その炎元素が暴徒に燃え移りかけて二体の暴徒は咄嗟に後退しながら手を離した。それにより、炎斧は足止めを喰らって尚且斧を振れない状態になった。俺はゆらりと刀を生み出しながら居合の姿勢で固まると一気に踏み込み、四体を真っ二つにした。
「アガレス…助かった」
「おう。家族…いや、ルピカの危機なんだろ?助けるのは当然だ。それより…」
俺はアビスの使徒と未だ戦っている旅人を見る。かなり苦戦しているようだが、あの様子なら負けることはないだろう。俺は視線をレザーに戻して言った。
「ボレアスについていてやれ」
元魔神と言えど、家族のように…というより、大切にしている家族が危険な目に合うのは嫌だろうし、安心させるためにも手の届く範囲に置いておきたいだろう。レザーはコクリと首肯くとボレアスの下へ歩いていった。
アビスの使徒はある程度攻撃を喰らっていたが、やがて自身に水元素によるシールドのようなものを張っていた。旅人は現在岩元素だから、あまり削ることはできないだろう。険しい表情をしながら剣を振るったが、水のシールドに阻まれてダメージが通らないようだ。
「旅人、こっちは終わった。シールドを削るのは任せろ」
「元神アガレス…また貴様か…ッ!」
心底忌々しそうに言うアビスの使徒を、俺は鼻で笑った。
「余程脅威に認定されているらしいな?全く以てありがたい限りだね」
時には煽ることも大切である。怒りは、判断力を低下させ、攻撃を単調にさせることが出来るからな。ま、とはいえ…俺はアビスの使徒を見やった。わなわなと震え、今にも襲いかかってきそうな雰囲気である。
勿論、相手の力量を正しく見極めねば、煽ってはいけない。そうでなくても、煽るという行為はあまりしないほうがいい。何故なら、と俺は突撃し、攻撃を仕掛けてきたアビスの使徒を見ながら思う。
刀で振るわれた剣を受け流すと、火花が散った。前回戦った時は受け流しても火花が散ることはなかった。それはつまり、向こうが普段よりも力を入れていることを示している。激昂すれば勿論、手加減などしてくれない。後のことを考えない。それはつまり、目の前の相手を絶対に滅ぼすことだけに集中することを意味する。まぁ要は普段より強くなるってことだ。力だけで言えば、だが。
「アガレスさんっ!?」
旅人の悲鳴のような声に俺は思わず旅人を横目で流し見する。心配そうな表情と、なんとかしてくれるであろうという期待の表情が綯い交ぜになったような表情だった。
「ま、任せとけ」
「愚弄するか…元神アガレス!」
俺の言葉に旅人が何かを返そうとした時に使徒は口を挟んできた。いや、あのさ。
「人との会話に口を挟んじゃいけないって習わなかったか?ああ、習うような場所も人もいないのか。と、いうか俺もう元神って呼ばれてないからやめてくんないか?」
と、それはもう煽り散らかした。アビスの使徒にしては珍しく、激おこのようである。
「貴様だけは…貴様だけは王子様の御為に殺す!」
ちなみに、こうして煽るのはこいつが逃げ出せない、という状況を作り出すためである。まぁ、こいつが恥も外聞も気にしないで逃げる可能性は勿論あるが。だからこそダインスレイヴに来て欲しかったのだが。いや、寧ろこちらから移動すればいいのか。俺はアビスの使徒と鍔迫り合いの形に持っていくと、提案をした。
「俺が憎いか、アビスの使徒」
アビスの使徒は無言だった。だが、その雰囲気から、俺を心底憎んでいることが察せられる。と、いうか顔に書いてあるも同然じゃないか。幾分か剣に込められる力が増した気がした。
「ここじゃ邪魔も入る…どうだ?前の遺跡でやり合うってのは」
アビスの使徒は俺を弾き飛ばし、冷静さを取り戻したのか、空間を斬り裂いて逃げようとした。なるほど、どうやら俺が来たらすぐに逃げる予定だったのかもしれない。ボレアスの鎖がなくなっている。どうやら、戦っている内に儀式が中断されたらしい。
「儀式が中断されたか…運が良かったな」
と捨て台詞のように吐き捨てると、空間の中に逃げようとした。が、直後、入る直前に横から何かに殴られたようにアビスの使徒は吹き飛んだ。俺の手には本の形をした法器が存在していた。風元素で空気の塊をぶつけたのである。シールドは解いていたため、モロに攻撃を受けたようだった。俺は吹き飛ばされ、突っ伏しているアビスの使徒へ悠然と歩み寄った。
「悪いが逃さん。レザーの大切な家族を誑かし、更には利用しようとした罪は大きい」
アビスの使徒は忌々しげに俺を下から睨みつけた。
「…貴様、本当は俺を捕まえ、殺すことなど造作もなかったはずだ…何故、それをしなかった」
少し考えればわかることだ。俺は逃げられないようにアビスの使徒の頭を踏みつけ、説明を始める。
「お前のその空間を移動する能力の解析、それと、手段と目的の調査、後は…今みたいに油断してもらおうと思ってな」
空間を斬り裂き、すぐに入り込めば俺とて止められない。だが、今回は捨て台詞を残した。俺に、武器を交換する時間を与えてくれたのだ。法器がなくとも、俺は元素力を操って具現化させられるが、それでも法器を持った時に比べれば火力は勿論、精度も劣る。今回、アビスの使徒が…この際、『ゲート』などと呼称するが、そのゲートを開いた時、膨大な空気を瞬時に集め、そして寸分違わず脇腹辺りにぶつける必要があるとなれば、かなりの威力と精度が求められる。
そして武器交換には、多少なりとも時間がかかる。すぐに飛び込まれれば見逃すほどの時間である。逆に言えば、捨て台詞などがあれば充分間に合う時間しかかからない。そして俺は前回奴と戦った時に油断させるためにわざと見逃した。まるで、止める手段がないかのように振る舞ったのだ。
「ま、つまり、お前は俺と戦った時点で撒かれた種に、見事に引っかかったってわけだな。さて…」
ここからは拷問のお時間だ。アビスの使徒というくらいだ、簡単に吐くことも死ぬこともないだろうが、絶対に目的を吐かせねばならないな。まぁ、逃げられないようにそれ相応の対策をせねばならないだろうが。一番はダインスレイヴに任せることか…。
「ッ!!」
だが、俺の考えていたようには、どうやらならないらしい。突如、俺の背後から黄金色の刀身を持つ剣が姿を現し、下から迫った。俺はアビスの使徒から足を離しつつ、前方方向に転がりながらすぐに態勢を立て直し、その原因を見やる。
旅人が、驚愕に目を見開いていた。斯くいう俺も、勿論目を見開いてその人物を凝視している。しかし、まさか直々に助けに来るとは思わなかった。何より、実の妹の前に姿を現すとは思わなかった。アビスの使徒はすぐにその人物に気が付き、跪いた。
「『王子』様…」
王子、か。前も殿下、とか呼ばれてたっけ?
「そ、その人…もしかして…!」
パイモンは旅人との容姿の共通点から色々と察したようで、悲鳴のような叫びを上げていた。旅人は目を見開いたまま、
「空ッ!」
「蛍…」
とそう叫んだ。空はアビスの使徒が少しだけ肩で息をしているのを確認し、俺を、そして旅人を見て呟いた。
「やっと…やっと、見つけた…!」
旅人は先程の表情から一転して、泣きそうな顔で言い、駆け寄ろうとした。俺はそれを、手で制した。無論、旅人は抗議をしてくる。と、いうか前に空がアビスと繋がっていると言ったはずなんだが。
「…先程、旅人の兄、空は俺に攻撃を仕掛けてきた。この意味がわかるか?」
まぁ前にも言っているし思い出してくれるだろう。俺の予想通り、旅人はハッとした表情を浮かべ、本当なの?と呟いた。空の気配を感じ取ったか、ダインスレイヴも旅人の隣に並び立った。空はそんなダインスレイヴを見て、
「蛍、どうしてダインと一緒に?」
「ダインのことを…?」
パイモンも旅人も驚いているが、無論俺はこのことを知っている。空がアビスと繋がっていることも、そしてダインスレイヴが空と旅をしていたことも。ダインスレイヴは少し瞑目すると、やがて目を開いて静かに告げた。
「…空、また会ったな」
「ど、どういうことだ!?ダインがお前のお兄さんの名前を知ってるぞ!?」
パイモンは動揺に次ぐ動揺で話が見えてこないようだが、旅人は前の話を思い出したらしい。真剣な表情で俯いていた。空はダインスレイヴと俺、そして旅人を見て言った。
「蛍…その人達と一緒にいちゃ駄目だ…その人達は…俺の『敵』」
「随分と嫌われたもんだな…アビスに勧誘もされたってのに…」
肩を竦めてそう言うと、空に睨まれる。蛇に睨まれた蛙、とはならないが、少し悪寒がする。俺に悪寒を与えられるほどの殺意を、空は瞳に込めていた。
「言ってる意味がわからないよ、空!!」
「これは言わなければならないんだよ。蛍、ダインと…アガレスと一緒に、アビスを阻止するな」
空は先程よりも強い口調と声でそう言った。空は俺に関して詳しくは知らないだろうが、ダインに関しては違ったようで、説明を始めた。どうやら本気で旅人を説得するつもりらしい。
「その人…ダインスレイヴは、最後のカーンルイアの宮廷親衛隊『末光の剣』。500年前、彼はカーンルイアの滅亡を阻止できなかった」
ダインスレイヴの表情が次第に険しいものへと変わってゆく。それでも尚、空が語るのをやめることはなかった。
「その時に不死の呪いをかけられ、荒野を彷徨った…彼が守ろうとした民が、アビスの怪物になるのを見ながら」
パイモンがダインスレイヴと空を交互に見ながら言った。
「ダインが…カーンルイア人!?500年前に滅びたっていうあの…!?」
「…アビスの怪物達は…カーンルイアの『遺民』だ。俺は500年前、彼等を守ることができず、見ていることしかできなかったのは事実だ…」
次に、と空は俺を見た。どうやら、俺にも何かを言ってくれるらしい。
「彼はこの世界が始まるよりももっと前…いや、平行世界というのが今は正しいのかな。『終焉』を阻止できず、カーンルイアの滅亡によって溢れ出た怪物達や錯乱した人々に世界が蹂躙されるのを見ることしかできなかった」
ドクン、と俺の心臓が大きく波打ったのがわかる。空は更に続けた。
「守ろうとした世界が、民が、そして友人が蹂躙され、しかし友人の好意に甘えて人生を、世界をやり直し、今度は自らを犠牲にすることしかできなかった」
旅人が本当?とばかりにこちらを見る。俺は、よくわからない、と首を横に振った。
「やっぱり、覚えていないんだね」
「…お前は、俺についてなにか知っているのか?」
俺がそう聞いたが、話は終わりだ、とばかりに次の言葉を言った。
「君が覚えていなくても、俺やダインは覚えている。それだけは、覚えておいたほうがいいよ。そしてきっと君は最終的に…俺の味方をしてくれる」
どうだろうか。空の口振りから察するに、やはり俺は『終焉』によって一度滅びているようだ。だが…カーンルイアという文言と、やり直し、というのはどういうことなのだろうか。
「私と一緒に、家に帰ろう!空!!」
旅人が懇願した。空は家…と一言呟くと、ここに来て初めて微笑んだ。
「うん、勿論、蛍のいる場所が『家』だ。でも…今は駄目だ」
アビスの使徒は空間を斬り裂き、ゲートを形成した。空は踵を返し、顔だけ振り返って言った。
「『アビス』が神座を下す前に、まだ『天理』との戦いが残っている…」
聞いてくれ蛍…と前置きして、空は真剣な表情で告げた。
「俺は既に一度旅をした。だから、蛍も俺と同じように旅をして終点に辿り着けば、きっと世界の淀みを見届けることが出来る」
アビスの使徒が空間へ空を誘って入っていく。空は呟く。
「俺達はいずれ再会する…急ぐことはないんだ、蛍。考える時間は、十分にある」
旅人は手を伸ばし、空を引き留めようとしている。先程の言葉について考えていた俺には、それを止める気はなかった。アビスの使徒についていき、空も入っていく。直前に俺を見ると、
「俺達には…充分に時間がある」
そう言って消えていった。ダインスレイヴが突如走り出し、それに釣られてか、旅人もゲートへ向けて走り出した。しかし、ダインスレイヴの方が幾らか早い。ダインスレイヴはゲートの中へ入ることができたようだったが、旅人はゲートの闇を払っただけだった。間に合わなかったのか、或いは資格がないと入れないのか…。
旅人もパイモンも、若干落ち込んでいるようだった。斯くいう俺も、例外ではない。
「行っちゃったぞ…」
と、パイモン達の会話が耳に入り込んでくる。旅人はまだ、俯いていた。
「そ、そんなに落ち込むなよ…お兄さんも再会するって言ってたし…きっとまた会えるぞ!少なくとも…そ、そう!手がかりは見つかった!!」
大袈裟にパイモンは言った。だが、その大袈裟さが、今の俺達に必要なものだということには変わりないだろう。俺と旅人は同時に顔を見合わせて少し笑う。パイモンは気恥ずかしそうに顔を赤くしていた。
「そうだね、パイモンの言う通り」
「ああ、手掛かりは見つかった、それだけでも喜ぶべきだろうな、ありがとうパイモン」
まぁ少なくとも、俺も旅人も、目的や過去はどうあれ、ダインや空が関わっていることには変わりない。そして俺の記憶と旅人の兄の情報の突破口にはダインスレイヴも加わったわけだ。
「それにしても…あいつらの話、なんだか難しくてオイラには理解できなかったぞ…旅人は、勿論理解できたよな?」
「お兄ちゃんだけ見てたから何も聞いてない」
思わず、俺とパイモンは吹き出した。いや、パイモンはぷりぷりと怒っているな。
「もうっ!せっかくオイラが慰めたのに無駄足みたいじゃないか!!アガレスもなんか言ってやれよ…!」
「そうは言ってもな。結構な間探していた人が現れたんだ、こうなるのも当然というか…そもそも、旅人のは冗談だぞ?」
そう言って旅人を見た。目を背けている。
…え、まじで?ほんとになんも聞いてなかったのか?おい、嘘だろ?
「ま、まぁね…!」
旅人が冷や汗を流し、目を泳がせながら言った。流石に無理があるだろう。
「まぁなにはともあれ…一旦依頼は終了しただろう…戻って情報を整理しようか」
旅人と俺は頷き合い、共にボレアスの下へ向かうのだった。しかし依頼の達成が中途半端になってしまったのを、救民団で完璧に依頼をこなしてきた身としては、少しだけ悔やしいと思う俺だった。
長くなりすぎたんで…一旦切ることにしますね…幕間は一応、次回で終わりになるはずです…多分。確約はできませんがね