忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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第67話 依頼の達成…え、いいの?

ボレアスが繋がれていた鎖だが、勿論跡形もなく消えていた。そしてボレアスへの影響もさして無いようである。レザーは心から安堵しているようで、しかしボレアスを守れなかったことで落ち込んでいるように見えた。

 

「レザー、自分の家族を、大切な者を守れなかったことが悔しいか?」

 

レザーは俺を見て首を傾げたが、やがて首肯いた。俺はレザーの頭に手を置いて微笑む。

 

「それでいい。きっとお前は誰かを守るために、もっと強くなれる。お前がもっと強くなって、そして…次はボレアスを…大切な家族を守ってやれ」

 

レザーは俺の言葉で気の持ちようを変えてくれたようで、決意を込めた瞳をこちらに向けて首肯いた。ボレアスからレザーを任されてからというもの、中々里帰りというものをさせてやれなかったので、暫くここに滞在していてもいいんだぞ?とレザーに提案すると、嬉しそうに首肯いていた。

 

一先ず、アビスの使徒による脅威が去ったとはいえ、結局『最古の耕運機』に関する情報は見つからなかったし、そもそもの問題も解決していない。まだ依頼が達成したとは言えないだろう。何でもいいから『最古の耕運機』に関する情報を調べるべきだろうな。

 

「旅人、一旦モンドに戻ろう。ボレアス達との交渉や保障に関してはジンがなんとかしてくれるだろうさ」

 

ジンがいないことを見越して旅人にそう言った俺は旅人が苦笑するのを見てから後ろを振り返った。ジンが立っていた。俺はそのまま一回転───

 

「まぁ待てアガレス」

 

───しようとして、無理矢理正面を向かされた。ジンの額には青筋が浮かんでいた。俺は冷や汗を流すことしかできない。

 

「さあ、お前にも交渉とかは手伝ってもらうからな…」

 

「ま、まぁ待て…色々代理団長としての立場とか色々あるだろ?お、俺はお暇しようかなぁ、なんて…」

 

「悪いがアガレス…事態の当事者として、君には説明責任がある…今日という今日は逃げることは許さんぞ…!」

 

どうやら逃げられないようだ。俺は泣く泣くその場に残ると、ジンとボレアスのやりとりをボーッと見つつ、偶にこちらに話しが振られたときだけ補足説明や状況に対する同意を行った。ジンは一通り書類に纏めると、キッとこちらを見た。

 

「それで、アガレス…どうしてモンドに帰ってきて挨拶に来てくれなかったんだ?」

 

「い、いや…一番の理由は忙しかったからだな…」

 

「前回のシューベルト・ローレンスによるモンド城襲撃の際も私のところに来てくれなかったじゃないか」

 

面目次第もございません、としか言えない。と、いうかここ最近は色々なことが立て続けに起こり過ぎな気がする。璃月港から帰ってきて一息つきたかったのにすぐにシューベルトが暴れるし、その後はすぐにダインスレイヴからの依頼に奔走していた。

 

「モンドの皆から聞いたぞ…挨拶回りをしっかりしていたそうじゃないか。それなのに私の時は不在だからと諦めたのか?旅人はあの後ちゃんと来てくれたぞ?」

 

誘えよ。忘れてたよすっかり。お陰で今私怨をぶつけられてるよ。ジンは本気ではないようだが、少し怒っているようだった。

 

「…百歩譲って挨拶に来なかったことはいいが…どうして来てくれなかったんだ…?」

 

ジンは怒りを通り越して落ち込んでいるようだった。俺は一息つくと、口を開こうとして横から旅人に横槍を入れられた。

 

「話を聞いてたんですけど…アガレスさん、結構本当に忙しそうにしてて…別に忘れたとかではないと思いますよ」

 

旅人ナイスフォローすぎる。こういう場合、当事者側から説明しても信じてもらえない場合が多い。相手も自分も信頼している相手が行動を証明してくれた時以上に嬉しいことはないな。

 

「お、オイラもそう思うぞ!!というかアガレス、むしろ聞きたいんだけど…休まなくていいのか?」

 

パイモンも旅人の言葉に同意しつつ、話を変える方向のようだ。良い判断だ、パイモン!とばかりに俺はジンに見えないようにパイモンにサムズアップした。パイモンも笑顔で返してくれた。最初はパイモンのことも怪しいと思っていたが、ここまで何もしていないので恐らく大丈夫だと判断している。それでも、警戒を怠ることは勿論ないが。

 

俺はパイモンの問に至極当然とばかりに答えた。

 

「神は休息を必要としない…が、最近は働きすぎだ。休みたい」

 

「ほ、本音が出てるぞ…」

 

聞いておいてなんだよ、と思ったが口にはしない。パイモンはあまりに休んでいないであろう俺を心配してるだけだろう。旅人も同様に心配そうに目尻を下げて俺を見ていた。

 

よしっ、とばかりにジンは手を叩いた。

 

「明日は私も皆に休むように言われていてな…どうせ騎士団本部から締め出されるだろうし、アガレス、君の仕事を肩代わりして───」

 

「そんなに仕事したいか!?休めって言われてるんだろ?仕事させるわけにはいかないな」

 

思わず声を荒げかけた()が、最後は冷静に返した。俺のその言葉に対してジンは少し落ち込んでいた。

 

「そ、そうか…妙案だと思ったんだが…」

 

「休めと言われても何をすればいいのかわからないのもわかるが…そうだな、風立ちの地で風の音に耳を傾けながら寝っ転がるのなんか最高だと思うんだが」

 

「む…そうか、それは興味深い…試してみよう」

 

それはそうと、とジンは話を切り替えるようだ。ジンは旅人を見て言った。

 

「旅人、君の旅の目的から察するに、次の国は稲妻だろう」

 

旅人は首肯いた。ジンは険しい表情をしながら言った。

 

「しかし、稲妻は現在、スネージナヤと戦争状態にあるんだ。国際秩序が不安定な今はあまり行くことをオススメできないのだが───」

 

「団長!!団長はいらっしゃいますか!!」

 

ジンの話の途中でジンを呼ぶ声が聞こえてきた。ジンは困ったように笑うと、

 

「すまない、話はまた今度になってしまうな」

 

「いえ、大丈夫ですよ。今度また正式に伺いますね」

 

旅人とジンは顔を見合わせて微笑んでいた。ジンは報告に来た西風騎士から話を聞いていた。俺は特段話すこともないので黙っていたが、不意にジンに呼ばれたので、生返事を返す。ジンは俺の生返事に驚いているようだったが、すぐに真剣な表情で告げた。

 

「あとで大団長室に来てくれ。そうだな…多分、二時間後くらいでよろしく頼む」

 

代理団長直々のご指名、か…勿論、断れるはずもないので俺は了承し、そのまま一旦はジンと別れるのだった。

 

「それじゃあ旅人、俺はモンドに戻る。もうすぐ夜だし、遅くなりすぎるなよ?」

 

「うん、次会うのは稲妻に行く時かな…またね」

 

「またな!アガレス!!」

 

俺は二人とも別れて一足先にモンドへ帰還するのだった。

 

 

 

一時間ほどしてからモンドへ帰ると、一通の手紙が救民団本部のポストに入っていた。差出人は全く書かれておらず、俺は若干不審に思っていたが、今本部には不測の事態に備えてノエルしかいない。そのノエルが言うには、誰かが来た気配は全くしなかったらしい。

 

俺は手紙の封を切って中の本文の書かれた紙を見た。そして俺は手紙の内容に、思わず驚愕を隠せずにはいられなかった。

 

手紙の内容としては、というか差出人はダインスレイヴからだった。内容は『最古の耕運機の目』に関することだった。あの後中に入ったはいいが、層岩巨淵の一角に気が付いたら放り出されており、最古の耕運機の存在を思い出したダインスレイヴは心当たりのある風龍廃墟へ向かったそうだ。そこで最古の耕運機の目を無事回収できたためそれに関しての心配はない、という旨が書いてある。そして、アビスの使徒は完全に痕跡を隠蔽し、行方不明になってしまった。報酬をこの手紙に入れて今回の依頼は達成とすることも書かれている。

 

え、いいの?なんて思ってしまった。アビスの使徒を探し出し、計画を止めたはいいが、正直謎ばかり残る結果となってしまったからな。結局、穢れた逆さ神像もどうにかできていないしな。かといって、俺が介入してしまえばどんな影響があるかがわからない。正直に言えば、破壊してしまいたいが、それができない現状では手出しをしない、ということしかできないだろう。

 

それにしても、報酬か。俺はなんだかよくわからない十字で虹色の石を大量に受け取った。なんというか、使い道がわからんな。前に旅人がこれを見て祈願がどうのと言っていた記憶はあるが…。

 

俺は指輪を弾いて旅人を呼び出した。少ししてから返答があった。旅人の声は心做しか、力強かった。実際に兄と色々話して吹っ切れたのかもな。そう言えばこの指輪もう一セットくらいあればモラクスにも渡せるんだが…いや、将来のことを考えるともう二セットは欲しい。頑張って探してみるか…昔はどこで見つけたんだったか…。

 

「ダインスレイヴから手紙が来てな。『最古の耕運機の目』を見つけて、保護したそうだ。一応、依頼達成と言われている」

 

『え、そうなの?私てっきり依頼失敗になると思ってた』

 

同感だ、とばかりに俺は見えてもいないだろうが首肯いた。

 

「それでだな…渡された報酬が俺には扱い方がわからないもんで…旅人に貰ってくれないかと思ってな」

 

小さめの石が小さい袋の中に大量に入っている様は結構びっくりした。旅人は状況がわかっていないようで、通信越しでも首を傾げているのがわかるくらいに感情を声に乗せて言った。

 

『えっと…どういうものなの?』

 

「色は虹色、形は十字だな。小さい石のようだが…」

 

『本当にいいんですか!?ありがとうございます!!』

 

即答だった。俺でも若干引くレベルである。俺は気持ちを切り替えるべく溜息を一つつくと、見えてもいないのにこれまた笑顔で言った。

 

「そうか、じゃあ今度救民団によってくれ。その時に…このなんかよくわかんない石…多分1600個はあるな…何に使うんだこれ…まぁいい。これを渡すから」

 

『1600!?ダインも太っ腹だなぁ…!すぐ行きます!!』

 

それだけ言うと、旅人との通信は終わった。俺は苦笑しながら指輪を弾いて通信を切った。俺は取り敢えず情報を大量に得て未だに若干混乱気味の頭を落ち着かせるべく、ソファに座り込むのだった。

 

〜〜〜〜

 

おまけ

 

旅人「ダインから貰ったこの原石…決して無駄にはしない…ッ!!」

 

アガレス「なんでちょっと中二入ってんだよ」

 

旅人「ふっ…ふふ…アガレスピックアップの時に私の全財産を投げ打ったのにも関わらず星5はディルックさんだけ…今度こそは…今度こそはあああ!!」

 

アガレス「パイモン…こいつは何を言ってるんだ?」

 

パイモン「オイラに聞くなよ…てか、祈願するときの旅人は常にこんな感じだぞ」

 

アガレス「末恐ろしいな…それで、今のピックアップは?」

 

旅人「ふっふっふー…聞いて驚かないでね…なんと!!アガレスさんがピックアップなのだー!!」

 

アガレス・パイモン「……」

 

旅人「あの雪辱を…私の諭吉を吸い込んでいったあのアガレスさんを…今度は振り向かせてみせるよーっ!!」

 

アガレス「本編とキャラ違いすぎるだろ巫山戯てんのか作者」

 

パイモン「メタ発言がすぎるぞ…」

 

旅人「レッツラゴーッ!!」

 

〜〜星5演出〜〜

 

旅人「……」ブツブツ

 

アガレス「ヒッ…」

 

パイモン「ずっとディルックだけは来るなって言ってるぞ…よっぽどすり抜けが堪えたんだな…」

 

〜〜星5、アガレス〜〜

 

旅人「」

 

アガレス「俺が来てるのなんか複雑な気分だな…」

 

パイモン「た、旅人…?あれっ!?旅人が息してないぞ!?」

 

アガレス「ま、不味い…衛生兵ー!!」

 

※おまけの物語は勿論フィクションです。実在する企業・団体には一切の関係はないですが、一部の方々にはあったりなかったり…。




というおまけ第二弾でした。祈願に関しては誰もが経験あるんじゃないでしょうか…そう、すり抜けっていう闇にね。

すり抜けも嬉しいんですけどね〜…なんというか、微課金や無課金の方々の方がかなりショックはでかい気がします。
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