詐欺ってほどではないですが、あまり内容には関係ありません
胃の痛みは収まりました。ご心配をお掛けして申し訳ない。納豆を夜中に食べるのはもうやめようと思います。
翌朝、俺は後ろ髪を引かれる思いだったが何とか布団から脱出し、丁度武士達の見張りの交代の時間を見計らって部屋の外に縛り上げた襲撃者を放り投げておいた。後は次の見張りがなんとかしてくれるだろう。
それはさておき、少々困っていることがある。
「…かんっぜんに寝坊したな」
俺は時計を見て思わず苦笑した。6時に起床するはずが、今や8時だよ。どうしてくれるんだこの襲撃者共が。
さて、情報を整理しよう。昨日は頭が回らず余り考えることができなかったが、あの襲撃者達は恐らく天領奉行或いは勘定奉行所付きの武士ではなく、当主の私兵だろう。そうでなければあれだけ動きが性急だったことの説明がつかないからな。
更に言えばこんなことを仕出かすのは天領奉行ではないはずだ。九条家にはいい跡取りがいると聞いている。そんな人が将軍から暇を出された現当主を放っておくわけがない…はず。本人を知らないからなんとも言えないけれども。まぁこの際どうだっていいんだよな。
「どちらにせよ襲撃者が全て吐いてくれるだろうな」
情報を引き出すのは俺ではなくその職業の人間だろうが、できるだけ厳重な警備の下行って欲しいところだな。取り調べる前に殺されるか、最中に殺されるか、或いは事後に始末されるかどうかはわかりかねるが、兎に角相手が相手だ。油断はしないほうが良いだろう。
あれ?だったら縛り上げて外に襲撃者を放置しておいたのは失敗じゃないか?回収回収…。
ぎりぎりのところで武士達に見つからずに済み、彼等を回収することができた。お前らも出たり入ったり大変だな。原因俺だし、ってか攻めてきたお前らの責任だけど。
「早めに情報吐いてもらうか?その方が楽な気がするな」
俺はチラッと襲撃者を見やると、ふるふると首を横に振っていた。別に鬼でも悪魔でもないんだからそんなにビビんなくてもいいと思うんだ。まぁ、神ではあるけど。
いやぁでもあれだな、どうせこれから精神ズタボロにするんだし、関係ないかぁ。俺は襲撃者のリーダーと思われる男に話しかけた。勿論、笑顔で、である。あ、話せるように猿轡は外しておくとして…よし。
「なぁお前、武士でそれなりの地位を貰ってるってことは、勿論所帯を持ってるってことだよな?」
「ぁっ…いや」
俺は刀を生み出して床に勢いよく突き立てる。勿論、彼の目の前に、である。彼は冷や汗を浮かべ、刀を凝視した。
「嘘を吐けば殺す。俺はこの国の人間じゃないからな。法とかは気にする必要ないんでね」
まぁモンドとか璃月の関係が悪くなるから気にしまくるんだが…この際ブラフでも良いだろう。襲撃者はコクコクと何度も首肯いた。さて、これで従順になってくれただろう。
「お前の主は?」
「ひ、柊慎介様です。元々は私兵として働いておりましたが、此度の命令は到底拒否できるようなご様子でもなく…」
なるほど、怒り狂っていたわけだ。ハッハッハッハッ!ざまあないぜ!とか調子に乗れたら良いんだが、生憎そんなおめでたい頭は持ち合わせていないんだよなぁ。
「なるほどねぇ…大方、会議で恥かかされたのとファデュイの邪魔になりそうな俺を排除しておけば助けてもらえるかもしれない、とかそういう感情で動いたんだろうな…」
戦争が始まる前までは優秀、或いは普通の奉行だったんだろうが、戦争が長引いた結果がコレなのかねぇ。やっぱ戦争よくないな、うん。
「目的は聞かずともわかるが…俺を殺すこと、そうだな?」
「は、はい。恐れながら…」
やるにしても専門家を雇えば良いものを。それとも雇えない理由でもあるのだろうか?
「何故お前達が此処へ?暗殺者の専門家に頼んだ方が早いだろうに」
今の所嘘を言っている感覚はしない。嘘を吐く時特有の仕草、例えば顔の部位を触ったり、汗をかいている、などの症状が見られないからだ。とはいえ、それだけでは断定できないだろう。
だがいい機会だ。聞きたい情報は聞けた。これで嘘を吐くようならそれまでだろう。俺に真正面から見つめられた彼は目を逸らした。
「…その、わかりません」
…俺は刀を抜くと振り上げてから仕舞う。三人はかなり萎縮していたが、俺の行動を見て不思議に思っているのか首を傾げていた。
「情報提供に感謝しよう。何らかの処罰は免れないだろうが…まぁ、助命くらいは嘆願してやろう」
彼等も、上に従っただけだろう。積極的に俺を害そうという気持ちを感じない辺り、奉行がファデュイと繋がっているのも知らないんだろうな。
俺のその言葉に三人は深々と頭を下げた。まぁ、所帯を持っている彼等…かどうかは知らんが、兎に角うち一人の家庭は間違いなく苦しくなるだろうなぁ。そっちのケアも必要だろうな。
「…面倒だな」
思わず、そう呟いてしまうのも無理はないだろう。来たばかりでこの歓迎のされようだぞ?先が思いやられる。と、いうか旅人は大丈夫なのだろうか。この分だと彼女も不味いかもな。到着予定は今日だったはずだ。もしかしたらもう着いているかもしれない。
俺は部屋の外にいる見張りを手招きして部屋に招き入れると、三人を引き渡した。武士はかなり驚いていたがすぐに人を手配する、と言っていなくなった。勿論、もう一人見張りがいるので問題はない。上役と思われる男にこの男達を助命するよう告げると前向きな返事を頂いたので信じてみようと思う。
ついでにその場にいた武士の一人に将軍に面会したい旨も伝え、将軍から許可を貰ってきたのですぐに面会…というより謁見?をし、海祇島まで行く旨を伝えた。ついでに団子牛乳を渡しておく。影は少し微笑んで喜んでいたが、味で喜んでくれると良いのだが。
そう言えば一気に国の重役二人を失ったことについて何も影から言われなかったな…申し訳ないから今度謝っておこう。彼女と、当事者に。
さて、思い立ったが吉日、とも言うし、早速向かうとしよう…思い立ったのはちょっと前、とかそういうツッコミは無しだぞ。
海祇島。稲妻国内では西側に位置する島で、空中に泡が浮いており、全体的に色彩豊かで明るく、なんというか、珊瑚礁という感じの様相を呈している。中央部には大きめの建物もあり、近くには村もあり、それなりに活気もあるようだ。空中に浮きながら少し考える。
「初めて来たは良いが、事前告知も何もなしだからなぁ…ん?」
海祇島の東側、そこでファデュイの連中がウロウロしている。何処にでもいるなぁ…何処ぞの黒いヤツかよ。その近くには…聞いていた『死兆星号』か。どうやら水平線に艦影が見えたときから追跡していたのだろう。大して気にするようなことでもないな。
だが…旅人達が降ろされるのを見られると、少々面倒だ。モンドと璃月にも被害が及ぶ可能性を考えるとバレるのはなるべく遅いほうが良い。俺は溜息を吐くとファデュイの連中のど真ん中に降り立った。
銃や刀、ハンマーを構えるファデュイの連中へ向けてにこやかに告げる。
「やぁやぁ皆様お揃いで。本日はどちらへ?離島なら逆方向ですが?」
まぁまずは軽い挨拶から。ファデュイの注意をこちらへ引きつけるのには煽るのが一番だからな。ファデュイは黙っているがその視線は全員俺に向いている。そして着実に包囲網を狭めてきている。
ファデュイの数は12か。編成はかなりいいな。雷ハンマー、氷銃、水銃、炎銃がそれぞれ二人、他はミラーメイデン、雷蛍術士、デットエージェント、そして…あまり見ないが、岩使いの編成だ。凍結、溶解、拘束や遠距離、加えて火力も充分。完全に船を潰しに行く編成だな。
「野放しにしとくと危険か…」
長旅で疲れた彼女には彼等と戦うのは酷だろう。海祇島の兵力が不明な以上、戦わせるわけにもいかないだろうしな。それにファデュイは強い。武士達がどうかはわからないが、西風騎士や千岩軍兵士だと二倍の兵力差が無ければ相手するのは難しいだろう。彼等はそれほどまでに強い。だから此処で潰す。
俺が刀を抜いたのを皮切りに、ファデュイが襲いかかってきた。どうやら俺のことを知っているわけではないようだな。もう少し反応があると思ったんだが。俺は背後から振るわれたデットエージェントの刀を軽く屈んで回避すると、前に一気に転がった。直後俺の元いた場所に雷ハンマーの力強い一撃が直撃し、凹んだ。直撃すると少しキツいかな。
しかし連携がしっかりしている。俺が避けることを見越してミラーメイデンは後方で俺を拘束しようとしているし、炎銃は常に俺に照準を合わせている。氷銃は彼等の前に居てタンクの役割を果たしているし、水銃はいつでも回復させられるように控えている。他は割と俺への攻撃に参加している。
うん、やっぱり実戦を経験しているだけあって英雄を相手取るのは慣れているようだ。そうでなければこうも連携を取ることはできないだろう。多分、あらゆる敵に対応できる部隊なのだろうな。稲妻の英雄と目される人物も恐らく犠牲になっているに違いない。
だからといって俺にそれが通用するかと言われれば微妙と言わざるを得ないだろう。
「さて、大体分析も済んだし───」
俺は雷ハンマーの攻撃を躱したタイミングでハンマーの上に乗り、そのままの勢いで雷ハンマーの首を落とした。雷ハンマーの体から力が抜け、大量の鮮血を撒き散らしながら地に伏した。即死させたため、水銃による回復も見込めない。
驚いて一瞬硬直するファデュイに向けて微笑みながら告げる。
「───そろそろ反撃といこうか」
数刻後、海祇島に死兆星号が停泊した。勿論、俺も見ている。ファデュイの連中は処理し、死体はそのまま、というわけにもいかないのでしっかり焼却してから埋葬しておいた。さて、死兆星号からタラップが降りてきて砂浜に三人降りてきた。一人は旅人、一人は女性で背が高く、片目を布で隠している。ガイアが確か、眼帯がどうのこうのは海賊がどうのこうのって言ってたから彼女が北斗か。
もう一人は白髪で一部が紅葉色の少年だ。
「ようこそおいで下さいました。将軍様からお話はお伺いしております」
ん?あれは…天女のような出で立ち。なるほど、あの女性が珊瑚宮心海か。現人神という話だったが、なるほど確かに神聖な雰囲気がある。しかし、完全に出ていくタイミング逃した気がする。いや、まだチャンスはあるはずだ…あるよな?
彼、彼女達の話が進み、どうやら珊瑚宮へ案内されるようだ。完全に出ていくタイミング逃したな。ん?珊瑚宮さんこっち見てる気がするんだが…。
「そこの方、もう出てきてもよろしいですよ?ずっと出てくる機会を窺っているご様子でしたが…何か御用でしょうか?」
ま、不味い。このままでは縁の下の力持ちや応援どころかストーカー的な烙印を押されてしまう気がする。俺は努めて平静を保ちながら彼女たちの前に出た。旅人と目が合う。視線で非難された。なんか解せぬ。
それはさておきこの状況はどうしようか?一先ず現状を説明するべきだろう。コホン、と咳払いをすると話し始めるべく俺は口を開く。
「お初に御目に掛かります珊瑚宮様、私の名はアガレス、しがない旅人、というわけでは御座いませんが一応彼女と同じ璃月からの応援ということになっております」
人間第一印象というものは大事だからね。丁寧な言葉遣いを心がけて…え?もう遅い?そ、そんなバカな。
だが俺の一人芝居とは裏腹に、珊瑚宮心海は俺のことを影から聞いていたようで、貴方もどうぞ、と誘ってくれた。俺は勿論首肯き、旅人ともう一人の少年の横に並んだ。ジト目で見てくる旅人を軽くスルーしつつ溜息を吐いた。
危うくだった。
ちょっと予定が入ってて急ぎで仕上げました。誤字報告いつもありがとうございます。
アガレス「感謝の気持ちがあるなら誤字の頻度を減らしたらどうだ?」
それはちょっと厳しいかなぁって…見る時間が無くって…。
ということで、これからも誤字報告を頼らせていただきます。誤解を招きそうな文言に関してはしっかり書き込もうと思います。そんな感じでよろしくおねがいします。