忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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まさか更新が3日遅れるとは…申し訳ないっす。理由を言いますと、二日前は体調不良になり、昨日は習い事だったもんで…いやぁ、描く暇が無いのなんの…。


第80話 え…えぇっ!?

稲妻城の中は武士達や文官達が慌ただしく動いていたため、少々騒がしかったが、影が先頭に立っているため特に不自由をすることなく移動できた。仕事の邪魔をしてしまったかもしれない、と俺は若干の罪悪感に駆られつつ、そのまま影についていった。

 

「先に報告の方を済ませてしまいますので、アガレスと…そちらの方は少々待っていていただけますか?」

 

影にそう言われたので、首肯く。旅人は何かを言いたげだったが、首肯いた。それを見て影も軽く首肯くとゴロー達を連れて去って行った。俺は、というと割り当てられた部屋の前にいる。どうやら、影は俺に気を遣ってくれたのだろう。

 

「旅人、待っていろ、と言われたし、中でゆっくりしないか?」

 

「中…?アガレス、ここはもう稲妻城の中だぞ…?」

 

パイモンが全く見当違いな疑問を呈してくるが無視して俺は眼前の扉を開いた。旅人もパイモンも驚いたように目を見開いている。

 

「お、おい!勝手に開いちゃ駄目だろ!!」

 

「説明しておけばよかったな。既に影に俺は部屋を貰っていてね。ここがその部屋なんだ」

 

そう説明してやると、二人共安堵したようでホッとしていた。そんなにも俺は非常識な存在だろうか?

 

俺は二人を伴って部屋に入るとすぐに大きい伸びをした。船旅はそれなりに疲れるのだ。常に揺れているから、船員の一人が酔っていたし、俺も酔いには弱いのだ。まぁ、なんというか…自分の感覚が狂うから好きではないんだよな…勿論、酒とは別だぞ?

 

「これで酒さえ飲めるようになれば…クッ」

 

俺の唯一の弱点とも言える酒を克服しない限り、真の安寧はないだろう。戦闘中に酒を掛けられたりなんてしたら目も当てられんぞ。

 

「アガレスさん?」

 

なんて下らな…くはないことを考えていると、旅人に心配されてしまったようだ。二人を部屋に入れたはいいが、特にすることはない。強いて言うならアレを読むことくらいだろうか?団子牛乳に関しては買ったその日のうちに消費している。そのため、食料などは俺の部屋にはない…はずだった。

 

「アガレス、オイラ久し振りにお前の料理が食べたいぞ!」

 

「待ってる間暇だし、もうそろそろ昼時だから、お腹を空かせちゃったみたいだね」

 

まぁ私は食べるものがなくても非常食があるから、と小声でパイモンを横目で見ながら旅人が言った。非常食…ああ、そう言えば少し前旅人がパイモンに対してそう言っていたのを思い出した。

 

冗談ではあるのだろうが、幾ら何でも酷すぎないだろうか。気を抜きすぎてはいないし、警戒も解いていないが、それでもパイモンは可愛いところが多い。揶揄われるとすぐムキになるところなんか特にな。旅人もそれがわかっていてやっているのだろうが。

 

さて、本題に戻ると、パイモンも…そして恐らくは旅人も腹が減ったのだろう。ま、腹が減っては戦はできぬ、とも言うしここは一つ…と思ったが先程心の中で思ったことをすぐに忘れていた。

 

「すまんが今は食材がなくてな。作ろうにも…なにもないんだ。後で影にご飯を頼んどくよ」

 

言わなくても飯くらい見張りの武士に頼めばくれそうだが、それは黙っておこう。彼等としてもあまり俺とは関わりたくないだろうからな。自分が言うのも何だが、なんたって得体が知れないからな。俺がどう思われても問題はないが、それで彼等を怖がらせてはいけない、というわけである。それなら直接影に頼んだほうが良いのだ。

 

俺の言葉にパイモンと旅人はしょんぼりしたようで、余程俺の…いや、ご飯が食べたかったのだろうということがわかる。

 

「食べられないものは仕方がないだろう?まぁ挨拶が終わったら食べられるだろう…っとまぁこの話は後だな」

 

旅人とパイモンは首を傾げた。コロコロと感情が変わるからこの二人といると飽きずに済むな。

 

さて、扉の外に気配が増えた。どうやら、俺達を呼びに来たらしい。あからさまに待っていたらちょっと怪しいので普通にくつろいでいるように見せた。やがて扉が開かれる。

 

「お待たせ致しました。将軍様のご準備が整われましたので、ご案内致します」

 

「ああ、わかった」

 

「…恐れながらアガレス殿、貴殿は此処での待機となります」

 

…ええ?

 

「そりゃあまたなんでだ?」

 

「詳しい事情に関しましては後ほどご説明させていただきます。申し訳ありません」

 

後で教えてくれるのか…ま、そのまま教えてくれないよりかはマシか。

 

「い…」

 

いいだろう、と言い掛けて旅人を見ると物凄く不安そうな表情をしていた。どうやら、俺が来れないとわかって不安がぶり返したようだ。俺は軽く溜息をつくと、武士に提案した。

 

「すまないがギリギリまでついて行ってもいいだろうか?彼女はあまり、公式の場に慣れてはいないのでね」

 

特に雷電将軍───此処では影のこと───とは初対面だ。そんな相手にいきなり一人だけ呼ばれるなどたまったものではないだろう。

 

「し、しかし…」

 

武士達は困惑しているようで、顔を見合わせていた。無理を言っている自覚はあるのだが、そうでもなければ旅人が辛そうだ。後々のことを考えると俺がついて行かないほうが良いのだがな。

 

俺は、決めるのは旅人だ、とばかりに彼女を見た。すると、首を横に振ってくれた。どうやら、一人で行けるらしい。まぁパイモンもいる。問題はないだろう。

 

「いや、すまない、無理を言ってしまったな。俺は此処で待機している」

 

「御配慮、感謝致します」

 

武士達が旅人達を連れ立って部屋から出ていく。一瞬、旅人とパイモンが同時に俺に視線を向けたが、俺は一つ首肯くだけだった。それでも、どうやら励ましにはなったようで、笑顔で出て行った。

 

影は敵には容赦をしないが、味方には割と甘い。まぁ、俺が旅人を信頼しているとわかれば彼女も下手なことはしないはずだ。決して影を信頼していないわけではないが、旅人が下手なことを言って敵対されないか、ちょっと心配だ。

 

そう言えば、と俺は旅人と対になっている方の指輪を撫でる。旅人、バルバトスには言っていないが、この指輪は集音機能もついている。正直使うことはなかったのだが、万が一旅人が誤解を受けるようなことがあればすぐに介入できるように用意しておいた方が良いだろう。

 

『…ちら…ます』

 

『こ…から先…お二人…ださ…』

 

一度試してみるべきだったな。雑音が多く、よく聞き取れない。どうやら諦めた方が良さそうだ。まぁ、やばくなったら旅人が通信で教えてくれるだろう。俺はいつでも動けるようにしつつも部屋の隅に置いてあった袋の中から小説を取り出して読み始めるのだった。

 

〜〜〜〜

 

一方、旅人は。

 

「こちらで御座います」

 

「ここから先は、お二人だけでお進み下さい」

 

長めの廊下に差し掛かったところで二人の案内人にそう言われた旅人は困惑したが、一先ずは進んでみることにした。照明のみが照らしている仄暗い廊下を、パイモンと共に旅人は歩んでいった。

 

「ようやく、三人目の神だな。まぁ、アガレスを入れれば四人目だけど…」

 

進みながらパイモンは言った。それに対し、旅人は神妙な顔付きで首肯いた。

 

「今までの『七神』はお前のお兄さんことを知らないみたいだし、きっと雷電将軍も…」

 

「でも、手掛かりはある」

 

パイモンの言葉を遮って旅人は言う。パイモンもそれに同調した。

 

「おう!カーンルイアについては、きっと雷電将軍も知ってるだろうし、色々聞けたら聞いてみようぜ!」

 

そうこうしている間に、大きな扉の前に辿り着いた。旅人は守衛すらいないことに驚きつつ、一応、とばかりに扉を三回ノックした。中から「どうぞ」と聞こえてきたため扉を開く。

 

中は端の方は木の床だが、畳が敷き詰められた空間でかなり広い。その奥で影は旅人達に背を向ける形で静かに座していた。やがておもむろに立ち上がると、その手には薙刀が握られていた。

 

「剣を取りなさい」

 

「…えっ?」

 

「もう一度言いましょう。剣を取りなさい」

 

困惑する旅人に対して影は冷淡に告げた。薙刀をクルクルと回し、最後にビシッと旅人へ薙刀の刃先を向けた。

 

「これから貴女の実力を測ります。死にたくなければ必死に喰らいつきなさい」

 

言うやいなや影は薙刀を構えながら旅人との距離を詰め始めた。対する旅人は、というと。

 

「え…えぇっ!?」

 

こういう状態である。なんとか自身の気持ちを正して薙刀を受け流しつつ距離を取った。旅人は思う。何が悪かったのか、と。そしてパイモンは思った。オイラ、ご飯が食べたいぞ、と。

 

二人の思惑は全く関係ない、とばかりに影は薙刀を振るい始めるのだった。




稲妻城の内部ですが、結構大雑把です。ただ、天守には眞さんが眠ってるので影さんは必然的に別の場所で謁見を行わなければならなかったんですよ。そういうわけでちょっと広めの空間…あれ?となるわけですね。

因みにゴロー君達は稲妻城の客間で待ってます。用意されたお茶菓子に大変辟易したとか、していないとか。
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