忘れ去られたもう一柱の神   作:酒蒸

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あ、今回全くと言っていいほどに戦闘描写ありません。助けて下さい。

アガレス「お前が俺を最強にしなければこんなことにはならなかったのにな」

う、うるさいやい。

スメール楽しくて書く暇ないとかそういうことはないので。ぜんっぜんないので。決して後少しで星5が来るとか、すり抜けて欲しいだとか、原石が足りないから探索頑張ろうとか、全く思ってません。私の目標はアルハイゼンだけなので。


第86話 遊撃隊隊長②

割と、俺は気が長い方だと思っている。まぁ、余程のことで無ければ、俺が心の底から怒ることはないだろう。

 

まぁ、実際は、黒川が戦争を軽く見ていることに若干怒ってはいるが…まぁ、どちらかと言えば、戦争を甘く見るな、というものが8割、後は彼女を心配してのことだ。

 

彼女は距離を詰めながら刀を横薙ぎに振るう。それなりの速さはあるが、それだけだ。小手先も何もあったものではなく、ただの愚直な剣捌きだ。

 

俺は軽く溜息を吐くと、屈んで横薙ぎに振るわれた刃を避け、軽めに刀の柄で彼女の顎を小突いた。くぐもった声を上げながらフラフラと蹌踉めく彼女の足を払い、転ばせ、彼女の目と鼻の先に刃の切っ先を突きつける。

 

「…審判」

 

俺は呆けている只野へ向けてそう言った。只野はハッと我に返ったように息を呑むと、「そこまで!」と言った。俺の勝ちである。

 

さて。折るところまで折らないとな。俺は未だに尻餅をついたままの黒川に向けて言い放つ。

 

「この程度で戦争を望むのか?全く以て愚かしい。戦争が出世の道具だと考えるのは結構だが、その程度の実力で戦地に赴いてみろ?」

 

俺は若干含みのある真顔で彼女を見て告げる。

 

「…死ぬぞ?」

 

黒川も死ぬのは怖いのか、震えていた。まぁ、視線の先は俺にあり、恐れているのは俺かも知れないが。俺は彼女に興味を無くした的な雰囲気を醸し出しながら出来るだけ冷徹に細部を見る。

 

「次はお前だな。あんな大口を叩いておいて期待外れとか、面白すぎるからやめてくれよ?」

 

「ッチ…使えねぇな…おい黒川ァ!負けるってのぁどういう了見だ!また痛い目見てぇのか?あぁ!?」

 

「ひ、ヒッ…!?ご、ごめん細部…」

 

「俺等でこいつブチ殺して他国からの援助を打ち切ろうって話だったじゃねぇかよ…話がちげぇぞ!!」

 

「で、でも私は元から反対してた…!それに…私は…」

 

「口答えすんなクソ野郎!!」

 

あー、なんか始まったぞ。しかも細部に関しては完全に売国奴やないかい。こりゃあ…下級武士達にもある程度はファデュイの密偵が紛れ込んでいると考えるべきだろうな。黒川の反応から察するに、彼女は最初から知っていたわけじゃないだろうし、反対もしていたんだろうし、しかも細部に暴力を振るわれているときた。勝手に全部喋ってくれて助かるが、胸糞悪いな。要は暴力で無理やり従わせていた、ということにもなるだろうしな。思えば細部の傲慢な性格、スネージナヤの奴らそのものじゃないか。俺としたことが関連性に気がつくのが遅れるとは。

 

おっと、そうこうしている間に話も進んで細部が黒川の髪に手を伸ばしている。引っ張り上げる気だなあれは。どうやら、俺等がいるのをすっかり忘れているらしい。計画を話してくれてありがたい限りだな。

 

っと、見てる場合じゃないか。

 

「細部、お前の番だと言ったはずだが?」

 

俺は黒川に伸ばされていた手を掴んだ。

 

「クッ…離しやがれ!!」

 

勿論、彼は抵抗するが、俺はそれなりの力で掴んでいるため離れるわけもない。

 

「俺に勝てないとわかって自分よりも弱い相手を甚振るわけか。とことんクズだなお前は」

 

「あ゛?」

 

「弱い者いじめでしか自身の存在価値を定義出来ないような奴をクズと呼んで何が悪い?」

 

先程と同様、顔を真っ赤にしてこちらを睨む様は、若干だが滑稽に思える。まぁ、裏でやっていることはファデュイそのものだがな。

 

「本気で来ると良い。どうせ、お前は売国奴だからな。本来の姿を晒したところで、問題は無いぞ?ここで死ぬんだし」

 

ま、嘘だけど。殺したら色々事情とか聞けないし、俺が勝手に殺した、とかになってしまうと困る。だから、やれて半殺しだ。とはいえ、ルフィアンこと、『売女』を救出できるファデュイだ。普通にデットエージェント辺りに細部は殺されるだろう。と、いうわけで彼の運命はもう決まってしまっている。俺がわざわざ手を下す必要もない、というわけだ。暗殺されなくても処刑が待ってるしね。

 

細部はデットエージェントへと素早く姿を変えると黒川を殺そうと動いた。

 

「ああ、なるほど…その程度の脳はあったか」

 

「っく…」

 

「証拠隠滅に動くとはな」

 

黒川を殺して自分も死ぬつもりだったのだろう。そうでなければ黒川を殺そうとした理由の説明がつかないからな。勿論、俺はデットエージェントの刀を刃で受け流し、腹を蹴って一旦距離を取った。それにしても、俺が来た、ということはしっかりファデュイにも伝わっているらしい。

 

あのまま、黒川が殺されていたら、対外的には俺が二人を殺したように見える。証人は勿論いるが、信じてくれるかどうかは怪しいところだろう。

 

「お前は殺さずに生かして捕らえねばな」

 

仮面越しでも、細部がニヤリと笑ったのがわかった。

 

「ッ!!黒川!」

 

「…ふぇ?」

 

呆けている黒川の前に走り込む。細部の体の元素力が不自然なほどに高まったかと思うと、彼の体が閃光を伴って爆発した。

 

勿論、黒川の場所はすぐ近くで直撃コース、普通にしていれば間に合わなかっただろう。普通であれば。

 

「ふぃ〜…危なかった。これも今後の課題だな」

 

黒川の前には木っ端微塵になった岩がゴロゴロと転がっている。石礫で多少の傷は負っているようだが、命に別状はなさそうだ。既のところで、俺が細部(故)と黒川の間に岩元素で壁を作ったのだ。間に合ってよかった。

 

「しかし自爆するとは…ま、あいつはもういいとして、黒川、いつまで呆けてるんだ?」

 

「あ、あれ…私、なんで…」

 

生きてることに実感が湧いていないらしい黒川は自分の頬を抓ったり、叩いたりしていたので、取り敢えず放っておき、腰を抜かしているらしい只野と奥之院に声を掛けた。

 

「二人は取り敢えず上役を呼んできてくれ。色々と…そう、色々と問い詰めたいことがあるんでな」

 

「は、畏まりました、隊長」

 

「あ、あの…隊長…」

 

只野がすぐに行こうとしたが、奥之院がもじもじとして何かを言い淀んでいるようだったので無言で続きを促した。

 

「黒川のこと…お願いします…その、彼女とは幼馴染で…」

 

…。

 

「気が変わった。只野、行くぞ。奥之院、お前は彼女の側にいてやれ、これは命令だ」

 

多少職権乱用になるだろうが、いいだろう。彼、彼女達をくっつけ、そして一層奮起させるのには丁度いいだろう。只野は「はっ」と返事をすると、俺を先導するように歩き始めた。

 

「た、隊長!?」

 

「んじゃ、結果、楽しみにしとくからな」

 

俺はそれだけ言ってその場から去って行くのだった。

 

 

 

「───随分と個人情報の管理が甘いようだが、こんなので本当に軍隊としてやっていけるのか?簡単に敵国の間者を潜り込ませるとは。一歩間違えれば俺も、遊撃隊の隊員も死ぬところだったんだぞ」

 

「も、申し訳ございません!すぐに部下に確認させますので…」

 

ヘコヘコと俺に頭を下げてきたのは武士達の個人情報を管理している男だった。俺はその男の様子を見て溜息をつく。さて、俺の元々いた天幕から少し離れた場所にある大きめの天幕で、俺はこの男に文句を言いに来ていた。

 

「まぁ、天領奉行、勘定奉行の体制が変わって大変な時期なのはわかる。この状況を作ってしまった原因の一端を、俺も担っているわけだからな…だが、そうだな…再発防止はどうすればいいと思う?」

 

「は?」

 

呆けたように男が口をあんぐりと開けた。俺が改善案を出してもいいが、それでは彼自身の成長に繋がらないだろう。

 

「い、今すぐ考えろ、と言われましても…」

 

「稲妻の今後を左右しかねない問題だ。今すぐ考えずしてどうする?明日には稲妻幕府に潜り込んだファデュイの間者によって滅んでしまうかもな?」

 

冗談めかしてそう言ってやると、男はその未来を想像したのか、ブルッと震えて「い、今すぐ考えますので一旦はお引取りをををを!」なんて言ってきたので、取り敢えず下がることにした。それなりに長い話をしたので、奥之院と黒川の話も終わっているだろう。

 

天幕を出て俺たちの天幕へ向かう。その途中、只野に話し掛けられた。

 

「隊長、何故、稲妻へ?」

 

「ああ、旧友に会いに来たんだ。成り行きで今は遊撃隊の隊長になってしまっているがな。それで、只野、今度は俺から質問してもいいか?」

 

只野は首肯いてくれた。

 

「お前は一番最初から俺に従っているだろう?何か裏があるんだよな?」

 

「その…以前、将軍様といらっしゃるのを城内で見かけまして…その、旧友というのは、もしや将軍様のことだったり…?」

 

なんだ、と俺は拍子抜けする。別に俺のことを元々知っていたわけではなかったようだ。しかし、只野の問いだが、答えても良いものか…と少し悩んで、

 

「ああ、その通りだ。ただ、このことはできれば秘密にしておいてくれよ?」

 

「は、ご命令とあらば」

 

なるほどね、俺が雷電将軍こと、影と親しい間柄だとわかったから、言い方は悪いが媚びへつらっていた、というわけだ。よく言えばしっかりと命令通りに動いてくれる、ということだ。

 

天幕まで戻ってくると、外に奥之院と黒川の姿は既になかった。どうやら天幕内に入っているようである。好奇心が勝り、天幕内をばれないように覗いてみると、奥之院が座り込んでいるが少し幸せそうな表情の黒川を抱き締めていた。なるほど、この感じから察するに…よかったな奥之院。

 

「只野、折角だし、色々と教えてやろう。こっち来い」

 

俺は小声で只野にそう言った。俺が天幕内を覗き、尚且黒川と奥之院の様子を見ていた只野は何かを察したらしく、首肯いた。俺達は天幕を見て少し笑いながら若干開けた場所に移動するのだった。




圧倒的噛ませ犬…細部…全国の細部さん、申し訳ありません。もうちょっとレアな名前にしとくべきでしたね。細部さんから殺気の籠もったコメントを頂きまして(大嘘)

次回からちょっと奥之院と黒川と只野、そして細部について掘り下げます。ちょっと長くなるかもですけど許してくだちい。
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