このえすえすをよむとあたまがおかしくなる。

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ひまつぶしでかきました。


あたまがおかしいせかいのあたまがおかしいものがたり(かっこかり

目が覚めたらそこは異世界だった。

 

 

「…………」

 

 

まるでどこぞの三流ネット小説の書き出しのような、しかし現実に起こりえている自らの状況に頭が追いつかない。

ただただ呆然とそのファンタジーめいた光景に目を奪われる。

雄大に広がる桃色の海。イルカっぽい謎の生物が楽しそうに海上に飛び出して遊んでいる。

目算で東京タワーぐらいはあるだろうかというそのイルカっぽい謎の生物は巨大な尾ひれで数回海面を叩いた。

その余りの衝撃に海面は大きく波打った。

それは余波を生じ、やがて数メートルの津波となって周囲に広がる。

するとその音に気づいたのか、東京スカイツリーぐらいはあるだろうかというカメレオンっぽい謎の生物が海中から姿を現し、イルカっぽい謎の生物を一口で飲み込んでしまった。

そしてカメレオンっぽい謎の生物は背中に生えた巨大な天使のような羽根をはためかせ、どこか遠くへと飛んでいった。

 

ファンタジー? ……えっ、これがファンタジー? わたしの知ってるファンタジーとちがう。

 

 

 

「………」

 

 

絶句する、とはまさにこの事だろう。

今まさに目の前で巻き起こった一連の出来事をどう表現すればいいというのか。

ただそのまま事実を書き連ねたところで狂人か病人と見られ窓のない病院に収容されてしまうだろう。

一応、うら若きJKとして、そんな体験は御免被りたい。

 

そんなことを考えていると、何か叩かれたような感触がくるぶしに伝わった

視線を目前の桃色から背け、下げる。

 

 

「お嬢ちゃん、どうしてまたこんなところにいるんだい?」

 

 

そこには、レモンに顔と手足を無造作にくっつけた、何かがいた。

 

 

「おっと、こいつぁいけねえ。俺の名前は木雨医。ここら辺じゃ一番腕が立つ医者なんて呼ばれてるんだぜ?」

 

 

あ、レモンじゃないんだ。キウイなんだ。

そんな言葉を寸でのところで飲み込んだ。

 

 

「好きなものはアボガド。嫌いなものはレモンだ。俺に向かってレモンだなんて言いやがった奴を楽に殺したことはない。レモン死ね」

 

 

言わなくてよかった本当によかった。

こんな訳のわからないことで訳もわからず殺されるなんて、たまったものじゃない。

 

 

「それでお嬢ちゃん。一体こんなところで何してたんだい? レモン死ね」

 

 

あ、それ語尾にするんだ。

しかしその質問の答えは、私自身が一番知りたいことだった。

 

 

「なに? わからない? いつの間にかここにいた? レモン死ね」

 

 

訝しげに尋ねてくるレモン……木雨医に首肯する。

 

 

「するってぇとお嬢ちゃん。もしかしてあんた、トラベラーかい?」

 

 

トラベラー? なんだそれは。あっ、もしかしてタイムトラベラーみたいなノリのアレ?

ドラ○もんみたいな? やばい何だか急にワクワクが止まらない。

 

 

「トラベラーっつうのは極々低確率でこの世界に迷い込んじまった資格のある人間さ。俺も実際に見るのはお嬢ちゃんで二人目だがな」

 

 

む、私が初めてじゃないんだ。少し残念。

しかし、二人目か。つまり私以外にもこの奇妙な空間にやってきた人間がいたということだ。

ならばその人間について聞けば、この世界から帰る手段が見つかるかもしれない。

そう思い至り、私は木雨医に以前ここにやってきた人間について聞いた。

 

 

「俺をレモンだなんて言いやがったから四肢を切断しポムポムライオンの餌にした」

 

 

聞かなきゃよかったファック。

というか行為と名前のギャップが酷い。ひどい。

そしてなんだその美味しそうな名前を持ったライオンは。絶対可愛いだろそいつ。絶対もふもふしてるだろそいつ。

モフらせろ。

 

 

「子供が見たら一生トラウマを抱えるレベルに恐ろしい顔をしてるぜ。『ポムポム』っつうのは『この世で何よりも悍ましい』って意味だからな」

 

 

ごめんそいつとは一生会いたくない。お願いだから私とそいつを引き合わせないで神様。

 

 

「まあ、こうして会ったのも何かの縁だ」

 

 

木雨医は言うと、小さな指をパチンと鳴らした。

すると轟音を立てつつ桃色の海が目の前で、真っ二つに割れた。

まるでかのモーゼが起こした奇跡の如く。

海は確かに、どこかへ繋がる道を作った。

 

 

「姉ちゃんは俺のお眼鏡に叶ったからな。元の世界に戻りたいんだろう? 乗りな。ちぃとばかし心当たりがある」

 

 

元の世界に…戻れる?

それを聞いて胸の中に微かだが希望が湧いてくるのを感じた。よかった。

この世界に永住することになったらどんな方法で自殺しようか考えてたところだったから。

 

感謝の言葉を紡ごうと、海から木雨医へ視線を移す。

 

そこには、2mlサイズのペットボトルにまたがった木雨医が、似合ってないサングラス(ティアドロップ)を中指で押し上げながら、わたしに向かってサムズアップしていた。

 

 

「姉ちゃんを、この世界の王──びっくりヒポポタマス様のところに連れてってやる」

 

 

わたしの返事も聞かずに、木雨医はペットボトルから降り、それを脇に抱えるようにして海に出来た道に向かって走っていく。

そして、東京タワーぐらいあるイルカっぽい謎の生物に食べられた。

 

 

 

「………………」

 

 

なんだ───

 

 

 

「なんだっこのっあたまのおかしいせかいはあああああああああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!!!!」

 

 

 

 

こちらの世界に来てから初めて、声を発した。

…そういや木雨医、ナチュラルにわたしの心読んでたな。

 

 

「そりゃあ読心術は生まれる前に習ったからな」

 

 

いやお前そこは死んどけよ。

 

 

そんなことを思いつつ、びっくりヒポポタマスとやらに会うため、わたしは海の中の道を歩き始めるのだった。

 

ああ…はやく、おうちかえりたい。


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