怠惰の天才は満たされたい   作:マイケルみつお

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1話 四宮かぐやはブラコンである

 「光夜、高校進学おめでとうございます。以前から話していた通り、明日からあなたには生徒会に入ってもらいます」

 

「あの姉さん、その話は断ってるしやっぱりなかった事にできないかな?」

 

「光夜様、それ以上かぐや様の機嫌を悪くして私の胃の穴を増やさないで下さい」

 

四宮家別邸。そこは天下に名だたる四代財閥のうちの一つ、四宮グループ総裁の娘、四宮かぐやの家である。その中の一室、伏見光夜の部屋で現在彼は二人の女性に詰められていた。

 

「...分かったよ」

 

肝心な部分で姉には頭があがらず、また彼女の近侍の早坂愛にも度々迷惑をかけている事からそのような言い方をされて光夜に断るという選択などできるはずがなかった。放課後はできれば別の事をしたかった光夜であるが、彼は首を渋々縦に振ったのである。

 

こうして

 

生徒会長 白銀御行

副会長 四宮かぐや

書記 藤原千花

 

というメンバーに広報、伏見光夜を加えて生徒会の新年度がスタートした。

 

──────

 「御行先輩、全然断って大丈夫だったんですよ」

 

「はっはっは。確かに入学式と同じ日に一年生が登用されたって少し騒ぎになっていたな。でも俺はお前なら断るつもりはなかったぞ。四宮からの提案がなければ俺の方からオファーにいってたかもしれん。」

 

「そう、ですか...」

 

頼みの綱が切れた。光夜は絶望したかのように溜息を吐いた。秀知院学園の生徒会役員は全て生徒会長が選任する。つまり、姉であるかぐやに何も言わなくとも会長である白銀に働きかければ生徒会就任を阻止する事ができると考えたのだ。まあ元々光夜と白銀は親交があり、白銀が断る事などないだろうと光夜も分かっていたのだが。

 

「それより光夜、聞きたいことがあるのだが」

 

「何ですか?」

 

「四宮家では映画を観に行く事を禁止しているとか、そういうのはあるか?」

 

伏見光夜、彼が数年前まで四宮光夜だった事は当然白銀も知っている。ただその詳しい経緯については知らないが。

 

「自分がいた頃から数年は経っていますが特にそんな事はなかったと思います...。けどどうしてそんな事を聞くんですか?」

 

「いや、特に何でもないぞ。気にしないでくれ」

 

「はぁ、分かりました」

 

白銀がなぜそのような事を尋ねたのか、答えは数時間前の昼休みにあった。

 

──────

 「そういえば聞いて下さい〜」

 

昼休み。年度の初めというのは色々な仕事が溜まって忙しいものである。それは生徒会も同様の事でこうして昼休みも役員三人全員が集まって仕事をしていたのだった。そんな中、生徒会書記の藤原千花が話を切り出す。

 

「なんか〜映画のペアチケットが当たったんですけど〜家の方針でこういうのを見るのは禁止されてまして〜お二人はご興味ありますか?」

 

藤原が差し出したのは今、人気の恋愛映画のチケットである。勿論かぐやが変な裏工作などした訳ではなくただ純粋に藤原が懸賞で当てたものである。

 

「(私は恋愛に関してあまり知識を持っている訳ではありません。そうですね...光夜でも誘って行ってみましょうか。たまには姉としての余裕でも見せてあげましょう)」

 

「では藤原さん頂けますか?よろしいですか会長?」

「何でも、この映画を男女で観に行くと結ばれるジンクスがあるとか〜」

 

「(え?四宮に誘われた?!しかも結ばれるジンクスって...まるで告白みたいじゃないか!いや、四宮に限ってそんな事はない。これはきっと何か罠が仕掛けられている!)」

 

「いいのか?四宮?結ばれるジンクスのある映画に誘って。」

 

「(え?男女が結ばれるって...!それじゃあ私が光夜に告白しているみたいじゃない!そ、そんなのありえないわ!私はあ、姉として光夜の事が好きなのであってそんな男女の関係なんて...!)」

 

「すみません。ウチの家でも大衆向けの娯楽は控えるべきだと言われていました。このチケットは藤原さんにお返しします。」

 

「そうですか〜まあかぐやさんのお家じゃ仕方ないですね〜」

 

「はい、それでは午後の授業も近いですし失礼します!」

 

そう言って四宮は顔を赤くして生徒会室から出て行った。

 

「(...罠じゃなかった?それならもっと押していれば今頃...。や、やってしまったああああああ!)」

 

「じゃあ会長、これいりますか?」

 

「(ふむ、まあ藤原書記が持っていると放課後までに他の人に渡してしまう可能性があるな)」

 

「そうだな、では貰っておこう。」

 

「(おそらく四宮家が映画を禁止しているというのは嘘だ。光夜に確かめて言い逃れができないようにしてやろう、ハハハハハ)」

 

──────

 そして各々が違う思惑を持った上で迎える放課後。

 

「あ、千花じゃん久しぶりー。」

 

「もう!千花姉さんって呼ぶように!っていつも言ってるでしょ!」

 

「いや...千花の事そうやって呼んだら姉さんが怒るんだよ...。」

 

光夜がまだ四宮家にいた時。藤原はかぐやと遊ぶ中で光夜とも知り合った。最初は光夜は藤原の外国語能力などを知って尊敬していたが長く過ごす上で光夜は藤原の本質を見破り、今では年上だというのに完全に彼女の事をタメのように接している。

 

「それよりもだ四宮。さっき光夜に聞いたんだが別に四宮家では映画を観る事を禁止してないそうじゃないか。」

 

「(こうして外堀から埋めていく!そして今日こそこの恋愛頭脳戦に終止符を打つ!)」

 

白銀は藤原にもらったチケットを掲げながらかぐやに対して攻撃を開始する。

 

「え?ええ...」

 

「(ちょっと!なんで光夜がいる時にその話題を振るんですか!信じられません!ここはなんと返しましょうか...。光夜には余裕のある姉という姿を見せたいですしね)」

 

「御行先輩!それってラブリフレインじゃないですか!今度観に行こうと思ってたんですよ。まだ相手がいないのなら今度行きません?」

 

「え?」

 

「(ちょっと待ってくれ光夜!俺はこれで四宮を!)」

 

「あ、すみません。別に断りたかったら断ってもらって全然大丈夫ですので...」

 

そんな事を言われて断れる白銀ではなかった。

 

「全然そんな事ないぞ!今度行こうな!」

 

それから数日後...行ってきた。

 

「御行先輩!めっちゃ泣けます!」

 

「ああ!特にあの場面だろ!」

 

楽しかった!

 

──────

 「今日が最初の生徒会でしたがどうでしたか?」

 

入学式の翌日、最初の生徒会での活動が終わりかぐやは光夜の部屋に遊びに来ていた。

 

「御行先輩も千花も知ってたし。みんないい人だし楽しかったよ姉さん。」

 

「今は早坂もいません。昔のように呼んでもいいのですよ。」

 

「......分かったよ、かぐ姉。」

 

「〜〜〜〜〜〜!」

 

光夜とこうして昔の呼び方で呼び合える。それだけでかぐやの胸は満たされるのである。二人は離れて会えない時間もあった。だからこそこの幸せはよりもっとかぐやの胸を暖かくする。

 

四宮かぐやはブラコンである




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