怠惰の天才は満たされたい   作:マイケルみつお

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11話 石上優は逃げられない

 「生徒会を辞めたいんです...」

 

そこは生徒会室。会長の白銀と会計の石上が生徒会室にいた。そして石上優は...生徒会を辞めたがっていた。

 

「マジで勘弁してくれ! 生徒会の仕事はお前と光夜でもっているんだ! しかも光夜はたまに長期間いなくなる時がある! お前が辞めたらマジで生徒会が破綻してしまう! この通り!」

 

白銀は机に頭をつけて懇願した。

 

「会長と光夜にはすごくお世話になったんですがこのままだと...僕殺されると思うんです...四宮先輩に」

 

「お前それ絶対光夜に言うなよ」

 

「僕は自殺志願者じゃないので…。だから今こうして会長に相談してるんです」

 

白銀も石上も、光夜の目の前でかぐやの悪口を言えばどうなるか、しっかりと身に染みていた。そして白銀にとってかぐやは失恋相手。あまりかぐやに関する話はしたくなかった。

 

「(だが石上を失う訳にはいかない!)」

 

「それで、何があったのか言ってみろ」

 

 

 

 

 〜回想〜

 

それは数日前のある日、場所は生徒会室。

 

「ふふっ。今日も光夜とはよく話せましたわね。そろそろ私の事を一人の女性として見るのも時間の問題でしょう。...しかし眞妃さんと最近は仲がいいですね...。四条は四宮の力を使っても簡単には潰せません...」

 

生徒会室に一人といった状況でかぐやは安心して一人言を零していた。これは四宮の内情を知りたい人間にとっては聞き逃せないもの。かぐやがついうっかり口にしてしまったのも、生徒会という居場所に安らぎを感じているからである。

 

「え...」

 

しかし間の悪い事で有名なのは石上優。彼は生徒会室の扉の外で偶然その言葉を聞いてしまった。

 

「(すぐに逃げないと!)」

 

石上に四宮家の内情を探る気など毛頭ない。そしてこの事をかぐやに知られれば石上が酷い目に遭わせられるのは火を見るより明らかである。彼はすぐにその場を立ち去ろうとする。しかし...

 

「あ...」

 

しかし石上優という人間は間が悪いと同時に運も悪い。生徒会室を離れようとした際、彼の携帯電話が鳴る。後で知った事だがこれは迷惑メールを受信した着信音であった。石上の人生で一番迷惑メールによって迷惑を被った瞬間であった。

 

「今の話、聞いてましたか?」

 

「...はい」

 

かぐやの目はまるで獲物を狙う獰猛な肉食獣のような目をしており、石上に抵抗も、そして自衛のための嘘も許さなかった。

 

「この事は秘密です。いいですね?」

 

それは最早許可を求めるものではなく命令であった。石上は首を縦に振るのみしか生き延びる道はない。かぐやは光夜への想いを自覚し、攻略を開始していたがやはり根底にあるのは「恋愛は戦、好きになった方が負け」なのである。他のライバルに対して横入りを許さぬよう、先に自分の想いを宣言するような戦術も存在するが、それはかぐやの望むものではなかった。

 

〜回想終了〜

 

 

 

 

 「口止めされてるので詳しいところまでは言えません」

 

白銀に相談すればもしかすれば石上の命は助かったかもしれない。しかし石上にかぐやに植え付けられた恐怖を乗り越える強さなど持ち合わせてはいなかった。

 

「そ、そうか...」

 

そう言われてしまえば白銀もそれ以上追求する事はできない。石上は生徒会を辞める意思を伝え、副会長が戻ってくるまでに逃げようと生徒会室を出た。だが...

 

「石上君」

 

「ッ!」

 

扉の向こうにいたかぐやから、やはり石上は逃げきれないのである。

 

「あの件、黙っててもらえて嬉しいです。口が堅いのは美徳ですよね。もし喋ってたら...どうなっていたでしょうか?」

 

石上は顔を青くさせる。

 

「それと...光夜はあなたの事を大切な友人だと思っています。石上君が生徒会にいる事が、同じ学年の同性の友人が同じ生徒会にいる事は光夜にとってはすごく大きな事です。ですので...もう生徒会を辞めるだなんて言わないでくださいね」

 

「(この人...もしかして最初から聞いてたんじゃ...)」

 

それはまるで扉の向こうから生徒会室での話を聞いていた自分への意趣返しのようなもので...かぐやへの恐怖から生徒会を辞めたいと思ったが、かぐやへの恐怖からそれは不可能となった。

 

本日の勝敗、石上の負け

 

──────

 これはかぐやが石上と白銀の会話を初めから扉の向こうで聞くより少し前、

 

「(あれは!)」

 

かぐやが生徒会室に向かう途中、聞き慣れた男女の会話が聞こえたのでかぐやは柱の影に身を潜めて盗み聞く。

 

「で、眞妃さんは翼先輩の事が好きなんですよね?」

 

「な! べ、別に好きじゃないわよ!」

 

「本当は?」

 

「本当に好きじゃないわよ!」

 

一向に認めない眞妃に対して光夜はジト目を向ける。そして...

 

「好き、なんですよね?」

 

「うん...」

 

眞妃は顔を赤らめて頷いた。

 

「(ところどころ光夜達の話が聞こえないけど随分と楽しそうねぇ? でもこれ以上近づいたら気づかれるわ!)」

 

かぐやは会話の詳細までは聞き取れなかったが二人が親密に会話をしているという事実だけで激しい憎悪を眞妃に向けていた。

 

 

 

 

 そして光夜達が生徒会室に近づき、かぐやにも二人の話が聞こえるようになる。

 

「それで? 光夜は生徒会はどうなの?」

 

「姉さんも御行先輩も千花もみんないい人だからね。そして石上も。同性で同い年の彼がいるから結構楽ってのもあるかな。気は使わないかもしれないけどやっぱり学年の話とかだとついていけないからね」

 

この話を聞いた後、生徒会室前で石上が生徒会を辞めようとしていたため、かぐやは本気で動いたのだった。

 

──────

 「そういえば眞妃さん」

 

「何よ、光夜」

 

「恋愛ならすごく頼れる人がいるから紹介しますよ」

 

光夜の告白騒動によってかぐやは光夜に白銀の意見が間違いであると指摘する事を忘れていた。そう、今でも光夜の頭の中での恋愛マスターは白銀なのである。

 

こうして光夜の手によって恋愛マスター(笑)と失恋傷心者(いや、それはどっちもか)が引き会わされる事になるのは数日後の話である。




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