怠惰の天才は満たされたい   作:マイケルみつお

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そういえば...。光夜は出てきませんが、かぐや様の短編集も書いています。たまに更新しますのでこちらも読んで頂けると嬉しいです!→ (https://syosetu.org/novel/286270/

それからヒロインアンケートを活動報告のところに載せていますが、もうすぐ締め切りたいと考えています。まだ回答なされてない方は是非!



かぐや様のキャラクターって良い意味で現実的なデザインをされてると考えています。つまり誰一人として聖人君子はいないという解釈です。

今回登場する白銀圭は石上をインキャの人と言ってるあたり、本能的に自分より上か下かをまず判別するという性質があるという解釈をしています。これがないと本作の圭が意味不明になるかもしれないと思い、補足でした。


13話 大いなる誤解

 白銀圭は中等部より秀知院学園に進学した外部生。所謂混院生である。そしてこの学校では初等部からの生え抜きの純院生ではない者を見下す風潮があった。今でこそ彼女は総理大臣の孫娘達と友達となったり、学問などで地位を築いたが入学してからすぐはそうではなかった。

 

「あ、あの...」

 

「ごめんなさいね〜。私、お父様から下々の者とは関わるなと言われてますの。類は友を呼ぶと言いますの? お友達は慎重に選びたいのです」

 

まだ自我も対して発達していない中学生。学園生活を送るのに一人ではあまりにも辛すぎる。圭は小学校のクラス替えの時のように隣の席の女子生徒に話しかけたが...ぞんざいに扱われてしまった。未だ入学から数日も経っていないが、圭は早くも入る学校を間違えたと感じ始めていた。

 

そんな彼女はやはり遺伝なのだろうか。同じ状況に遭遇した兄のように校舎の隅の方へと向かった。そして...

 

「あれ、圭ちゃん?」

 

高等部に進学した兄と中等部の男子生徒と遭遇したのである。

 

──────

 「初めまして、妹の圭です」

 

「こちらこそ。伏見光夜です」

 

圭とその男子生徒、光夜はお互いに自己紹介を交わした。圭からしてみれば兄の御行と光夜は非常に親しくしており当然名前も知り合っていると思い苗字は省いた。尤も光夜と御行はまだお互いの名前を知らない。光夜にとって圭が白銀家で初めて名前を知った人間であった。

 

「Kさんは1年生?」

 

光夜は別にふざけている訳ではない。ただ、自己紹介は普通フルネームで答える事。圭が光夜が御行の名前を知っていると勘違いした事。日本語の残酷さと言うべきか、彼女の名前の圭とアルファベットのKが同じ発音であった事などのいくつかの勘違いが重なってしまい、光夜は錯誤してしまったのである。目の前の少女は自分の名前を名乗りたくなくイニシャルを使ったのだと。つまり...

 

「(変わった人だなぁ)」

 

圭は光夜から変人認定を受けてしまったのである。

 

「圭ちゃんは学校どうだ?」

 

「(圭ちゃんの前でいつもの話はできない!)」

 

「別に。おに...兄さんには関係ないでしょ」

 

「(お兄の前でこんな事言えない!)」

 

なんだかんだで似たもの兄妹なのである。お互いがお互いに迷惑をかけたくない。心配をかけたくないと思うお年頃なのである。光夜とはいつも純院差別の愚痴などを話しているがその話題はあまり白銀はしたくなかった。奇しくも二人の悩みは似たようなものであったのだが。

 

「私、次の授業があるから。失礼します」

 

戦略的撤退。圭は光夜に一礼してからその場を立ち去った。同時に二度とあの場には行かない事を決意した。その後、光夜と御行は残り数分ではあったが予鈴が鳴るまで再び話し続けた。

 

──────

 大半の純院生が混院生にとる態度は無視である。人間、興味の反対は無関心だという研究もあるようにそもそも無いものとして扱うのだ。だがここで大半と言った理由、つまり実際に差別言動をとる純院生も少数ながら存在するのである。その様子も当然大半の純院生は黙殺する。

 

「ねえ、なんで入学したの?」

 

「純院に囲まれてポツンとして...恥ずかしくないの?」

 

「そのメンタルだけは誇ってもいいんじゃない?」

 

敷地の隅から玄関に戻ってきた圭にかけられた心無い言葉。ケラケラとまるで見せ物かのように、そして本人に聴こえるように中傷する純院生の女子生徒達。直接的な行動に出ず、影から、陰湿な手段に訴える部分は流石金持ちの人間が集まる秀知院であると言わざるを得ないだろう。圭は何も反論せずに教室へと向かう。

 

その様子がこの女子生徒達にはお気に召さなかったようである。

 

「ねえ、あなたに言ってるんだけど。何? 無視してお高くとまってるつもり?」

 

女子生徒は圭の進路を塞ぐ。小学生がやる通せんぼである。何人かの純院生はそれを見ていたが我関せずで立ち去って行った。リスク回避の処世術は一流のものを子どもの頃からそれぞれの親によって仕込まれている。

 

「な、なんで...」

 

圭は初めて直接的な手段に晒された事で涙目になる。

 

「純院生はそんなに偉いのか?」

 

後ろからかけられた言葉は先ほどまで圭の兄と話していた男子生徒のものだった。

 

まだ秀知院に来たばかりの圭は分からなかったが伏見光夜とは中等部一年からも有名なのである。純院生なら特に。

 

「いや...その...」

 

氷のように冷たい眼差しを向けられて先ほどまでの威勢はどこにいったのか女子生徒達はただ俯くだけである。

 

「今年も内部進学最低点数よりも外部進学最低点数の方が高い。君達が学年の中でどれだけの順位を誇ってるのかは分からないが...半分以上に余裕で入るほどでなければ大半の外部進学者よりも学力は下だろうね。勿論学力が全てじゃないけど何か劣ってる部分がある相手に対してよく優越感を抱けるなと思うよ」

 

純院混院の是非ではなく、純院生の大半にはそもそも混院生を蔑視する資格すらないという事を光夜は淡々と述べる。

 

「......」

 

圭はその様子を見てただ人として憧れた。相対しただけで相手を萎縮させてしまうほどの実力の持ち主。圭は、自分にはないその実力に強い憧憬と自らもそうなりたいとして光夜を目標に定めた。

 

「あ、そうだKさん。1年生にそんなつまらない価値観持ってない人、知ってるから後で紹介するよ」

 

光夜は藤原家とも親しい。藤原千花の妹の三女、藤原萌葉の事も知っていた。...あらゆる意味で。が、変人同士ならうまくやれるだろうと完全な善意で萌葉を圭に紹介した。

 

それから光夜が長期欠席したり、高等部進学などで二人の再会の機会はなかった。

 

──────

 「失礼致します」

 

白銀圭は二年生に進級し、中等部の生徒会に所属するようになった。そして今日はいくつかの書類を高等部の生徒会に持っていく事になった。圭はその、誰もが嫌がるであろう作業に自ら立候補した。兄が生徒会長を務めてはいるが、理由はそこにはない。自分を助けてくれて、そして友人まで紹介してくれた憧れの恩人にお礼を言うため。

 

伏見光夜の名前はあまりに有名で特に調べなくても彼が高等部の生徒会に所属している事は分かっていた。彼女は意を決して扉を開ける。

 

「(いた!)」

 

目の前に目的の人物がいた事を確認したが、逸る気持ちを抑えて冷静に声を出す。

 

「あ、Kさん」

 

「光夜、知ってるのか?」

 

「御行先輩の妹さんだよ」

 

生徒会室に残っていたのは光夜と石上。生徒会室に現れた来訪者の説明をざっくりと光夜はする。

 

「覚えていてくれて嬉しいです。そちらの方は初めましてでしたね。中等部生徒会会計の白銀圭です。本日は生徒総会の配布資料のチェックを頂きに参りました」

 

「(まあ忘れる方が難しいからね)」

 

依然、光夜の圭への誤解は解けていない。

 

「資料のチェックなら石上の方が向いてるかな。石上、頼める?」

 

「当然」

 

石上に任せたが光夜も投げ出す訳ではない。石上の後ろからきちんと書類に目を通している。怠惰の天才と呼ばれる光夜も学習しなければ当然知識は身に付かない訳で。事務処理に関しては石上に一日の長がある。

 

「(石上はやっぱりすごいなぁ)」

 

次々と改善点を洗う友人の姿を見て光夜は本心からそう思う。自分の会社に欲しい人材である。もし余裕があるのなら協力して欲しいとも思っている。間違っても雇うわけではない。光夜はプライベートとビジネスを完全に分けて考えているがそれ以上に、雇用者と被雇用者の関係になれば否が応でも上下関係が発生してしまう。大切な友人とは対等でありたいと、そう思えるほど石上は光夜にとって大切な友人なのである。

 

そして熱心に石上からの指摘を聞く圭を見て改めて、

 

「(やっぱりそんな変人には見えないんだよなぁ)」

 

光夜、誤解を解く鍵を手にする。

 

「(千花みたいに明らかにヤバい人じゃないんだよなぁ)」

 

そしてこの場にまた新たな来訪者が現れる。

 

「遅くなりまし...あっ圭ちゃん!」

 

明らかにヤバい人(藤原千花)の登場である。

 

「こんにち殺法!」

 

「あっ! こんにち殺法返し!」

 

「(でも萌葉みたいにしばらく話さないとヤバい人かどうか分からない人もいるからなぁ。Kさんは後者だったんだろ)」

 

光夜は誤解を解く鍵を手放した。

 

「どうしたの圭ちゃん〜? 遊びに来てくれたの〜?」

 

「ううん。今日はお仕事だよ」

 

二人は知り合いだったようで楽しく談笑している。が、まだ途中だったようで圭は石上の方へと戻っていく。

 

「(Kさんと千花は結構仲がいいように見えるね。萌葉繋がりかな? でも千花に対しても自分の名前を明かしてないんだね)」

 

「ねえ千花。ちょっといい?」

 

「ん? 何ですか光夜君?」

 

圭と石上の邪魔をしないようにというジェスチャーをしながら光夜は千花を彼女達とは対角線の位置にまで移動させてから尋ねる。多少の同情も含めて。

 

「Kさんの名前、千花もまだ知らないんだね」

 

「何言ってるんですか光夜君、頭もげたんですか?」

 

突然の罵声! 思わぬところから衝撃を受け光夜は一瞬頭が真っ白になる。そしてあまりの衝撃に走馬灯が走り出す。光夜の脳内には先ほど経験した事が、交わした会話が映画のようにして映し出されている。

 

「(これは...Kさんが生徒会室に来た時の事か...)」

 

『中等部生徒会会計の白銀圭です。本日は生徒総会の配布資料のチェックを頂きに参りました』

 

「......」

 

「(アレ?)」

 

そして更に走馬灯は続く。それは圭が持ってきた資料を石上の後ろから見ていた時。資料作成者欄のところには...

 

『白銀圭』

 

と書かれていた。人間は目に映るもの全てを見ている訳ではない。脳が意識の外に放り投げた情報は網膜に映っても脳が認識しないのである。が、光夜はKが名前かも? という疑問を抱いた事によってその映像を見る事ができるようになって...

 

「(ああああああああああああああああああ!!)」

 

誤解に気づいたのである。

 

──────

 「...白銀圭さんだよね?」

 

千花ショックから帰ってきた光夜は石上と圭の会話が終わった頃合いを見計らってそう尋ねる。資料作成者欄の『白銀圭』と書かれた部分を指して。

 

「えっ、あっ、はい。そうですけど...」

 

「すみませんでした!」

 

その一言を聞いた瞬間、光夜は途轍もない勢いで頭を下げた。

 

「(君をヤバい人だなんて誤解したばっかりに藤原萌葉なんてヤバい人を君に紹介してしまった!)」

 

藤原萌葉。光夜からガチでヤバい人認定されている。

 

「その...萌葉とは上手くやってる?」

 

「はい! 大切な友達です! 紹介してくれてありがとうございました先輩!」

 

「えっ! 萌葉と仲良くできてるの?!」

 

「(凄いこの子...めっちゃいい子じゃん!)」

 

「ちょっとー! 光夜君どういう事ですか?! 人の妹をどちゃくそやべー奴みたいに言わないで下さい!」

 

藤原の魂の訴えを光夜は黙殺した。

 

「それと...。去年の入学式頃の時、助けてくれてありがとうございました! 中々お礼も言えてなくてごめんなさい!」

 

「い、いいよ! 気にしないで!」

 

「(というよりあの時は圭さんの事をヤバい人と思ってちょっと避けてる節があったからな...)」

 

光夜。自らの勘違いによる行動によって目の前の少女に罪悪感を持たせたのかと不安になる。

 

「ちゃんと圭さんのお礼は受け取ったから」

 

「圭、でいいです先輩。年上の先輩ですし敬語は使わないで下さい」

 

「分かった圭。あ、じゃあそろそろ時間も遅いし中等部の方まで送っていくよ」

 

「えっ! じゃあその...お願いします」

 

自分の役目は終わったとして生徒会室の隅で密閉型ヘッドフォンをしてゲームをする石上と、妹の悪口を言われた! と怒る藤原を置いて光夜は圭を送るために生徒会室を出て行った。

 

「......光夜は年下の子が好みなのかしら...!!」

 

光夜が圭と楽しそうにして生徒会室を出て行った様子をたまたま見た(かぐや)は顔面蒼白で急激に現れたダークホース(双方今のところ恋愛感情は抱いていない)に戦慄していた。




今話時点で圭は光夜に対して恋愛感情は抱いていません。

圭と光夜が会ったのは光夜が御行とお互いの名前は知らないが昼休みにフェンスを仕切りにして話していた頃合いです。
本来そこまで思ってはいませんでしたが御行の純院アンチを耳にタコができるほど聞いていた光夜は気まぐれでガツンと言いたい気分になりました。つまり間接的に御行が圭を助けた事にもなります。

またこの世界ではかぐやは御行に惚れてないので圭に対しても扱いが変わっちゃいます。

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