次話からはまた原作に戻れるかと思います。
Twitterにも書きましたが、キリがいいところまでストックが溜まってから一挙更新するというスタイルに変更しました。ただ今話は前話の続きだという事に気づき、一足早く更新してみる事にしました。
今月、資格試験の一次試験があって遅れていますが......これに落ちたらまた更新できそうです。試験合格できるように頑張りますので応援よろしくお願いします()
生徒会の
だが経済界の人間が知る「伏見光夜」は違う。彼らにとって「伏見光夜」とは、あの四宮の苗字を冠していた人間であり、ほんの数年で無名から今や四大財閥に最も近い存在にまで成り上がった存在だ。
今に至るまでに、光夜は「伏見」を潰そうとしてきた企業を全て返り討ちにしてきた。
「伏見光夜」とはまさしく、経済界の人間にとっては触れてはならない恐怖の対象だった。
しかしいつものあの穏やかな光夜にそのような事が本当にできるのか? と思う人もいるかもしれない。
「現在の戦況はこれで全部だな?」
「はい」
「相手もまだ小手調べの段階だろう。......容赦はいらん、潰せ」
光夜の目は、かつて石上優を救った時に教師に向けた冷たさ──否、それより数十倍の冷たさを放っていた。生徒会の時とはまさに別人。
しかしどちらかが光夜の演技という訳ではない。
生徒会の
これこそが光夜が幼少の頃から身につけていた二面性。言うならばかぐやのように後天的に身につけた
「これは今日明日で帰れるような代物じゃないな......。早坂、ご苦労だった。もう戻ってもらって構わない」
「......承知致しました」
早坂にも言いたい事は当然あるが、この状態の光夜とは完全なる主従関係。恭しく礼をしてから四宮家別邸に戻っていった。
──────
「相手は......これまたとんでもない相手だな」
今回、伏見傘下の企業に対して攻撃を仕掛けてきたのは「常盤」
常盤
「四宮、四条に比べて経済力では劣るが──各方面に強い繋がりを持っている
故に各方面から協力を取り付けた場合下手をすれば瞬間的には四宮や四条を上回る可能性すらある。
「当主は確か......」
常盤家の当主の顔を光夜は思い出していく。
「典型的な秀才だったはず。華々しい学歴を誇っており、膨大な知識を持っている。しかし俊敏な動きに弱く予想外の事情に対応する事が難しい」
「ですが当主がそうでも周りの参謀がその部分を補う事は十分に可能でしょうな」
「そうだな」
流石に相手は巨大組織。作戦を間違えればこちらは一瞬で崩壊してしまう。光夜はかつてないほどに冷静に考えを張り巡らせる。
「こちらに対して攻撃を仕掛けてきた者の特定は終わったか? 小手調べの段階だからまだ本丸には程遠い存在とは思うが」
常盤
「はい。まだ常盤
そして今回伏見に攻撃を仕掛けてきた常盤の捨て駒は──まだ常盤の傘下に加わって間もない企業達だ。しかも義ではなく利によって従った者達。
当然常盤の下っ端であるため情報を抜き取られる心配もない。伏見に吸収されたとしても全く問題ない文字通りの捨て駒だ。
しかしそれは逆説的に言えばその企業を処分したとしても戦略上何の意味もないという事。潰したとしても光夜に特筆するほどの
「そうか。だが攻撃を仕掛けてきたからな。容赦はいらん。潰せ」
「ど、どの程度に?」
迷わず処断を選択した。その決断に石川は一瞬言葉を詰まらせる。
「決まっているだろ。徹底的にだ」
「し、しかし。向こうも本心から向こうに従っている訳でもありませんし、好きで我々を攻撃してきた訳でもありません」
石川の言う事は正論だ。戦略上必要のない処分を下せば後に残るのは恐怖のみ。恐怖は他者との距離を開かせる。それは四宮四条のように単独で十分な力を持たない伏見にとっては致命的だ。
常盤の情報を得る事ができずとも勢力の小さい伏見からしてみれば取り込んで勢力をより大きくする事もできるはずだ。
石川はこの選択は伏見に対して百害を与えて一利も残さないと考えていた。
「見せしめだ。石川、覚悟を決めろ。これは戦争だ。それに相手の大きさを考えろ。少しでも隙を見せればこちらが潰されるぞ」
しかし光夜の考えは違う。今回の相手はこれまでと違う。明日の
「わ、分かりました」
光夜にそこまで言われれば石川も首を縦に振るしかない。石川は知っているのだ、光夜が自分と意見が違うからと他者の意見を聞かない暗君ではないという事を。彼が企業闘争において無類の強さを誇るという事を。
──────
常盤グループの強みは先にも述べたが人脈
単独では四宮四条に遠く及ばない常盤が同じ財閥の中でも一目置かれているのはこのためだ。
しかしだからこそ敢えて光夜はその
事実、常盤
常盤
命令ではなく要請という形の上で、自分達が粉砕する事も厭わず常盤のために奉公しようとする者などほぼいない。
常盤
光夜はその弱点を敵を徹底的に潰すという外道な手段で突いた。
「予想通り、攻撃が弱まったな。よし、間者を送り込め」
常盤
この状況の中、常盤は協力者達を監視する事はできない。
仮に光夜の予想が外れて常盤が協力者の周りを警戒し、間者の存在に気づいて光夜の工作が失敗したとしても問題ない。この疑心暗鬼の中、監視行為を断行すれば協力者の心は離れていくだろうから。それは
どちらに転んでも伏見の得。光夜はそこまで読んだ上で、以前、かぐやに
──────
光夜が即座に常盤の下っ端を始末し、常盤に対して間者を送り込んでから数週間が経った。その間、表面的な諍いはすっかり鳴りを潜めていて、両者は初激以降、表立っての攻勢に移る事ができないでいた。
常盤
一方の伏見も常盤に対して攻撃を仕掛けられないでいた。闘争が始まってからの場の雰囲気は完全に伏見が制していたとしても、圧倒的な戦力差が現実問題として立ちはだかる。常盤は四宮四条には及ばないとしても四大財閥の一角。いくら協力者の
どちらも攻撃を仕掛けられない状況。戦況は完全に停滞する。
そんな中でも光夜は秘密裏に工作を進めていた。光夜の予想通り、常盤は
「社長。嵯峨
「分かった」
嵯峨
最初は伏見の誘いに首を横に振っていたが常盤の未来を思いやるとついに首を縦に振った。
嵯峨
常盤の人脈
「社長。常盤
「降伏ではなく和睦、か」
戦況は確実に「伏見」が制しており、常盤の武器である人脈
「(これ以上やるのならどんな犠牲を払っても純粋な物量で押し切るという事か)」
どれだけ「伏見」が優勢だと言っても単純な物量では四大財閥の常盤には到底敵わない。常盤と伏見がぶつかれば常盤は甚大な被害を受けるかもしれないが伏見は消滅する恐れすらある。
「(そういう意味を暗に示した強気の物言いだな)」
しかし何度も言うが伏見は単独の力で常盤に勝つ事はできない。常盤にそういった意図がなかったとしても
「ここらが潮時だな。石川。常盤の提案を受け入れる」
こうして一月にも及んだ伏見と常盤の闘争は、伏見が優勢のまま集結した。
──────
「石川。嵯峨
「......え? しかし彼らは我々の味方になった者達であって......」
常盤との和睦が成った後、光夜と石川は会社にいた。伏見存亡の危機は取り敢えず乗り切ったという事で光夜の顔にはいささか安堵の色が見える。既に光夜は
彼が最初に命じた事、それは常盤から降ってきて伏見の味方になったはずの者の処断。石川は動揺を隠す事ができなかった。
「嵯峨
だが彼らは違う。こちらから調略を仕掛けた嵯峨と違って彼らは自ずから降ってきたのだ。恩のある常盤を裏切って」
そこには大きな違いが存在する。同じ裏切りだとしても意味は異なる。
「一度裏切った奴は必ずまた裏切る。我々の組織は少数精鋭で成り立っており、戦況が悪くなったからといって誰からも誘われていないというのに周りに同調して降ってくる者など──伏見には不要だ」
──────
「いつもすまないな早坂」
「いえ、これも私の仕事ですので」
常盤との闘争も後処理も済ませた光夜は、かぐやの待つ四宮家別邸に帰らず会社に早坂を呼びつけていた。
「......今はどれくらいだ?」
「全然ですね。まだ2割ほどです」
「......そうか」
光夜は「伏見光夜」の顔になった時は毎回、早坂を呼んでいる。自分の中の「伏見光夜」を捨てるために。捨てられたかどうか自分では分からないため早坂に確認して貰っている。
この闘争が始まった時、早坂も連れて行ったのはこのためだ。一度「伏見光夜」の顔になってしまえばそれがどんなに短時間だろうが光夜は早坂を呼ぶ。
ちなみにこれは業務扱いのため早坂に給料は出る。早坂は普段よりも楽で給料が出るこの時間を実は楽しみにしていたりもする。
しかしながら一体なぜ光夜はこんな事をしているのか? 決まっている。
「かぐ姉にはこんな醜い姿、見せられないからね」
ボソリと漏らした光夜の言葉を受けて、早坂は今四宮家別邸にいるであろうかぐやに対して思いを馳せる。
「(かぐや様。これ、特別扱いですよ)」
日本史に明るい方なら分かるかもしれませんが、今話の裏切り云々のエピソードのモデルは戦国時代の穴山信君と小山田信茂の逸話です。
皆さんも将来裏切る時は手回しをきちんとしておくといいですよ。
光夜は頭四宮になっていますが本場の四宮の外道度には遠く及びません。似非四宮とはそういう意味です。
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