怠惰の天才は満たされたい   作:マイケルみつお

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ステラの花を伊井野がもらったのが中学のいつか分からなかったので、中学三年の時の話、という事にしています。

活動報告にヒロインアンケートを載せています。回答、よろしくお願いします!


4話 伊井野ミコは勝ち取りたい(前編)

 中間テスト!それは学年が新しくなって初めて行われる定期テストである。1年生は特に外部入学してきた生徒を含めて自分が学内でどのくらいの立ち位置にいるのかを確認する事ができる最初の機会である。

 

その中で今回も学年一位の有力候補であるのは伊井野ミコである。彼女は中学三年間の中で()()()()()()学年一位を取り続けた秀才である。そんな彼女は光夜に対して挑戦を叩きつけていた。

 

 

「伏見!今回は本気を出すのよ!手加減をしてテストに挑むなんて風紀委員として見過ごせないの!」

 

「いや、風紀委員関係ないでしょ...。」

 

 

光夜は、中学二年の学年末テストで伊井野に勝利してから、毎度の如くテスト前にはこうして伊井野から挑戦を受けている。

 

「いや、今のところは姉さんから特に何も言われてないし。」

 

かぐやへのラブレター騒動や、石上騒動ばかりが最近取り上げられてて忘れがちだが、伏見光夜という人間は基本怠惰なのである。

 

自らの実力を出した事での悲劇を知る身からして、自分は全力を出すべきではないと本気で思っているのである。まあ試験勉強などまるでせずとも毎回五位前後には入っていることからその能力の高さは窺える。

 

そう、伊井野が学年一位の有力候補であっても、大本命ではない理由はそこにある。光夜が本気を出せば光夜が。そうでなければ伊井野が学年一位をとるというのが一年生と教職員の間での前評判なのである。

 

 

「だってお前...一位取れなかったらいじけるじゃん。」

 

「でも...もしそれで何か言われたらまた守ってくれるんでしょ?」

 

「自分が気づく範囲で困ってたらな。」

 

 

光夜と伊井野が親しくなったのはその光夜が学年一位をとった試験の事である。

 

──────

 光夜はほぼ学校に来ずして二年生に進級した。しかしテストの日には必ず出席し、そこそこの成績を修めていたため何も文句を言われず、またこのままの出席ペースで三年生を終えても高等部進学は問題ないだろうと言われていた。そして今日は珍しくテスト当日ではなく一週間前なのに学校に来ていた。

 

いる筈がない人間がそこにいれば当然話題になる。その噂は学年を超えて(かぐや)の耳にも入った。

 

四宮かぐや。彼女を知る者は口を揃えてこう呟く。『まるで別人だ』と。高貴さはあるがしかし実際に話してみれば親しみやすさを覚えるような彼女は中学二年になってから変わった。それまでの親しみやすさなどどこに行ったのか、他者を寄せ付けないような性格と変わった。付けられたあだ名は『氷のかぐや姫』。小学校から彼女を知る人間はただ困惑するだけであった。

 

しかしその氷は定期テストの日にだけ溶かされる。氷が溶かされたかぐやは一心不乱に一つ学年が下の教室へと走っていた。

 

 

 

 「光夜!」

 

「(早坂から聞いてみれば、まさかテストの日じゃないのに光夜に会えるなんて!)」

 

氷のかぐやしか知らない下級生は皆、目を丸くするだけだがそんな事はかぐやは気にしない。

 

「ちょっと来なさい!」

 

かぐやは光夜を連れ出した。

 

「その...どうしたの?」

 

かぐやは当然光夜が学校を休む理由を知っている。だからこそかぐやは嬉しさで胸が弾けそうだったが、なぜ光夜が登校したのかが気になったのだ。

 

 

「中学から色々あって、ようやく会社が安定するようになったんだ。もう自分がいないとまわらない、なんて事はなくなった。勿論何か非常事態があればまた学校に来れなくなると思うけどそうならない限り、学校に来ようかなって思って。...かぐ姉とも全然会えてなかったし。」

 

「じゃあもうテストが終わった瞬間に海外や、全国各地に行っちゃったりしないの?」

 

「うん。だから東京に留まるかな。東京の会社に寝れる場所はあるし、そこにいようかなって思ってる。」

 

「か、会社で寝るなんていつか体調を崩すわ!部屋は空いてるのだしまた昔みたいに帰ってきたら?」

 

「でももう四宮の人間じゃないし。」

 

「問題ありません。苗字が四宮じゃないとしてもご存知の通り、総帥は光夜様に帰ってきてもらいたいと思っています。何も言われる心配はありません。」

 

「げっ、早坂いたのか。」

 

 

姉と久しぶりに会えた歓喜で光夜は早坂の存在に気づかなかった。そしてそれはつまり子どもらしい姉の呼び方を聞かれたという事を意味し、光夜の顔は真っ赤に染まる。

 

「光夜様が帰ってくるだけで私の胃には平穏が訪れるのです。是非とも帰ってきて下さい。」

 

そう言われ、元々断るつもりなどなかったのだが光夜に断る選択など取れる訳がなかった。

 

──────

 「変わってないなー。」

 

「かぐや様が光夜様は必ず帰ってくると言っていましたので、光夜様の部屋は光夜様が家を出てから何も変わってません。」

 

 

思い出と何ら変わらない家、自室に少しばかり感激する。

 

 

「ところで姉さんは?」

 

「かぐや様は定期テストが近いため勉強中です。光夜様が帰ってきたら教えるように言われていますがもう少し待っておきましょう。どうせ光夜様が帰ってくれば勉強なんてしないでしょうし。」

 

「聞こえてるわよ早坂。」

 

 

早坂は気づいてないようだったが、階段の上でかぐやが腕を組んで早坂を睨んでいた。

 

 

「光夜の気配を感じて降りてきたら...。まあ、今回は光夜が帰ってきた功績に免じて不問とします。下がりなさい。」

 

「も、申し訳ありませんでした。」

 

「さ、光夜。着いてきて。」

 

 

そう言ってかぐやは光夜を自室へと招いた。

 

 

 

 「ねえ、どうしたの?早坂に対して当たりが強くない?」

 

氷のかぐや姫状態のかぐやは他人に対して先ほどの早坂よりも酷い当たりをしているのだが、そんな事は光夜が知る由もない。

 

 

「なんかかぐ姉怖かったよ。昔の方が好きだった。」

 

「ッ!?」

 

 

かぐやに大ダメージ。




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