怠惰の天才は満たされたい   作:マイケルみつお

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6話 生徒会は出かけたい

 中間テストも終わり、秀知院の面々も、そして生徒会も張り詰めた緊張が緩み、学園の雰囲気も日常へと戻っていた。

 

光夜は、伊井野から散々本気を出しなさい! と言われてたがそれはいつもの事なのでいつものように聞き流していた。

 

そして本気を出す事もなく今回も光夜は5位であった。

 

──────

 「そうだ! 夏になったら生徒会で旅行に行きましょう!」

 

生徒会室には光夜、かぐや、白銀、藤原という、石上以外の役員全員が揃っていた。石上はかぐやを恐れているのだがその事を光夜は知らない。

 

「それはいいですね。親睦も兼ねてどこか出かけましょうか」

 

「(行くなら山がいい。夜は満天の星空の魔法にかけられて四宮を落とす)」

 

白銀はこれを恋愛頭脳戦に結びつけた。

 

「そうだな。行くとしたらや……」

「海以外ありえません」

 

しかし白銀の提案はかぐやの言葉に遮られた。

 

「(私は常々考えてきました。私と光夜は常に同じ家で2人きりで暮らしています)」

 

かぐやの脳内から早坂愛という存在は消された。

 

「(ですのでただ一緒にいる時間を増やすだけではダメなのです! もっと何か刺激的な、そう! 非日常溢れる旅先で日頃見ない私の水着姿を見れば……光夜も私の事を1人の女として見るでしょう! 海の魔法にかけられてそのまま……

 

いける! いけるわ! ならば海しか有り得ない!)」

 

ここにかぐやと白銀の全面決戦が開始された。だが、

 

「あ、すみません。ちょっと用事があるので席外しますね。今日の分の仕事は終わってますので」

 

光夜はスマホに何か連絡が入ったのか、それを見ると生徒会室から出ていった。

 

「(いいわ。光夜が帰って来る頃には勝負を決めておきますから楽しみにしておきなさい!)」

 

「(光夜は基本四宮には逆らえないからな。光夜には悪いが、あいつがいない方が山に行きやすくなる!)」

 

光夜の不在によって2人の士気は更に高まった! 

 

──────

 「海の潮騒は最高の子守唄です。潮風が夏の火照りを吹き消してくれるでしょう」

 

「(まずい! 海だけはダメだ! 俺は泳げない!)」

 

白銀に更に負けられない理由が加わった。

 

「海は人が多いだろう。それにベタつくしな」

 

「四宮家の所有するプライベートビーチを使いましょう。温水シャワーの設備もあります」

 

「日焼けは乙女の大敵だ」

 

「最高級の日焼け止めを用意しましょう。一流のエステティシャンも呼んで、肌のアフターケアも完璧です」

 

「……鮫が出るぞ」

 

「フロリダから一流のハンターを呼んでおきましょう。ディナーはフカヒレですね」

 

「(くそっ! この金持ちめ!)」

 

「(なんで会長はここまで反対してくるのよ!)」

 

白銀、持ちうる反論材料が尽きてしまう。かぐや、白銀がなぜそこまで反対してくるのかが分からない。

 

だがかぐやにはその事を考えるより今は重要な事があった。

 

「海は夏しか行けないじゃないですか。山は天気も荒れやすくて雨も降ります。それに、虫も出ますよ」

 

「(虫……虫だけは……!)」

 

白銀は大の虫嫌いである。その事を指摘され、もう白銀に山を選択する事などできなかった。

 

「……水着買っておくか……」

 

「(勝ちました。さあ光夜、待っておきなさい)」

 

本日の勝敗、かぐやの勝……

 

「あ、そうですね〜。私も去年のサイズが合わなくなっちゃって、新しいの買わなきゃ」

 

「ッ!?」

 

かぐやは藤原の胸部をみて、何かを察した。

 

「(まずい……それじゃあ……、光夜に私を意識させるどころか……藤原さんが友達から格上にされてしまうじゃない! それはNO! 絶対にNO!)」

 

「山にしましょう。海はベタつくし、人が多いし鮫も出ます。山にしましょう」

 

「さっきと違いますよ!」

 

「いや海だ! 山は雨も降るし虫も出る! 海にしよう!」

 

「こっちも!?」

 

そう、各々が意見を変え議論が踊っていた時だった。

 

「ただいま帰りましたー。で、どこ行くか決まりましたか?」

 

「あ! 光夜君! 聞いて下さいよー! この2人、さっきまでとは違った事言い出して!」

 

そこで藤原は光夜に対してこれまでの事を説明しようとした、が。

 

「そ、それなら海か山か、藤原さんに決めてもらいましょう!」

 

「え! 私が! ですか?」

 

「(藤原さんにさっきまでの話をされては……私がなんで意見を変えたのかバレてしまう! そんなの姉的にNO!)」

 

「ええと……どちらかというと……山?」

 

勝った、という声がかぐやからした気がした。

 

「(かぐ姉は山に行きたかったんだ)」

 

同時に白銀は海に行きたいのだと光夜は気づいた。

 

中学のとき、白銀がカナヅチである事を知った光夜は白銀があれから泳げるようになったのだと、特訓を積んだのだと思って白銀を尊敬していた。

 

自分は怠惰と呼ばれるように努力というものが苦手だからである。……まあ、白銀は泳げるようにはなっていないのだが。

 

「あ、山は山でもー、恐山に行きたいです!」

 

「「恐山?」」

 

「賽の河原に血の池地獄! 輪廻を廻す風車とかがいっぱい! せっかくだからイタコさんに死者の霊を口寄せしてもらいましょう! 誰がいいかな〜! キリスト? ブッダ?」

 

その藤原の変貌にかぐやと白銀は顔を青くさせる。結果、先程までの争いは一旦保留という結論に辿り着きそうである。

 

本日の勝敗 計画白(おじゃ)……

 

「いいね! 千花。自分も賛成! 恐山は温泉もたくさんあるしね!」

 

「お、光夜君分かってますねー。じゃあ今度行きますか?」

 

「でもイタコさんって365日いつでもいる訳じゃないからね。あ! 夏休み入ってすぐの大祭なら間に合いそう!」

 

「お〜! それはいいですね! じゃあ一緒に行きましょう!」

 

「そうだね。御行先輩も姉さんもあまり気乗りしてないみたいだからね」

 

「(かぐ姉が怖いの苦手って言わない方がいいよね)」

 

そんな中、光夜と藤原の間で次々と決まっていくのをみてかぐやの心中が穏やかな訳がなかった。

 

「(ちょっと待って! それってつまり光夜と藤原さんが2人で旅行に行くって事じゃない! それってまるでデ……。とにかくっ! そんなの姉である私が許しません!)」

 

「2人が行くならわ、私も行きます」

 

「(な、なに!? 四宮も行くのか?! 確かそこ大祭は夏休みに入ってすぐって言ってたな……。それならそこで行かなかったら夏休み最終日まで結局何もない……なんて事に……)」

 

「お、俺も行くぞ。そもそも生徒会の親睦って事だったからな。そうだ! 俺が行かない訳がないだろ!」

 

白銀、どんな状況でも、無理矢理にでも自信を持つという事を実践する。

 

「わぁ〜! いいですね! 皆さんで恐山に行きましょう! 楽しみですね! 光夜君!」

 

生徒会の親睦旅行に恐山が追加された。

 

本日の勝敗 光夜、藤原の勝利

 

──────

 「それで、こんなところに呼び出して何なんだ? 伊井野」

 

光夜が山、海論争の途中で生徒会室を抜け出したが、それは伊井野から風紀委員室に呼び出されたためであった。

 

「何か校則違反をした覚えはないんだが」

 

「きょ、今日は違反をしたから呼び出した訳じゃないの」

 

じゃあなぜ呼び出した? と思ったがそれはこれから説明があるだろうと光夜は思った。

 

「この前のテスト、私が一位だったわ。だから夏休みの間私が伏見に勉強を教えてあげるわ!」

 

「え」

 

「テスト前に言ったじゃない! 今度のテストで私が勝ったら少し付き合いなさい! って」

 

光夜はまたいつもの如く伊井野がキーキー言ってるなと聞き流していたので聞き覚えがなかった。しかし伊井野がそんな嘘をつく事はないとも思うのでおそらく言ったのだろうと。そしてそれに自分が同意したという事も理解した。

 

「(一回約束したんなら破る訳にもいかないよな)」

 

「分かったよ。学年一位の伊井野さんにお勉強を教えてもらいますよー。じゃあ夏休み入ったら適当に連絡してくれ」

 

その後、光夜は生徒会室に戻り、先の話となる。




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