「「恋愛相談?」」
「はい! 恋愛において百戦錬磨との呼び声が高い会長と伏見君に何かいいアドバイスを頂けないかと思って」
放課後の生徒会室前。突然田沼という男子生徒に恋愛相談を持ちかけられる光夜と白銀であった。
(え、恋愛百戦錬磨って何?! 俺そんなイメージ持たれてんの?! しかしここでボロを出したら...四宮に童貞だとバレてしまう! それだけは避けなければ...。それにここには光夜がいる。あいつなら俺と違ってそういった経験もあるだろう)
「よし、任せろ!」
白銀は田沼を生徒会室にへと招き入れた。
「あ、すみません先輩。自分、そういった経験はなくて...だから先輩が求めるようなアドバイスはできないかもしれません」
白銀の当てが外れた。
「自分も一緒に御行先輩から色々学びたいと思います!」
白銀、既に引き受けた以上、その言葉を取り消す事などできなかった。
「分かった...俺に任せろ!」
こうして童貞の童貞による童貞のための恋愛講義が始まった。
(あら、光夜の恋愛話ですか。家ではそういった話はあまりしませんし、気になりますね)
扉の外にはかぐやが耳を澄ませた状態で。
「それで、相談というのは?」
「はい。クラスメイトに柏木さんという人がいるんですが...彼女に告白しようと思っているんです!」
(ふム)
(おぉ!)
(まぁ!)
「でも断られるかと思ったら...もう少し関係を深めてからでもいいと思うんです...」
(フラれたくないしねー..)
「...ちなみに、その子と接点はあるのか?」
「はい! バレンタインにチョコを貰いました!」
「お! どんなチョコだ?」
「...チョコボール三粒です」
(えぇ..)
かぐや、顔を青くする。
「これってやっぱり義理ですかね?」
(それは...いくら恋愛経験なくても分かるよ..)
光夜とかぐやの考えは一致した。田沼のその問いに白銀はどう彼を傷つけずに答えるのか、光夜とかぐやは気になった。
「あー...それはもう...。お前に惚れてるな」
(え? どうして? チョコボール三粒ですよ!)
「いいか! 女ってのは素直じゃない生き物なんだ。常に真逆の考えを取ると思え! つまり、その一見義理に見えるチョコも..」
「「逆に本命...!」」
光夜は恋愛経験はないが、人と多く接してきている。白銀と違って最初はかぐやと同じ結論に至っていたのだが...
(経験者がそういうならそうなのか)
自身が未経験であり、経験者の白銀がそういうならそうなんだと学んでいた。
(会長! 光夜に変な事を教えないで下さい!)
これが終わったらあれは間違いだと光夜に教えようと決心するかぐやであった。
「だけど...彼女にその気なんてないと思います」
「と、言うと?」
「前にこんな事があって..」
「ねえ君って彼女いるの?」
教室で柏木に問われる田沼。
「い、いないけど..」
素直にその問いに答える田沼。
「彼女いないって!」
「やっぱり!」
「いる訳ないよねー!」
「超ウケる!」
「こんな感じで...。だから、揶揄われているだけなのかな、って」
(残念だけど揶揄われているわね。異性として見られている以前の問題。流石に光夜も会長が言った事が間違いだと気づいたでしょう)
「お前...モテ期きてるぞ!」
(えぇ..)
「なぜそんなに女を疑うんだ! 女だってお前と同じ人間だ! さっきのやりとりを翻訳するとこうだ!」
それから白銀は柏木さんとその周りの彼女達が全員田沼に惚れているという推理を始めた。そしてその的外れの推理に光夜が目を輝かせている事からかぐやは頭が痛くなり始めた。
「そんな...莫迦な..」
(そうよ!)
「彼女達の中からたった一人を選ばないといけないなんて..」
(あなたも莫迦なの?!)
「何言ってるんですか! 先輩が好きなのは柏木先輩なんでしょう! それなら! 迷う必要なんてないじゃないですか!」
(光夜?!)
「でも...彼女達の友情にヒビが入ったり..」
「そうだな。最悪いじめに発展するかもしれない。女同士の友情はそういうものだからな」
(よかった! ちょっと不安だったけど光夜も賛同してくれるなら間違いないな!)
「だけどその彼女は先輩が守るんです! 先輩しか、彼女を守る事はできないんです!」
(最初は意味分からなかったけれど御行先輩がそういうなら間違いないね)
「でも告白なんてどうすればいいのか..」
「そうだな、よし光夜手伝ってくれ」
「分かりました御行先輩」
白銀は光夜に概要を説明する。
「この扉に件の女子がいるとする。いけっ! 光夜!」
「はいっ!」
光夜は力の限り、その扉を叩く。そして...
「俺と付き合え」
「そう。突然壁に追い込まれ、女は不安になるが耳元で愛を囁いた途端、不安はときめきへと変わる。そうすれば告白の成功率は上がる!」
(び、びっくりした!)
かぐやは先ほど受けた衝撃を実際に生でされたらという事を妄想し始めた。扉の陰に頭を埋めている。
「この技を...壁ダァンという。俺が名付けた」
「「やはり天才か..」」
かぐやのツッコミなど既に追いつかない
「ありがとうございます! 会長のおかげで勇気が出ました! 流石、あの四宮さんを落としただけはありますね!」
(((え?)))
「い、いや...俺と四宮は別に付き合ってはいないぞ」
(かぐ姉と御行先輩...? まあそこら辺の人より御行先輩ならまだ..)
(そうよ! 私落とされてなんかないわ! それにどうしてよりによって会長なのよ!)
「そうなんですか? 側から見ればかなりお似合いなんですが」
「いや...最近むしろ嫌われているように思えるんだ。興味すらない...と」
(会長には悪いですが、人間としては尊敬する部分はありますが男女という意味では仰る通りです。現実を客観的に見ることができるのは美徳の一つです)
「会長! 大事なのはどう思ってるかですよ!」
「俺が四宮をどう思っているか..」
(え? それ聞く?! そんなの公開告白みたいじゃないか!)
白銀の頭脳は羞恥と興奮で機能しなくなっていた。それはこの場に誰がいるのかという認識で...
「まあ正直、金持ちで天才で癪な部分はある。案外抜けてるし、内面怖そうだしあと胸も..」
「御行先輩!」
白銀の頭の中から光夜が隣にいるという認識がずれ落ちていた。この男の前で姉の悪口など言語道断。姉がブラコンであると同時に絶対に認めないだろうがこの男もまたシスコンなのである。
「姉さんは! ...」
それから光夜のかぐや談が始まる。
(知ってる! そんな事知ってるよ! 四宮のいいところなんて上げ出したらキリがないんだって事は!)
(もうやめて! 光夜! 心臓が...!)
「...だからかぐ姉は最高なんだぁっ!」
途中から呼び名が変わってはいるが、そんなことには気づかず、しかしようやく話が終わったのだと気づいて白銀は話を切り出す。
「と、とにかく! 告白しないと何も始まらん! 変に策略を練って駆け引きなんてしてもいい事ないぞ!」
(あれ...なんだろ...胸が痛い..)
白銀、自らの言葉で大ダメージ。
「僕、頑張ってみます! 本当にありがとうございました!」
そう言って田沼は生徒会室から出ていった。柏木に壁ダァンをするのであろう。
「御行先輩。自分も駆け引きなんてしないでぶつかってみたいと思います! ありがとうございました!」
そう言って光夜も生徒会室を出て行く。田沼と同じく彼も誰かに壁ダァンをしに行くのだろう。光夜の好きな人を知らない白銀はそれが誰か気になるがしかし後輩を応援する。
「ああ! 頑張れよ!」
(告白って! それじゃあ私...今から光夜に壁ドンされて告白されるって事じゃない! そんな...いきなり! まだ心の準備が!)
「あ! かぐ姉!」
(顔がまだ緩んで! しっかりしなさい! 四宮かぐや! こうして光夜の側から来てくれているのよ! 姉として! 堂々とするのよ! 照れ隠しなんてダメ! 自分の思った事をそのまま素直に言うの!)
「じゃあ急いでいるからまた後でね!」
「え」
光夜はそう言ってから生徒会室を後にした。
(じゃあ光夜は私...以外の人に今告白しに行って..)
かぐやの目の前は真っ暗となった。これが失恋というものなのか。
「ふぅ、何とか乗り切ったか。しかしあの光夜も好きな人がいるとはな。成功する事を祈っておこ...げっ四宮! ...まさか聞いてたか?」
(やばい! 俺四宮に何て言ってた?! 光夜が四宮談義をする前だろ...ヤバい..)
(会長のせいで光夜が...。会長が余計な事を言わなければまだ光夜と付き合える可能性だってあったはずなのに!)
「会長...。絶対に許しません」
(終わった...。俺の恋..)
本日の勝敗 白銀、かぐやの敗北
一方その頃、
(先輩の熱に浮かされて勢いよく飛び出したけど...そういえば好きな人とかいないじゃん)
いなかった。
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