貴方は貞操観念のおかしな世界にいる▼   作:菊池 徳野

19 / 28
私のネタ纏めは風呂に入りながらするのですが、最近は暑くてシャワーで済ます日が多いのでちょっと執筆の方がバテ気味です。

バチくそ暑いですがみなさんもお気をつけください。


貴方はツンデレを知っている▼

貴方の家庭は冷えきっている。

 

義父には顔を合わせる事すら拒否され、挨拶ひとつも受け取って貰えない。顔を合わせる事があるとすれば来年以降の話であったり、義妹の事であったり、何か問題が発生した時である。

 

先日顔を合わせたのもそんなタイミングだった。近所で貴方に関する噂が立っているというのである。あくまでも夜間のバイトは大変だという程度の軽いものだったが、詮索の目がなかった訳では無いという話だった。

大黒柱を失った家庭を支える長男という風に見てもらえているが、実情はそんな綺麗なものではなく、また家族仲についてもそろそろ慣れない環境に忙しくしているという言い訳も効かなくなってきた。

それに対して自業自得ではないかと思わない訳ではなかったが、貴方にはまだ欠片ばかりの情が残っていたし世間の目を気にする義父の考えも理解出来た。

 

故に貴方は朝帰りを控えて欲しいという義父の要望を叶えることにした。深夜バイトをしているのは知っているが我が家の評判も気にして欲しいという義父の言葉に貴方は背筋に冷や汗が流れたが、神妙な顔で頷いておいた。

最近の貴方を知らない義父は貴方の真面目さを疑っていなかった。悲しいすれ違いであるがバレたらただ事では済まないため貴方には義父の勘違いを修正するという選択肢は存在していなかった。

 

義父が深夜バイトをしていると勘違いしている事を知った貴方は、金銭的な問題があると主張しバイトを減らすのではなく増やすことで土曜日の午後と日曜日の夜までをまるっと家から出ていく事を提案し、それを了承させた。

勿論アルバイトを増やす訳ではなくお泊まりをして金を稼ぐ訳だが、それを悟られることは当然なかった。後になって義父からそれを知らされた義妹が全てを悟った顔をしていたが貴方の知るところではなかった。

 

さてそういった理由でママたちの間を渡り歩く羽目になった貴方であるが、それについては案外というか案の定問題はなかった。

JKならぬDKの家政夫がほぼタダで1日家に居て家事を担ってくれるのだからただでさえ一緒に居る事を望む彼女らには喉から手が出る程に受けたいサービスであった。自分の都合による休日の侵蝕を悪いと思う貴方と身近に貴方を感じたい彼女達との間に交わされた降って湧いた幸運であった。

 

なお、試験者第一号の日向子にサービスの説明をしたところ不特定多数の元に行くことは危険だと警告されたが誰か一人に肩入れしてバレた時の方がよほど危険だとしてその意見を却下した。誰か一人を特別扱いすると問題しか起きない事を貴方はよく理解していた。

結局日曜日も家事をする事になったが、材料費もメニューも考えなくてもいい料理に一人部屋の掃除と、家でのそれと手間は雲泥の差であったため苦もなくこなす事が出来た。

 

割を食ったのは貴方との交流の時間が減らされた義妹であったが貴方の「そろそろ慣れないとな。」という一言に引き下がる他なかった。常々見たくない現実ばかり突きつける男である。

 

家事代行サービスとは名ばかりの素泊まりプランであったが、貴方は残り一年この生活を続けるのは大変だと思い適当な私服を着替えとして彼女らの家に放り込んでおくことにした。貴方は荷物が減り、彼女達は貴方の帰る場所になれたという自己満足に浸れるという悪魔のような所業であり、何の気なしに素泊まりについて三島に話した際にはドン引きされることとなった。

多少なりとも増えた私服を減らして逃亡時の荷物を軽くする算段があるということは横で話を聞いていた三島にも気づかれなかったし、誰にも漏らすつもりはなかった。

 

そんな貴方の生活環境に変化をもたらした朝帰りの一件であったが、新規開拓の一助になったというのもまた事実であった。

 

「悪いわね、いつもの調子で来たからかなり歩かせちゃった。」

「平気ですよ。それにいつもと違った道で新鮮でしたから。」

「…意外と筋肉あるものね。」

 

宿を提供してもらった人の内、夜の相手しかしたことの無かった人からもママ活の誘いが来るようになったのである。

今貴方の目の前にいる衣紀さんもその一人であり、衣紀さんの場合はずっと部屋で一緒にいるとダメになりそうだという理由で外に連れ出された訳である。他にも「一緒にいる時ぐらいめいっぱいご飯食べて」「色んな世界を見せたい」「この部屋の中だけが私の世界じゃないから!」といったなかなか芳ばしい意見をいただいた。

 

こうした貴方を庇護対象と認識している様な客は比較的常識的な人が多い為、貴方は精一杯しっぽを振って返すようにしていた。後ろを付いて回る犬の様に一時限りの彼氏を演じて見せたと言えばその様子が分かるだろう。

そうすると彼女達は顔を赤くして眉をしかめながらも満足気な様子で貴方を色んな場所に連れ出してくれるのだった。

 

貴方はツンデレの扱いについても造詣が深かった。




たぶんこれで出てきたネームドキャラは文字に書いてあるかは別にして全員出したはず。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。