貴方は貞操観念のおかしな世界にいる▼   作:菊池 徳野

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そら(突然朝帰りとかした血の繋がらない兄or姉がいたら)そう(いうよからぬ気持ちになる)よ。


貴方の義妹は最近寝不足である▼

貴方は女心というものにとんと疎かったが、女性の悦ばせ方には人一倍自信があった。

性欲よりも支配欲や満足感といったものを重視していた貴方は金を貰い女性を性的に悦ばし、けれどピロートークを強制されないこの売春というシステムに心から感謝した。

 

それでも本番行為をしなかったのは、己の身を常日頃から案じてくれていた母親の事を思っての事であった。

ピアスは母から貰った大切な身体であるから、毛染めは高校卒業までは形だけでも正しくあればと思って控えることにしたのだ。

 

それでも売春行為に身をやつし、そのうえでもはや天職かもしれないとすら考えている貴方を見て母親は良い顔をしないと気づけないのは何故だろうか。草葉の陰で母親が泣いているぞ。

 

とはいえ貴方は1度目の仕事で確かな手応えと自由にできる現金を手にして気分が高揚していた。

残念ながら相手の女性は気をヤってしまい置いていくのも偲びなかったため初めてのお仕事は朝帰りになってしまったうえ、仕方なくお泊まりに変えた影響で貰えるお金が3万円から2万5000円に目減りしてしまったが。

 

しかし貴方はへこたれなかった。今何より大事なのは一夜にして現金と女性の電話番号を手に入れられたという事実であった。

 

そして、そうして浮かれている貴方は帰りの遅い義兄を心配して起きていた義妹が、朝帰りした義兄の存在を目撃してさらには貴方から香る知らないシャンプーの香りに思春期を爆発させていた事に気づかなかった。

知らず貴方は義妹の性癖と義父と義妹の親子の関係を歪めていたが、それに気づくのはもっと先の事である。

 

普段何かと優しくしてくれる義兄が、父親の鬼畜とも言える所業の為に身体を売ることになったのではないかという疑問は年頃の少女の脳を破壊して余りある衝撃であった。

貴方が義妹に対して、貴方の中の貞操観念に基づいてそれなりに甘やかしていたせいでもある。

 

閑話休題。

 

貴方は確かに手にした現金と自信を胸に女性へ「また遊んでください。」と一方的にメールを送っておやすみ3秒。さほど柔らかくないベッドに沈んだ。

 

 

 

貴方は高校生である。

 

記憶の中に社会人経験があるものの、世間はそうは認めてくれない。貴方の取れる選択肢はバイトか売春というえらく極端なものであった。

 

貴方はリアリストである。

 

先立つものの必要性を十全に理解していたし、就職するにあたって大学に行けないにしても大卒認定位は必要だろうと思っての現金の確保であった。

貴方にとって頼れる物はもはやお金しかなかったとも言えるだろう。

 

貴方は次の日の土曜日を泥のように眠って過ごし、日曜日は軽いバイトを入れていた。

選択肢はどちらかを選ぶものでは無い事を貴方は理解していたし、働くこと自体は嫌いではなかった。貴方は確かに大人であった。

 

バイトと売春に重きを置いた貴方は部活動を辞めていた。

 

顧問は貴方を引き留めようとしてくれたし、共に部活動に励んでいた友人は突然のことに驚いたようだったが、忌引後のうわの空だった貴方の様子を知っているからと貴方の決定を尊重してくれた。

 

友人や顧問が貴方の心配をしている中、貴方は部活のウェアを売春に使えないかと思案していた。最低である。

 

 

 

 

貴方の家での扱いは腫れ物のソレと変わりなかった。

 

義妹はまだしも、義父は貴方と顔を合わせると重い空気を纏わせるのである。

 

平日、貴方は義父と顔を合わせなくても済むように食事の時間を分ける事を提案した。これは貴方と義父とが話し合って決めた事であり、お互い思うところがある以上は顔を合わせない方がお互いのためであるとした大人の話し合いの結果であった。

 

母の葬儀の後、義父は母に代わり大黒柱として働くことを選び、貴方はそのサポートとして家事を取り仕切る事を決めていた。

義妹に家事のやり方を教える事で貴方が居なくなってからも家庭が回る様にと提案し、貴方は2年間の衣食住の心配から開放されたのだ。

 

その時バイトと夜間の外出についても取り決めたが、まさか義理の息子が売春をしようとしているとは思っていなかったためその辺も恙無く取り決められた。

 

そうして義父は前職に復帰する事になり帰宅時間が遅く、貴方は部活動を辞めて家事をするため帰宅時間が早くなった。金曜日はそんな義父が唯一早く帰ってこれる日だったため、貴方は義父と義妹が話せる時間を作るべく、食事を作ったらさっさと出かけてしまうことにした。

 

このことは義妹には父親から説明があり、貴方も同意のうえだと伝えたが親子関係の軋轢はより大きくなってしまい、金曜日の食卓はかなり冷え込んでいたが貴方が知る由もなかった。

とはいえ父親との関係があまり上手くいってない事を休日なりの雰囲気で感じ取っていた貴方は、年頃の娘がお父さんを毛嫌いする時期があるのは仕方ないよね、程度に考えていた。呑気がすぎる。

 

さて、それでは貴方の生活や義妹との関係はどう変わったのか。

案外そのままである。

 

朝ご飯の用意と買い出し、夜ご飯と休みの日の家の掃除がタスクに追加された以外の変化はなかった。大きく変わったのは起きる時間と寝る時間が前にズレたことであるが、母との二人暮しの経験や前世での一人暮らしの経験のあった貴方には何も問題がなかった。

 

貴方が家事担当になってから暫くは貴方と義妹との関係はギクシャクしていたが、生活リズムが安定してきた頃。ふとお昼ご飯が購買のパンでは栄養的にどうなのかと思った貴方は義妹と貴方の分のお弁当を作る事を提案した。

前世とは違い女子高生でも食べるものは食べるのだからと夜にガッツリとご飯を食べる義妹を見て購買では足りないのではないかと思っての事だった。

 

返事もなく部屋に行ってしまった義妹に思春期かなぁと悩んでいた貴方は、戻ってきた義妹からお昼ご飯にと支給されている五百円玉を差し出されて目を丸くした。

 

「…お願いします。」

 

どこか気まずそうな様子であったが、それでも貴方はその言葉が嬉しかった。

自分の分と合わせて1000円もあればかなりいいお弁当ができると明日からの美味しいお昼ご飯に喜ぶ貴方を見て、義妹は久しぶりに笑顔を見せた。

それからの貴方たち兄妹の関係は良好である。

 

それも先週の金曜日に貴方が売春を始めて朝帰りするまでの事であったが。

 

貴方の義妹は最近睡眠不足である。




とりあえず勢いで書いたのはここまで。
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