貴方は貞操観念のおかしな世界にいる▼   作:菊池 徳野

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ランキングに載ってうきうきの作者です。
やっぱりみんな案外性癖歪んでるんやなって!


ひとはみかけによらないなぁ

最近友人である唯華の様子がおかしい。

 

ムッツリと人の良さでクラスの男女問わずにそれなりの人気のある奴で、個人的には揶揄うと面白いので付き合っているのだがとてもピュアな奴である。

帰宅部の自分には一定以上の運動ができる人は全てすごい人で括られるのであれだが、部活でもそれなりに頑張っているらしい。

 

そんな陽の者。自分が知る中で一番の元気印が唯華なのだが、どうにも最近元気がない。

忌引で休んでいた頃は、仕方ない事だし元気づけてやるかと構い倒していたのだが、最近の元気のなさは少し度を越している。

 

目の下の隈をデフォルトに装備し、時折何か考えていると思えば萎れたピカチュウみたいな顔をしたりと見てる分には楽しいが友人としては心配である。それはそれとしてその表情が面白かったので写真に撮ったら異常に反応されたので私作の唯華診断の結果何かあったのは確定した。

 

そういえば最近は彼女特有の「ニイサンガーニイサンガー」という鳴き声を聞いていない気がするので、恐らく兄絡みで問題があるのだろう。

彼女のお兄さんには一度会ったことがあるが、いち女子中学生としてとてもエッチだと感じた。

間違えた。とてもじゃないが現実に居ていい存在じゃないと感じた。唯華と代わってほしいと真剣に思ったくらい。

 

きちんと着こなした制服のお兄さんからは優等生と大人っぽさという年下キラーなオーラを感じたし、そのくせ唯華とじゃれ合う姿は気さくな男性そのもので、何より顔が良かった。こう、全体を合わせると絶妙に手が届きそうな雰囲気が堪らない美人であった。

私のオカズフォルダに清楚系お兄さんが追加されたのは言うまでもない。

 

そんなお兄さんに何か有ったとするなら彼女ができたとかそういう系だろうと当たりをつけた私は今、そんな友人をからかう為のアイテムを探しに中古ゲームショップに来ています。

 

こういう買取系のお店は年齢確認ザルなところが多い…。否、私は健全な女子中学生。古き良き良ゲーと中古漫画を探しに来ただけですとも。ええ。

 

帰宅部の良いところは日曜日だろうがなんだろうが気にせず好きな時に好きな事ができることだと私は思うわけです。唯華は部活やら家事やらで日曜は自由に出来ないらしいので大変だなと思うけど、本人は納得してそうだから私が考えることではないのだろう。

内心ほくほくでいい買い物ができたと街に出てきた事に満足していると、私の中で今話題沸騰中の唯華のお兄さんを発見した。

 

隣に居る女性は恋人、かな?ちょっと緊張してる雰囲気があるから付き合いたて…にしてもそっかぁ。お兄さんは社会人の女性と付き合ってるのか。

確かに大人っぽいお兄さんが付き合うのなら歳上になるのかもしれない。男性であるお兄さんがリードしているように見えるのは同じ女としてなんとも情けない気持ちにはなったけれど。

 

しかしそうなると唯華用に買ったエロ本の皮を被った少女漫画は同年代の清楚系男子高校生の恋愛をテーマにしているので今回のケースとは違ってくる。ま、いいや。自分用にしよう。

唯華には私のお気に入りから一冊寝盗られ物を進呈すれば万事OK。

 

出歯亀根性半分、唯華の揶揄い材料の確保半分で遠目からお兄さん達のデートを観察する。とはいえ夕方になってきたのでそんなに長いこと見続ける事は出来ないだろうけど。

 

しかし私服のお兄さんもいいなぁ。普段の清楚な雰囲気と違ってジーンズというのも中々…。あの唯華のお兄さんなのだからスポーティな感じが似合うのも分かる。(わかる)

 

おしゃべりしたり買い物したりと割と健全なデート風景に面白くねぇなぁと内心野次を飛ばしながら尾行すること約1時間。

そろそろ帰ろうかと思っていると、あちらもあちらで解散するらしい事が聞こえてきた。

 

もしや隠れたりせずとも気付かれないのではないかと気づいた私は現在恋人達の向かいのベンチでコンビニで買ったアイスを食べている。流石に冬にアイスは寒いけど食べたくなったので仕方ない。

 

正確な会話は聞き取れないが、ところどころ単語を聞き取れるので十分だろう。英語のリスニングで身につけた能力が実生活で活きた初めての瞬間である。

お兄さんの方からは「楽しかった」「用事」「また」とか聞こえてくるので及第点を出した感じである。

女性の方はしどろもどろとしている雰囲気が伝わってくるのでちょっとデートプランに自信がなかったらしい。なんか初々しくてイヤになりますね。

 

彼氏欲しいなーともはや聞き耳を立てることをやめつつあった私は女性がお金を渡しているのを見て「電車代かな?社会人ってのはリッチウーマンしかおらんのか?お?」といちゃもんとしか思えない野次を飛ばしながら様子を伺っていると、最後に面白い光景が見えた。

 

恐縮だとでも言わんばかりの様子でお金を受け取ったお兄さんが不意に女性と唇を重ねたのである。女性の方は状況がよく分かってないのか指先まで固まっていた。いや、ていうか長いな!?

これはねっとり舌を絡めているに違いない。や!この、破廉恥だ!

 

内心最後の最後に面白い展開になったので心の中の全私がスタンディングオベーションとアンコール唱和で大興奮でした。

 

遠目からでも分かるくらい顔が真っ赤な女性と余裕そうなお兄さんの対比は私の中の新しい扉を開く鍵となるのに十分な破壊力があった。

どっちが男の子か分からないような状況の中、お兄さんは女性に何か告げると自分の着けていたマフラーを女性の首に巻いてにこにことした笑顔で手を振って去っていった。

 

残された女性は暫く呆然と立ち尽くした後、五分ほどしてからマフラーをもふもふと触りながら帰って行った。

その間私は衝撃で取り落としていたアイスの無惨な姿を見て頭を抱えていた。スタンディングオベーションの時かなぁ?

 

その後私は改めて中古ショップに寄り、唯華へのお土産に清楚系ビッチ白ギャル物を選び家路に就いた。

早速月曜日に手渡すと「ォア゛ア゛アァァァ」という発情期の猫かと思うような声を上げたので、私は満足気に頷いてサムズアップしておいた。

 

その後すごい勢いで唯華は言い訳という名の反論を続けていたが、その場で返品してこなかった時点で語るに落ちている。

 

いやしかし、人は見かけによらないなぁ。




今週の更新はここまで。平日の更新はできるかどうかヨグワガンニャイので、続きは土日の更新をお待ちください。

いつになくスラスラ書けるので、自分でも驚き。
コメントや誤字報告、ご指摘ご評価感謝します。みんなありがとう!

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