美神の副団長は苦労人   作:金鳥

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 今回いつもの半分くらいの文字数になります。


こうして彼等の運命は変わった8

 

 きっかけは、その少年の存在を知ったことだった。

 世界は英雄を求めている。

 ゼウスとヘラのファミリアが敗北し世界救済は遠のいた。

 

 新たな英雄として【猛者】や【勇者】が頭角を現しているが、ザルド達に比べるとまだまだだ。

 そんな時に、あの【静寂】の甥が無事に生まれたという事を知った。

 少年は英雄に憧れてこそいるが冒険者としての才能は無いとゼウスは言う。

 だがもしかしたら、少年は英雄になれるかもしれない。

 アルゴノゥトという英雄もいたのだ。

 

 才能が無くとも運命、仲間等に恵まれれば英雄になれる器かもしれない。

 だから俺は英雄に憧れる少年を現代の英雄と会わせる事にした。

 本当ならザルドやアルフィアが良かったが2人は少年と会うことを良しとしなかった。

 なので現在のオラリオ最強と会うように仕向けたのである。

 

 フレイヤ様の都市外脱出を助けつつ、道中少年が住む村の近くを通るように。

 尚且つ、ゼウスがその場面に立ち会わないように仕向けた。

 ・・・流石にヘラを嗾けるのは心が傷んだが世界の為だと割り切ったのは別の話だ。

 

 こうして少年───ベル・クラネルは【猛者】オッタルと邂逅した。

 命を救われるという予想外だが最高のシチュエーションによって少年の憧れが加速し、新たな英雄が生まれる事を期待せずにはいられなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・期待、してたんだけどなぁ。

 

 

 

 

 

 

 ◆実は全ての元凶

 

「いやー、まさかこうなるとは本当に予想外だったよ」

「予想外だったよ、じゃありませんよヘルメス様!!私本当に死ぬかと思ったんですからね!?」

 

 涙目で訴えるアスフィを宥めつつヘルメスは今回の騒動を振り返る。

 ヘラヘラと笑ってこそいるが、内心かなり焦りまくっていた。

 

 だってオッタルと会わせたら筋肉至上主義のモンスター喰らいに目覚めるとは思わないじゃん?というのがヘルメスの言い分だ。

 ぶっちゃけ、ベルの純真さというか染まりやすさがあれ程とは思わなかった。

 アスフィもそれには同意したが今回マジで死ぬかもしれない綱渡り続きだったのでいつも以上に鬱憤が溜まっている。

 

 魔道具で姿を隠し匂いも消してこっそりあの場面を見守っていたヘルメスとそのファミリアの団長、アスフィの3人。

 ベルが筋トレに嵌まりモンスターを食べようと試行錯誤し始めたのを焦りながら止めようとしたアスフィだがその肩を掴んで制止したのがヘルメスと団長ことリディス。

 混乱するアスフィを2人は必死になって説得した。

 

 曰く、こうなった以上全力で誤魔化さないと俺達が死ぬ。

 曰く、バレたらヘラの折檻を喰らう。命は無事でも尊厳がほぼ確実に死ぬ。

 曰く、マジで洒落にならない目に遭うから誤魔化すのを手伝えじゃないと死ぬ。

 

 ・・・取り敢えず色々な意味で死ぬと察したアスフィは2人の言う通りにすることにした。

 普段飄々としているこの2人がガチで焦っている時点で相当マズいということを察したからである。

 

 こうして、彼等の暗躍は始まった。

 アルフィアもしくはザルドがベルの状況に何時気が付くか解らないが、早急な対応を求められた3人はアスフィの魔道具をフル活用し、手分けして行動していたのである。

 

 

 アルフィアの魔法を軽減出来る魔道具が都合良くあった理由?

 そもそもアルフィアが襲来する事を知っていたから用意してました。

 

 魔法大国アルテナでも作成出来ていない空飛ぶ魔道具が学区で作られていた理由?

 この世で唯一空飛ぶ魔道具の作成が出来るアスフィがこっそり技術提供していたからです。

 

 アーニャが他の冒険者に会わず深層まで歌いながら潜れた理由?

 姿と匂いを消したリディス達がそれとなく誘導していました。

 ・・・なお、主神の命令でこっそりアーニャを護衛していたフレイヤ・ファミリアの団員がいましたが護衛対象の歌で勝手にダウンしました。

 

 なんでそんなに上手く色々と誘導出来たのか?

 正史ならいた筈のアルフィアとザルド、ディース姉妹等の幹部がいない闇派閥の連中なんて情報抜き放題でしたが何か?

 

 神の送還を見逃した理由は?

 だってあいつら仕事溜め込んだまま下界に来てたから。天界に残った連中絶対にマジギレしてるから合法的に送還出来るのはむしろ御の字でした。

 サボり神々の眷族達はそれとなく避難誘導、市民の護衛に回して戦線から遠ざけたので犠牲者はゼロです。

 

 ヘルメス・ファミリアも大抗争に参加していたのにそんな余裕あったのか?

 基本的にヘルメス・リディス・アスフィの3人で暗躍して他の団員は偶に手伝う程度であとは大抗争に参加していました。

 オラリオでの対応はヘルメスがやっていたので姿を周知されていましたがアスフィは都市外、リディスさダンジョンの対応に回っていたので2人の姿を大抗争中に見た者は誰一人いないけど誰も気が付いていません。

 

 学区の方にも当然根回ししてあってフレイヤ・ファミリアから幹部が一人クエストという形でオラリオから離れるように仕向けてます。第1級冒険者が一人いないだけで闇派閥として大助かり。このチャンスを逃す訳が無いだろうと確信して見事に大抗争の時期を調整し被害に関しても重傷者は出たが死傷者は0に抑えました。

 概ね予定通りに闇派閥はほぼ壊滅し、英雄候補達の成長にも繋がるという期待通りの成果を上げております。

 

 

「ただ3つ、アルフィアとか想定外があったんだよなぁ」

「まさか彼女が完治するとは・・・アルテミス様についても本当に肝を冷やしましたよ」

 

 予定だとアルフィアはもう少し後に学区へ来る予定だった。

 クエストで来たアレンが学区の面々と戦い意識改革を終え、ベルの生い立ちを偶々知ったバルドルが保護を兼ねて入学させた後に実は甥御さんがこんな感じで・・・と現状を伝えて学区へ誘導。

 その後、原因がオッタルである事を伝え飛行魔道具を貸し与えてオラリオへ送り出す。

 これが本来のプランである。

 

 想定外だったのはフレイヤとイズン、そしてアーニャの行動である。

 

「まさかイズンが黄金の林檎を持ってるとはなぁ・・・。バルドルも知らなかったらしく本気で驚いてたし」

「フレイヤ様とイズン様が親友だというのは貴方から聞いてましたが、まさか定期的に文通していてその時に黄金の林檎についても話の話題に挙げていたとは・・・」

 

 イズン曰く、本来は下界に降りた際に生活資金を得る為売る予定だったとの事。

 だがコミュ強アオハル女神は降りてそうそう現地住民と仲良くなりなんと10分足らずで生活基盤を築く事に成功した。

 結果、黄金の林檎は存在を忘れられてしまい最近ふと思い出したのでフレイヤへの手紙に何となく書いてしまったらしい。

 

 ───そんな物売ろうとするな!そして忘れるな!!

 それを知ったバルドルとヘルメスがツッコんだのは言うまでも無い。

 

「ザルドにはマジで悪いことしたよ。アルフィアより早めにオラリオ入りさせて英雄候補達の試練になって貰った後にアルフィアへの対抗戦力になって貰おうと思ってたらこれとか」

「交渉材料としてベヒーモスの毒に効く薬草を頑張って採取したのに【猛者】への怒りで死にかけるとは思いませんでしたよ。交渉以前に死なれたらどうしようも無いのでディアンケヒト・ファミリアへ卸さざるを得なくなりましたし」

 

 あれだけ苦労したのに全部無駄って・・・と砂漠で三日三晩採取に明け暮れたアスフィの目には涙が浮かんでいた。

 現状ただ一人飛行魔道具を作れる・使えるということで都市外担当になってしまったが故の苦労。それが全く報われる事が無いのは辛すぎる。

 

「大災厄もなぁ・・・下調べでダンジョンに潜り込んだ所を偶々遠征中のアスフィ達が見つけたから気付けてそもそも誕生させないつもりだったんだがまさかああなるとは思わなかったよマジで」

「アルフィア対策の魔道具が無ければ死んでいたってあの団長が珍しく取り乱してましたよね」

 

 モンスターを発狂死させてダンジョンをガチギレさせる歌って何?

 万が一遭遇した時の為にと防音効果の魔道具を姿消しの魔道具と併用してアーニャの跡を付けていたリディスはえ、何これ?と混乱しながらも全速で地上へ戻り事の次第をヘルメスへ報告した。

 ヘルメスも混乱したがすぐに計画を変更。

 変装した団員に「『豊穣の女主人』の所の猫人がダンジョンに潜ってたけど大丈夫かな?」とミア母ちゃんの耳にさり気なく聞こえるように噂を流し彼女をダンジョンへ誘導した。

 ・・・まあ、何故か従業員の女の子とこれまた何故か【白妖の魔杖】も一緒にダンジョンへ突貫してしまったが。

 

 

「まあでもオラリオに関しては俺がいたからある程度対処出来ただけまだマシだったよ。問題はアルテミスの方、これに関しては距離があり過ぎてどうしようも無かったからアスフィがアドリブで何とかしてくれて助かった」

「そう思うのなら休みを下さい、1ヶ月くらい。ホントに過労で死にそうなので」

 

 据わった目で言うアスフィ。

 ヘルメスとしても今回はかなり疲れたしアスフィに途轍もなく苦労を掛けた自覚があるので何だったら2ヶ月くらいは休ませてやりたい。

 だがしかし

 

「流石に今の状況で休ませるのは難しいよアスフィ。オラリオの復興に冒険者は駆り出されてるし、そもそも殆どの店が休んでるから遊ぶことも出来ないだろう?」

「ホームに引き篭もってひたすら寝て回復したら研究に没頭するつもりなので大丈夫です」

「いやー、流石にこれ以上アスフィの姿が見えないと『あれ?そういえば大抗争中に【万能者】見て無くね?』って気付く奴が確実に出てくるから寧ろ今の疲労困憊アスフィを周知させて『ああ、魔道具作りで缶詰めだったんだな』って思わせとかないと後が怖い。という訳で今から最後のデスマーチスタートです、終わったら休めるから頑張ってくれ!」

「いっそあの時制裁された方がマシだったのでは?」

 

 アスフィの苦労はこれからだ!

 ・・・等と口にしたら絶対にマジギレされるので流石に口にはしないヘルメス。

 取り敢えずこれ飲んで頑張れとアミッド特製栄養ドリンクを3ダース程手渡した。

 

 

 

 

「・・・しかしアルテミスの方は本当になんでああなったんだ?」

 

 隠れて様子を見ていたアスフィから報告を受けたヘルメスは思わず宇宙猫状態になってしまった。

 改めて振り返ってみても訳解らなすぎるだろアレ。

 

 





 はい、実は1番やらかしてたというか原因はヘルメスでした。
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