しばらく読みかえしたりせず想像ばっかしてたからズレがあるかも。
『白カブトムシは諸刃の少女の影をみる』
ーー一体これが、彼にとってどんな記憶だったのかを私は知らない。
学園都市第二位、垣根帝督。
そのほんの一部の記憶を引き継いだだけの私には、それが何なのかわからない。
ただ頭の片隅にふと流れ出すのだ。
そんなもの見た事もないけれど、寂れた古い映画館で薄汚れたスクリーンに映したら、きっとこんな感じだろう、という具合で。
不確かに、不鮮明に、でも強烈に。
今も目の前で色鮮やかに笑顔を咲かせるアホ毛の少女と金髪の少女に、どうしても重なるのだ。
その度不安になる。きっと経験があったんだろうと思う。
ーー失うのではないか、と。
そして私は言い知れぬ不安を覚え、手繰り寄せる記憶すらないことに暗闇をみる。
守ると決めたその時、立っていたそこはとても脆かったのかもしれない。元々誰かを守れるような大層なものでは無いのかもしれないと、それが不安だ。
“いつかまたここも崩れてしまうのかもしれない”
その想像だけで、もう足元が崩れていくような気がする。
それと同時に声を聞く。
汚れたスクリーンと錆びたスピーカーで上手く聞こえないけれど。
か細い声で告げられたそれを絶対に忘れないと心に決めたような気がする。
満足気な顔をして、頬に添えていた細い手からも力が失われて、命が消えて。
今すぐ何もかも握りつぶしてしまいそうな遺憾に掻き乱されて、また失ったと無力さを痛感したような。
「✗✗✗✗✗〜!はやくしないと置いていっちゃうぞってミサカはミサカは急かしてみる!」
「にゃあ!✗✗✗✗✗、限定品は絶対に手に入れるのだ!」
無邪気に笑う少女達に、同じ年頃の知らない少女が重なる。
笑顔な少女達とは違い、不健康を絵に描いた様な細い肢体が、感情の宿らない瞳が、肩紐の落ちたワンピースが、サイズの合っていないジャージとブーツが、無作為な黒髪が。
重なるのだ。どうしても。
でもなんとなくわかっていた。
断片的な記憶からでもその少女がもう、いないことを。
だから、普通のご飯を食べただけで滅茶苦茶で下手な感情表現をすることも、ヘッドギアの少年に理不尽をかますことも、掴みどころのない金髪のドレス少女に世話を焼かれることも、ハーフツインのコミュ障スナイパーとのコミュニケーションに困ることも。
そして主の輝く白い羽に瞳を輝かせることも、無い。
ふわふわと視線をさ迷わせ、少女達に足並みを揃えようと踏み出した。
忘れないと誓ったはずのその誰かの存在さえ失われた世界で、白い私は色褪せたグレーの記憶と眩しいくらいに続く今の狭間に、影をみる。
それは細くて、危なっかしくて、脆い少女の形をしている。
最後まで読んでいただきありがとうございました。