遊戯王GX もう一つの世界   作:ウャーユ

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二話 アカデミア入学! 邪念の胎動

アカデミア合格が決まり、今日アカデミアで入学式が行われる。

アカデミアは孤島だから、船で向かうことになっているのだ。とは言っても俺はちょっとした有名人らしいので部屋に引きこもっていたのだが……

「どこまで行く気なんだよ……」

「いいから付いて来い」

突然部屋にやってきた凛に引っ張られているのである。ああ、デッキ調整まだだったのに……

「なんだよ、目立ちたくないから部屋にいたのに……」

大体俺といると目立つぞ? というと凛はそっぽを向いた。なんなんだ?

「それは分かってる……けど少しくらい私の相手をしろ……」

「ん? 何か言った?」

凛が何か言ったのは分かったが声が小さくてよく聞こえなかった。凛が小さな声で何かを言うこと自体珍しいが。

「なんでもない……ここならあまり人もいないし、風も気持ち良いな」

と、気付けば外まで出てきていた。確かに人は少ない。これなら騒ぎになることはないだろう。

「そういえばさ凛、お前ホントにオシリスレッドでいいの? 女子って無条件でオベリスクブルーに入るんだろ?」

せっかく二人きりなんだからずっと疑問に思ってたことでも聞いてみるか。

アカデミアではオシリスレッド、ラーイエロー、オベリスクブルーの三つがあって、赤黄青の順でランクが高く、寮の質なんかも大分変わると聞いている。

通常は筆記・実技試験の結果でどこに配属するか決まるのだが、女子は例外で全員オベリスクブルーらしい。だというのに凛は今、オシリスレッドの制服を着ている。

「いい。私に青は合わないからな。赤のが好きだからオシリスレッドにして貰った。それだけだ」

「そんな理由かよ……」

ああ、と何故か誇るような顔をしながら凛は海を眺めている。そんな理由でブルーを蹴った女子はコイツくらいなんだろうな……

「それを言うなら恭介だってオシリスレッドにいる。本来ならラーイエローだろう、何故オシリスレッドに来た?」

「んー? そりゃ下から這い上がるほうがやりがいが……」

「真面目に答えろ」

あ、バレたか……まあ俺ってそんなチャレンジ精神豊富じゃないし、凛とは付き合い長いもんな。

「はいはい……実際俺は元々オシリスレッドって通知が来たしな」

「恭介が? 何かの間違いだろ」

俺だってそう思ったよ。筆記もそんなに悪くないし、実技だって危なげなかったし。

「多分シンクロ使ってるからじゃないか? 正規な方法じゃ手に入らないものを使ってるからとかそんなん」

「ああ、それはまあ、ありえるな……」

なにやらブツブツ言い始めた。大方夜依姉への愚痴なんだろうな。離れててもやっぱ仲は悪そうだ。

「まあ俺はレッドで良かったと思ってるよ」

「ん? なぜだ?」

そりゃだって……

「凛と一緒だからな。お前といるほうが何かと楽しいし」

最初はオシリスレッドなんかーと思ってたが凛がいるなら別だな。知ってる顔がいるほうが気が楽だし。

「そ、そうか。私といれると嬉しいのか……」

今度は顔を赤くしながらブツブツ言い出す……何か怒らせるようなことしたのか?

「おい凛、お前……」

「あー、いたいた!」

ん? 誰か来たのか……というか足音からすると"いた"ってのは俺のことか? ああ、面倒になりそうだ……

「なぁなぁお前だろ? シンクロ召喚したのって!」

声の主を見やると……やたら元気そうな奴がいた。服装からするに俺と同じオシリスレッド新一年生ってとこか。

「ああ……」

「すっげーな、あんな召喚方法があるなんてさ!」

やけにテンション高いな……凛は我関せずを貫いてるし……

「おいおい十代、いきなりすぎて彼も困っているぞ」

「そうっすよ。アニキはいきなりすぎるっす」

と、あとから二人やってきた。レッドとイエローか……

「あ、悪い。俺、遊城 十代って言うんだ! よろしくな!」

「柊 恭介。同じレッド生みたいだし、こちらこそよろしくだな」

手を差し伸べてきた十代と握手する。これならとりあえず暇するってことは無さそうだな。

「ボクは丸藤 翔っす」

「三沢 大地だ。俺はラーイエローだが、これからよろしく頼む」

「よろしく……って、三沢って筆記一位だったあの?」

ラーイエローの青年、三沢の名前には聞き覚えがある。確か筆記試験で唯一満点をとった生徒だったはず。当然受験番号は一番だったし、デュエルの腕も確かだった。

「おや、有名人の君に覚えて貰えるなんて光栄だな。まあ試験は試験。これからが本番さ」

へぇ、自慢とかはしないのか……下手に自慢されるよりいい印象を受けるな。

「有名人はやめろ……ていうかそんなに有名になってんの?」

「もちろんっすよ! シンクロ召喚を使うのは恭介君だけっすから」

はぁ……やっぱり盛大に使っちまったしなあ……

「あまり目立つのは好きじゃないんだけどな……」

「まあ諦めろ……ところでそっちの彼女は君の知り合いかな?」

「彼女? ……あ」

そういや凛といたんだったな。この三人が来てから我関せずといった感じでずっと海を眺めてやがるが……

「なんだ? 違うのか?」

「ああいや、知り合いだ……おい凛」

「……なんだ、用がないなら呼ぶな」

ちょっと呼んだだけで不機嫌になるなよ……まあ凛は気に入った相手以外にはいつもこんな態度だし、今更だけどな。

「まあ別段用はないかな……でも挨拶くらいしたらどうだ? 三年間一緒に暮らす仲間だし」

「……火斑 凛。よろしく」

渋々といった感じで自己紹介する凛。さすがに三人ともその態度には好印象を持ってないようだ。ったく……

「悪いな、コイツったら初対面の奴には大抵こうなんだ。気にするなってのは無理だろうけど、多めに見てやってくれないかな?」

「なんだその言い方は。まるで私が手のかかる子供のような……」

どうどうとなだめる俺に食ってかかる凛。さっきまでとは打って変わって感情を出している彼女に、無愛想なだけではないと分かったのか三沢は笑っていた。

「まあいきなり仲良くは難しいからな。これからよろしく……ところで火斑はなんでレッドの服を着ているんだ?」

「あ、確かに」

「気になるっす」

凛は、なぜか胸を張りながら

「ん? それはだな、恭介がどうしても私と一緒がいいと言って聞かないからだ」

堂々と嘘を言い放ちやがった。

「……って、何普通に嘘言ってんだよ」

「なんだ、私と一緒は嫌か?」

ああもう、面倒くせえ……

「話をややこしくするな……凛のは好みだよ。なんかブルーは好みじゃないらしい」

「ふーん……そんな理由でレッドに来るなんて珍しい奴だな」

「そうか? まあ、これからよろしく頼む」

それだけ言うと凛はまた海を眺め始めた。言うことは言ったということか。

「ったく……っと、そろそろ着くだろうし、デッキ取りに行くか」

「そっか、じゃあまた後でな!」

十代達と分かれて、俺はデッキを取りに戻ることにした。

 

 

 

「私が寮長の大徳寺だにゃー」

入学式を終えたレッド寮では新入生歓迎会が開かれていた。まあどこでもやってるんだろうけど。

「ちょ、ちょっとアニキ……」

んで寮長の大徳寺先生が挨拶をしているというわけだが、一人全く話を聞いておらず、それどころか……

「翔、お前も食えよ。メッチャ美味しいぜ!」

寮長の話をスルーしつつ食事をしていた……いやさすがに自重しろよ……

「まあまあ。別に気にしないのにゃ。でも話は聞いてほしいのにゃ」

と、顔を覗かれてさすがの十代もひるんだのか食事の手を止めた。この先生、案外やるのかも。

「まああまり長く話しても仕方ないにゃ。それに十代君は待ちきれないようだし、もう食べていいのにゃ」

「よっしゃ! いただきまーす!」

その号令と共に十代は勢いよく食事を再開した。その他の面子はあまり箸が進んでないようだ。

まあ理由は二つだろうな。まず一つがレッド寮がいわゆる"落ちこぼれ"の入る寮だと言われているからだろう。もう一つは……

「先生、一つ質問いいですか?」

「はいにゃ。なにかな?」

食事を一旦やめ、隣で黙々と箸を進めている"コイツ"を指差しながら

「こいつ女子なんですけど、部屋はどうなってるんですか?」

恐らくこの場の全員――十代は気にしてないかもだけど――の疑問を口にした。

「もちろん一人部屋なんですよね? さすがに男と同室はマズイでしょうに」

「あー、そのことについてはだにゃ」

と、唐突に大徳寺先生が真面目な顔をしだした。何か問題が発生したのか? にしても凛、お前は箸を止めて少しはこっちの話を聞け……

「な、何か問題が?」

「そうなのにゃ。実は部屋が足りなくて一人部屋を用意できなかったのにゃ」

……………………は?

「ち、ちょっと待って下さい! てことは凛が男と同室ってことですか!?」

「申し訳ないけど、そうなるにゃ。あ、でもブルー寮でなら部屋を貸して貰えると思うにゃ」

な、なんだ安心した……それならそうと最初に……

「……私と同室の男子とは誰なんですか?」

ようやく話に入る気がでたのか、凛も真面目に大徳寺先生に問いかけていた。

「えーと……火斑さんと同室なのは、柊君なのにゃ」

……って俺かい!? あ、でも凛がブルーに行くなら運がよければ一人部屋……!?

「よし凛、お前はブルーに……」

「恭介ならいい。私はレッドに残る」

「はぁ!?」

何言い出してんのこの子!? そこは素直にブルーに行くとこだろう。あ、周りから殺意の眼差しが……なんだかんだで凛は可愛いし、男子だらけの中にいる一人だけの女子だしな……

「俺でもマズイだろ!? 色々問題が起きたら大変なんだよ! 特に俺の命が!」

なんとかいして凛を思いとどまらせないと大変なことになる。主に俺の社会的立場と命が!

「何をそんなに慌てる? 同室で暮らすなど、これまでと何一つ変わらないだろう」

「おいぃ!?」

何さらっととんでもないこと暴露してんだよ! 確かに口止めはしてないけど、常識的に考えてそんなこと口に出すんじゃねえよ!

「え!? 恭介と凛って一緒に暮らしてたのか!?」

「ほ、ホントっすか!? 羨ましいっす……」

周りの野朗共が騒ぎ立てて煩い。あと視線だけで殺されそう……

「ああ。恭介の家庭の事情もあってな、ほぼ同居同然だったな」

「同居ならな! さすがに同室ではなかったろうが! ……あ」

しまった、墓穴を掘った。今俺、同居してたことを認めてしまったよな……

「えーと、ですね……」

背中に突き刺さる殺意のこもった視線……ダメだ、ここにいたら殺される……

「あー……そ、そうだ荷物の整理しなきゃ!!」

「あ、逃げたっ!?」

と、とにかく逃げるしかない! そう思った俺は脱兎のごとくレッド寮から逃げ出す。

荷物の整理とか言ったがそんなのは嘘だ。寮を出てあてもなく駆け出す。どうせ地図があるんだし帰ることは可能だろう……

 

「はぁ、はぁ……」

無我夢中で走っていたら森の中に来ていた……地図を確認するとレッド寮からは結構離れているようだ。

さすがに追ってこないとは思うが念のため少し時間を潰してから慎重に戻るか……

「ったく、凛の奴……」

何考えてるんだあいつは……俺、なんかあいつを怒らせるようなことしたか? ……ダメだ、さっぱり思い当たるフシがない。

「……まあ部屋のことは戻ってからでいいか。十代か翔の部屋にお邪魔させて貰えればいいんだけど」

今日は厄日だ……入学初日からこんな目に合うなんてな……。さて、どうすっかなー。風に当たってるだけってのも暇だし……

「ん……?」

なにか暇つぶしになりそうな物はないかとキョロキョロしていると、何かが目に映った……木に隠れながらこっそりと覗くと……

「……人? でもアカデミアの生徒でも教師でもなさそうだな。制服着てないし」

なによりフードにマントを着けてるなんてどう考えても不審者のそれである。入学初日から不審者……やっぱり今日は厄日だ。

にしてもアカデミアの警備はどうなってるんだ?

「とりあえず先生に連絡……って、連絡先わからねえな」

普通なら寮長への連絡先くらいなら教えてもらえそうではあるが、俺は突発的に逃げ出してきたからな……荷物ならあるけど、どうせデュエルディスクとデッキ及び予備カードくらいだし……

(……とりあえず見張っとこうかな。どうせ暇だし、後で先生に報告する時にも情報は多いほうがいいし)

そうと決めると見つからないように隠れて……

ピピピピピ……

「っ!? 誰だ!?」

(げっ!?)

こんな時にメールだ……一体誰だよ、くそっ……

「そこにいるのは分かっているっ! 出て来い!」

ちっ、完全にバレたな……仕方ない、出るか。出なくてもどうせ見つかるだろうし。

「……ただの学生だよ。それよりアンタこそ誰だよ、不審者さん。既に学園には連絡したからな。大人しくしてたほうが身のためだぞ」

連絡したってのは嘘だ。こんな即席の嘘に気付けないバカならいいんだが……

「ほう、その割には目立つ着信音だな。それに連絡したならさっさと立ち去ればいいものを……」

あ、やっぱバレた……

「……で、何してんの? ホントに人呼ぶぞ?」

「くっくっく……そうだ、お前アカデミアの学生なんだよな? なら俺とデュエルだ」

…………はぁ?

「…………立場分かってんの? 確かに連絡はしてないけど、今すぐ連絡取ることも出来るんだぞ?」

そもそも何故いきなりデュエルなんだ……

「それは困るな。なら連絡される前に口封じしなきゃな……まあデュエルするっていうなら別だが……」

……デュエルしなければ始末するってことか? いかれてるとしか思えない。

「口封じよりデュエルのが優先って……何が狙いなんだ?」

「俺の狙い? そんなものはないな。俺はただデュエルがしたいだけなんだよ」

ダメだこいつ……ええい、ままよ!

「じゃあ俺とデュエルしろよ。俺が勝ったら捕まってもらうからな。負けたら口封じでもなんでもしろよ」

「いいだろう。さあ、いくぞ!」

「「デュエル!」」

 

恭介 LP8000

男 LP8000

 

「先行は俺だ。行くぜ!」

(……って勢いでデュエルしちまってるけど調整したばっかで碌に試運転もしてないんだよな、このデッキ)

デュエルを受けたことを早速後悔し始める俺。いやでも受けないと最悪口封じだし……

「考えても仕方ないか……俺は《静寂のサイコウィッチ》を召喚してターンエンド」

《静寂のサイコウィッチ》……シンクロと同タイミングで"出るはず"のサイキック族モンスター。ガスタの一部もサイキック族なので、一部サポートを共有できるので試しに投入してみたのだ。

「ほう、"サイキック族"か。これはあたりかな……」

「なに? おいあんた、サイキック族を知ってるのか?」

バカな、まだ世に出てないカードだぞ? なんでこの男が……まさかコイツも持ってるのか? サイキック族……いや、シンクロを……

「俺のターンだな、ドロー。俺は《インヴェルズの先鋭》を召喚」

《インヴェルズの先鋭》……聞いたことのないカードだな。インヴェルズの~ってことはカテゴリなのか?

「バトル。精鋭でサイコウィッチを攻撃」

 

恭介 LP8000 → 7550

 

「くっ……だが破壊されたサイコウィッチの効果! サイコウィッチが破壊された時、デッキから攻撃力2000以下のサイキック族モンスター一体をゲームから除外し、次のスタンバイフェイズに特殊召喚できる!」

「……面倒なやつだな」

よし、この手札なら……

「俺は《ガスタの静寂カーム》を選択。ゲームから除外」

「ガスタ……俺はこのままターンエンド」

なんだ? ガスタと聞いた時、一瞬だけど笑わなかったか……? こいつ、一体何者なんだよ……

「俺のターン、ドロー。スタンバイフェイズだ、サイコウィッチの効果で除外していたカームを俺の場に特殊召喚」

カームは墓地のガスタをデッキに戻してドローできるモンスター。だけど今は墓地にガスタがいないから意味がない。が、場にいることには意味がある!

「メインフェイズ! 俺は《ガスタ・イグル》を召喚!」

出し惜しみなんかしてられる状況じゃないよな、これは

「レベル4《ガスタの静寂カーム》にレベル1《ガスタ・イグル》をチューニング!

大いなる風が新たな力を呼び起こす! シンクロ召喚! 《ダイガスタ・ガルドス》!」

これが俺の持ちうる最大の切り札、シンクロ召喚……よし、一気に決めるぜ。

「《ダイガスタ・ガルドス》の効果発動! 一ターンに一度、墓地のガスタモンスター二体をデッキに戻して発動。相手フィールド上の表側表示モンスター一体を破壊する。

俺はカームとイグルを戻して、《インヴェルズの先鋭》を破壊!」

よし、これで相手の場はがら空き……このまま攻めれば……

「くくく、シンクロ召喚まで使うとはな……」

「……何がおかしいんだ?」

なぜこいつは笑っているんだ? どう考えてもあいつのほうが不利なはず……口ぶりから察するにシンクロ召喚を知っている。だったらシンクロの強さは知っているハズなのに……

「なら俺は《インヴェルズの先鋭》の効果発動! コイツが墓地に送られた時、フィールドに存在する融合、儀式、シンクロモンスターのいずれかを一体破壊する!」

「な、なんだって!?」

融合、儀式、それにシンクロまで破壊するカード……奴も未発売カードを持っているとは思ったが、シンクロ対策のカードだなんて……そういえば

「……お前、さっきあたりだとか言ってたな。まさかシンクロモンスターが狙い……?」

「ああそうだ。まさかこんなにすぐシンクロ使いが見つかるとは思わなかったがな。まあいい、俺が勝ったらお前のそのデッキを貰うことにするぜ……」

くそっ、やっぱり今日は厄日だな……

 

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