カイドウ♀になった話   作:ぼほの

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短めで内容も薄め。ゆるして
 


10話

 白ひげとの争いの後、私は医療室で全身の傷を癒やしていた。 

 

 私の容体は一言で言えば重傷である。所々肉が裂け、そこから血が漏れ出ており、少しでも動けば体中の骨が軋む。頭痛も酷い。

 これほどの怪我の為、今の私は全身に包帯が巻かれて半ばミイラ状態。そこに幾つかの点滴を繋げられていた。

 

 まるで生死を彷徨うような状態だが、実のところ結構ピンピンしている。

 肉が裂けていると言いつつもその殆どは既に塞がっており、僅かに残った傷から流血している程度。

 骨が軋むと言いつつもそれだけであり、元々頑丈だったのもあって歩くどころか回し蹴りで岩を砕く事も可能だろう。でも頭は変わらず痛い。

 この異常な耐久力と回復力は、覚醒したゾオン系の特権である。

 重傷を負ってもなお大したダメージにならないという矛盾を生み出せてしまうのは流石と言うべきか。

 あの時リンリンがこの実を差し出してくれたのは大恩だ。いつかお礼をしたいものだ。

 

 まぁ、こんな風に平然としているが、ここに帰ってきた時は騒ぎになったものだ。

 「まさかあの船長が傷を負うなんて」だとか「化け物に傷を与えられる化け物がこの世に居るのかよ」だとか、そんな感じの事を中心に騒がれていた気がする。

 和服が真っ赤になるくらい血を流しながらそれらを聞いていると、誰も私の身を心配していない事に気が付いた。なんということでしょう。

 まぁ、みんな私は死にはしないと信頼してくれているのだろう。それは嬉しいけれど、それはそれでもしかすると私に人望は無いかも知れないと思ってしまう。

 

 そんな中、私の事を心配してくれる人もいた。

 我が娘ヤマトである。

 

 現在彼女は私のベッドの横に心配そうな顔で座っており、すぐ近くの机にはフルーツの入った籠が置かれていた。

 奇しくも私と同じ見舞い方法である。これが血は争えないってやつか。いやこれがスタンダードな見舞いだった。考えすぎた。

 

 なんて事で残念に思っていると、私の容体を見てヤマトは心底意外そうに

 

 「お母さんでも怪我するんだな……」

 

 と呟いた。

 この日何度言われたか分からないその言葉を聞いて、私は呆れたような口調で言った。

 

 

 「…はぁ、みんな私を買いかぶり過ぎです。私だって貴方達と同じ血も涙も流れる人間ですよ」

 「そうなの?」

 「どうして疑問形なんですか?」

 

 

 一体私を何だと思っているのか。

 頑丈さが自慢ではあるが、だからといって人間性を失っているわけではない。いや龍に成れる奴が何を言ってるんだとなるけども。

 でもその理屈だとゾオン系は皆人間辞めてる事になるし…いやロギアもか。なんならパラミシアだって人間辞めてる。悪魔の実の能力は皆人間辞めてるか。

 

 まぁ、その自慢の硬さも、白ひげの前にはあまり意味をなさなかったようだが。流石最強の海賊、やっぱ強えわ。

 一応船上だったのもあって大規模な攻撃をしてくることは無かったが、その分破壊力が凝縮された一撃を放ってくるのでハンデにならなかった。

 それを防御しようにも覇気の鎧を突破される。反撃しようにも覇気の鎧に阻まれる。力も覇気の強さも敵わない。

 一応幾らか傷を与える事が出来たが、一、ニ本の骨折と切り傷ぐらいだ。対してこっちは全身傷だらけ。格の差を実感する。強くなりたい。

 私はまだ齢30後半。まだまだ伸び代があるはず。だからきっと、いつか彼に追いつける。

 

 包帯が巻き付けられた腕を見て、私はそんな風に、やんわりと決意した。

 

 するとヤマトは突然思い出したかのように視線を足元に移して

 

 「そうだお母さん!リンゴ食べる?」

 

 と言い、彼女はそこに置いていた籠を隣の机に置いた。その籠にはリンゴがぎっちりと詰め込まれていた。

 私はどうしてそんなにリンゴがあるのかという質問が喉まで出かかるが何とか飲み込み、彼女に手を出して「一つ欲しい」と言った。

 

 それを聞いた彼女は嬉々と籠からリンゴを取り出し、私に差し出さずに手元の包丁でその皮を剥き始めた。

 私は彼女へ伸ばした手を引っ込め、その作業を見守った。どうやら剝いてくれるらしい。

 しかし、彼女は滅多に包丁を手にしない為か苦戦。数分後に出来たリンゴは凸凹であり、まるで二十面体のようだった。

 思ったように上手くいかない事に不服顔のヤマトを見て、私はそのリンゴを摘み取って口に運んだ。

 

 

 「……うん。おいしい。剝いてくれてありがとうございます。良い子ですね」

 「!…えへへ」

 

 そう言って頭を撫でると、彼女は嬉しそうに笑った。

 それに微笑ましく思いつつ、私は彼女の今後について考える。

 

 修行を始めてから早数ヶ月。

 その内容がハードだったのもあってか、始める前とは見間違えるほどに彼女は成長した。筋力は勿論、六式の一部をまだ未熟ではあるが使えるようになっている。流石にまだ覇気を扱えるようになったわけでは無いが、その片鱗は見えてきている。

 というのも、ここ最近、彼女を攻撃しようとすると、まるで読んでいたかのように避けようとするのだ。これは見聞色からなのか経験則からなのか。

 それに頭を叩いた感触が段々と硬くなってきているように感じる。武装色で無意識に防御しているのか、それとも叩かれすぎて石頭と化しているのか。

 何にせよ、彼女は着々と力を付けていっている。

 

 なので、もうそろそろ航海に連れて行こうかと思っている。

 もうそこらの海賊に出会っても安易に返り討ちに出来るくらいには強くなっているのだ。目を離した隙に息絶えている、なんて事は起きないはず。

 

 何て考えていると、彼女の方から質問が飛んでくる。

 

 

 「ねぇお母さん」

 「何でしょう」

 「誰がお母さんをそんなに傷付けたの?」

 

 

 やはり聞いてきたか。その質問は想定済みだ。

 

 

 「友人です」

 「え!?友達が!?友達なのに?」

 「…まぁ、少々やらかしてしまいまして。多分絶交ですね、あれは」

 

 

 逆にあの後普通に接してきたら異常だろう。「やぁ」と来たら間違いなく偽物だ。

 

 いやしかし、これで私は1人の友を失ってしまった。海賊という職業(?)柄、友人を作るのは難しい。おかげでもう残りは片手で数える程度しかいない。

 部下はたんまりといるが、彼らを友人として見るにはちょっと…。

 かといって何処かへ行って作りに行こうにも、私の顔は手配書にデカデカと載っているし超危険人物扱いされているので、無知な子供でない限り一目見れば“あの”カイドウだと気付くだろう。

 そうなれば大騒ぎ。とてもじゃないが親交を深めるなんて出来やしない。

 まぁ、一応私の情報が行き届いてない場所もあるにはあるが。

 

 私の名が知られていない場所といえば偉大なる航路(グランドライン)前の海、東西南北の4つの海だろうか。

 その中でも最弱の海と言われる東の海(イーストブルー)は、確か噂では悪魔の実がおとぎ話や伝説の物と思われていたはず。

 そんな海では、当然私の名など轟いているはずもなく、もし知ったとしても伝説上の人物だと思われるだろう。

 いっそのこと、東の海(イーストブルー)に行って友人作るのも悪くないかもしれない。

 戦闘面は全く期待出来ないが、酒を飲み合う仲にでもなれればそれで良い。

 少しワノ国を後にする事になるが、そもそも私はワノ国の支配とかは全て部下やオロチ達にやらせているので特に問題は無いだろう。

 

 一つ懸念点を上げるとするならば、私が遠征中に四皇クラスが攻めてくる事だ。リンリンはありえないが、白ひげは少し怪しい。

 ただあれからまだ1日しか経っていないし、この友達作りは何ヶ月もかけるつもりは無い。それほど心配する事は無いだろう。多分。

 

 うん。行くか。東の海(イーストブルー)に。

 

 何て決意しながらヤマトの方を見てみると、私はあることに気付いた。

 

 

 「あ」

 「?」

 

 

 そういえばヤマト、ボッチだった。友達居ないじゃん。

 

 どうしてだっけ。少し考えて思い出す。ああ、そうだ。

 彼女は部下や私以外と一切の交流が無い。つまり、生まれてこの方特別な時以外一度も外に出していない、いわゆる箱入り娘だったからだ。

 これでは友人が出来る方が不自然というものである。

 

 彼女がそのことで嘆いている所を見たことは無いが、心の何処かで憧れる気持ちはあるだろう。これを機に、ヤマトの友達作りに協力してみるのも良いかもしれない。

 もしその友人がライバルになれるような人材であればベスト。ヤマトの修行が捗るし、可能であれば仲間に引き込んで戦力アップだ。

 もしそうでなくても、初めての友人というものは、彼女にとって良い経験になるはずだ。それによって精神的に成長出来る事を祈ろう。

 

 

 「ヤマト。少し遠い場所に行ってみませんか?」

 「え、どうしたの?急に」

 

 

 急な質問にヤマトは困惑した表情で返した。

 そして少し間を置き、「んー」と考える仕草をして

 

 「行きたい」

 

 と答えた。

 私はその返答に満足し、ニッコリ笑って

 

 「じゃあ、行きましょうか」

 

 と抑えられない興奮を言葉に乗せて言った。

 

 

 

 




ほのぼの

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