カイドウ♀になった話   作:ぼほの

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また投稿が遅れてしまった。怖いねぇ。
シャンクスの性格が分かるようで分からん……。
 


13話

 「だっはっはっはっは!!!何だお前結構良いやつじゃねぇか!」

 「あっはっはっはっは!!!そちらこそ!何故だかいつも不機嫌なイメージでしたよ!」

 「はっはっはっは!!何だそれ!初対面なのに!」

 「「あっはっはっは!!」」

 

 私と彼――シャンクスは笑い合う。

 つい先程まで戦争でも起きてしまいそうなほど睨み合っていたのに、酒を一杯渡すだけでこれである。

 やはり酒は正義。筋肉ほどではないがかなりどんなことでも解決してくれる気がする。

 

 赤髪のシャンクス。

 彼は懸賞金10億4000万ベリーという中々の大悪党である。

 彼については新聞で知っている。定期的に新聞に載っては懸賞金をメキメキと伸ばしている、今最も注目を集めている海賊団だ。まぁ、これは私の主観だが。

 彼の噂も聞いている。何でも、非能力者だが並外れた覇気で敵を圧倒するのだとか。

 でも正直、その噂は半信半疑だった。実際は何かの能力者で、覇気っぽく見えただけなんじゃないかと思っていた。覇気だけでそこまで成り上がれる人なんて、そうそう現れないものだから。

 しかし、こうして実物を見てみると、その噂は嘘ではない事が分かった。彼の実力は本物だ。

 

 しかし、何故彼ほどの人物がこの東の海(イーストブルー)にいるのか。

 ここの平均懸賞金は200〜300万だぞ。場違いにもほどがあるだろう。

 ひょっとして彼は雑魚狩りをしに来たのだろうか?もしそうならとんだ大悪党だな。

 まぁ、37億ベリーの奴が何を言ってるんだと言われればそれまでだけども。

 

 なんて事を考えてる間にも、彼との他愛もない会話は続く。

 

 悲しかったこと、楽しかったこと、つまらなかったこと。それらを適当に記憶から引っ張り出して、感情に任せて喋る。

 それぞれに関連性も無ければ、今後に関わってきそうなほど重要なものもない。当たり障りない、ただの酔っ払いの会話だ。

 

 そんな風なことをぽろぽろ話しながら酒を飲み干す。直ぐに酒を補充し、その半分を飲み込む。

 たとえ後で二日酔いに苦しむ事になると分かっていても、私は持ってきた酒が尽きるまで飲むのを止めない。その酒もまだ山のように残っている。つまり、そういうことだ。

 

 シャンクスとの会話を楽しみながら、私は彼の直ぐ側を陣取る一人の少女について思う。

 その少女はジュースの入ったコップを両手に、私を睨み続けている。まるで、大切な何かを奪った者に向けるような目付きだ。

 

 少女の名はウタという。

 シャンクスが言うには、自慢の娘らしい。

 

 これを聞いた時は驚いた。お前、結婚してたのかと。

 ただ、言われれば納得出来る。何故なら、この子の髪色は赤色と白色をしているからだ。

 その2色は真ん中で綺麗に別れており、両親それぞれの遺伝子を等しく受け継いで生まれた事が分かる。

 赤はシャンクスからで、白は奥さんのものだろう。しかし、赤髪海賊団を見渡してみたが、それらしい人物が見つからない。

 本拠地や故郷に置いて来てるのだろうか。海賊は危険だからその島でじっとしていてくれ、みたいな。全然あり得る話だし、実際にそうしている海賊を見たことがある。多分彼もそうなのだろう。 

 それだと妻だけを置いて子供を連れて行く理由が分からないのだが……まぁ、プライベートな話にはあまり関わらない方が良いだろう。

 

 しかし、ウタの後頭部にあるリング状の髪は一体どういう構造をしているのだろうか。

 彼に自慢の娘と言われてひょこっと反応した事から、彼女の感情と連動しているのは確かだ。

 髪の毛を動かせるとなると、ひょっとしたら彼女、生命帰還が使えるのか?

 

 しかし、彼女との初対面の時、彼女の髪の動きを見て、共通の技を見せれば親近感が湧くのではと思って髪の毛を触手のようにウネウネ動かして見せたら、普通に引かれた。

 彼女曰く、気持ち悪いらしい。結構傷付いた。ちょうどその時は泣き上戸だったので、大声出して泣いてしまった。

 あれはもう黒歴史だ。今思い出しても顔が熱くなる。

 おかげで酔いが醒めてしまった。また酔いそうだけども。

 

 ただ、彼女に睨まれてるのはこれが理由というわけではない。

 もしこれで私を嫌ったのではあれば、睨むのではなく距離を置くと思う。

 では、何故私を睨むのか。それはズバリ、嫉妬だろう。

 

 彼女とはほんの少しの付き合いだが、これまでの行動を見るに、彼女はファザコンだろう。

 シャンクスに自慢の娘と言われて胸を張ったり、自己紹介するときに自分はシャンクスの娘だと誇らしげに言ったり、ずっと彼の側に居たりと、もうベタベタである。パパ大好きか。

 そんな子の前で、大好きなパパと知らない女が酒を飲んで楽しそうにお話をしている。

 もう軽い寝取られである。ウタの脳が破壊されてしまう。

 

 そんなわけで彼女は私を睨みつけるのだ。所謂「この泥棒猫っ!」というやつである。

 

 この状況は私にとってあまり良いとは言えない。

 折角の子供だ。出来ることならヤマトとお友達になって欲しい。フーシャ村は限界集落なのかと疑うほど子供が少ないので、絶対に確保しておきたいのだ。そうすれば晴れて二人目の友人だ。

 それに10億の海賊の娘なのであれば、才能も相当のもののはず。将来的にヤマトとの張り合いも期待出来る。

 そのためにも、母親である私をウタがこうも睨んでいてはならないのだ。

 

 なので、私は彼女のご機嫌取りをすることにした。

 

 別に揉み手をしながら媚びへつらうわけではない。

 露骨過ぎるし、子供相手に伝わるかどうかも分からない。

 私の尊厳も危うい。

 

 これくらいの子供は褒めていれば好感度がどんどん上がっていくものだ。

 シャンクスの事が大好きっぽいので、そのことも交えて言ってみる。こんな可愛らしい娘を持って、シャンクスは幸せ者ですね、みたいに。

 まぁ、あまりやりすぎると天狗になったり教育上よろしくない事が起きるのだが、他所の子なので問題無し。その時はシャンクスが頑張ってくれ。

 ダメ押しにジュースも奢っておこう。

 

 褒められたウタは気前良くしたのか、自分の歌を聞かせてきた。ちょろい。

 しかし、歌とな。確かに自分のことを音楽家と言っていたが、あれは本当だったのか。見栄を張って嘘を付いたと勝手に決めつけていたよ。

 まぁ、子供の音楽家なんぞ、“子供にしては”上手いってだけで、実際は大した事は無いだろう。

 

 そんな風に考えていた時代が、私にもありました。

 

 子供だからと舐めていた。

 彼女の歌声を聞いて、自分でもびっくりするくらい心を揺さぶられた。歌でここまで感傷的になれるのは、“記憶”と合わせても初めてかもしれない。前なんて殆ど覚えてないけど。

 一曲聞いただけだが、音楽界の頂点に立てるレベルの才能を感じざるを得なかった。

 シャンクスはこんな子を海賊船に乗せているのか。割と本当に幸せ者だな。

 

 でも、ヤマトの方が可愛らしいし愛らしいのであまり羨ましくは無い。健気だし、私の事を思ってくれてるし。

 むしろそっちが妬め。羨ましがれ。

 

 歌を歌い終わったウタは私の下に駆け寄り、「どうだった!?」と聞いてくる。

 私はあまりに予想外の事だったので咄嗟に言葉が思いつかず

 

 「うん、まぁ、すごかったですね」

 

 と微妙な感想しか言うことが出来なかった。

 流石にそれはよろしくないので、私はそれを誤魔化すように高速で拍手を始めたが、そのせいで斬撃が発生してしまい私の顔が斬りつけられた。

 指で嵐脚を放つ練習をしすぎたせいだろうか。最近ちょっと速く動かすだけで斬撃が出てきちゃう。こんなところで練習の成果出なくて良いから。

 ちなみに私は無傷である。

 

 しかし、つい出ちゃった斬撃が攻撃と勘違いされたらしく、シャンクスに少し睨まれている。ウタは何が起こったのか良くわかっていないようだ。

 私は酒を一杯飲んでからシャンクスに事情を説明した。

 

 すると、割と気安く許してくれた。

 当たってなければそれほど問題にはならないらしい。

 案外懐が深い。もし私だったら間違いなく熱息(ボロブレス)が出ちゃうね。

 

 彼の娘自慢を聞いていると、だんだん私もやりたくなってくる。

 あの子のあれが良い、これが良い、あんなことをしてくれた、そんなことをしてくれた。一度口を開けば止まらない自信がある。

 だからといってやらない理由にはならないが。

 

 私は愛娘について語る為に口を開こうとするが、その直前で違和感に気付く。

 

 その違和感とは、この村に存在する気配の違和感。

 足りない。何かが足りない。

 いない。誰かがいない。

 

 私は目を閉じて集中する。見聞色のレーダーを辺りに行き渡らせる。

 すると、村の全てが手のひらにあるかのように、その形が隅々まで分かるようだった。

 

 分かった。違和感の正体が。

 あの子だ。あの子が居ない。

 ヤマトが居ない。気配がこれっぽっちも感じ取れない。

 

 目元が熱くなってくる。

 

 どうして?どうして、あの子は居なくなっているの?

 私、何か間違ってた?

 あの子の為に行動し続けていたつもりだったけれど、もしかして迷惑だった?

 

 そんなマイナスな考えが浮かぶ。

 でも、気の所為でなければ、私の行動に彼女は不満に思っているようには見えなかった。

 嬉々と協力してくる事だってあった。というより、そのほうが断然多かった。

 

 なのに、なのに、なのに。

 

 「う、うぅ うわああああああああああああああああああああああん!!!!

 「うお!?ど、どうした急に!?」

 

 考えたくもない想像に私の感情は爆発し、大粒の涙をボトボトと流しながら大声で泣きわめいた。本日二度目の大号泣に、またかといった空気が流れた気がした。

 手から酒壺が離れ、その中身を溢しながら地面に横たわる。手の甲で涙を拭くが、いくら拭いても溢れてくる。

 皮膚は鱗へ変化していき、見る見るうちに身体が肥大化していく。

 そして、天高くそびえ立つように龍の肉体が昇り、私は辺りで生まれた焔雲を掴むと、空中で静止した。

 

 止まらない涙をうっとおしく思う暇も無く、私は天を仰ぎ嘆いた。

 

 「ああ、どうしてヤマトは何処かへ行ってしまったのでしょう……私は私なりに彼女に尽くしたはずです…なのにどうして?」

 「耐久力テストとして大砲十門の一斉砲撃は流石にまずかったのでしょうか?ですが、その程度耐えてもらわねばおでんになど到底なれませんし…無事耐えてましたし…………はぁ、分かりません…………」

 

 そこまでぼやいて考えつく。

 

 「まさか誘拐?だとすれば……………許さない」

 

 まだ見ぬ誰かによる犯行にギリギリと歯軋りをする。

 きっと私の目は充血してるだろう。これは決して泣いていたからではない。

 

 私は彼女が居そうな場所を見つけるべく上空で島中を見回す。

 最初に目に止まったものはゴア王国。少し距離があるが、全然可能性はある。

 しかし、私の勘が言っている。そこではない、あそこにいると。

 それは煙を吐くゴミの山。

 誘拐犯がいるならあの場所だろう。ゴミはゴミ山に住み着く。

 あそこにいけば確実にヤマトを見つけられる。誘拐犯だって。

 

 私は地上に意識を集中させながらゴミ山に向かう。

 もし道中にヤマトが居て気づかなかったなんて事が無いようにするためだ。

 

 つい先程まで晴天だったが、今は暗い雲が空を覆っている。

 雷が鳴り響き、雨も降っていた。

 

 

 

 




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