カイドウ♀になった話 作:ぼほの
Q.投稿間隔が広がってないか?
A.いやー…ほならね?私がアイディアをポンポン出せる人になれば良い話でしょ?私はそうなりたいですね(切実)
ゴア王国。
それは
汚れ一つ無い綺麗な町並みに、清く正しい性格を持った善良な人々。
しかし、その感情はそう長くは続かないだろう。表は確かに美しいが、ほんの少し裏を見てしまえば、その美しさを得るための犠牲を知る。
そして気付くのだ。――汚れ一つない国など存在しないと。
そこは国の汚点とされるモノが集まる場所。ゴア王国のゴミ捨て場。
ゴミの集まるここの空気は当然ながら酷く汚れており、さらに日光による自然発火によって絶えず煙を上げている。
そこに住まう人々に秩序などあるはずもなく、殺しや盗みが横行し、ゴミの集まるこの場所に清潔さは当然無く、医者も存在しないため、皆何かしらの病気を患っている。
ここに住む者たちは貧困層や犯罪者のみであり、明日食べるパンを求めて上級国民のゴミを漁る日々を送っている。
彼らの目に希望の光は無く、彼らはただ生きる意味も分からず生きるために必死に足掻いていた。
そんな彼らを見て王族貴族らは鼻で笑う。
埃一つとして許さない清潔さを持つ町々と高貴なる精神を持つ我らがいるこの国に“汚れ”など存在してはならない。
だから我らは
そんな場所を前にして、少年と少女は立ち尽くしていた。
片や全く知らない場所に辿り着いたことへの驚きから。
片や海に向かっていたはずなのに全然違う場所に辿り着いてしまったことへの困惑から。
―――まさかこの島にこんな場所があるなんて。フーシャ村とはまるで毛色が違う。
僕は漂う酷い悪臭に顔をしかめながらそう思った。酷い臭いだ。思わず鼻を摘んでしまう。つい先程までの爽やかな自然の臭いが嘘のようだ。
しばし立ち尽くした後、僕は考える。
このまま直進するか、それとも道を変えるか。人にフーシャ村の方角を聞くのもいい。
少し考えた後、僕は人に聞くことにした。ジャングルを抜けて、折角人を見かけたのだ。そうした方が効率が良いだろうと思ったのだ。
僕はゴミ山に足を踏み入れることにした。
先程までの土と落葉と落枝で出来た自然ものの地面とは違った、薄汚れたゴミで出来た凸凹な床を踏む。踏み心地を言うならば、出来の悪い足つぼマッサージのようだ。
ルフィも僕に続いて足を踏み入れ、不安定な足場に一度転びそうになるも何とか立て直し、その後は何事も無かったかのように進んだ。
少し歩くと、ゴミ山に男が腰掛けているのに気付いた。
男は痩せ細っており、顔面蒼白で如何にも不健康そうだった。服もボロボロで酷く汚れている。
僕はそんな第一村人に尋ねた。
「ねぇおじさん。フーシャ村って知ってる?」
「フーシャ村ァ…?知らねぇよンな場所!それより嬢ちゃん綺麗な服着てんなぁ、ちょっとそれくれよ!」
「うわっ!?」
そういって男は僕の服を引き剥がそうとしたので、僕は咄嗟に金棒を取り出し思いっきり殴り飛ばした。
男は嫌な音を出しながら吹っ飛び、向かう先の障害物に身体の至る所を打ち付けながらゴミ山に隠れて見えなくなった。
まさか突然襲いかかってくるとは。この反応は予想していなかったのでドキドキだ。胸を抑えて心臓の沈静化を図る。着崩された和服を整え、パッパと手で払う。
声をかける相手を間違えたか。次はもう少し温厚そうな人を選ぼう。
僕はそう反省し、それらしい人を探し回ることにした。
しかし―――。
「お前金持ってそうじゃねェ…ギャァッ!!?」
「お前みてェなガキを売れば金にな…ブッ!?」
「おい止まれ!ここはブルージャム様のナワバブッ!?」
中々温厚そうな人が見つからない。
場所が場所なので仕方ないといえば仕方ないが、それでも少しぐらいは居るだろうと思っていた。
だがしかし、今まで会った住人は皆乱暴で、悪人顔。僕の理想としてはガーデニングでもしていそうな温和な顔を探しているのだが、それに当てはまる者は誰一人として居なかった。
「僕って理想が高いのかな…?」
「?」
つい、そんな事を呟く。そんな僕の呟きに、ルフィは首を傾げた。
その呟きは真実だ。
先程言った通り、
ここは妥協をするべきだ。ヤマトはそう思った。
温厚そうな人から、顔付きは兎も角、敵意があまり無さそうな人へハードルを下げ、再び人を探し回った。
ハードルを下げたおかげで先程までが嘘かのように早く目的の人を見つける事が出来た。それも複数人。
僕は内心嬉々として尋ねたのだが、なんとフーシャ村の事を知っている者は誰一人として居なかった。
おかしい、と僕は思う。
ポツンと一軒家が建っているわけでもないのに、どうしてフーシャ村を知る者が一人も居ないのか。まさか忘れ去られているとでもいうのだろうか。
しかし、あの村も小さい訳では無い。港もあって、船も何隻か泊まっている。とても忘れ去られそうにない大きさだ。
(いや、でも)
こことフーシャ村は山で分けられている。フーシャ村の存在を確認するには、あの大きなジャングルを抜けなければならない。
見渡す限り、ここらの人にそのようなことをする体力があるようには見えない。
だとすれば、これ以上ここで聞いていても無駄だろう。
どうすれば良いのだろうか。またあの山に戻って探してみるべきか。
この山を一直線に進んでいけば、フーシャ村に戻れるかもしれない。しかし、僕には方向感覚を保ったまま森を抜けられる自信が無い。
またここに戻ってくるかもしれないし、全然知らない場所に迷い込んでしまうかもしれない。前者はまだしも後者は出来る限り避けたい。
「うーん…」
僕はゴミ山の向こうにある大きな壁を見やる。
その壁は高く、その先にいる人達がここの住民を拒んでいる事を表しているようだった。
その壁の奥には岩壁があり、その上に豪華な建物が顔を出していた。きっとあそこが国の首都だろう。
ここらの人が分からなくても、あそこに住む人なら分かるかもしれない。
首都ということは、偉い人がいるということ。お金にも体力にも余裕があるだろうし、この島の地図を持っていてもおかしくない。
闇雲に探し回るより、あそこにいって聞きに行ったほうが良さそうだ。
そう思った僕は、ルフィを背に乗せて壁の方へ小走りで向かった。
あまり時間が無い。いつお母さんが私を探し出してもおかしくない。もう探し始めてるかもしれない。大惨事になる前に戻らないと。
そんな使命感を持って足を進めていく。
「何処行くんだ?」
「あっちの街に行ってみようと思う」
「でも壁があるぞ?」
「そうだね…。多分、通らせてくれないだろうし……飛び越えるか」
「おう。頼んだ!」
「頼まれた!」
そんな会話をしてお互いの気を楽にする。ルフィは元々張り詰めていないから効果は無さそうだが。
壁の前で足を止める。辺りを見回して誰も見ていないことを確認し、内心で胸を撫で下ろす。
息を吸い、足に力を込める。そして息を一気に吐き、地面を強く蹴った。
僕はルフィを背に乗せたまま高く飛び上がり、無事に着地。風に煽られながら、城下町を見下ろす。
壁に近い場所には普通の庶民的な家が並んでいた。そこの住民はやや汚れた服を着ており、銃を担ぎ煙草を吸っていた。ガラの悪い連中だ。
ただ、そういう者ばかりというわけでもないらしく、少し遠くに目をやればごく普通の平民の姿も確認出来た。彼らは街中を歩き、散歩や買い物を楽しんでいるように見えた。
これだけならば豊かな街の風景なのだが、その直ぐ側には目を伏せたくなるようなゴミ山があると思うと、僕は何か濁ったものを感じた。
奥の方に目をやると、派手な装飾をした大きな家が幾つも建っており、一目でお金がかかっている事が分かる。あそこがきっとお偉いさんの居住区だろう。
僕は適当な建物に当たりをつけ、足に力を込めた。
―――ガシャン!
「な、なんだ!?」
派手にガラスを割って登場した僕たちに、貴族らしき男がびっくりしたように声を上げた。
ガラスが散らばり、その一つ一つが軽い音を出して転がった。それらは逆光で光が反射し、まるで宝石の海のようにキラキラと輝いた。
僕は立ち上がり、指に幾つもの宝石を身に着けた貴族らしき男に聞いた。
「こんにちは!フーシャ村って知ってる?」
それを聞いた貴族らしき男は一瞬何を言われたのか分からないといった表情を浮かべ、少しを間をおいて着火したように顔を真っ赤にして怒鳴った。
「人様の家のガラスを突き破って言う事がそれか!!?まったく貴様の親はどんな教育をしておるのだ!!!恥を知れ恥を!!!」
「それは…………………………ごめん」
「ごぉめぇん!!?何だその低俗な謝罪の仕方は!?誠意が足りないぞ誠意が!!しかも貴様は見るにゴミ山出身!ああ、汚らしい!!その汚れた足で我が清潔な敷地内に踏み入れるな!!―――おい!衛兵共!!はやくここにいるゴミを掃除しろ!!」
その言葉の後に、素早く、それでいて丁寧に扉が開き、衛兵が3人ほど入っていく。それに貴族らしき男は「さっさとしろ!」と怒り、忌々しげに僕たちを指さした。
衛兵達は迅速に僕たちを拘束しようする。銃を持っていても撃ってこないのは、血でこの場所を汚さないためだろう。
衛兵達が迫ってくる。床に散らばったガラスのは欠片が踏まれてパキパキと小さな音が鳴った。
僕は棍棒で反撃しようとする。が、ルフィを背負っているため両手が塞がっていることに気づく。ならばと嵐脚等で攻撃することも考えたが、背負われているルフィに強い負担がかかることが目に見えているのでやめた。
ここで僕は覇王色の覇気で気絶させることを思いつく。これなら相手に傷を与えることもなければこの家を壊すこともない。下手に攻撃するよりもスマートだ。
よし、早速威圧しようと衛兵達と向き合う。
その瞬間―――背中に寒気が走った。
ブワッと汗が噴き出した。後ろに何かいる。それも強大で、何千何万と顔を見合わせた事があるような慣れ親しんだ気配。時と場所が違えば喜んでいたかもしれないが、今の僕にとっては最も恐怖するものだ。
まさか、そんなはずは。いやしかし、この気配は。そんな風に、分かりきっているのについ勘違いだと期待してしまう。
僕は目前の唖然としている衛兵達のことなどすっかり忘れ、強張った首を無理矢理動かしてゆっくりと振り向く。
「………………お母…さん」
そこには何百mにもなる龍が、その場を、空を支配するかのように浮遊していた。
怒ってる。それも、激怒と言うべき程に怒り狂っている。
彼女の目は、目の前にあるもの全て焼き尽くさんとするほどに鋭くなっていた。
つい足が震える。少し目が涙ぐんでしまった。第三者から見れば、親に叱られるのを恐れる子供のように見えるだろう。それとも、蛇に睨まれた蛙に見えるかもしれない。
僕の絞り出すようなか細い声を聞いたのか、彼女は少しの間その場で静止し続けた後に「はぁ」と息を吐いた。そして彼女は未だ鎮火しきれていない怒りを抑えながら口を開いた。
「ヤマト。何故こんなところに居るのですか?」
「それは……その、道に迷っちゃって」
僕は窓枠の隅っこを見ながら言った。冷や汗が頬を伝って落ちた。龍は納得の欠片もないような声で「道に迷って、ですか」と呟いた。
「……ふむ、子供というのは私が想像しているより元気に満ち溢れているようですね。道に迷うだけで、山を抜け、真反対の街に入り、貴族の館にガラスを破って入るとは思いもしませんでした」
「あははは…」
嫌味ったらしく放たれる言葉に僕は苦笑いを浮かべた。
言い返したい気持ちはあるが、そのどれもが他人のせいにするものばかりだ。こんな状況でそんなことを言ってしまえば、何をされるのか分からない。
それに、お母さんに自分の非を認められない子だと思われたくない。僕は悪い事をした。今ここで説教される覚悟は出来てる。どれだけ怒鳴られようが、どんな事を言われようが、僕は甘んじて受け入れよう。
そう思っていたのだが――
「………まぁ、今ここでどうこう言うつもりはありません。ほら、フーシャ村に戻りますよ」
「へ?」
彼女の予想外の対応につい素っ頓狂な声を出してしまった。
そんな僕に、彼女は何気ない様子で聞いてくる。
「どうしました?」
「え、いや、凄く怒鳴られると思ってたから」
僕の回答に彼女は「ああ」と言って言葉を続ける。
「ここらは煩いので、静かな場所に行ってから
彼女はそう言いながら、僕の前に焔雲を出してきた。そこに乗れと言うことらしい。
僕は慣れた動作で階段を登るように足をかけた。
空に浮かぶ巨龍。それを母親と呼ぶ少女。事情を知らない少年。何も起きないはずがなく………。
このあとめちゃくちゃルフィに質問攻めされた。
「城の外にバカデカい龍が飛んでるんだ!早く何とかしてくれ!!!」
『―――ご安心を。今“英雄”が向かっています』
次回『英雄VS最強の生物VS山賊王』
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